久しぶりの六甲山の上美術館

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 8月4日、9月下旬から近江八幡市にあるボーダレスアートミュージアムで行われる展覧会の作品準備のために、六甲山の上美術館に行き、そこで展示してもらっている木彫6作品をとりあえず引き取ってきました。六甲も、下に比べれば涼しいとはいえ、かなり暑かったです。
 今回の訪問でも、いくつか新しい展示を触ることができました。
 まず、ミロのヴィーナスの実物大の複製品。これは、1964年、東京オリンピックに合わせて、日本がフランスのルーブル美術館に展示されている本物のミロのヴィーナスを借り出して東京や京都で巡回展をした時に、京都でかたどりをして作られたものだそうです。材料はFRPのような手触りでした。高さ209cmで、そのままでは届かないので、3段のキャスターが用意されています(キャスターに足をかけるとロックされるようになっていて、安心して触れます)。上段に上がると、ミロのヴィーナスの顔と対面です。顎から額の上までの長さは約20cm、全体の大きさからすると、顔はかなり小さいと思いました。彫りが深く、すうっと高く通った鼻筋、目はかなり窪み、大きく見開いています。額は狭くすぐ髪の毛があります。美人なのかどうかは私には分かりませんが、日本人にはあまりないような顔に思えました。全体の姿は、腰から下にはふわあっと布が広がっていて右足先がちょっと出ているだけで左足は隠れています(腰布のいくつものひだのようなのは、触ってきれいに感じます)。腰から上は裸体で、お腹の筋肉がもりもりとして緊張した感じです。腰をやや左にして体をやや右に傾けているような感じ。胸の2つのふくらみは大きく、右腕は上腕から、左腕は肩から欠けています。顔はやや左を向いています。全体に、上(顔)が小さく、下に行くほど、胸、腹、下半身と広がっていて、どっしりとした感じです。背のほうに回って触ると、背には(海底で?)削られたような跡があり、またわきの下から肩辺りに大きなきずのようなのもあります。
 ミロのヴィーナスは、これまで小さな模型のようなものを何度か触ったことはありますが、実物の複製品を触って、それがとてもリアルな人の姿であることに驚きました。これまで触ったことのあるロダンなどもふくめヨーロッパの彫刻の人の姿とあまり変わらないような印象を持ちました。
 
 次に、石彫家の浅賀正治さんの小さめの作品を数点触りました。
 まず触ったのが、寒水石の作品2点。寒水石に触ったのは初めて。寒水石は茨城県日立市付近に産する古生代の結晶質石灰岩(大理石)で、純白に近い色だとか。触った感じはスルスルしていて、表面はなにか粉っぽい感じ。1点は高さ10cm弱、5cm四方くらいの大きさで、鳩など鳥の姿のようです。前の上端にくちばしのようなのがあり、その下はぷくうと膨らんでいます。側面から後ろのほうには両側に羽のようなのが伸び、後面下部で合わさっています。もう1点は、縦・横・高さとも5cmほどの大きさで、その1面に5弁の花とつぼみのようなのが高く浮き出しています。
 蛇紋石の作品が2点ありました。1点は高さ15cmくらい、幅10cmほどの面に、向って右下の根本のような所から、斜め上に向って3つの盛り上がりが渦を巻くように伸び、瑞雲?のようなのを表わしているようです。もう1点は、6cmほどの立方体のようなものの1面にうさぎのような顔?が浮き出し、(記憶がさだかではありませんが)反対側の面に先ほどの瑞雲?の渦のようなのが浮き出しています。さらにもう1点、御影石で、小さな獅子舞の面のようなのが浮き出したものがありました。石の種類によって触った感じも違うので、面白かったです。
 
 また、以前にも触ったアフリカの黒檀の彫刻を数点触りました。
 牛:高さ20cm弱、長さ30cmくらい。角が2本上に向き、首から背にかけての部分が上にぼこんと盛り上がっており、また顎の下から胸辺りにかけて、するうっとした感じで袋のようなのが垂れ下がっている(牛とは思えなかった)。
 象:長さ20cm余。鼻を前に伸ばして上げ、口を開けてほえている?ような姿。耳は縦長の三角で、ちょっと象らしいと思ったが、触ってすぐには象とは分からなかった。
イエス・キリスト:幅30cm弱、高さ30cm強で、後面は丸太のままで木の皮が付いている。大きなきれいな顔(顎は細く短い顎髭のようなのが付いている)、するうっと伸びた腕など触ってきれいだった。左半足に沿って高さ20cmくらい、幅10cm弱の十字架があり、その横木がイエスの首の後ろ辺に入っている。黒檀なので全体に黒くて、髪もざらざらした感じで短く、黒人のイエス・キリストといった感じかも。もう1点イエス・キリストの像があって、こちらは大きな顔の前に出た顎の下がとても広くて、そこに顎髭が全面にはえている。
2人(男女あるいは戦士)の像:向って右が高さ50cmくらい、向って左が高さ45cmくらいの立像で、ともにすらあっとした体形。髪を首の下・背中の上くらいまでのばして結んでいる(ちょっと独特の髪型)。向って左の人は、右手には縦向きの穴、左手には横向きの穴が開いていて、右手に槍のようなもの、左手に剣のようなものを持っていたと思う。向って右の人の手にも穴があった。右の背の高いほうが男と思うが、ふしぎなことにこちらのほうが胸のふくらみがしっかりしていてよくは分からない。2人とも男女関係なく戦士なのかも。
 その他、見えない人たちが点字で数独を楽しめるようにと考案された盤にも触りました。9×9の径が3cm弱くらいの円い穴が開いた40cm四方くらいの盤と、1から9までの数字が点字で書かれた径が2cm余の円盤81枚です。
 
(2019年8月5日)