にしわき経緯度地球科学館「テラ・ドーム」 ー 日本のへそを体感 ー

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 12月24日、西脇市にある、にしわき経緯度地球科学館「テラ・ドーム」に行きました。西脇市には「日本のへそ」と言われる東経135度、北緯35度の経緯線が交差する地点があり、この地点に隣接して設けられているのが地球と宇宙をテーマとするこの科学館で、前々から一度行ってみようと思っていました。
 8時半ころ家を出、往路は、摂津富田駅から、川西池田、篠山口、谷川を経由して、12時半ころ日本へそ公園駅に到着、復路は3時半ころ日本へそ公園駅から、西脇、加古川、大阪を経由して、jr総持寺駅へ、6時過ぎには帰宅しました。各駅での駅員による案内をお願いしましたが、日本へそ公園駅は無人駅で駅員の手配はできないということ、でも幸いに日本へそ公園から西脇の点訳ボランティアのNさんが一緒に地球科学館に行って見学したので、予定通り往復できました。
 地球科学館では、専門スタッフのTさんに案内してもらいました。
 まず最初に触ったのが、世界のへそ石。高さ120cm余、直径1m近くはある大きな白い大理石の塊。下がややふくらみ、上のほうが少しすぼんだ形で、ちょうど卵を立ててそのとがった先を少し水平に切り取ったような形です。側面全体に、帯をひねるようにしながら回したような太い筋がいろいろな方向に何十本も交差しながら伸び、その間に顔ともへそとも思えるようなまるっぽいものがあって、なんだかよくは分かりません。この石は、ギリシャのデルフィ考古博物館に展示されている「オンファロス(大地のへそ)」のレプリカだそうです。そしてデルフィ考古博物館のオンファロスは、デルフィの古代遺跡のアポロン神殿にあったものの復元品だとのこと。(デルフィは、ギリシャ中部のパルナソス山の南麓にあったポリスで、デルフォイの神託で有名ですね。)当時は世界(地球)はお盆のようなものと考えられていて、神話によれば、ゼウス神がオリンポス山から反対方向に2羽の鷲(あるいは鳩とも)を放って世界の中心を探させると、2羽ともデルフィに舞い降りたとのこと、そこが世界の中心として宗教的にも強い力を持つ所と考えられて、オンファロスという石が置かれたとのことのようです。日本のへそに加えて、世界のへそまで展示するというのは、なかなかいいですね。
 次に触ったのが、直径180cmもある大きな地球儀。地球の直径は約12700kmですので、縮尺は約700万分の1ということになりますね。ただし高さは10倍に拡大しているそうで、とくに海底の地形がとてもよく分かります。手でゆっくり回しながら触りますが、上のほうまではとても届かず、北緯50度くらいまでようやく触れました。太平洋の両側には、大陸の縁に沿うように海溝が連なっていました(とくに南米から北米にかけては海岸のすぐ近くに沿って海溝が途切れることなく長く続いていた)。日本海溝は伊豆から小笠原のほうに向っている海山列によって途切れて、四国沖くらいから南海トラフになって沖縄から台湾沖のほうまで続いていました。また、ハワイから西に向って多数の海山や島が30cmくらいは並び、さらに北北西に曲がってずうっと伸びていました(ハワイ付近で生まれた新しい島が、プレートの動きに乗って移動して行っているだろうことがよく分かります)。とくに、海山の列(海嶺)が、縦や横に、陸の山脈などよりはずうっと長く、地球を取り巻くように連なっているのが印象的でした(ここで新しい地殻が生まれている)。
 
 午後1時から、2階の天文台が公開されて昼でも星が見られるとのことで、それに参加しました(毎日午前11時、午後1時と3時の3回公開され、また毎週土曜日夜には観望会があるそうです)。
天文台には、口径81cmの大型反射望遠鏡があり、さらにその直径1mくらいはある大きな筐体に、口径15cmの屈折望遠鏡、25cmの反射望遠鏡、10cm弱の太陽観測用のものがくっついていました。遠くの星ばかりでなく、近くの惑星や月、太陽も見られるようになっています。ガアアーーというような音とともに、天井が開いて、望遠鏡とともにその開口部も移動して照準を合わせているようです。まず、おりひめ星(織女星。こと座の主星(α星)で、地球からの距離25光年、実視等級 0等星)に向けられます(北の方向で、望遠鏡はほぼ真上を向いていました)。親子連れが数組いて、子どもたちが順に望遠鏡をのぞいてみますが、しばしば雲が走って点状の星(1円玉くらいの大きさはあるとか)は見えたり見えなかったりのようです。次に、望遠鏡が真西に向けられて、金星の観測です。これもしばしば雲に隠されますが、星よりはだいぶ大きく見えているようで子どもたちの「見えた」という喜びの声があがります。この金星ですが、形は円ではなく半月に近いようです。
 ここで、ガリレオが手製の望遠鏡で見た金星の満ち欠けの様子を手描きしたイラストの触図が登場!台紙の上に、三日月形、半円が少し窪んだ形、半月形、円の一部が欠けた形、真円、反対向きの半月形、三日月型と、それぞれの形の紙が張られています。月の満ち欠けの様子は何度も教科書で触りましたが、金星の満ち欠けの様子は初めてでした。金星は内惑星で、地球からは太陽の光が当たっている部分だけが見えるので、会合周期584日で、満ち欠けし、また見える大きさも変わります(真円の時が一番小さく見える)。ちなみに、教科書では外惑星は満ち欠けしないとなっていたと思いますが、よく考えてみると、火星のように地球の外側でも地球との距離が近いと、真円の一部が少し欠けるくらいの満ち欠けはするはずです。
 次に、太陽の観測です。太陽の縁にプロミネンスが見えているようです。ここでも、太陽の黒点の様子を描いたガリレオのイラストの触図がありました。直径10cm余の円い紙の上に、直径1cm前後の中心に穴の空いた円が張られています。実際に見える黒点は、この大きさよりもだいぶ小さいということです(ただ、黒点の大きさは時によってかなり変化するので、ガリレオの見た黒点はもしかするとかなり大きかったのかも知れない)。ガリレオの手描きのイラストとしては、月のクレーター、土星の環?を示したものもありました。月のクレーターは、各クレーターがかなり大きく、縁はぎざぎざしていました。土星の環?のイラストは、中心よりやや奥に本体らしき楕円があり、その前に半円、さらにその手前に2本の太い帯のようなのがあって、それは奥に向かうにつれて細くなり後ろでは本体とつながっています。これで環と言えるのだろうかと思っていたら、ガリレオはこれを見て「土星には耳がある」と言ったとか。確かに形は耳輪によく似ています。土星に環があることが確認されたのは、それから半世紀ほど経ってホイヘンスやカッシーニによる観測によってです。(1610年ガリレオが土星を観測、1655年ホイヘンスが土星に輪があることを確認、1675年カッシーニが土星の輪に暗い隙間があることを発見)。
 その後、各惑星での重さの体感です。同じ大きさ・形で重さの違うペットボトルが何本もあります。地球のペットボトルの重さを 1とし、各惑星のペットボトルを持ちその重さの違いを体感します(地球のペットボトルは100グラム余だったでしょうか)。重さの違いはけっこう体感できて、1割くらいの違いまでは十分分かったようです。最初に持ったのが水星のペットボトル、もちろん地球よりは軽いですが意外に重いと感じました(水星の大きさは地球の半分もなくて火星よりも小さいのに重さ=表面重力がけっこう大きいということは、それだけ密度が大きく、きっと内部の金属核も大きいかも知れない)。その他、やはり木星のペットボトルは重かった(2倍はあった)し、冥王星のペットボトルはたぶん空のペットボトルなのでしょう、とても軽かったです。金星のペットボトルは地球とほとんど同じ(ほんの少し軽い)で、なんか兄弟星のような気がしました。
[参考] 地球を 1とした時の、各惑星の赤道半径、赤道重力(重さに相当)、平均密度の値を以下に示す。(地球の赤道半径 6378km、赤道重力 9.78m/s^2、平均密度 5.52g/cm^3。とくに、水星と火星の値を比べてほしい。)
     水星  金星  地球  火星  木星  土星  天王星 海王星 冥王星
赤道半径 0.38  0.95  1    0.53  11.21  9.45  4.01  3.88  0.18
赤道重力 0.38  0.91  1    0.38  2.37  0.94  0.89  1.11  0.07
平均密度 0.98  0.95  1    0.71  0.24  0.13  0.23  0.30  0.40
 
 また、日本の探査機はやぶさで有名になった小惑星イトカワの模型にも触りました。長さ20cm余で、両端が膨らみ(直径10cmくらい)中央付近がくびれてそこでぐにゃあーっと曲がった形です。両端のほうはざらざらしていて、中央部はするうっとしています。ざらざら部分は大きな岩が集まっており、するうっとした部分は小石程度のものが集まっているそうです。全体の形から、大きな2つの塊がくっついてできたらしいことも想像できます。
 
 その後1階に戻って、いくつか体感的な展示にふれました。まず、大気圧を体感する展示。直径10cm弱の半球があり、なにもしないとすっと持ち上がりますが、スイッチを入れて中の空気を抜くとまったく持ち上がりません(=マクデブルクの半球)。また、ドラム缶から空気を抜いてつぶれた形になっているものも展示されていました。直径40cmほど、高さ50cm余で、上面が少し波打ち、測面の円が3方向で中心に向ってぎゅっと引き寄せられ、120度置きに2枚の板が合さるように外側から中心に向かうような形になっていました。とても理屈にあった形で、気に入りました。その他、雨粒の様子が見られる装置(雨粒は上下につぶれて下面が平たくなった形。また、空中で止まっている時は、表面張力で真ん丸くなっている)、竜巻発生装置(下から白い煙?が出て、回りの4本の細い柱から中心に風が水平に噴き出していて、白い煙が円錐形の渦になる)、雷発生装置(スイッチを入れると、かりかりという音とともにオゾンの匂がした。中学校の理科の放電の実験が思い出された)などもありました。
 私が予め伝えていた希望に応じて、ガラスケースを開けてもらって、いくつか岩石資料(「地球の材料」)にも触りました。火山岩の所では、火山弾、黒曜石(さらさらした感じだった)、松脂(しょうし)岩(竹野町のものらしい。ちょっとすべえっとした感じ。黒曜石と同じくガラス質だが、ゆっくり冷えたのだろうか、調べてみると黒曜石に比べてだいぶ水分が多いとのこと)、キンバレー岩(硬い感じはするが、とくに変った印象はなかった。ダイヤモンドの母岩で、マグマが地下数百kmの深部から時速2000kmもの高速で一気に地上近くまで上昇してできたと考えられ、上部マントルや下部地殻の岩石を捕獲岩として含んでいることが多い)、浮岩(触った感じは軽石のようだ。浮岩というので水に浮くかと思って試してみたら沈んだそうです)、変成岩の所では、千枚岩、緑泥片岩、滑石片岩、堆積岩の所では、砂岩、泥岩、石灰岩、凝灰岩(火山岩に入れられることもある)などに触りました。
 ちょっと変った石・鉱物としては、西脇の方が寄贈したという円礫岩(2〜3cmくらいはある少し丸っぽい石がたくさんくっついたような塊。水流で石が磨かれ集まったものなのでしょう)、多可町の牡蠣殻状方解石(表面が小さな貝殻が集まったような凹凸の曲面になっている。鉛や亜鉛など金属も含まれていて、所々きらきら光っているとか)、西脇の鉱山跡地で採集した磁硫鉄鉱(角張った感じで、とにかく重い。比重は4.6くらいなので、ふつうの石の倍くらいもある。磁石にもくっつく。においを嗅いでみると、金属臭がする)、金が含まれている石英(と言っても金はまったく見えないそうです)、ペグマタイト(たくさんの小さな水晶のとがった先と、いくつか長石の四角い大きな面が触って分かった)などにも触りました。
 
 その後科学館を出て、日本のへそを見学。公園になっていて、こんな不便な所にもかかわらず、多くの子どもたちの声がします。長ーいローラー滑り台や、トランポリンのように飛べるふわふわドームなど遊具もあります。ふわふわドームは、直径5m弱、高さ1m余くらいの空気で膨んでいるドームで、その上で、つい私も子どもたちに混じって久しぶりにぴょんぴょん飛んでしまいました。
 「日本のへそ」は「平成のへそ」と「大正のへそ」の2箇所ありました。それも、その2箇所は440mも離れているそう、ちょっと驚きです。まず、平成のへそに向かいました。テラドーム近くのちょっとした山の上にあるようです。がたがたの石段をかなり上り、さらに道のない斜面を上ると、高さ30cm余、40cm4方くらいの台があります(その回りには4本の高い柱が立っているとか)。この台が東経135度と北緯35度の交差点で、まず台に座り、さらに風に向かうようにして西向きに立ってみました。右手(北)は日本海に面した京都府の旧網野町(現京丹後市)、左手(南)は明石市、前(西)は佐用町、後ろ(東)は京都市、山頂で風を感じながら日本のへそを体感しました。
 平成のへそを下りて、次に西北西?に440m離れた大正のへそに向かいます。JRの日本へそ公園駅のほうに行って、細いトンネルを通って加古川線の線路の反対側に出、加古川の流れの音がしてきて、その近くに大正のへそがありました。東経135度線に沿って高さ20cmくらいの土止めのような段があり、その上に標柱があり、「東経百三十五度北緯三十五度交叉點海抜六十三米標識」と記されているそうです。
 この大正のへそは、大正12年(1923年)に陸軍参謀本部陸地測量部が三等三角測量で求めたもので、昭和53年(1978年)に測り直したところほとんど誤差はなかったそうです。いっぽう平成のへそは、平成2年(1990年)に国土地理院が人工衛星でのGPS測量で求めたものだとのことです。大星のへそと平成のへそがなぜこんなにも違うのか尋ねてみると、どちらかが正しいということではなく、測量に使う基準面が異なっているからで、まあどちらも正しいでしょうということでした。基準面とはたぶんジオイドのことで、詳しいことは分かりませんがジオイドにはいくつもモデルがあり、そのモデルが時代により異なっていたのでしょう。(ジオイドは、平均海水面を陸上まで伸ばしたもので、各地点での重力の違い=地球の内部構造の違いを反映して細かく凹凸がある。)
 
 今回の見学では、日本のへそを体感できたとともに、とくに宇宙の分野で面白い展示・工夫にふれることができました。また、平成のへそに行くのに急な斜面を上ったり、ふわふわドームで飛び跳ねたり、久しぶりに身体も動かしました。滞在時間は短かったですが、とても楽しい見学でした。
 
(2018年12月31日)