元日の明石市立天文科学館

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  1月1日元日に、明石市立天文科学館に行きました。
 昨年12月初旬に坐骨神経痛になり、仕事も休んだりしながら養生していましたが、ようやくそんなに不自由なく歩けるようになったので、試しにちょっと遠出をしてみることにしました。手ごろな所はないかと探していたら、元日から明石の天文科学館が開いていることがわかり、詳しいことは分からないまま行ってみました。思いがけなくも隕石などにも触れられて、よかったです。
 JRの明石駅から15分余歩いて、11時前に天文科学館に到着、11時開館でかなりの人たちが並んでいました。開館とともに入館し、まず11時半からのプラネタリウムをみました。タイトルは「初夢プラネタリウム」。元日の明石でどのような星空が見られるのかという、シンプルな内容でした。音声はスタッフによる解説だけ、赤ちゃんや家族連れなどいろいろな観客のことも配慮した丁寧な解説で、好感がもてました。
 日が暮れてゆくと、西の空にはまだなんとか夏の大三角(こと座のベガ、わし座のアルタイル、はくちょう座のデネブ)が見えているとか、この時期にも見られるとはびっくりでした。南東の空のオリオン座の三つ星を手がかりに、右肩のベテルギウス、左足のリゲル、三つ星を延長した先にあるおうし座の右目に当たるアルデバラン、肩に当たるすばるなどの説明が続きます。そして、冬の大三角(オリオン座のベテルギウス、おおいぬ座のシリウス、こいぬ座のプロキオン)や、冬のダイヤモンド(おおいぬ座のシリウス、オリオン座のリゲル、おうし座のアルデバラン、ぎょしゃ座のカペラ、ふたご座のポルックス、こいぬ座のプロキオン。冬の大六角形とも)についての説明があり、私は以前に触った点図や、2016年末に兵庫県立大学西播磨天文台で行われたインクルーシブデザイン・ワークショップでの観望会のことなどを思い出しながら聴きました。
 このプラネタリウムの投影機は、東ドイツ(当時)のカールツァイス・イエナ社製のもので、1960年6月に明石市立天文科学館の快感と同時に稼働し続けている、日本で現役のものとしては最古・長寿の大型投影機で、ちょうど今年は60歳、還暦だということです。1995年の阪神淡路大震災ではこの天文科学館も甚大な被害を受け、3年余も休館したそうですが、この投影機は無傷だったとか、すごい頑丈なつくりだったのでしょう!
 
 次に、3階の展示室に行ってみました。触れられる展示としては、惑星の表面の様子と、隕石の展示がありました。
 惑星の表面の様子は、直径15cmくらいの5つの円筒形の側面の片側に、地球、火星、金星、水星、それに月の5つの天体の表面の特徴的な様子が立体的に示されています。驚いたのは、火星の表面。直径10cmほどもある大きななだらかな高い山があり、山頂には直径2cm弱くらいの窪みまであって、まるで火山のよう。調べてみると、これは太陽系最大の火山オリンポス山です。地表からの高さ27km、裾野の直径550kmの大きな楯状火山(粘性の少ない玄武岩質の溶岩が何度も繰り返し流れ出し積み重なってできた緩傾斜の火山。地球ではハワイのマウナロアなど)で、裾野の外縁部は高さ5kmもの急な崖になっているとか。そして山頂には、直径80km近く、深さ3.2kmもある大きなカルデラもあり、ちょっと地球では考えられない規模です。ちなみに、火星の半径は約3400kmなので、オリンポス山の火星半径に対する割合は100分の1弱なのにたいし、地球のエベレスト山の地球の半径に対する割合は1万分の1余で、オリンポス山がどんなに高いかが想像されます。こんなにも高くなったのは、火星ではプレートテクトニクスがないため、いつも同じ場所から溶岩が流れ出しやすくなっているからのようです。
 地球の表面は、山脈のようにうねうねとした隆起や、溝があります。日本列島付近を示しているようです(富士山もあったかもしれませんが、触っては気がつきませんでした)。金星は、わずかな起伏はありますが、全体にのっぺりとした手触り。金星にも地球と同じように地質活動はあったはずですが、90気圧・470℃という高圧高温の大気による風化が関与しているのかもと想像してみたり(あまり信憑性はないと思うが)。水星は、直径1cm前後の小さな窪みが多数あります。これはたぶんクレーターで、大気がまったくと言っていいほどなく、地質活動もおそらくごく初期に終わってしまったため、多くのクレーターがそのまま残っていると思われます。月は、いくつかの起伏とともにたくさんのクレーターのような窪みもありました。
 隣りのコーナーには、隕石が5個展示されていて、すべて触ることができます。各隕石にはすぐ近くに磁石も用意されていて、ぐっつくかどうか試すこともできるようになっています。コンドライト、エコンドライト、石鉄隕石、鉄隕石と、隕石の基本的な種類4種がすべてそろっていて、1度に4種すべてを触り比べてみるのは初めて、予想もしていなかった幸運に感激です!
コンドライトは、1960年5月に西アフリカ・ブルキナ・ファソに落下した石質隕石で、重さは3.8kgだそうです。2つに切断されていて、断面はツルツル、その他の面は、溶融被膜になっているのでしょうか、滑らかな曲面でスルスルとした手触り。偏光顕微鏡が用意されていて、のぞいてみるとキラキラした物がちりばめられているように見えるとか。たぶん1mmもないようなコンドリュールなのでしょう。ツルツルの断面をよく触ってみると、ごく細かいつぶつぶの模様のようなものがあって、コンドリュールに対応しているのかもと思ったり。磁石を当ててみると、しっかりくっつきます。鉄ニッケル合金がかなり含まれているのでしょう(コンドライトには、2割から3割くらいも鉄が含まれていることが多い)。
 エイコンドライトは、1960年10月にオーストラリア・グレートサンディー砂漠東側に落下した石質隕石で、重さは0.22kgだそうです。上のコンドライトよりもだいぶ小さくて、断面は3〜4cmくらいだったでしょうか。触った感じはこんどらいととほとんど変わりありませんが、磁石を当ててみると、まったくくっつきません。エイコンドライトは、コンドライトの元となった太陽系の始原的な物質がいったん完全に溶けて分化・再結晶したもので、重い鉄ニッケル合金はあまり含まず、組織や組成は地球の玄武岩質岩石に似ていると言います。
 石鉄隕石は、1882年にチリ北部のアタカマ砂漠で発見されたパラサイトと呼ばれる石鉄隕石(石鉄隕石にはこのほかに、メソシデライトがある)で、重さは1kgだそうです。見た目はキラキラしてとても美しいそうです。鉄ニッケル合金の中に数mm大の橄欖石が多数混ざり込んでいて、地球ではけっして出来ない構造です。磁石にはもちろんくっつきます。つるつるの断面を触ると、いくつか5mmくらいの円い線があって、これが橄欖石なのかもと思ったり。ちなみに、「パラサイト(pallasite)」という名前は、この種の石を1772年に初めて記載したパラス(Peter Simon Pallas: 1741〜1811年。ロシアで業績を残したドイツの博物学者。エカチェリーナ2世の招きで1768年サンクトペテルブルグの国立科学アカデミーの博物学教授となり、1774年までウラル地方やシベリア方面の探検・調査をする)に由来するそうです。なお、パラサイト隕石としては、1822年にチリ北部のアタカマ砂漠で発見されたイミラック隕石が有名で、広い範囲で計約1000kg(大きいものは100kgを越える)が回収されており、ここに展示されているパラサイトも、遅れて見つかったイミラック隕石の一部の破片だと思います。
 鉄隕石は、オデッサ隕石とギベオン隕石の2点です。オデッサ隕石は、1922年にアメリカ・テキサス州のオデッサ近くで発見された鉄隕石で、重さが20.9sもあるそうです。実はすでに19世紀末に地元の牧場主がクレーターのような窪み(今は大部分砂で埋まっているが、詳しく調べると直径160m余もある大きなクレーターだとのこと)を見つけ、その周辺でいくつか鉄のような塊も拾っていて、1922年にそれが研究者によって鉄隕石と確認されたとのこと。これまでに数千個の鉄隕石が見つかっていて、展示されているのはその一部のようです。ギベオン隕石は、アフリカの現在のナミビア・ハルダプ州で発見された数千個の鉄隕石の1つのようです。現地では古くから地元民がこの鉄隕石を槍などとして使っていて、1836年にイギリス人が発見し鉄隕石と確認されたそうです。このギベオン隕石は、隕石の展示としては珍しく、切断面のない、拾われた状態で展示されていました。高さ20cmくらいで先が薄くなっており、下のほうはゆるやかな凸凹になっていて、回りには囲いがあり、スポンジのようなやわらかな物の上に置かれていました(乱暴に触らないでください、という掲示もありました)。オデッサ隕石もギベオン隕石も、オクタヘドライトに分類されます(鉄隕石は、ニッケルの含有量によって、構造的にヘキサヘドライト、オクタヘドライト、アタキサイトの3種に分類される)。
 
 4階の屋上の広場には、各種の日時計がありました。なかでも触って面白かったのが、ガイア日時計。直径70cm近くあるでしょうか、かなり大きな地球儀です。大陸が3mm弱ほど高くなっており、海岸線が触ってとてもクリアに分かるので、触覚に適した地球儀だと言えます。この地球儀は地球と平行に置かれているとのこと、赤道が垂直から20〜30度くらい北に傾いて設置されていて、実際にこの地球儀に陽の当たっている部分が昼だとのことです。この日は晴れていましたので、陽の当っている部分を確かめてみました。日本から南へ、太平洋を越えてオーストラリア、さらに南極の北の海岸辺まで陽が当たっていました。これでどうやって時間を知るのかですが、赤道上に、赤道と垂直に東西方向に直径10cm余の半円盤が立っていて、その影の変化を見て時間が分かるようです。
 また、「人間日時計」というのもありました。各月ごとに人の立つ位置が決められていて、その位置に立って影の方向で時刻を知るようです。その他、半円筒の内側に目盛りがあり、半円筒の中心の軸の棒の影がどこに来るかで時刻を知るものとか、よくは分かりませんでしたが「多面体日時計」とか、いろいろありました。
 この広場には、惑星の大きさ比べもあって、地球をはじめ惑星の大きさを体感できました。すべて2千万分の1の大きさで、地球は直径65cmの球体。金星はそれよりわずかに小さく、火星はさらにだいぶ小さくて地球の半分余くらい、水星はさらに小さくて地球の半分もありません。月もあって、水星よりも小さく、地球の3分の1もないでしょうか。そして、冥王星を触ってちょっとびっくり、月よりもかなり小さいのです。これでは惑星から外されても仕方ないなあと、納得できました。
 
 元日の明石市立天文科学館学の見学、思ってもいなかった隕石たちとの出会がありとてもうれしかったです。やはり出かけないと出会いはありませんね。今年もしんどい身体をおして、できるだけ出かけるようにしなければ。
 
(2019年1月13日)