一々の芥子に嚢や雲の峰
背低く麦かつぎをる孀かな
對の屋はあやめの水をへだてつつ
灯取蟲盃洗の水にこぼれをる
蚊遣焚く家やむつまじさうに見ゆ
蝙蝠や原蒲原は間の宿
蝙蝠に打水の杓高く上げ
母子住む假の宿りや月見草
妹が手をふるれば開く月見草
玉蟲の光残して飛びにけり
玉蟲に紺紙金泥の経を思ふ
大寺の柱の下の涼しさよ
黒揚羽花魁草にかけり来る