偶然の出会い―精神保健福祉士のこと

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 2週間ほど前になりますが、専門学校からの帰りに、路上である女の方に声をかけられました。最寄りの駅まで手引きをしてもらい、方向が同じということで、近鉄の鶴橋駅まで 30分あまり一緒の時を過ごしました。
手引きの時、私はあまり積極的には相手の人と話をするほうではないのですが、その方が心理学を教えていて、さらに現在、私の出身大学の博士課程に在席中と言うことで、つい色々と話し込みました。
 現在の大学の様子、互いに共通に知っている先生方のこと、研究者の卵の生活のことなど、話題は広がっていきます。そして、その方が去年「精神保健福祉士」と言う国家資格を取った、と話された時、私は耳をそばだててしまいました。それは、私の身近な人の中に精神を病んでいる者がいるからなのでしょう(私自身もちょっとそんな傾向があります)。
 「精神保健法」は6、7年前かなり話題になって、私もすこしは知っているつもりだったのですが、「精神保健福祉士」については初耳でした。
 後で少し調べてみると、「精神保健福祉士」は、それまでの PSW(精神科ソーシャルワーカー)に換わるものとして、1998年4月より施行された精神保健福祉法に定められた国家資格で、精神障害者の社会復帰のための相談援助を行なう専門職、と言うことです。それを養成する専門学校、短大・大学はまだ限られていて、資格取得者も少ないようです。 
 その方は精神病院で仕事をしたこともあり、何十年も入院していた人の社会復帰はとくに難しい、と話していました。入院患者を減らして、在宅・地域で暮らせるようにしようという、厚生省の考えはよく分かるのだが、そういう人の場合、まず経済的基盤、そして家族とのつながりを作ることがとても難しいとのことです。
 さらに、最近では女性ばかりでなくサラリーマンの間にも鬱病が広がっていて、そういった人たちの問題についても話し合いました。
 精神障害者に限らず、施設から在宅・地域へ、という考えは、本人の意志の尊重、人権擁護の理念と共に、最近のいわゆる社会福祉基礎構造改革の基本となっている訳ですが、その難しさ、それを担う専門職の役割の大きさなど、いろいろ考えさせられました。
 その方とは近鉄鶴橋駅で互いに名前を名乗ることもなく別れました。もう二度と会うこともないかもしれない、とても良い出会いでした。
 手引きをしてもらうと、安全かつ楽に歩けるのはもちろんですが、ごくたまには、こんな素晴しいプラスアルファ!もあるのです。