教育講演会“質のよい睡眠”

 

   令和元年8月26日当法人の職員を対象に第11回教育講演会を開催致しました。
   講師は群馬産業保健総合支援センターの中村 保子先生をお迎えし、テーマは『質のよい睡眠』についてお話しいただきました。

                                        教育研修委員会

講師より

   睡眠は恒常性維持機構と体内時計機構によりコントロールされています。恒常性維持機構は「脳も疲れると、眠くなり、睡眠により恒常性を保つ働き」の事であり、これは1907年に発表されたピエロン・石森博士の実験から「睡眠は覚醒中に脳内に貯まった睡眠物質が分解される過程である」と言い換えることもできます。しかし睡眠物質が溜まったり、分解されるだけでは24時間のサーカディアンリズムは維持し難い。そこでもう一つの体内時計機構がサーカディアンリズムを作り出し、睡眠・覚醒がきっちり24時間に収まるようにリズムが刻まれるというわけです。

   この体内時計を司る遺伝子が発見されて、数年前のノーベル医学・生理学賞を受賞しています。それでは良い睡眠を得るにはどのようにすればいいのでしょうか?やはり体内時計を整える方が良いようです。すなわち朝は一定の時間に起床し、ひかりを感じる必要があります。体内時計を目覚めさせ、身体中の組織を目覚めさせる必要があります。体内時計は脳内にある中枢時計と身体中の組織にある末梢時計からなりますが、この二つを同調させる役目を果たすのが朝ごはんであると主張する方もいます。朝ご飯大切です。それから寝るときには真っ暗の中で、パソコンやテレビ・本・スマホは持ち込まないのが原則です。眠れない時にはベッドから出て、眠くなったら床に入るのも原則です。運動も効果があります。特に夕方の運動が、効果があるそうです。夕方運動をして2時間もすると脳はしだいに温度が低下します。脳の温度を低下させるのも良い睡眠を得る方法の一つです。食事や運動、風呂も就眠2時間前までに済ませることを覚えておきましょう。それからアルコールは質の悪い睡眠薬みたいなもので、だんだん効き目が悪くなり、習慣性も出て、しだいに飲酒量が多くなります。眠剤としての飲酒は避けましょう。

   サーカディアンリズムは地球の自転と一致していると言われています。地球の出来始めには自転は4時間と短かったそうです。次第に長くなって現在は24時間(正確には少し長い)になっています。そうです!生物の進化と睡眠は深い関係があるのです。もっとも進化した生物である人間の睡眠は、私たちに夢をプレゼントしてくれます。夢を分析して深層心理、無意識の世界に踏み込んだのはフロイトやユングです。睡眠は心理学者も研究テーマにしており、こころの問題とも関係があります。生活習慣病、心筋梗塞や脳梗塞、認知症とも関係があります。

   睡眠はまだまだ分からないことだらけ、寝ないで考えると不眠症になりますので止めておきますが、魅惑的な世界です。


群馬産業保健総合支援センター

産業保健相談員

老年病研究所附属病院

名誉院長

中村 保子先生