楽器で遊ぶ

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 1月30日月曜日、京都教育大学の教育資料館まなびの森ミュージアムで開催されていた企画展「音をたのしむ×音からまなぶ」に行きました(昨年11月2日から本年1月30日までの開催で、私たちが行ったのは最終日でした)。
 JR奈良線の藤森駅(京都駅から各停で3つ目)で降り、数分歩いて大学に到着、午後1時半の開館まで時間があったので、校内の彫刻や植物を少し触ったりしました。校内は静かで樹々が多く、散策にはよさそうな場所のようでした。椿がすでに咲いていて、つぼみ、少し開きかけのもの、開き切ったもの、花弁が落ちて萼や雄蕊だけになっているものなど、花のいろいろな段階のものに触りました。葉の大きさは3〜4cmくらいしかなく、小型の種類のように思いました。花弁は5、6枚くらいのようですが、雄蕊がとても数えられないほど何十本もありました。また、トキワギョリュウというちょっと変わった?木にも触りました。見た目は松などの針葉樹のようにも見えるようですが、裸子植物ではなく、原始的な双子葉植物だと説明板に書いてありました。葉?のようなのに触ってみると、細い紐を束ねたようなのが垂れ下がっていて、触ってもぜんぜん痛いこともなく、針葉とはまったく違うものです。これは本当は細い枝が集まったもので、各細い枝を指ではさむようにして触ると細かいぷちぷちしたようなのが多数あって、これが葉なのかもしれません。緑も濃いようですし、生臭いような強い匂がします。
 この地には、第19旅団司令部および京都連隊区司令部歩兵第38連隊がおかれていたそうで、まなびの森ミュージアムは1897年に建てられた第19旅団司令部の建物を利用して2011年に開館しました。1876年創立の京都府師範学校以来(1949年京都学芸大学、1966年京都教育大学)所蔵することになった教材や教具、芸術作品などを展示しています。ミュージアムの入口には、木代喜司(京都教育大学名誉教授)氏の「鳥と語る」というブロンズ像がありました。女の人が膝をそろえて腰かけているような姿で、高さは130〜140cmくらいでしょうか。両肘を内側に曲げて胸のふくらみの前で両手を合わせて広げるようにしています(2本の親指を胸に着けて上向に立て、その他の指は前に向けて、全体としてとても良い形になっている)。頭部をほんの少し左に向け、頭の上には横向きに鳥が乗っています。髪は頭の右側と背中でとめ、セーターのようなのを着ています。あたたかく人を迎えているようにも思われる姿です。(藤森駅には木代氏の似たような作品が設置されているということで、帰りにその像にも触ってみました。女の子と男の子が背中合せで腰かけ、女の子は胸の前の両手に大きな花を持ち、男の子は胸の前の両手の上に鳥が前向きにとまっていました。)
 展示会場は狭いようでしたが、ケースに入っていない展示品もかなりあり、それらは自由に触り手に取って鳴らしたりしても良いということでした。私ばかりでなく、来場の皆さんも随意にいろいろな楽器を鳴らし演奏して、ときにはつい耳を傾けてしまうほどきれいな音色が聞えてきたりしました。
 初めに触ったのは、ミニスティールドラム。トリニダードトバゴのものだそうです。直径30cm弱くらいの、ドラム缶を輪切りにしたようなもので、底にはゆるく凹凸のある薄いスティール板が付いています。側面や底面をたたくと場所によっていろいろな音程のきれいな音がします。私はまったく演奏できませんでしたが、ちゃんとした音階になっていて曲が演奏できるようです。
 次に触ったのは、小さな木琴たち。ばちでたたいてみると、とても音はきれいですが、1オクターブ半くらいしか板が並んでいなくて、ちょっと演奏するには物足りないような気がしました。オカリナなどのように、高いソプラノから低いバスまで、いくつか音程の異なる木琴が並んでいます。四角い箱に乗っていて、この箱に共鳴して良い音が出ているようです。これは、ドイツの作曲家オルフ(Carl Orff 1895〜1982年)が、子供たちの音楽教育のために考えたもので、オルフ楽器(あるいはオルフ木琴)と呼ばれます。そして、すべての音板がはずせるようになっていて、演奏の際に必要のない音板をはずすことで間違った音を弾く心配がなくなり、安心して演奏を楽しめるようになっています。
 その後、韓国の銅鑼(ばちで連続的にたたくと、ちょっと宗教めいた音がした)、インドのチムター(長さ30cmくらいの金属片の両側に薄い金属製の円盤が4組付いていて、金属片を振ると、タンバリンを振った時のようなかちゃかちゃ音がする)、スリットドラム(木製の箱の面にいくつか切れ目が入っていて、箱をたたくと場所によって少し違った音がする)、鉄製の南部風鈴とガラス製の江戸風鈴、鳴らす火箸(2本の細い鉄の箸がつり下げられていて、揺らすとちりんちりんと良い音がする)、おなじみの太鼓、カホン(後ろの面に穴の開いた木製の箱で、座って側面を軽くリズミカルにたたく)、土鈴など、いろいろ試しました。中でも私がとくに魅かれたのは、ディジュリドゥ(この名前、ぜんぜん覚えられず、何度も聞き返しました)とテルミンです。
 ディジュリドゥは、オーストラリアのアボリジニが儀式などで用いてきた楽器?です。オーストラリアに入植してきた白人がその音を聞いて、聞こえたまま Didgeridoo または Didjeriduとつづり、それが楽器名になったとのことです。アボリジニの間では地域によって呼び名が異なり、イダキ、マゴなどと呼ばれるそうです。木製の細長い筒状のものです。シロアリに食べられて中が空洞になったユーカリが使われているとか。展示されていたものは、長さ120cmくらい、直径は口元のほうが5〜6cmくらい、先のほうが太くて8cmくらいでした。全体にゆるく湾曲しているようで、途中がちょっと膨んだりしています。表面には深い凹線やぶつぶつと浮き出した点のようなもので図や文様のようなのが施されています。(2月5日に吹田市にある国立民族学博物館に行きましたが、オセアニアの展示にディジュリドゥが 3点展示されていました。太さは4cmから6cmくらい、長さもいろいろで、長いものは150cm以上ありました。表面の図や模様もそれぞれ異なっています。)
 展示されているディジュリドゥは持ってみるとずっしりと重いです。その音がどんなものなのだろうかと、大きな穴に口を当て吹いてみるのですが、うまく音が出ません。角度や吹き方を変えておそらく30分近く試してみましたが、うまく行きませんでした。(私はこれまで穴の開いているものだったら何でもそれなりに音が出るだろうと試してみ、そしてほとんどの場合音は出ていました。)音が出ないことが気になって、家に帰ってネットで調べてみると、ディジュリドゥは金管楽器のように唇を振わすようにして音を出すものだとのこと、私は尺八などを吹くような感じでいろいろ試みていましたので、音が出なかったのも無理はありません。機会があればもう1度挑戦してみたいと思っています。ちなみに、ディジュリドゥの音を、ディジュリドゥ演奏 - YouTubeで聞いてみました。アイヌのムックリという、口に当てて鳴らす楽器とちょっと音が似ているような気がします(以前、ムックリを少し練習したことがあります)。唇の使い方や息の仕方がもしかするとムックリと似ているかもしれません。
 テルミンは、ロシアの物理学者レフ・セルゲイビチ・テルミンが1920年に考案した世界最初の電子楽器だそうです。楽器に直接触れることなく、空中で手を動かして演奏する変わった楽器です。高周波発振器を2つ内蔵していて、向って右側に垂直方向に伸びたアンテナは音程を、左側に水平に伸びたアンテナは音量を決め、右手を近づけたり遠ざけたりすると音程が変わり、左手を近づけると音量が小さくなり遠ざけると音量が大きくなります。実際に試みてみると、サイレンのような音がします。音高が連続的に変化し、ドレミのような音階にはなりません。右手をすばやく上下に動かすと、ワンワンと犬がほえているような音になりました。擬音や効果音のようなのを出すのには適していそうですが、これで曲を演奏するというのはかなり難しそうです。テルミンによる演奏は、例えば竹内正実 (テルミン奏者) - YouTubeで聞くことができます。
 音を出すおもちゃのようなものもありました。20cmほどのストローの先の両側を斜めに切って、その部分を口にくわえて少しかむようにしながら息を強く吹くと、ピーピーというような音が出ます。むかしなつかしい草笛のような音にちょっと似ています(私は草笛はうまく吹けませんでした)。インドネシアの面白い鳥のおもちゃもありました。直径20cmくらいの木製の円盤の外周に内側を向いて小鳥が10羽くらい並んでいます。円盤の中心に穴があって紐が下がっていて、その紐を引くと小鳥の頭が上下し円盤に当たってかたかたと音がします。なんとも愛らしい感じです。また、空気鉄砲のようなもので、スポッ、スポッと音を出せるものもありました。
 気がつくと、2時間近く音で遊んでいたようです。実際に触り、どんな風にすれば音が出るのか、そしてどうすればより良い音が出るのか、いろいろ考えやってみることはとても楽しいです。ミュージアムの展示で私がいちばん面白いと感じるのは、ただ見たり触ったりするだけでなく、自分で考え実際に試みてみることができるような展示です。今回の企画展、とても楽しかったです。
 
(2017年2月9日)