蓮はおもしろい!

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 7月25日のお昼ころ、雨がぱらつくようなあいにくの天気でしたが、近くの総持寺に行って、鉢に植えられた多くの蓮を観察(触察)しました。総持寺は西国三十三所の第二十二番札所で、ふだんから参拝者も多いようです。私たちは、とくに参拝ということではなく、近くの散策次いでにときどき総持寺を訪れ、よく手入れされた季節の植物たちと触れ合っています。
 蓮はふつう、池の中にあることが多く、直接触れることはなかなかできませんし、なんとか手が届いたとしても葉や花のごく一部に触れられるだけです。総持寺では、蓮は水をはった直径30cm余の鉢に入っていて、その鉢を6、7個くらいずつまとめて、数箇所に、地面の上に置いています。それで、かなりたくさんの蓮をよく触ることができました。以下、その触察記録です。なお、蓮については、『なぜ仏像はハスの花の上に座っているのか 仏像と植物の切っても切れない66の関係』(稲垣栄洋著、幻冬社、2015年)などを参考にしました。
 各鉢から、径が2cm弱ほどの茎が1本ずつ、1m前後の高さまでやや斜めに伸びています。茎の表面は触ると痛いくらいざらざらしています。少しゆらゆらしていますが、かなり丈夫そうです。この茎の中は中空になっているそうです。中が空洞になっているほうが、かえって丈夫なのかもしれません。
 各茎の先には、葉あるいは花が1個ずつ付いています。葉は直径20cmくらいから30cmくらいほどのほぼ円形で、茎の先端が葉の中心になっていて、ほぼ水平に広がっています。葉の中央(茎の先の所)はすうっとやや窪んでいて、そこに水がたまっています。触ってはよく分かりませんが、この水、ころころ球のようになっていて、きらきらときれいに見えるそうです。(ハスの葉の表面にはワックスのような成分とともに微細な凹凸構造があり、葉についた水は葉をぬらすことなく、よごれなども包み込みながら表面張力で丸まってころころと流れ、葉の表面はいつもきれいになっているそうです。これはロータス効果と呼ばれ、外壁の塗料やガラス、身近なところでは一部のヨーグルトのカップの蓋の裏側などにも応用されているそうです。)
 また、茎の先には、いろいろな段階の花が、まっすぐ上に向ってついていました。7月末でしたので、全体としてはすでに花が終わってしまって花托だけになっているものが多かったですが、つぼみのもの、花が閉じかけているもの、実が少し熟しかけているようなものなどありました。ハスの花は早朝に開き、昼前には閉じるものが多いので、私が触ったつぼみの状態のものの中には咲いた後完全に閉じてしまってつぼみのような形になっているものもあったと思います(つぼみの状態のものの中には、表面がやわらかめのものもあった)。
 私が触った蓮の花は、直径10cm弱のほぼ球形でした。上の花びらが開いている所から指を中に入れてみると、中央に逆円錐形で上面がたいらな台のようになっている花托があります(ふつうの植物の小さな花托とはまったく異なる)。この台のようなものの表面には、ぶつぶつの粒のようなのが10個くらいはありました(これが雌しべだそうです。雌しべがこんなにたくさんあるとは、なんとも不思議な気がします)。花托の外側には、花びらとの間に、やわらかいふにゃふにゃしたものが数本あり、これが雄しべのようです。この雄しべは、雌しべのある花托の上面よりはだいぶ低くて、このままではとても受粉できそうにありません(いろいろな昆虫が花の中に入ってきて、受粉してくれるようです)。花びらは内側と外側の2層になっているみたいで、全部で10枚くらいあったでしょうか(ふつうは蓮の花びらはもっと多いようです)。後で地面に落ちている花びらを触ってみましたが、長さ10cm弱の細長い船のような形で、根元のほうがちょっと分厚く、先のほうは薄くすうっとややとがっていました。花は、葉が形を変えたものだと言われることがありますが、こうして茎の先に付いている葉と花を触ってみると、なるほどそうだなと納得します(蓮の花は、円形の葉が細かく分かれて、中央にくるうっとまとまってきたような形)。
 私が驚いたのは、花托を触っていると、熱を感じたことです。チューリップなどの花の中を触っても、花びらに守られて花の中のほうが外気温よりも暖かく感じますが、この花托にじいっと触っていると、花びらに囲まれた中が暖かいというよりも、花托自体が内側から発熱しているのではと感じました。
 花托だけになったものには、小さめのものとやや大きめのものがありました。小さめのものは、上の花びらの中の花托とほぼ同じ大きさで、花びらが全部落ちて間ないものと思われます。大きいものは、花托の台の上の凹凸がより大きくなって、穴のように窪んだ所やぶくっと膨れた所がたくさんあります。たぶん、中で実が少しずつ成長しているのでしょう。
 こうして観察していると、茎を切ってみたり、花托を分解してみたりしたくなりますが、そんなことは外ではできません(と言うか、けっしてしません)。ですので十分な観察とは言えませんが、とても楽しい自然観察ができました。
 ハスは、1億年以上前に現れた古い植物で、原始的な被子植物の 1つとされています。当時はまだ裸子植物全盛の時代で、1億5千万年以上前にシダ植物から別れて出現したとも言われる被子植物はひっそりと暮らしていたようです。被子植物の受粉の特徴は、風だけでなく、虫や鳥が仲立することですが、そのころの被子植物の花は蜜を出さなかったそうですし、また、今見られるような多種のチョウやハチもいませんでした。今回触った蓮の花、雌しべや雄しべの配置や数ははっきりしない感じでしたし、花びらの数も一定しないようです。被子植物の初めのころの、まだ試行錯誤しながら進化している途中の段階にふれているような感じもしました。
 
(2020年7月29日)