ぼうたんの花の上なる蝶の空
セルを著て彼女健康其ものか
老農は茄子の心も知りて植ゆ
打ち晴れし神田祭の夜空かな
かんばせを高ノ染めて人来る
夕風に浮かみて罌粟の散りにけり
夕風に散らまく罌粟の一重なる
今日の興泰山木の花にあり
妻をやる卯の花くだし降るなかを
顔そむけ出づる内儀や溝浚
裾からげ内儀わたせり五月雨
黴の中わがつく息もかびて行く
一匹の火蛾に思ひを乱すまじ
鮎釣りの岩にはさまり見ゆるかな
蚊遣火のなびけるひまに客主
棟梁の材ばかりなり夏木立
晝顔の花もとび散る籬を刈る
中途よりついとそれたる竹落葉
夏木あり之を頼りに葭簀茶屋
用ふれば古籐椅子も用を為す
山寺に絵像かけたり業平忌
炎天や額の筋の怒りつつ
木々の間を透きてしうねく西日かな
雷火にも焼けず法燈ともりをり
夜詣や茅の輪にさせる社務所の灯