あくあぴあ芥川―あこがれの鳥類の剥製―

上に戻る


 
 9月4日の午前に、あくあぴあ芥川(高槻市立自然博物館)に行きました。9月末までそこで蝉の企画展「高槻のセミ・大集合」が開かれていることを知り、なんか懐しくなって行ってみたくなりました。毎年夏は歩行時にあの蝉たちのけたたましい鳴き声にしばしば悩まされていますが、家の小さな庭でも毎年蝉が羽化して行き、私もたまに蝉の幼虫に触ったりします(昨年は幼虫が土から出てきた穴に触りました。今年は命が絶えて落下してきた蝉に触りました。)。小さいころは、蝉やとんぼでよく遊びましたし、なんとも残酷なこともしました。
 午前10時にJR摂津富田駅からバスに乗り、北南平台で降り、歩いて10分ほどで着きました。かなり急な斜面になっているようで、入口は4階です。そこからは摂津峡や回りの水田など素晴らしい展望のようです。3階に降りると図書コーナーや事務所があり、そこで事務局長さんにあくあぴあ芥川の全体的な説明をしてもらい、さらに展示の案内までしてもらいました。
 30年近く前にこの辺で住宅地用に大規模な開発が始まったそうです。一定規模の緑地を残さなければならないということで、芥川緑地として整備されることになり、その1施設として20年ほど前に芥川付近の自然を紹介する資料館が設けられました。芥川に生息する魚たちの生態展示のための大きな水槽、その他の魚や蛇や蛙を生態展示する小型の水槽、さらに多くの昆虫の標本や鳥類や哺乳類の剥製などを順次増やしていったそうです。とくに鳥類の剥製は数百点もあり充実しているとのことです。そして昨年博物館として認められ、今年4月から高槻市立自然博物館としてオープンしました(指定管理者制度により、あくあぴあ芥川共同活動体(NPO法人芥川倶楽部とNPO法人大阪自然史センターの共同事業体)が管理・運営している)。
 展示されているものはすべてケースの中で触ることはできませんでした。ただ、市民が偶然拾って持ち込んだりして出所がはっきりしないものなど資料として登録できないものは子どもたちのためなどに自由に触ってもらっているとのことで、私もそういうものを少し触りました。
 まず最初に触ったのが、鯉の頭の骨格および咽頭骨です。頭の骨格は幅5、6cm、長さ10cm弱で、目が前向きについていました。咽頭骨は直径4cmほどのリング状で1箇所が切れていてたぶん少し動くようになっていると思います。そしてその咽頭骨には直径5mm余の表面がつるつるした臼歯のような歯ともっと小さいとがった歯が数本ずつ付いています。このような歯を咽頭歯と言うそうです。鯉には歯がありませんが、この咽頭歯で貝や甲殻類を噛み砕いて食べるそうです(残った殻のカスは鰓蓋から出す)。
 次にニホンジカとエゾシカの角に触りました。エゾシカの角は、ニホンジカの倍くらいはあって、長さ1mほどもある立派なものです(どちらも4、5本枝が出ていた)。その他、2日ほど前に拾ったというアブラゼミの死んだ個体(長さ5cmくらいで、やや小型のものに思えた)に触れたり、蛇の抜け殻にも触りました。アオダイショウの抜け殻で、頭から尾まで1.5m近くもありました。腹側は、5mm余くらいの間隔で深い襞のようなのがずらあっと並んでいて、これがまさに「蛇腹」なのだと納得です。
 
 その後、2階と1階の展示を案内してもらいました。2階には芥川に棲む魚たちを紹介する長さ5mくらいの水槽が、上流、中流、下流の順に、ゆるやかな斜面上に置かれています。上流にはカワムツ、中流にはオイカワ、下流には大きなコイ数匹と小さなニゴイたちが多数見えているようです。小さな水槽では小型のいろいろな魚のほか、蛇類や蛙類なども飼育されているようです。蛇に生きている餌を与えても積極的には食べようとしないので、口を無理に開けて餌を押し込んで食べさせているそうです。博物館で飼うほうが野生よりも長生きはするそうですが、博物館では生きようとする気力を失ってしまっているようで、ちょっと切なくなります。
 1階で蝉の企画展が行われていました。これまた展示物はすべてケースの中で触れられるものはありませんでした。ただ、いろいろな蝉の鳴き声は聞くことができて、私は各ボタンを押して、アブラゼミ、クマゼミ、ヒグラシ、ミンミンゼミ、ツクツクボウシなどの鳴き声を聞きました。ヒグラシの声はとても懐しかったです。青森では夕方になると、山のほうからヒグラシのやわらかいコーラスが飛んできてよく聴き入っていたものです。青森ではそのほかアブラゼミやミンミンゼミの声をよく聞いていたように思います。クマゼミの声はほとんど記憶がなくて、クマゼミの声をはっきり意識するようになったのは大阪に出てきてからのことです(今は青森でもクマゼミは鳴いています)。クマゼミは開けた地、都会にもよく適応してこの辺でも大繁栄、私が歩行時に、自動車の走行音などが消されてしまって悩まされるあのシャシャシャーン、センセンセーンといったような大音響が、このクマゼミです。なお、次のページ(種類によってこ〜んなに違う!いろいろなセミの鳴き声を聞こう)でいろいろな蝉の鳴き声を聞くことができます。
 1階には昆虫や鳥類の標本も多数あって、とくに鳥類の剥製は量といい種類といいすごいようです。スズメ、ツバメ、ワシやタカなど、名前を知っているような鳥はほぼすべて展示されているようです。同じ種類でも、翼を閉じている姿、片方の翼だけを開いている姿、両翼を広げている姿などいろいろな形のものが展示されているようです。こんなに素晴しい展示を目の前にしながらまったく触ることができないというのは、とても残念です。確かに鳥の剥製は触るのには注意しなければなりませんし、多くの人たちが触ればどうしても傷つき壊れてゆくでしょう。それでも、あまり貴重ではない種類でほぼ同じ姿のものが数点ある場合には、その中の1点を触って良いものとして展示することはできるでしょう。とくに見えない人の場合は、生きている鳥に直接触って形を確かめるといったことはほぼ不可能ですし、鳥の剥製や骨格標本から鳥の生態を想像するしかありません。そのうち、数点でもいいですから、鳥の剥製または骨格標本を触ることができるようにしてほしいと願っています。
 なお、蝉の展示についても、クマゼミやアブラゼミなどごくふつうの蝉は、傷つき壊れたとしても取り換え可能なので、ケースの中の展示品とともに、触ることのできる展示を用意することはそんなに難しいことではないでしょう。
 だれにでも利用できる博物館や美術館といえば、しばしば設備やアクセスが問題にされますが、それとともに、いやそれ以上に重要なのが、実際に何か展示物に触ったり解説してもらったりなどして、体感し納得し知ることができるかということです。今後のあくあぴあに期待しています。
 
(2016年9月12日)
 
*2017年3月11日、日本ミュージアム・マネージメント学会(JMMA)近畿支部 研究会主催の「地域博物館シンポジウム 小規模館が地域に対して果たす役割」の地域博物館見学会「高槻市立自然博物館(小規模ミュージアムネットワーク事務局)」に参加しました!
 12時50分にMさんと一緒にJR高槻駅に集合、1時過ぎのバスに乗車し、南平台小学校で下車、1時半ころ高槻市立自然博物館(あくあぴあ芥川)に到着。
 まず同館の学芸員の高田さんの案内で、1時間半ほど、この博物館についての簡単な解説の後、2階と1階の展示とそのバックヤードを案内してもらいました。展示はもちろん以前見学した内容とだいたい同じでしたが、リスが食べ残した松ぼっくりの中心の軸の部分やいろいろな鳥の羽などに触ったり、各種のセミの鳴き声を聞いたり、アメンボのいろいろな種類の香りを嗅いだり(香水のような良い匂もあった)しました。また、床にあくあぴあ芥川を中心に淀川から芥川にかけての地図が描かれていて、その上を淀川から芥川の上流へと案内してもらったりしました。
 ちょうど子どもたち対象のカモの貼り絵のワークショップの時間で、その短縮バージョン?にも参加してみました。木製の雄と雌のマガモの模型がありました。長さ30cm弱、幅10cm余のずんぐりした形で、羽は閉じています。雄のほうは、尾羽の下の羽の先端がくるうっと巻いてかっこいい感じ、また背中の前のほうの中央が窪んでいました。また紙に、モコモコペンのようなもので描いたのでしょうか、マガモの輪郭線がきれいに盛り上がって描かれていて、これならば盛り上がった線を参考に少し色を塗ったり貼り絵らしきことはできるかもと思いました。
 バックヤード見学では、乾燥標本室(ナフタリンのような匂がきつかった)や液浸標本室、水槽の水を浄化し管理したりする機械室のような所などを案内してもらいました。標本や剥製用の資料を処理したり製作したりする部屋もあって、そうっと仮剥製のマガモに触れたりしました(ふわあっとした感じで、首の所がとても細かった)。フライドチキンなど売られている鶏や豚の各部から作った骨の標本もあり、鶏の手羽(上腕骨から橈骨・尺骨、親指側の骨と2本の指骨と、よく分かった)や豚の肩甲骨や脚の骨を触りました。工作ワークショップの部屋では、シニアの方たちが自然のいろいろな採取物を使った物作りをしていて、どんぐりと松ぼっくりを組合わせた顔のようなのに触れたりしました。
 館内を案内してもらった後、2時間ほど高槻市立自然博物館の学芸員、運営に関わっているNPO法人芥川倶楽部と認定特定非営利活動法人大阪自然史センターの方2人の説明を聞きました。博物館成立までの経緯や、博物館に関わり支えてきた方たちのいろいろな活動について、また苦労や問題などについていろいろ聞くことができました。いろいろ困難はあっても、実際によく調べ(芥川に遡上するアユの数を目視で調査するとか)、それに基づいて行政に提案し、また行政と調整しつつ率先して市民も作業して引っ張っていくとか、皆さんの活動力には感服するばかりでした。
 私はまだ2度しかあくあぴあ芥川には行ったことはありませんが、いつも子どもたちの元気に動き回っている様子が感じられます。館内のあちこちに小さな工夫がたくさんあり、ワークショップも頻繁に行われ、活気を感じます。珍しいものを展示するのも良いですが、それとともに、ごく身近にあるもの(石ころや葉っぱや種や小さな生き物のなど)から自然のふしぎ・おどろきを感じてもらえるような展示や企画もいいです(そのようなものは、自分の家の回りとかでも観察したり体験できることが多い)。また、博物館の回りの自然を管理保存し、そうすることで得られる自然の産物を展示や企画に使えば、博物館活動もうまく続くでしょう。
(2017年3月16日追加)