大阪市立科学館の宇宙関連の展示

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 2月11日午後、大阪市立科学館に行き、4階の宇宙の展示を中心に見学しました。以下に触れられたものを中心に紹介します。かなりたくさんあって、面白かったです。
 まず、地球型惑星の、地球、金星、火星の惑星表面の立体模型に触りました。各惑星とも70km四方の模型だそうです。1辺が70cmほどありましたので、縮尺は10万分の1くらいなのでしょう。地球は、大阪を中心に、淡路島、紀伊水道、六甲山から、琵琶湖の南部付近まで、なじみの地形で海岸線もはっきりし、触ってよく分かりました。金星は厚い雲におおわれているため直接表面は見えませんが、アメリカの探査機マゼランが1990年から91年にかけて雲を投資して見られるレーダーで観測して表面の地形がかなり詳しく分かったとのこと。模型になっていた部分は、左側に3000mほどのグラ山があり、それに続いて、隆起した広い大地のようなのがあり、その中にはいくつも細い溝のようなのが枝分かれしながら細かく走っています。大地は溶岩の大地で、溝のようなのは溶岩流の跡だそうです。火星の地形模型は、中央よりやや左側に、かなり高く盛り上がった中に、ロンシャール・クレーターとか言う直径10cm弱ほどの大きな窪みがあります。クレーターの外側はかなり低くなっていて、左から右に向ってやや高くなりながら数本溝のようなのが続き、右端近くにはぽこぽこと島のようなのが頭を出しています。これは火星で最近(と言っても数億年とか数十億年前のことでしょうが)起こった洪水の跡だそうです。クレーターから水があふれて流れ出してできた地形なのでしょうか。今年初めに明石市立天文科学館で触った金星と火星の表面の様子とはだいぶ異なります(再現している場所が違うので当然とも言えますが)。
 次に、惑星の大きさ比べです(と言っても、触って分かるのは地球型惑星だけです)。壁面に各惑星の大きさを示す円盤が並んでいます。地球は直径20cmくらいだったでしょうか、金星は地球とほぼ同じ(5%ほど小さい)、火星は地球の半分よりやや大きい、水星は地球の3分の1ほどの大きさでした。参考までに、各惑星のおおよその直径を示しておきます。地球 12800km、金星 12100km、火星 6800km、水星 4900kmです。
 惑星の大きさ比べの下には、太陽系の各惑星の衛星の大きさ比べの円盤が並んでいました。これは初めてで、なかなか面白かったです。一番大きいのは木星の衛星のガニメデ、続いて土星の衛星のタイタン、木星の衛星のカリスト、同じく木星の衛星のイオ、地球の衛星の月、木星の衛星のエウロパ、海王星の衛星のトリトンが並んでいました。驚いたことに、ガニメデは直径10cm弱で、上の火星よりは小さいですが水星と比べるとやや大きいです。タイタンも水星よりわずかに大きく、イオは水星とほぼ同じ大きさです。衛星でも惑星より大きいのがあるとは、初めて気付きました。WIKIPEDIAなどで調べてみると、各衛星もなかなか特徴があって面白いので、以下に少し紹介します。
ガニメデ: 木星からの距離 1070000km、直径 5270km、密度 1.94g/cm3。ガニメデは、カリスト、イオ、エウロパとともに、ガリレオ・ガリレイが1610年1月7日に見つけた木星の4大衛星の1つで、その中でも最大(太陽系では9番目に大きい天体)。完全に分化した天体で、中心に液体の鉄を主とする金属核があり(そのため弱い磁場がある)、その外側は珪酸塩の岩石と水の氷(密度から考えると、岩石と氷は半半くらいだと思う)。表面温度は -150℃くらいだが、内部には一部に海があると推定されている。地質活動は今は観測されない。
タイタン: 土星からの距離 1220000km、直径 5150km、密度 1.88g/cm3。土星の最大の衛星。内側は岩石の大きな核で、その外側に層状に異なった氷の層が取り巻いている(一部液体になっている所もあるかも)。さらに窒素を主としメタンを数%含む濃い大気におおわれている(大気圧は約1.5気圧)。表面温度は -170〜-180℃くらい。メタンなどの雲があり、液体メタンの雨が降り、液体メタンやエタンの川が流れ、湖や海がある(メタンの融点は -182.5℃、沸点は -161.5℃)。風雨や浸食による砂丘や三角州などの地形も見られる。極低温の世界でありながら、地球における水循環と類似したメタン循環があるとされる。
カリスト: 木星からの距離 1880000km、直径 4820km、密度 1.85g/cm3。水星よりわずかに小さい。組成は岩石と氷が半々くらいの割合で、内部の文化はあまり進んでいないらしい(中心には小さな岩石の核があるかも)。表面はほとんど衝突クレーターにおおわれていて、火山活動など地質活動の痕跡はないという。カリストは、形成直後の木星の周囲に存在したガスとダストからなる周惑星円盤の中で、ゆっくりとした集積によってできたと考えられており、そのため内部で十分な文化が進むのに必要な熱が発生しなかったと思われる。
イオ: 木星からの距離 422000km、直径 3640km、密度 3.53g/cm3。太陽系の衛星の中でもっとも密度が大きく、主に珪酸塩の岩石から成る。中心に液体の鉄の核があり、その回りが岩石で、表面は硫黄や二酸化硫黄の霜でひろく覆われているという。数百の火山や広い溶岩地形が見られ、今でもいくつかの火山は硫黄と二酸化硫黄の噴煙を高くあげ、溶岩流が流れ出ている。このような激しい地質活動は、木星およびエウロパやガニメデから受ける強い引力によって発生するイオ内部での潮汐加熱(ある天体がすぐ近くの天体の強い引力のためにその形が周期的に変化すると、伸び縮みするたびに摩擦によって熱が出る)によって引き起こされると考えられている。表面温度も -140℃くらいで、他の木星の衛星に比べて高い。
月: 地球からの距離 384000km、直径 3470km、密度 3.34g/cm3。月は地球の衛星とされているが、太陽系の他の衛星に比べると、主惑星に対する大きさが格段に大きい。(月の直径は地球の約4分の1余。これにたいし、最大の衛星のガニメデは木星の約29分の1。)月は組成や構造が地球型惑星に類似しているが、岩石部分に比べて金属核の割合が少ない。中心に小さな溶けた金属核(直径800kmほど)があり、その回りにマントル、その外側が地殻で、地殻の厚さは50kmくらい(月の裏側のほうが表側より厚い)。
エウロパ: 木星からの距離 671000km、直径 3200km、密度 3.01g/cm3。密度が高く、主成分は珪酸塩岩石。中心に金属核、その回りに岩石、表面を水の氷が覆っている。表面にはクレーターが少なく、滑らかな形状をしていて、表面の氷の下には広く水の海が広がっているのではと考えられている。氷の表面の割れ目から、水蒸気らしきものが200kmほどの高さまで達しているのが観測されており、海底での活発な活動を思わせる。
  *サイズはだいぶ小さいが、土星の衛星エンケラドス(土星からの距離 238000km、直径 504km、密度 1.61g/cm3)でも、表面の氷の下には広く海があり、さらに探査機カッシーニの観測で、水蒸気を含む大量の噴出物中の微粒子から、岩石と熱水が反応してできる鉱物が見つかり、海底に熱水環境の存在が示唆されて、生命誕生の場になり得るというような報告もあった。
トリトン: 海王星からの距離 355000km、直径 2710km、密度 2.06g/cm3。トリトンの公転軌道の方向は、主惑星の海王星の自転方向に対して逆方向になっている。これは、衛星としてはレアなケースで、トリトンはカイパーベルト帯にあった冥王星クラスの準惑星が海王星に捕らえられたものではと考えられている。密度から考えて、氷よりも岩石のほうが多く、中心に大きな岩石の核、その回りに氷、表面は水の氷と個体の窒素からなっている。トリトンの表面にはクレーターがほとんど見られず、氷の熱山や窒素ガスを噴出している所があるなど、今も地質活動があるらしい。表面温度は -235℃くらい。
 
 続いて、惑星などの重力の大きさを体感してみる展示です。まず、太陽、木星、火星、月、地球それぞれの天体でりんごを持ち上げてみる体験です。太陽では腰を入れてしっかり引っ張らなければならないくらいでしたので、10kg近くあったでしょうか。月ではとても軽くてふわっと浮くような感じでした。次に、実際に体重計に乗ってみます。そうすると、太陽、木星、火星、月、地球での自分の体重が表示されます。私は、太陽では1300kg余、地球では47kg余、月では8kgくらいでした。(地球の重力の大きさを 1とすると、太陽は 28.0、木星は 2.37、火星は 0.38、月は 0.17)
 
 次に、私が楽しみにしていた隕石の展示です。触れられたのは鉄隕石のキャニオン・ディアブロ隕石とオデッサ隕石の2つです。ともに30cm弱くらいの大きさで、切断面はなくごろっとした感じ。ぼこぼこと窪んだ面があちこちにあり、窪んでいる所はするうっと滑らかな手触りです(私はこれまで鉄隕石におそらく10数個は触っているが、このような窪みは鉄隕石にほぼ共通の触覚的特徴だと思う)。上面は多くの人が触ったためでしょうちょっとするうっとした手触りになっていましたが、側面や下面はざらざらした所が多く、溶け焼けたような手触りでした。
 キャニオン・ディアブロ隕石は、1891年にアメリカ・アリゾナ州のバリンジャー・クレーター(直径 1200m)のすぐ近くで発見され、総回収量は30トン超。この隕石の中から、地球ではほとんど見つからず、隕石の激しい衝突時などにしかできないモアッサン石という鉱物(炭化珪素で、ダイヤモンド型の骨組の中に炭素と珪素が交互に並んだ構造)が初めて見つかったそうです。オデッサ隕石は、1922年にアメリカ・テキサス州のオデッサ近くのクレーター(オデッサ・クレーター: 直径 170mくらい、6万年前くらいにできたらしい)の周辺で見つかり、その後数千個回収されているようです(いちばん大きなのは140kgくらい)。この2種の鉄隕石はともに、化学的分類は IAB、構造的分類は粗粒オクタヘドライトです。
 触れられたのは上の鉄隕石だけでしたが、その他におそらく20個近い隕石が展示されていました。コンドライトとしては、H5やL5、LL5等のもの、炭素質コンドライトのアエンデ隕石(cV3)やカルーンダ隕石(CK4)、エコンドライトとしては、ザガミ隕石(シャーゴッタイト。火星起源とされる)、ミルビリリ隕石とキャメルドンガ隕石(ともにユークライト。小惑星ベスタの地殻起源とされる)、石鉄隕石としてはハッキッタ隕石(パラサイト。ただし、風化がかなり進んでいて、金属鉄は酸化されてほとんどが磁赤鉄鉱や針鉄鉱になっているらしい)、鉄隕石としてはギベオン隕石(IVAで、細粒オクタヘドライト)、などです。隕石の展示としては、とても充実していました。
 
 4階で実際に触れられたり体感できる展示はこれくらいで、やはり宇宙についての幅広い充実した展示全体からすればごく一部ということになります。触れられたりはしませんでしたが、私が興味を持った展示を以下にいくつか紹介します。
 太陽風の展示では、オーロラなど地球の磁気圏におよぼす影響が説明されていましたが、私がちょっと興味を持ったのは、太陽風の及ぶ範囲、太陽圏です。1977年に打ち上げられた探査機ボイジャー1号と2号は、1号が2012年に、2号が2018年に太陽圏(heliosphere)の境界を越えて星間空間に入りました。その太陽圏の範囲、すなわち太陽風が届く限界の距離は120天文単位(180億km)だそうです。この120天文単位という距離は、太陽活動が直接影響している範囲であるとともに、現在人類が直接探査機で観測できている範囲、私はその狭さにちょっと驚きました。120天文単位は、光だと17時間くらいの距離です。太陽系の範囲ははっきりとはしませんが、オールトの雲があると考えられている所は20万天文単位くらいまで広がっているようです。それに比べればわずか千分の1以下の範囲でしかありません。
 放射線や宇宙線を観測する様々な装置や、加速器もなつかしく感じました。中学の終わりころから高校にかけて、私は原子や宇宙の世界にあこがれ、当時手に入る少ない情報をあさっていて、ウィルソンの霧箱やサイクロトロンなども頭の中でいろいろ想像していました。大阪市立大学でむかし使われていた大型のウィルソン型霧箱(断熱膨張で空気を冷して過飽和の状態をつくる)が展示されており、また拡散型霧箱で実際に放射線などの飛跡が見られるようです。拡散型霧箱は、ガラスの箱の中にアルコールを入れ、箱の上面で暖めながら下面で -40℃に冷し続けることで、箱の底部に過飽和のアルコール蒸気の状態を持続させるものです。このガラス箱の中に放射線などが入ると、空気の窒素や酸素の分子とぶつかってそれらの原子をイオン化し、この陽イオンが種(たね)になってアルコールが凝結し、放射線の飛跡に沿ってアルコールの雲ができて見えることになります。α線が通ると太い線が、β線が通ると細くぐにゃぐにゃと曲がった線が見えるようです。
 1934年に大阪大学に設置された大きなコッククロフト・ウォルトン型加速器も展示されていました。コンデンサーと整流器のセットを多数並べて、交流を高電圧の直流に変えるもので、60万Vの高電圧が得られたそうです。この加速機を使って、1935年に陽子や重陽子(重水素の原子核。陽子1個と中性子1個が結び付いたもので、結合エネルギーは小さい)を重水にぶつけて多量の中性子を発生させたそうです(中性子の発見から3年後)。
 
 望遠鏡の展示では、反射望遠鏡の凹面鏡は、球面ではなく放物面になっていることを知りました。放物面にしたほうが、収差を少なくできるからのようです。
 天体の重力によるケプラー運動を見られるようにする装置がありました。直径1.5m近くある、回りがラッパないし漏斗状に広がり中心に穴が開いているものです。この漏斗の縁に小さな球を放ると、最初はゆっくり、だんだん速度をあげて回転しつつ中心の穴に向って螺旋を描きながら落ちてゆくようです。ケプラー運動では楕円を描くことになっていて、ちょっと形が違うし、これはケプラー運動よりも、ブラックホールの回りのガス円盤中の粒子がブラックホールに落ちてゆく時の運動として見てもよいように思いました。
 
 3階には私の好きな鉱物の展示があるので、ちょっと立ち寄ってみましたが、触れられるものはほとんどありませんでした。ただ、直径3cm弱の、まったく同じ大きさの水晶、ガラス、アクリルの球があり、それを触って見分けるコーナーがありました。手触りではアクリルはすぐ違うことは分かりますが、ガラス球と水晶球は表面の手触りでは私も区別はつきませんでした。ガラスのほうが少し軽いのではないかと思って、重さを比べてみると、ガラス球と水晶球を区別できました。このガラスの密度は2.2強、水晶の密度は2.5強だということですので、10分の1くらいの重さの違いを区別できたことになります。なお、見た目では、偏光版の間に水晶球を入れて少し回したりすると、同心円や放射状の線が見えて、区別できるそうです。
 
 今回の見学では、なんと言っても隕石の展示が充実していました。これだけたくさんあるのですから、鉄隕石だけでなく、コンドライトなど一部でも触れられるようにしてほしいです。
 
(2020年2月19日)