1月26日、京都・北山にある京都府立植物園に行きました。植物園は、京都市営地下鉄の北山駅を出てすぐに北山門があり、とても便利な所にあります(ほかに、正門と鴨川門がある)。園内はとにかく広くて、来園者は少しはいましたが、密をまったく気にすることなく、多くは1人で杖を使って、ゆっくり見て(ほんの少しは触れながら)回ることができました。この辺りはもともとは上賀茂神社の境外末社半木(なからぎ)神社とその鎮守の森=半木の森の地で、景観にもめぐまれた場所のようです。
時節柄、花類はあまり多く咲いていなかったようですが(花の咲いている回りには写真を撮る方たちがおられて、近付きにくかった)、よく手入れの行き届いた植物たちにふれることができました。例えば、カイヅカイブキは、手入れをしないと触るのも避けたくなるほどですが、直径2m弱ほどの大きな半球状や、直径1mくらいもある円柱状にきれいに整えられていて、触ってとてもここちよかったです。また、ビオラが直径1m近く、高さ2mほどの円錐形にきれいに配されていて、これもよかったです。多くの植物たちについて説明してもらい、ちょっと偶然触れたりもしましたが、その中でとくに覚えているものについて以下紹介します。
まず、竹類について。竹笹園では、数種の竹類に触れましたが、その園の説明板によれば、竹類には、私たちにおなじみの、地下茎が横に広がってそこから上に稈(茎)が成長してくるタイプ(これを竹類と呼ぶそうです)とともに、地下茎はあまり発達せず根元から地上に株立ちして広がり生えるバンブー類があるそうです。竹類は温帯系なのにたいし、バンブー類は熱帯・亜熱帯系で、おそらく種数にすればバンブー類が多いのかも知れません。(英語では竹類を一般に bamboo と呼んでいるわけですが、欧米にはもともと日本や中国に見られるような竹はなく、これらの竹も bamboo と呼ぶようになったらしい。)バンブー類に属するもので、ダイフクチク(大福竹)にちょっと触れてみました。茎がワアーッと広がっていて、それをたどって中心の根本のほうに杖も使ってたどって行きます。そうすると、根本辺から多数地面を這うように茎が出て、それが次第に上向きに曲がって広がっていることが分かります。なお、触ってよく確かめることはできませんでしたが、節と節の間が少し膨んでいるようで、この「大福竹」という名になったようです。
その他、径が10cmくらい、節間が25cmくらいはある立派なモウソウチク(孟宗竹)、マダケ(径3cm弱、表面がつるうーとしていた)、タイワンマダケ(径が3cmくらい、表面はわずかにざらつきがあった)、タンバハンチク(丹波斑竹。稈の表面がざらついてわずかにもこもこしたような感じ。稈や葉の表面に斑紋があるようです)、ギンメイハチク、ヒメハチク、ホテイチク(布袋竹。節のすぐ下が膨んでいるらしい)、ナリヒラダケ?などにちょっとだけ触れました。面白いと思ったのは、ムツオレダケ(六折れ竹)。太さは1cmくらいで、各節の所で少しずつ(10度前後?)曲がってちょっとじぐざぐになっています(節の所はだいたい水平になっているようだ)。ちょっと芸術的などと思ったり。
ちなみに、竹笹類はよくタケとササに分けられますが、その違いは、タケノコが大きくなるとともに竹の皮(稈鞘)が順に下から落ちて稈だけになるのがタケ、稈が成長しても鞘が残っているのがササだということです。この区別は分類学的にはあまり意味がないようで、「○○笹」という名でもタケであったり、「○○竹」という名でもササであったりすることがあります。
以下、観覧温室を目指しながら、道沿いに歩いていて偶然触れたりしたものなどについてです。
思いがけなくも、リュウゼツランに触れました。幅20〜30cm、長さ2m近くもある分厚い葉のようなのが何度もよじれるように波打ちながら何本も伸びています。葉の厚さは2cmくらいでしょうか、葉の基部のほう(茎?)は5cm以上もあって分厚くなっています(リュウゼツランからはテキーラを作ると言いますので、この分厚い茎の中に原料になる液?のようなのがあるのかもと思ったり)。葉や茎の表面はとてもつるつるで硬く、葉の回りとくに先端に近いほうには鋭いトゲがいくつもあります。さらに葉の基部をたどって中心付近に行くと、そこには径が10cmほどの円柱状のものがまっすぐ上に立ち、その外側を包むように葉?がぐるうっと巻いています(この円柱は上のほうは細くなってすうっと鋭くとがっているそうです)。なんともうまく言えないようなこの形と手触り、今回の見学で一番印象に残っています。
次に、木の種類は分かりませんが、直径1m以上はある大きな木を伐採して丸太?のようになっている所に出くわしました。切り株は60cmくらいの高さで、年輪もとてもよく分かります。切り口の周囲の一部の隙間には、標本にするためでしょうか、接着剤のようなのが詰められています。その横には、切り口が直径1mくらいの丸太のようなのが横たわっていて、たどってみると10m近くもあるようです。途中の枝は切り落とされていますが、皮は大部分残っています。その近くには、先ほどの丸太の続きと思われる、少し細くなった4、5mくらいの丸太があります。さらにこの丸太の先、あるいは切り落した大きな枝の一部と思われるものもあります(小さな枝をたくさん切り落していて、全体にぼこぼこしたような感じのものもあった)。1本分全部を合わせると、この木は少なくとも20m以上の高さはあったように思います。また、切り倒してから少し時間が経ったのでしょうか、湿った側面にいくつも大きなキノコが生えているものもありました。ふだん木を触る時は立っている木を手の届く範囲でしか触っていませんが、こうして横倒しになっている木に触るとその質量に圧倒されるような感じがします。
フウセントウワタ(風船唐綿)という面白いものに触れました。高さ60cmほどの草?に下向きに直径5cmくらいの球形のふわふわした感じのものがついています。表面にはプチプチしたような突起がたくさん並んでいて、少し押さえると、中が中空になっているのでしょう、凹んでしまいます。これはおそらく、果実が熟し、中の多数の種子が飛び出してしまって空になったものだと思います。風船唐綿とは、触った特徴によくフィットした命名だと思いました。この近くで、数個まとまってぶら下がっているパパイアの実にも触りました。下には落ちた実があって、触るとちょっとモニョッとした感じ、脂肪分が多いのでしょうか、手がスベスベになりました。
その他、トベラの葉(長さ10cmほどの細長い楕円形で分厚く、先のほうの縁が下向きにクルウーと丸まっている)、ブラシノキ(1cmくらいの細長いものがたくさん刷毛?のように並んでいる)、タイサンボクの葉や実?(茎の先がU字形に曲がっていて、その先にやせ細ったトウモロコシを思わせるような実?があった)などに触りました。また、クスノキ園に入った時には、あのクスノキのいい香りがあふれ、なにか空気が清浄になったように感じました。
こうしてあちこちで植物たちと触れ合いながら、ようやく観覧温室に到着です。中に入ると、熱帯の環境なのでしょう、むっとするような蒸し暑さ、マスクもずうっとし続けているしちょっと息苦しさを感じました。それでも温室はたぶん10くらいの区域に別れて、順路は延々と続き、なかなか外の空気を吸うことはできません(最後のほうには高山性の区域があって、ほっとできました)。植物たちも繁茂し、手引きで順路を歩いても体に次々に植物たちに触れてしまうくらいでした。ただ、ほとんどが聞いたこともない外国のカタカナの名前だし、形もとにかく変化に富み、しっかり記憶に残っているものはあまりありません。以下、メモに残っているものをいくつか書きます。
温室に入ってすぐ、世界最大の花と言われるラフレシアの標本と模型がありました(触れることはできませんでした)。直径1mくらいもあり、見た目は驚きのようです。ラフレシアは、花だけで、根も茎も葉もない寄生植物だとのこと。
ビンロウジュの幹に触りました。径は10数cmくらい、15cmほどの間隔で水平にリング状に線が入っています。このリング状の線の所で木の径がわずかに細くなっていて、それらが順に積み重なっているような形にみえました。
名前の初めに「アンスリウム」が付いたいろいろな植物がありました(いずれもサトイモ科だとのこと)。葉の形も様々、中には、葉から花序なのか実なのか分かりませんが、20cm以上もある長い棒状のようなもの(ねこじゃらしを堅くして長くしたような感じかな?)が伸びているものもありました。
歩いていると、ウツボカズラ科の植物たちの長さ10cmくらいのかわいい花瓶のようなのにもたくさん触れました。
面白いと思ったのは、ツキトジ(月兎耳)とウェルウィッチア(奇想天外)。ツキトジは、幅1cm、長さ4〜5cmくらいの分厚い葉が数枚伸びていますが、その葉の表面はやわらかいふさふさの毛に覆われ中がすうーと窪んでいて、まるで兎の耳のようでした(ツキトジはカランコエの仲間で、多肉植物)。
ウェルウィッチアは日本では奇想天外あるいは砂漠万年青と呼ばれています(ウェルウィッチアは、1859年にこれを発見した F.ウェルウィッチにちなむ)。とにかく変った植物で、アフリカ南西部の砂漠に自生し、他のどんな植物とも似ても似つかない形態で、この1種だけでウェルウィッチア科という1科になっています。少なくとも数百年は生きているようです。育てるのもかなり難しいようで、栽培に成功している京都府立植物園は珍しい例のようです。砂地のような所を、たぶん葉なのでしょう、幅3〜4cmくらいの乾いた感じの帯のようなのがうねうねと長く這い回っていました(あまり生きているような感じはしなかった)。厳しい環境でとてもエコに生き伸びる植物なのでしょうか?
最後に、バニラビーンズの香りを楽しみました(ふだんは触ることもできるそうですが、コロナ対策ということで触ることはできませんでした)。ほんとうに疲れも逃げ去っていくような感じでした。
(2021年1月28日)