| 歳末 年中無休営業のSUPAYAだが、町の人々は年越しの準備のために忙しく、最近はあまり客足が伸びていない。政府から資金が出てはいるものの、無駄に店を開けるのもどうかと思うので、年末年始は営業時間をいつもより短くすることにした。 そうなると寂しいのはスパンダムだ。クリスマスパーティーの件があって、来年からはガレーラカンパニーへの出入りも出来るようになるし、プルトンの設計図に関する調査も、謎のバロックオフの動向も…とにかくCP9は忙しいのだ。SUPAYAの営業時間が短くなっても彼らの労働時間は短くはならない。それなのにスパンダムは自分はSUPAYAの他にはエニエス・ロビーで指令書にサインしたり、報告聞いたりするだけなものだから、退屈で仕方ないのだ。 「そこで、だ!」 何がそこでなのかまるでわからない。ルッチ達は睨みつけるようにスパンダムを見ていた。クリスマスの後、エニエス・ロビーに帰ったはずのジャブラ達も再びこのウォーターセブンに呼びつけられて、これから何をおっぱじめるつもりなのだろう。 「SUPAYAの歳末大掃除をしようと思う! 今年出来たばかりのSUPAYAだが、ちょっとペンキも剥げてきてたりするしよぉ。店内も綺麗にして来年に備えよう! ワハハ!」 「…最悪じゃな」 カクはスパンダムに聞こえるように呟いたが、当然スパンダムは聞こえていない。 「でも…在庫や所蔵しているCDの確認は必要だと思っていたわ」 「…とっとと終わらせよう…。手分けすればすぐに終わるだろう」 「了解」 ジャブラ達もいるのだから、いくら広いSUPAYAの店内でもすぐに掃除は終わるだろう。まだ何か喋っているスパンダムを無視して、さっそくルッチが仕切り始めた。 「まず店内の掃除だ。CDの枚数などの確認もあるから、まず棚から全部CDを出せ。中央の棚は奥へ移動しろ、ちょうどここのペンキが剥げて気になっていたところだ」 ルッチが足で示した場所は、レンタルと販売のゾーンを色分けしている部分だった。確かに、ペンキが剥げてくすんでいる。 「外装も少々気になる部分があるな…。黄色のペンキはあるか、カリファ」 「ペンキはもうないわ、まず棚を移動させてから買出しに行きます」 「それでいい。まずはCDの確認と棚の移動を総出で行う」 「了解」 「ああ、CDだったら外に海列車で運んできた木箱があるから、まずそれに入れたらどうだ?」 「それがいいのう、何箱あるんじゃ?」 「結構な数あるぜ。裏口のとこに置いてある」 「CDは全部裏口から木箱へ移動だ。誰か木箱についていろ」 「チャパパー俺がいくぞー」 「あ、おいらもぉ、CDを見張っておくぜぇぇえ」 役割分担が出来たところで、さっそくSUPAYA大掃除が始まった。ちなみに、まだスパンダムは何か言っているだけで、掃除を始める様子はなかった。 膨大な量のCDを棚から取り出し、ごっそり裏口から外の木箱に移動させる。レンタル用と販売用、中古と分けて、さらにジャンル別に分けておかなくては戻す時が大変だ。 「こっちはカラじゃ、動かすぞ」 店の壁際にある棚はアクア・ラグナ対策で壁に固定されている為、店の中央などにある可動式の棚を、壁際の棚と棚の隙間に収納できるようになっている。カラになった棚を奥へと押し込むと、隙間が狭くなって出入りがしにくい。大柄のフクロウとクマドリを外に出したのは正解だ。 その狭い隙間に入ってカリファは棚を綺麗に拭いていた。そこにCDを抱えたジャブラがやってくる。 「おいカリファ、通っていいか!」 「ええ…、どうぞ」 カリファは前にある棚に体をくっつけて、自分の後ろに隙間を作ってあげた。ジャブラはカニのように横歩きでそこを通り、奥へと入っていく。その先に裏口があるのだ。CDを外に出したジャブラが同じ道を戻ってきた。カリファの少し手前で立ち止まり、道が開くのを待っている。 「…いいわよ、ジャブラ」 「悪ぃな!」 ジャブラはまたカニ歩きでカリファの後ろを通り過ぎた。体が密着するような隙間しかないので、なるべくさっさと通らないと、セクハラだなんだと言われかねないので、ジャブラも必死だ。スパンダムのようにはなりたくないものだ…。 「あ…! 待って、ジャブラ!」 通り過ぎたところで急にカリファが声を上げた。驚いてジャブラは立ち止まる。カリファは顔を顰めていた。 「なんだぁ?」 「…、髪…、あなたの服に…」 言われて見ると、ジャブラは黄色いエプロンをしていなかったので、道着のボタンにカリファの長い金髪が絡まってしまっていた。 「だからおさげにしとけって言ってんだろ!」 ジャブラはぶつぶつ言いながら、再びカリファと密着状態で髪を解こうとした。だがちまちました作業が苦手なジャブラ。なかなか上手く解けない。 「切っていいだろ?」 「嫌よ、ジャブラ。女の髪をなんだと思っているの…セクハラね」 「ちょっとじゃねぇか…!」 「痛いわ、動かないで、ジャブラ…!」 「うるせぇな、見えねぇんだよ、こうしねぇと…」 「…何を、している…」 冷ややかな声が聞こえて、ジャブラとカリファは声の主を見た。そこにいたのはルッチと、彼の肩で目を覆うハットリだった。 「おお、ルッチ! お前、こういうの得意か?」 「…」 「助けて、ルッチ。ジャブラったらひどいのよ」 「…何をしているんだ」 ルッチはイマイチ状況がわからないでいた。狭い隙間でむぎゅっと密着してるジャブラとカリファ。見てはいけないものかなとも思ったのだが、掃除中にいちゃつかれるのも…と思って声をかけてみたのだ。だが実際はいちゃついていたわけではないらしい。とりあえず、助けを求められたので彼らに近付いてみて、ルッチはようやく状況を把握した。 「貸してみろ」 棚と棚の狭い隙間に、三人でぎゅうぎゅうになってルッチはジャブラのボタンに絡まったカリファの髪を丁寧に解き始めた。 「小細工やらせりゃ巧いな、ルッチ」 「小細工とはなんだ…。貴様は単細胞だな…ジャブラ」 「なんだとぉぉ?!」 「耳元で怒鳴らないで、ジャブラ…」 「うるせぇ男だ…。それだから振られるんだ、ジャブラ」 「好き勝手言いやがって…チクショー…!」 「…チャパパー、見てしまったー!」 ![]() 一番聞きたくない声が聞こえて、ルッチ達は硬直した。軋みそうな体を動かして見ると、そこには外から戻ってきたらしいフクロウが。 「…なんだ、何を見た、フクロウ」 「勘違いしてねぇだろうな、フクロウ!」 「ジャブラの服に絡まった髪を、ルッチに解いてもらっていたのよ、フクロウ」 三人の解説をうんうん頷きながら聞いて、フクロウはチャックをしめる。 「フクロウ! チャック開けろ!」 ジャブラが怒鳴ると、フクロウはチャックを開けた。 「チャパパー、ジャブラに絡まれたカリファを、ルッチが一緒になって解いているのを見てしまったー」 『違う!!』 「おい待て、フクロウ!」 「早く押さえろ! カクにでも喋られたら厄介だ!」 ようやく髪が解けて、自由になったジャブラとルッチは逃げるフクロウを追いかけた。 「なんじゃ、わしがどうかしたかのう?」 時すでに遅し…。フクロウはごにょごにょとカクに耳打ちしている。ルッチとジャブラは顔面蒼白だ。 「…ほぅ…」 カクの口の端がにやりと上がる。ルッチとジャブラは顔を見合わせた。一体、どんな話になってカクに伝わったのだろう…。そしてさらに脚色されていくだろう噂に、背筋が凍った二人だった。 棚の移動が済み、カリファとブルーノがペンキを買いに行った。その間に棚の上の埃を落とし、床を拭き掃除しなくてはならない。天井に届きそうなほどの棚だが、月歩を使えば簡単だ。 「シャウ! はたき楽しいっしょー!」 四式使いだが月歩は出来るため、ネロも大活躍。だが案の定というのか…はたいた埃をルッチにかけてしまい…。 「指銃…!」 「ぎゃああー!」 …こうなるのはもはや運命…。まぁこれで来年はもう少しいい年になると…思いたい。 次は床拭きだ。ルッチとカクはモップを使っているのだが、スパンダムはどこからか雑巾を山盛り持ってきた。賢いファンクフリードが鼻にバケツをひっかけて持ってくる。 「ルッチ! だめだ、だめだ、モップなんか! いいか、掃除ってのはなぁ、こうやって…」 スパンダムは見本を見せると言わんばかりに張り切っている。棚の移動など力仕事にはなりを潜めていたくせに、こういうところではでしゃばってくるんだから始末が悪い。 「こうだー!!」 ずだだだだ…雑巾がけして疾走するおっさん。 「ワハハハ! どうだ、早いだろ?! ガキの頃にはよくやったもんだぜ、雑巾がけ! 心が洗われるぞ!」 「すごいっしょ、チーフ!」 「ワハハ! そうだろ、そうだろう!」 洗われた結果、スパンダムという人物が形成されたのだとしたら、なんだか雑巾がけを恨みたくなってくるが…。ルッチとカクは相手にしていなかったのだが、ジャブラ達は面白がって雑巾がけを始めた。 「よーい、どん!」 スパンダムがけしかけたものだから、ネロも加わって雑巾がけレースの開幕だ。疾走するおっさんよりこれがまた、さすがCP9で速いものだから見ていて面白い。 「どれ、わしもやってみようかのう」 喋りはこんなのだがカクは23歳。子供っぽい一面も持ち合わせていて当然だ。 「おお、かかってこい、カク!」 「なんじゃ、お前には負けんぞ、ジャブラ」 「ワハハ、面白ぇ! なー、ルッチ! お前もやれ!」 スパンダムに指名されてルッチはため息をついた。だがモップで拭き掃除するより、ちょっと附加のある雑巾がけはトレーニングにもなって面白そうだ。ルッチは更に腕まくりをして、スパンダムから濡れ雑巾を受け取った。 「位置についてー! よーい…ばーん!」 どん!じゃないのか!というツッコミもなく、CP9達の本気の雑巾がけ大レースはスタートした。端まで行ったら今度はスタート地点に折り返しだ。まるで水泳のターンのように華麗に壁を蹴る様子はなかなかカッコイイ。怒涛のゴールは僅差で、スパンダムには誰が一着だったかよくわからない。 「なぁ俺も入れろ! ワハハ、もう一回だ!」 「誰が審判を?」 「審判なんかいらねぇだろ、やろうぜ、ワハハ!」 すっかりご機嫌のスパンダム。仕方ないので仲間に加えて再び雑巾がけレースだ。 地響きが聞こえてきそうな勢いの雑巾がけレース。やはりスパンダムは遅れている。おまけに、やはり歳なのか…それとも持って生まれた凶運ゆえか…。 「おわっ」 ずるんと滑って転倒するスパンダム。体が華麗に宙を舞い…前を行くフクロウの巨体に激突! 「げふっ!!」 「チャパパー!!」 バランスを崩したフクロウはその丸い体ゆえに大回転! そのまままるでボーリングのごとく転がり、人や物をピンのように吹っ飛ばした。吹っ飛ばされたのはネロとか…スパンダムとか…。その辺りだ。 「フクロウ! てめぇ! 大掃除してんのに何壊してんだ!!」 ジャブラが怒鳴る。 「よよい、フクロウを責めねぇでやってくれぇえ! ここは俺が腹ぁ切って…!」 「さっさと死ねぇ!!」 「やかましいのう…、しかし…これはひどい有様じゃな」 カクの言う通り、せっかく片付けたのに棚とかぐちゃぐちゃになっている。これは…買出しに出ているカリファ達が見たら怒りそうだ。 一方その頃、カリファとブルーノは…。 「みんな、頑張って掃除しているかしら」 「チーフは遊んでいるかも知れないな」 「きっとおなかをすかしているわね。喜ぶといいんだけれど」 微笑むカリファの腕には、ウォーターセブン名物の水水肉を皮で包んだ肉まんが山盛り抱えられていた。寒い時には嬉しい差し入れだ。店があんなことになっているとも知らずに…。 ゴミとか散乱しているSUPAYAの店内。ルッチはため息をついた。 「…そろそろカリファ達が帰ってくるだろう、ひとまず、その辺のものを隠せ!」 「おいおい、そんなんでバレねぇか?」 ジャブラが言うとルッチは肩を竦めた。 「この有様を見せて逆鱗に触れるよりマシだと思うが…? カリファを怒らせると恐ろしいぞ」 そう言ったルッチの背後に誰かがいた。軽くぶつかって、ルッチは振り返る。そして、言葉を失った。肩からハットリが飛んで逃げていく。 「…何かしら、これは…。ねぇ、ルッチ」 にっこり笑うカリファがそこにいた。だが目が笑っていない。 「…話せばわかる、落ち着けカリファ…」 「何なのこれは!!」 怒り炸裂、カリファの蹴りが…!! 素早く避けたルッチ達、だが心臓がばくばくなってる。怒ったカリファは本当に怖い…! 「いてて…」 カリファの後ろにいたブルーノは鉄塊をしたものの、カリファの蹴りを顔面で食らったようだ。カリファは驚いて顔を赤らめた。 「ごめんなさいブルーノ…!」 「ああ、平気だ…。それよりほら、肉まんが…」 「いいのよもう! 掃除をサボるような人達にはあげないわ!」 「サボってはおらんよ、カリファ…。わしらちゃんとやったんじゃ。ただチーフがのう」 「チーフとフクロウの仕業だ! 俺達は関係ねぇ!」 怖くて近づけないので、遠巻きに訴えるジャブラとカク。それまで伸びていたフクロウと、その下のスパンダムも這い出てきて、怒っているカリファの前に正座した。 「…すみませんでした…」 「チャパパー転がってしまったー!」 「…もういいですよ、チーフ、フクロウもよ…。さぁ、よかったらみんなで食べて」 許してくれたのか、カリファはみんなにあつあつの肉まんを振る舞ってくれた。雑巾がけが白熱していたので体は温かいが、おなかはすいていたのでこの差し入れは染みる。 みんなが肉まんを頬張っている間、カリファは汚れた部分をブルーノと一緒に雑巾がけだ。やっぱり競うみたいに雑巾がけしている。微笑ましいというか、なんだか楽しそうだ。その様子を、スパンダムは神妙な面持ちでなぜか後ろから見ていた。 「…チーフ? 何を…」 ルッチは気付いてしまった! スパンダムはカリファの雑巾がけする後ろ姿を見ようとしていたのだ。 キング オブ セクハラ! これ以上、カリファを怒らせるのは危険だ。カリファに気付かれる前に…と思案し、ルッチはひらめいた。 「ハットリ!」 「ポッポー!」 呼ばれたハットリはスパンダムの視界を覆うように張り付いた! 「うおおお! なんだ、ハットリ! 見えねー!!」 のた打ち回るスパンダムには悪いが、SUPAYAの平和はこれで守られた…。 休憩を終えたところで、今度はペンキ塗りだ。内装組と外装組に分かれて塗る。外は黄色一色なので楽そうだ。 「よーし、俺はどっち塗ろうかなー」 楽しそうにしているスパンダム。 「チーフはペンキ塗りは結構です」 「なにぃ!!」 ルッチはきっぱりとスパンダムを拒絶した。ただでさえトラブルメーカーなのに、ペンキである。余計な手間はかけて欲しくない。 「チーフはクマドリとフクロウと一緒に、CDの在庫確認をお願いします…。肉体労働よりこちらの方がチーフにぴったりかと」 「ワハハ! そうか? まぁ部下にそこまで言われちゃ俺も…なぁ! ワハハ、行くぞ、クマドリ! フクロウ!」 「よよい! チーフ、おいらに任せて、あ、くれぇ〜!」 「チャパパー、レンタルのCDを割ってしまったー」 「なにぃ?! 弁償だぞ、フクロウ!」 大柄な二人に挟まれて、いつ潰されるとも知れない状態で裏口に向かうスパンダムを見送り、ルッチはため息をついた。 「上手くなったもんじゃのう、ルッチ…」 「何がだ」 「チーフの操作じゃよ」 「…なりたくて上手くなったわけじゃねぇ…」 虚ろな目をして苦々しくルッチは呟いた。この一年の苦労がそこに集約されているようだ…。 ブルーノとカリファは外装を塗る事にした。カリファはさっきジャブラのボタンに髪がひっかかった教訓から、綺麗に髪を結い上げている。 「これを使え、カリファ」 「ありがとう、ブルーノ」 二人はお揃いの三角巾を頭にしていた。エプロンに三角巾…。 「なんじゃ、お母さんが2人もおるわい」 「ぎゃはは! ブルーノなんかまんま角隠しだな!」 「あら、似合わないかしら?」 「お母さん…」 すました顔のカリファとは対照的に、お母さんと言われたブルーノはちょっと複雑な顔をしていた。 「さてと…こっちも塗ってしまうとするかのう…」 内装組はルッチとカク、そしてジャブラだ。レンタルゾーンと販売ゾーンの2色に塗っていたのだが、今回は更に、カウンターの周りを別の色で塗る事にした。ちょうど3人で3色だ。 なんだかんだで、日が暮れる頃までかかってSUPAYAの大掃除をしたCP9の一行。CDの在庫を確認し、店内のペンキも乾いたので棚を戻してCDも戻す作業が行われていた。そこに外装のペンキを塗り終えたカリファとブルーノが戻ってきた。カリファは大事そうにマフラーを持っていた。 「…どうしたんだ、それは」 ルッチが尋ねると、カリファはにっこり笑った。ご機嫌だ。 「さっき…アイスバーグさんがお見えに。クリスマスパーティーのお礼ですって。それから…ガレーラカンパニーの許可証も」 許可証をルッチに渡して、カリファはマフラーを眺めていた。クリスマスにはCP9全員に手編みのマフラーを贈ったカリファ。自分の分は作っていなかったので、寒い思いをしていたのだ。 「ずいぶんと上等のマフラーじゃのう」 横から手を出してカクがマフラーを触る。さらさらの手触りだ。 「カシミアですって」 「いっそ、あっちの秘書にでもなったらどうじゃ、カリファ。いい上司じゃしな」 「本当…なれるものならなりたいわ」 カリファはそう呟いたが、それは叶わない夢でしかない。現実は…セクハラ上司なのだ。だがそのセクハラ上司も悪気があるわけじゃないから…。…余計タチが悪いのか…。 「ワハハ、ご苦労! これで年が越せるってモンだ!」 スパンダムがご機嫌で笑いながら現れた。綺麗になった店に大満足の様子。まぁ確かに、これで来年を迎えられるというものだ。 「今年も残すところ僅かだが、気を緩めねぇでな! やれよ! それと…うちは不純異性交遊は厳禁だ! だからと言って…ルッチ! ジャブラ!」 突然名指しされたルッチとジャブラはぽかんと口を開けた。 「は…」 「あァ?」 「お前ら…ダメだぞ! 男同士で狭い隙間で髪絡めあってなんて…!! いくら異性がダメだからってな! そういう問題じゃねぇだろ!」 わけのわからない説教にぽかーんとする二人。だがその視界に、にやりと笑うカクと、チャックを閉じてそ知らぬ振りをするフクロウが入ってピンときた。 「フクロウ!!」 「チャパパー! 喋ってしまったー」 「何を喋ったんだ、てめぇ!」 「どうして俺がこの野良犬の髪を弄くった事になっているんだ、フクロウ!」 「何が野良犬だぁ、ルッチ!」 どうやら、カクと悪巧みして変な噂をスパンダムに流したようだ。カリファは巻き込まれなかったのでほっとしているが、ルッチとジャブラの鬼の形相は…。…本気で嫌だったようだ。今年最後の災難だといいね…。 それから二日後。押し迫る年の瀬…。所用でウォーターセブンを離れていたルッチが昼からSUPAYAに出勤すると、まだスパンダムがきていないようだった。 「…チーフはどうした、カリファ」 「…筋肉痛ですって」 「? 昨日までピンピンしていたようだが…?」 「雑巾がけレースの筋肉痛が…今頃になって出たようよ」 ああ、可哀想なスパンダム…。若い連中と遊ぶのも結構命懸けだ。だが彼がいないSUPAYAは平穏なのだった。 本年のご愛顧、誠にありがとうございました。 皆様、よいお年をお迎え下さい。 SUPAYA一同 つづく |