表が読めた!――ネットの効用

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 私はよくインターネットを利用していますが、実際に音声や点字で読めるのは文字の部分だけです。

 文字中心のページであっても、その中にある表はしばしば読めませんし、グラフや図、写真などは、(キャプションがあればその部分は読めますが)まったく見ることはできません。いちおう文章によってそのページの全体的な意味は理解できても、正確な情報あるいはこれは是非知りたいと思っている事柄が、表や図から読み取らなければならず、どうしても分からないことがあります。

 またページ全体が PDF(portable document format)形式になっている場合には、私たちにとっては、中身は〈空っぽ〉ということになります。 PDF は Acrobat Reader で再現できて、ホームページを作製するほうにも、それを見るほうにも便利なようですが、私たちには大きなバリアです。

 政府の公開している官報など一部の文書、民間の研究機関の報告書のかなりの部分は PDF になっているようです。その中には内容のとても充実していると思われるものがあったりして、何回も残念な思いをしたことがあります。

 さて、2週間ほど前、私のホームページを見たある学生からメールがありました。その方は今コンピュータの勉強をしていて、「視覚障碍者のパソコン利用の実態」というテーマで卒論を書きたいとのことで、そのためにメールでの質問に答えてほしいとのことでした。

 その質問の中には、インターネットやホームページについてのものもあり、私は上に述べたようなことも含め簡単に答えました。そして、かなりずうずうしいとは思いながらも(実際の例を示すことで少しは参考になるかもしれないという気持もありました)、その時読めたらいいなあと思っていた表のあるページの URL を書いて、もしその気があるのでしたら、その表をテキスト化してみていただけませんでしょうか、とメールしました。

 その方は快く引き受けてくださり、次に示すようなテキストデータを送ってくださいました。


「世界の原発上位10カ国」
アメリカ   運転中の出力  10064.0 運転中  103 建設中 0 計画中 0
フランス   運転中の出力 5988.8 運転中  55 建設中 4 計画中 0 
日本    運転中の出力  4508.2 運転中  52 建設中 5 計画中 2
ドイツ     運転中の出力  2220.9 運転中  19 建設中 0 計画中 0
ロシア    運転中の出力  2155.8 運転中  29 建設中 4 計画中 8
イギリス    運転中の出力  1417.3 運転中  35 建設中 0 計画中 0
韓国    運転中の出力  1371.6 運転中  16 建設中 4 計画中 0
ウクライナ 運転中の出力  1281.8 運転中  14 建設中 5 計画中 0
カナダ    運転中の出力  1061.5 運転中  14 建設中 0 計画中 0
スウェーデン 運転中の出力  982.2 運転中  11 建設中 0 計画中 0

1999年12月末現在・日本電子力産業会議まとめ。新型転換炉などを含む。
単位は出力が万キロワット


(念のため、この表が載っていたページの URL を書いておきます。
http://www.mainichi.co.jp/eye/feature/details/science/Physics/200006/15-2.html

 どうですか。とてもきれいな表になっているでしょう。音声でも点字でもとても分かりやすいです。こういうのを「望外の喜び」と言うのでしょう、とてもうれしかったです。
 (ただ、音声や点字では、全体を一度に見ることはできず、初めから順番に読んでいくことになります。ですから、表を理解するのに直接必要な情報――上の例では「単位は出力が万キロワット」の部分――は、表の初めに持ってきたほうが表を理解しやすくなります。)
 その方は引き続き表のテキスト化をしてくださるとのことで、とても心強く思っています。テキスト化するのにもっと難しい表もありますし、またグラフや図もあります。そのようなものも試行錯誤しながらなんとかテキスト化できるようにしたいと思っています。また今のところ1人ですので、負担も大きくなるかもしれません。興味のある方はぜひ私にメールで連絡ください。
Email: of-4889@muf.biglobe.ne.jp)

 インターネットをある程度使えるようになって、それまでの点訳物を中心とした私の情報環境は大きく広がりましたが、このような、表などのテキスト化という支えによって、一つバリアが無くなり、私の情報環境はさらに広がるような気がします。

 (なお、このような活動には著作権のことが関係してきますが、その事については別の機会に書きたいと思います。)