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2023年8月1日発行 No.662

『戦争は弱者を犠牲にする』

                            金田 佐久子

 7月16日の新聞に金田茉莉さんの訃報が載っていました。
“…7月10日…死去、88歳…集団疎開をしていた小学3年生のとき、東京大空襲で親と姉、妹を失い、戦争孤児となった。過酷な経験を語ることのなかった孤児たちの証言や資料を集め、語り継ぐ活動を続けてきた。戦争孤児の実態を後世に伝えた実績が評価され、19年に吉川英治文化賞。「かくされてきた戦争孤児」など多くの著書がある。”
 金田茉莉さんのご家族が西川口教会員であった関係で、20年以上前、西川口教会の平和学習会にお迎えし、体験を伺ったことがあります。その後も時々新聞に金田さんの記事が載ると目を通し、その活動を遠くから見守る思いでおりました。
 金田茉莉さんの著書『戦争は弱者を犠牲にする』が今年4月に刊行されたことを知り、読みました。この本では、現在の日本の教育のあり方や、ウクライナ侵攻などから、日本が戦争へ歩もうとしていることへ、警鐘を鳴らしています。
 「若い人へ伝えたいこと」から一部引用します。
“…やはり人生っていうのは過去、現在、未来があるわけですよね。過去があって今があると。今があって未来があると。だから、過去をもっと学んでほしいと伝えたいんです。日本に戦争があったと。そしてその戦争はどうだったか。今の人たちがこうして平和でいられるっていうこともね、過去の戦争から平和憲法などが作られて、こうして平和でいられるんだけど、過去から学ばないと、また戦争になると。…
 私もウクライナの戦争を見ると当時のことが夢に出てくるんですよ、自分の体験と重なって来て。それで戦争報道が見られないんですよね。逃げて回ってる人を見ると、うちの母も妹もそれで死んだんだなあって思い出すんです。…
 一発で撃ち殺されるんじゃなくて、油で焼かれて死ぬっていうのはとても苦しいと思うんです。今のようなウクライナの戦争を見て、戦争中の日本と同じことが起きているんですよね。私は戦争になったらどうなるかっていうことを伝えたいんですよね。それは弱者が一番つらい目に遭うということです。今までずっと国家(社会)の発展には弱い・異質・役に立たないとされているものは排除するという風潮が潜んでいると思うんです。これが特に戦争となると顕著に表れるのです。戦争には何の関係もない老人や女性、子どもが空襲などで犠牲になっていくのです。苦しんでいる人がまだいるんです。戦うことはそんなにかっこよいものでは無いのです。
 テレビを見ていたら、母親が「ウクライナの残虐な様子は子どもたちに見せられない」と言っていました。私もそう思います。しかし日本も78年前の戦争では一般市民も爆撃や焼夷弾で親、兄弟を焼き殺されたりしました。それで戦争孤児になった子どもが約20万人もいたことを知って欲しいのです。私もその中の一人でした。国からは何の援助もなく、悲惨な生活を送った心の傷は一生癒えません。…
 戦争になれば必ず多くの人が犠牲になり、孤児が生じます。わが子や孫がもし孤児になったらとしたら、そういうことも考えてほしいと思います。”
 主イエス・キリストは言われました。「平和を実現する人々は、幸いである、その人たちは神の子と呼ばれる」(マタイ5・9)。キリストの語られる平和とは何か、平和を実現するために何が求められているのか、今こそ問われていると思います。

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