5月27日、伊丹市昆虫館に行きました。
伊丹市昆虫館は、関西では橿原市昆虫館、箕面公園昆虫館とともに有名な昆虫館で、 1度行ってみたいと思っていました(橿原市昆虫館には15年以上前に行ってみたことがあります)。電話をしてみると、館内には触れられるものなどとくに視覚障害者に配慮した展示はないが、来館の希望があれば個別に学芸員が触れられるものなどを用意して対応しているとのこと、早速日時を打ち合わせ、Kさんを誘って一緒に行くことにしました。
JR伊丹駅で待ち合わせ、10分余バスに乗って玉田団地で下車、すぐちょっとした森のようになっていて、そこを通って、1時半過ぎに昆虫館に到着。受付を済ませて待っていると学芸員の方が来られて、裏の飼育などもしている部屋に案内されました。そこで、実際に蝶など生きている虫に触ったりしながら説明してもらい、また 2時から、毎日行われている放蝶体験にも参加しました。そして、2時半くらいから館内をKさんと一緒にざっと見学しました。
まず最初に触ったのが、カイコの幼虫。プラスチックの箱の中にクワの葉が入っていて、そこに80匹くらい幼虫がいるとか、触ってみると、最初はあまり見つけられませんでしたが、あちこちに3cmほどの幼虫が。触りながら、小さいころ十和田市の家で数年カイコを飼っていた時のことを思い出しました。(1960年前後のことです。5、6月ころから夏にかけてでしょうか、クワ畑に行ってクワの葉を取ってきて、細く刻みます。1m余あったでしょうか長方形の平たい木枠のような箱に蚕の幼虫が入っていて、そこにクワの葉を入れます。 (たしか、箱の底には網のようなのが底面からちょっとすきまを空けて敷いてあって、その網目から蚕の丸いうんこが落ちて底にたまるようになっていたと思う。) 箱は何段も積み重ねられていて、あちこちから、かさかさというような、幼虫がクワを食べるここちよい音が聞えてきます。)
蚕の幼虫がクワを食べる音が聴こえるかもと思って、プラスチックの箱に耳を近づけてみましたが、数が少ないのか、聞えません。しばらく触っていると、幼虫が体の前のほうをくにゃくにゃ曲げたりしながら指を上ってきたり。この幼虫は 5齢(終齢)になったばかりで、クワの葉をどんどん食べて、1週間くらいで4cmないしそれ以上に大きくなって蛹になるとのこと。糸が回りにたくさんふわふわと着いている繭に触り、さらに、繭を煮たもの(中の蛹は死んでいて、繭を振るとかたかたと音がする)、繭に小さな穴が空いていて中の蛹を取り出したものにも触りました。
こうして触っていると、1960年前後の十和田での養蚕の様子を、切れ切れですがあれこれと思い出します。蛹になる直前の幼虫が、4〜5cm四方くらいの格子状の枠の中に入って糸を吐いて繭をつくっていました。また、繭の一部をそのままにしておくと、成虫が出てきて(それはほとんど飛ばなかったように思う)卵をたくさん産みますが、その小さなたくさんの卵がとてもきれいに、手触りよく並んでいました。
次はアゲハチョウ。これも、幼虫、蛹、成虫に触りました。幼虫は、昆虫館のすぐ近くにあるハッサクの木の葉を食べているものだそうです。3cmくらいあるでしょうか、お尻のほうが細く、頭のほうにはちょっととがったようなのがあります。そして、細くなったお尻を下にして割りばしのようなのに沿って蛹になっています(触ってはよく分かりませんでしたが、この蛹は糸座をつくって体を糸で割箸に固定しているそうです)。さらに、羽化した蝶を指に乗せてもらいました。指を上に上っていく細い足の感触はしますが、翅など触れるとよくないだろうと、それ以上は触れませんでした。
次はオオゴマダラ。日本でいちばん大きな蝶で(翅を広げたときは13cmくらいあるそうです)、野生では沖縄以南にしか見られないとのこと。オオゴマダラは、ホウライカガミというキョウチクトウ科の多年生つる草の葉を食べ、昆虫館ではこのホウライカガミを植栽してオオゴマダラを飼育しているそうです。まず、幼虫に触りました。アゲハの幼虫よりちょっと大きく太いようです。体を大きくくねらせながら動いています。ちなみに、色は黒と白に赤い斑点があり、けっこうきれいだとか。頭に4つくらい突起がありました。次に蛹にも触りましたが、なんとこれが、プラスチックのふたのようなのにお尻をくっつけて頭を下にしてぶら下がった状態で、今にも落ちそうな感じ(このような状態の蛹を垂蛹と言うそうです。これにたいして上のアゲハの蛹のようなのは帯蛹と呼ばれる)。そして成虫をまた指に乗せてもらいましたが、動きが活発なようで、ふわふわとしたような足の感触を感じます。
学校の授業などで使うという、オオゴマダラの幼虫のぬいぐるみの拡大模型にも触りました。これがなかなかよかったです。長さ30cm近く、太さ5〜6cmくらいで、大きく後ろと前の部分に別れていて、後ろの部分に足が10本、前の部分に足が6本あります。後ろの10本の足は吸盤のように吸いつく足、前の6本はとげとげの足で、葉や枝に後ろの足でしっかりとくっつき、前の足でさぐるようにしながら、体の前半分をくにゃくにゃと曲げながら動いているようです。そして成虫になった時には前の6本の足だけが残ります。なお、つののようなのが、頭の部分に4本、お尻付近に2本ありました。
ツマグロヒョウモンの幼虫と蛹にも触りました。ツマグロヒョウモンは、パンジーなどスミレ科の植物に来るということで、最近増えているらしいです。これまで触った幼虫の表面はつるうっとした感じでしたが、この幼虫は表面にたくさんとげとげのようなのがあって毛虫のよう(でも刺すことはないので触ってもだいじょうぶだとのこと)。そして、蛹も少しぼこぼこした感じでした。
放蝶体験では、私たちをふくめ10人くらい集まり、家族ごとにケースに入った羽化して間もないいろいろな蝶が渡されます。最初に放蝶のさいの注意事項。そうっと指をケースの中に入れて蝶が指に来るのを待ち、指を蝶が上って来て飛び立つか、飛び立たない場合は葉や枝にとまらせてくださいとのこと。私とKさんは、アゲハとオオゴマダラを体験しました。アゲハは指の上まで来るのですが、なかなか飛んでくれません。学芸員の方が枝にとまらせてくれて、飛び立ちました。オオゴマダラは、長い足で指を上って来て、一瞬指の先にとまった後、ちょっと踏み切るようにして飛び立って行きました。
このとき、アゲハとオオゴマダラの蛹の抜け殻にも触りました。アゲハのほうは、背中側がくしゃくしゃと破れていて、とても湿っています(触った指もぬれました)。これにたいし、オオゴマダラの抜け殻はかさかさと乾燥し、頭(下)のほうが破れているようです。なぜだかはよく分かりませんが、その違いが印象的です(アゲハは、お尻のほうを下にしていて、その部分に体液が溜まっているのでしょうか?)。
その後また最初の部屋に戻って、オオクワガタとナナフシを触りました。オオクワガタは、日本で最大のクワガタだとのこと、長さ10cmくらいだったと思います。大あごにはさまれないように注意してくださいとのことで、背中にそっと触ってみます。幅3cmくらいもあって平たい広い背です。背中の下半分近くは羽のようです。前のほうへと触っていくと、大あごが両側に張り出し、途中から2本に別れて1本は直角に内側にぎゅっと曲がり、もう1本は内側に向って斜め下に伸びています。この曲がった中央付近に指をやるとはさまれるのだと思いながら気を付けて触りました。
ナナフシは、幼虫と成虫に触りました。幼虫は長さ10cm弱だったでしょうか、形は成虫とほとんど変わらず、幼虫とは思えないほどでした(若虫とも呼ばれるそうです。上の蝶などとは異なり、幼虫は蛹の時期を経ないで成虫になり、不完全変体と呼ばれる)。ナナフシの成虫は、長さ15cmくらいもあり、まるで細い棒のようで、そこから細い枝のような長い足が出ています(私が触ったのは雌で、雄はこれよりだいぶ小さいとのこと)。頭はとても小さく1cmもなく、お尻(腹部)が体の半分くらいもあり、胸部も長いです。胸から出ている足は、膝?までに当たる部分が5cm近く、さらにその先に3cmくらい伸びて先端になにかとげとげのようなのがあります。前足で次に行く場所をさぐるようにしながら、とにかく上へ上へと進み、腕から肩、さらには頭にまで来そうでした。(なにか、見えない人が杖で先を確認しながら道を切り開くようにして前に進んでいる姿を連想するほどでした。前に進むのにあまり視覚は使わず、主に触角を使っているように思います)。体の色は茶色っぽいようですが、ナナフシは擬態の名手で、自然では枯れ枝などとほとんど見分けがつかないそうです。なお、ナナフシは「七節」あるいは「竹節虫」と書き、七節はたくさん節があることから、竹節虫は竹の枝に似ていることからだそうです。
学芸員による解説の後、館内をざっと回ってみました。まず初めに、昆虫の棲息する環境と昆虫を10倍に拡大したというジオラマがありました。そっと触れてみます。木の枝や葉までが拡大されていて、なかなかすごい。でも、昆虫は、高い所にいたり手が届かなかったりしてなかなか触れない(上には鳥の拡大も見えているようです)。全体が触れられたのはテントウムシ(直径が6、7cmくらいの半球状で、そこから足が広がっていた。確かに実物の10倍くらいだった)くらいで、そのほかは、セミやカブトムシの一部に触られたくらいです。昆虫は小さいので触ってよく観察するのには拡大模型が適していますが、このようにジオラマに組み込んでしまうと触りにくくなってしまいます。ジオラマとは別に同じ模型を容易して触れるようにしてほしいと思いました。
「ビッグ・ビー」という巨大なミツバチの模型もありました。触れたのは、2本の足の先端くらい(先から少し行った所には毛もあった)で、しかもその足は2m近くも離れていました。これだけ巨大だと模型というよりアート作品のような気がします。ミツバチの複眼の間にはレンズが埋め込まれていて、ミツバチから見た森のすがたが画面に映し出されているとか。
その他にも、蝶の標本をはじめいろいろな昆虫の標本類、各種の昆虫の生態展示も行われています(生態展示ではコノハムシなど擬態が面白そう)。ます。
今回の見学でいちばんよかったのは、オオゴマダラの幼虫の模型。蝶の幼虫に16本も足があるなんて知りませんでした。
帰りは、ゆっくり昆陽池を通って、松ヶ丘のバス停からバスに乗り帰りました。
(2019年6月3日)