チューリップの花の触察

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 1週間ほど前から(たぶん4月6、7日くらいから?)、家の小さな庭でチューリップが咲き始めました。
 チューリップに限らず、花に触るのは好きで、機会があれば触っています。チューリップもちゃんと触ってみようと思って、毎朝通勤時に触ってみるのですが、家を出るのは午前7時半過ぎで、そのころはまだいつも少し開きかけている程度で、あまり観察できません。「昼にはちゃんと開いているよ」ということなので、今日(4月12日土曜日。この日は昼くらいまでは晴ていましたが、昼以降は少し曇り勝ちの日でした)1日ゆっくり家に居てチューリップを触察してみることにしました。
 チューリップは6本ほどあります(そのうち、1本は4月13日の夜に切り取って台所に差しています)。25cmから50cmくらいの高さで、花は大きいもので10cmくらいあります。
 
●午前6時半ころ
 数本、先がわずかに開きかけている。花の中にまだ指を入れることはできない。
 
●午前9時ころ
 少し開きかけて、花の中に指を1、2本入れることができる。花の中は、なんか暖かそうな気がする。花びらは大部分が3重になっている。花びらが大きくて、それが重なり合って3重になっている。花の中の中央には大きなめしべ、その回りに細いおしべを数本確認できる。
 
●午前10時ころ
 花はだいぶ開いて、花びらは垂直よりも外側に開いているものが多い。重なっている花びらの数を数えてみると、6枚くらいのようだ。3重になっているのに6枚は少ないと思うが、それだけ1つ1つの花びらの面積が広いからのようだ。花の中心のめしべは、中心から正3角形の3つの頂点に向って5mmくらい突き出たような形になっていて、とてもきれいな形。おしべは、めしべの3つの各頂点の外側に3本、その間にも3本あって、計6本(おしべの配置は、このように規則的になっていないものもある)。メシベを触っていると、粉のようなのが指にしっかり付いた(指から取れにくいので、ちょっとべとついているのかも知れない)。
 
●午前11時ころ
 花はさらに開いている。指は3、4本十分に入る。物差しで測ってみると、一番開いている花の直径は8cmくらい。花の中は暖かいばかりでなく、なんか湿り気のようなのも感じる。めしべはたぶん3cmくらいでしっかりしている。おしべはたぶん3cm弱ほどで、細いが意外にしっかりしている。細い棒のようなのと思っていたが、よく触ると、根本の1cm弱くらいは細いつるうっとした棒状だが、その上はざらざらしていて(細かい剛毛が密生している感じ?)先のとがった螺旋系のねじのように1回半くらい巻いている。そして、その巻いている部分にはさらさらの粉のようなのがたくさん付いている。おしべがこのように巻いているとは、驚きでした。また、おしべに付いているこの粉は何なのでしょうか?(たぶん花粉だと思いますが、それにしても量が多い!またこのおしべの粉のほうが、先ほど触っためしべに付いていた粉よりもさらさらしていて粒も大きいように思う。)
 
●正午ころ
 花の開き具合は1時間前とあまり変わらない。一番大きな花の直径は8〜9cm。今は、3重に花びらが重なっている所はまったくなくて、1重か2重になっている。そして、外側の3枚は1cmから3cmくらい離れており、内側の3枚は互いに接触するかわずかに離れている。
 
●午後1時ころ
 1時間前とほぼ同じ。(日がややかげっているようだ)外側の花びらと内側の花びらの感触を確かめてみるが、とくに大きな違いはなさそうだ。
 
●午後2時ころ
 花がやや閉じてきている。一番大きな花の直径は7〜8cmくらい。内側の花びらのほうがより閉じかけているようで、内側の花びらと外側の花びらの透き間が前よりも広がったようだ。
 
●午後4時ころ
 花がさらに閉じてきていて、花の直径は6cmくらい。大部分は2重で、一部3重になっている。外側の3枚の花びらは互いにわずかに離れているか接触するくらい。内側の3枚の花びらは互いに3cmくらいは重なっているようだ。外側の花びらと内側の花びらは、感触はほとんど変わらないようだが、形はかなり違うことに気が付いた。外側の花びらの先はすうっとややとがっているのにたいし、内側の花びらはゆるやかな円弧になっている。大きさは、縦の長さは外側の花びらも内側の花びらも10cmくらいだが、幅は外側の花びらが6cmくらい、内側の花びらが10cmくらいと、大きく異なっている。
 
●午後5時ころ
 花はさらに閉じてきていて、直径は5cmくらい(指が2本なんとか入るくらい)。
 
●午後6時ころ
 花はさらに閉じてきて、中にはほぼ閉じているものもある(指は入らない)。開いているものでも、指が1、2本入るくらい。たぶん午前9時ころよりも閉じているように思う。外側の花びらも、互いに接触するか一部重なり合っているものもある。
 
*こんなに丁寧にチューリップの花を触ってみたのは初めてでした。そして、意識して触ってみると、いろいろなことに気が付きました。以降も、しばらく観察を続け、なにか新しいことがあったら追加しようと思います。
 
●4月13日
 この日は朝から曇で、ごくたまにわずかに陽の熱を感じることができるくらいでした。
 午前4時ころ:1本を除いて、5本の内側の花びらは完全に閉じている。外側の花びらは一部が重なっている。1本の花は、指が1本入るくらい少し開いている。たぶんもう咲き終わりかけかもしれない。
 午前7時ころ:まだほとんど閉じている。4時ころ閉じていた花のうち1本は、指が1本入るくらい開いている。全体としては、昨日の6時半の時より開いていないかも。
 午前9時ころ:全部の花が開きかけている。一番大きな花は、直径が5cmくらいで、指が2本入るくらい。
 午前10時ころ:だいぶ開いてきている。一番大きな花の直径は7cmくらいで、指が3本入るくらい。
 午前11時ころ:一番大きい花の直径は7〜8cmくらいで、指が3〜4本入る程度
 正午ころ:全体にやや閉じてきているようだ。一番大きな花の直径は7cmくらいで、10時ころと同じ感じ。風が冷たくなって、気温が下がっているようだ。
 午後1時ころ:1時間前よりもやや開いているようで、一番大きな花の直径は8cmくらい。温度計がないので確かではないが、体感的には12時よりも冷たい風がなくなってほんわり暖かい感じで、気温の変化に敏感に反応しているようだ。
 午後3時ころ:だいぶ閉じてきて、一番大きな花の直径は5〜6cm。ただし、内側の花びらはもっと閉じていて指が1、2本ようやく入るくらい。
 午後4時ころ:さらに閉じてきて、一番大きな花の直径は5cmくらい。また、2本はほぼ閉じている。
 午後5時ころ:だいぶ閉じてきて、一番大きな花でも直径4〜5cm。半分くらいの花はほぼ閉じていて、開いている花でも指が1本中に入るくらい。
 午後6時ころ:2本くらいはわずかに開いているだけで、その他はほぼ閉じている。
 温度計がないのが残念だが、今日は昨日より最高気温は低かったと思う。また、夕方からかなり気温が下がってきたように思う。
 
●4月14日
 今日は、朝は少し冷え込んだが、天気がよく気温が昨日よりも上がっているようだ。
 午前7時半ころ:数本わずかに開いている。指が1本入るくらい。
 午前9時半ころ:だいぶ開いて、一番大きな花は直径8cmくらい。すでに昨日一番大きく開いた時(11時ころと午後1時ころ)と同じくらいになっている。
 午前11時ころ:さらに開いて、一番大きな花の直径は8〜9cmくらい。内側の花びらがより開いて、内側の花びらと外側の花びらがほとんどぴったりくっついている。内側の3枚の花びらはちょっと接触するか少し離れている。内側の花びらの内面に日射があたって暖かくなっている。内側の花びらがより開いているのはそのためだろう。花の中の空間に指を入れた時に感じる暖かさは、壺のような形の花の内面で日射が反射して熱がこもっているためだと思う。
 正午ころ:どの花も大きく開いている。直径は10cm以上もあり、一番開いているものは12cmくらい。これまでで最大。風が強くて、そのためなのか一部の花びらは外側に反り返っている。これだけ開くと、花の中のめしべやおしべが触察しやすくなる。めしべの先の3つに分かれた部分(柱頭)の下には、1辺が6、7mmくらいの正3角柱が3cm近く続いている(ふつうに円柱だと思って触っていましたが、3角柱であることにびっくり!)。茎の太さとほぼ同じくらいで、茎と続いているような感じ。(理科の教科書では、柱頭の下には、花柱があり、その下に子房があることになっているが、花柱と子房の区別は触ってはまったく分からない。)
 午後1時ころ:だいぶ閉じかけていて、一番大きな花でも直径8〜9cm。風がやや強く、日が照っていない。
 午後3時ころ:2時間前とほぼ同じないしわずかに開いている感じ。直径8cmくらいのものが多い。風はやや強いが、陽が射している。
 午後5時ころ:だいぶ閉じかけていて、一番大きいものでも直径7〜8cmくらい。それでも、昨日に比べるとまだかなり開いている。
 午後6時ころ:一部の花はほぼ閉じているが、直径6〜7cmくらいのものも2、3本ある。
 午後7時ころ:3本はまだ開いている。花びらに張りがなくて一部襞のようになっていたりして、きれいなまとまった花の形にはなっていない。もうこれ以上閉じることはできなさそう。たぶん咲き終わりだと思う。
 
*昨夜、小さ目のチューリップの花(花の長さは7cmくらい)を1輪切って台所に飾っておいた。今朝8時ころ、その花が大きく開いていて、直径8cmくらいになり、内側の花びらと外側の花びらがぴったりくっついていた。ほとんど開き切った感じ。台所では直前までガスストーブを点け、料理をしたりお湯を沸かしていたので、たぶん20度以上になっていたと思う。とてもよく気温に反応していることが分かる。その後は台所でとくに火を使わず開け放しておいたりしていて、それ以上開くことはなかった。昼前からは次第にしぼみはじめ、午後1時ころ直径は5〜6cmくらい。5時ころになっても直径6cmくらいで、あまり閉じていく様子はない。午後9時ころには直径が4〜5cmになり、ややしぼんできている。深夜(午前0時半ころ)と翌朝5時半ころ確かめたが、直径4cmくらいのまま。
 
●4月15日
 午前5時半ころ:1輪は、指が1、2本入るくらい開いたまま。その他はいちおうは閉じているようだが、花びらが中心にあまりまとまっておらず花の直径は大きいものでは6cmくらいはある。
 午前8時半ころ:どれも開いていて、大きいものは直径8cmくらいになっている。めしべを触ってみると、ちょっとべたつく感じ。
 午後6時半ころ:どれも少しは開いていて、直径は4cmくらいから7〜8cm。ただし、まとまったきれいな形の花になっていないものが多い。
 
●4月16日
 午前7時半ころ:どの花もほぼ開いている。大きなのは直径7〜8cm。
 午後6時半ころ:まだ大部分の花は開いている。
 
●4月17日
 午前7時半ころ:どの花もよく開いていて、大きいのは直径8〜9cmもある。
 午後6時半ころ:どの花もまだ開いている。とくに2本の花がすり鉢のように大きく開いている。めしべを触ってびっくり!めしべの先がべとべとになっている。そして、3方向に飛出しているふくらみの部分が、薄くなって板のような感じになっている(べとべとの液を搾り出すようにして、薄くなったのかと考えたり)。めしべがこんなにべとべとになっているのは、花粉を受け入れる準備ができた=十分に成熟したということだろう。おしべの花粉は、すでに私が触り始めた4月12日には大量に出ていたのに、めしべの成熟はどうしてこのように遅れるのだろうか?(めしべの先がちょっとべとついているのに私が気が付いたのは、一昨日。その時はたいして気にもせず、昨日はめしべをちゃんと触っていなかった。)
 
●4月18日
 午前7時半ころ:昨夜から雨が降り続いていて、今も弱い雨が降っている。一番大きく開いている花は、雨のためだろう、花びらが下向きに垂れかかっている。
 午後6時半ころ:雨は昼ころに止んだ。一番開いていた1本の花に触ろうとした瞬間、花びらが一度に落ちてしまった。触ってみると、おしべもなくなっていて、めしべだけになっている。めしべが茎からまっすぐつながっていることがよく分かる。めしべは3角柱状で、真ん中あたりがわずかにふくらんではいる。その他の花は、よく開いているものややや開いているものがある。よく開いている花のめしべに触ってみると、先がかなりべとべとしている。
 
●4月19日
 午前7時半ころ:よく晴れているようだ。もう1本も花びらとおしべがなくなり、めしべだけになっている。めしべは3cm余。その他の3本の花はやや開きかけの状態。
 午後1時ころ:よく開いているのが2本(直径は8cmくらい)、少し開いているのが1本。よく開いている2本は、中のめしべやおしべがよく触察できる。めしべの先はべとべと。おしべは、螺旋形の部分がほどけたようにまっすぐになって上に伸び、表面のざらざらもほとんどなくなっている。
 午後6時ころ:夕方から冷たい風が吹き気温が下がってきた。3本ともほとんど閉じている。
 
●4月20日
 午前8時半ころ:今朝は気温が低く曇りがち。わずかに開いている(直径7cmくらいかな)。1本はほとんど閉じている。
 午後6時半ころ:昼から夕方にかけて雨が降っていた。午前8時半ころとほぼ同じ状態。
 
●4月21日
 午前9時半ころ:今日も曇りがち。めしべだけになっている2本のめしべは、大きさや形にまったく変化はなし。2本の花は少し開いている。もう1本もわずかに開きかけていて、中に指を入れてめしべとおしべを触ってみる。めしべはまだべとついておらず先は3方向にふくらんでいる。おしべは、すでに螺旋がほどけてほぼ細く長くなっている。(これでは自花受粉は不可能。)
 午後4時半ころ:3本とも、午前9時半ころよりわずかに開いている。めしべがべとべとしている2本のおしべを触ってみると、螺旋が伸びた部分がぽろぽろと取れていって、根本の2cmくらいのつるうっとした細長い先のとがった部分だけが残った。
 
●4月22日
 午後6時半ころ:1本が、花びらとおしべが落ちて、めしべだけになっていた。残りは2本。
 
[調べて分かってきたこと]
※外側の3枚の花弁は、萼だった!
 (参考:チューリップの花には、なぜがくがないの
 チューリップの花は、細い茎に直接大きな花がのっているような感じで、ちょっとおかしいなあと思っていましたが、外側の3枚の花びらは萼に当たるものだそうです。そう言われると、上の触察記録にも書いたように、外側の花びらは先がややとがった細長い形なのにたいし、内側の花びらは大きくてほぼ円形に近い形で、こちらのほうが豪華な花らしく思われます。
 
※1日を通じてのチューリップの花の開き方の変化は、温度の変花による!
 (参考:チューリップはなぜ開いたり閉じたりするの
 チューリップの花が1日の間に開いたり閉じたりするのは、光の強さか温度の変化かと思いましたが、温度の変化を反映しているそうです(上の触察記録でも、4月12日は昼から曇りがちになって陽が射さなくなっても、急激に閉じることはありませんでしたし、また13日はずうっと曇りでしたが同じように開閉しています)。
 その原理ですが、1枚の花びらの内側の細胞と外側の細胞では、成長に適した温度にちがいがあるからだそうです。内側の細胞はより高温で成長し、外側の細胞はより低温で成長するために、(ちょうどバイメタルと同じように2層の伸びの違いによって)温度が上がると外側に開き、温度が下がると内側に閉じてくるというメカニズムだそうです。そして、花の開閉の仕方から考えると、花びらの下のほうの細胞ほど、その成長が温度変化に大きく影響されていると思われます。
 
※おしべの螺旋系は、葯が割れたものらしい!
 (参考:花の動き
 花粉はおしべの葯の中にありますが、上記のページの記述によれば、ふつうは花粉が成熟すると、葯についている縦の切れ目が裂け、その割れ目がそり返って袋の内側が外側になるよう反転して、内部の花粉を外に出すものが多いそうです。そして、チューリップなどの葯は、花粉を1つでも多く放出できるように内側の葯壁が外側に180度にもめくれ動くことが知られているとか。螺旋形の部分の表面のざらざらは、葯の内側の壁面で、あの大量の粉は、葯が完全に割れて花粉が出てきているもののようです。
 
※チューリップには「3」が似合っている?
 チューリップを触察していると、「3」という数がやたらに出てきます。外側の花びら(本来の萼)が3枚、内側の花びらが3枚、おしべが6本(3の倍数)、また、めしべの先は3つに分かれ、その下の形も正3角形。さらに、葉もだいたい3枚のものが多いです。チューリップはユリ科で単子葉類(子葉が1枚)だそうです(私は単子葉類というと、イネやトウモロコシなどと思っていて、チューリップのような豪華な花は連想できていませんでしたが、ユリやチューリップやスイセンなども単子葉類だそうです)。そして、子葉が1枚の単子葉類では、花弁やおしべや葉のなど数は 3の倍数になることが多いようです(参考:チューリップの花の開閉について - 山形鶴翔同窓会
 
(2014年4月13日、4月15日、4月18日、4月24日更新)