ニフレルの展示を楽しむ

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 6月13日、魚などいろいろな生き物たちの多彩な展示で人気のある「ニフレル」に行ってみました。大阪モノレールの万博記念公園駅から徒歩数分で、便利な所にあります。(私は、開館間もない2016年1月に1度行ったことがあります。)
 テーマごとに部屋に別れ、小さな水槽に数種の魚たちが入っており、それぞれどの方向からでも観察できるようになっていて、見える人たちにはとてもよいようです。実際に触れたりできるものはまったくありませんでしたが、それぞれ展示している生き物たちに、キュレーターさんがその生き物の特徴を五七五の言葉でとらえた句が添えられていて、これが私にはその生き物を理解するのにとてもよかったです。以下、五七五の言葉を中心に各生き物について少し書いてみます。
 
●いろにふれる
 ここには、熱帯のサンゴ礁などに生息する色鮮やかな小さな魚たちが多く展示されているようです。
 
・アカシマシラヒゲエビ 「掃除する 魚の体の 寄生虫」
 アカシマシラヒゲエビは、大きさ5cm弱ほどのモエビの仲間。その名の通り、全体的に鮮やかな赤で、背中に白い縞が入り、また長いひげ(触角? 6本くらいのよう)も白いそうです。このエビの特徴は、他の大きな魚の体についている寄生虫や口の中の食べ残しなどを食べて掃除することで、 cleaner shrimp と呼ばれるそうです。他の魚の口の中に入って掃除していても、その魚に食べられてしまうことはないとのこと、共生ですね。
 
・シロボシアカモエビ 「ガラスかと 見紛うばかりの キチン質」
 これもモエビの仲間で、5cmくらいの大きさ。真っ赤な体表に白い斑点があり、このように呼ばれるようです。また、脚の先だけが白くて、見た目が白い靴下のように見えるところからホワイトソックスとも呼ばれるとか。このエビも、他の魚の口や体表についた寄生虫などを掃除する cleaner shrimp だそうです。五七五の言葉の中にある「キチン質」は、昆虫の外骨格やエビやカニなどの甲殻類の殻をつくっている物質ですが、それがガラスのようだという意味はよく分かりません。ちょっと透明感のあるガラス細工のようにも見えるのでしょうか?
 
・キイロサンゴハゼ 「警告す 黄色い体 毒をもつ」
 2〜3cmの小さな魚のようです。全体に鮮やかな黄色で、サンゴに吸盤でくっついているとか。体表の粘液に毒があり、ごく近くにやってきた魚には危険で、同じ小さな水槽に一緒に他の魚を入れるのはよくないらしいです。
 
・ルリスズメダイ 「瑠璃色は 虹色素胞の 反射です」
 浅いサンゴ礁で雄を中心に群れているそうです。体色はさまざまに変化する青に見えていて、これは、体表面にある虹(こう)色素胞が可視光線の中の青い光を反射しているためで、この色素胞が動くことで濃い青色から明るい青色へと体色を変化させているそうです。
 
・デバスズメダイ 「大群は 一致団結 浅場くらし
 小さな魚で、浅いサンゴ礁で大きな群をつくっているそうです。横から見ると白っぽく(銀色?)、上から見ると鮮やかなグリーンに見えるとか。この魚にも虹色素胞があり、見る方向を変えると色が変って見えるのは構造色によるらしいです(詳しいことはよく分かりませんが)。
 
・カクレクマノミ 「オスの群れ 強い個体が メスになる」
 これもスズメダイ科で、浅いサンゴ礁域に生息しているとのこと。体の色は鮮やかなオレンジで、3本の白い縞があるとか。イソギンチャクと共生していて、危険が迫ると素早くイソギンチャクの触手の中に隠れるが、カクレクマノミの体表にある粘液によってイソギンチャクの毒針(刺胞のこと)に刺されることはないそうです。面白いのは、ふつうは雄と雌のペア、ないしペアと成熟していない数個体で一つのイソギンチャクと共生しているが、雌が死んだりいなくなったりすると、群れの中で一番強い雄が雌に性転換するそうです。
 
●わざにふれる
 ここには、独特の技をもつものたちが展示されています。
 
・マモンツキテンジクザメ (これには、五七五の言葉はありませんでした。)
 サメと言っても、1mもない小さなサメ(テンジクザメ科)で、怖そうではないみたいです。名前は、胸鰭の後ろにある大きな黒い紋から付けられたそうです。この魚の特徴は、大きな胸鰭と腹鰭を地面に押し当てて、浅瀬や海底を体をくねらせながら歩くこと。(泳ぎはあまり速くないとか。)また、酸素の少ない環境でも生きることができ、潮が引いた酸素の少ない潮だまりでも数時間はいることができるとか。
 
ヨダレカケ 「採集は 虫捕り網で 防波堤」
 10cmもない、スズキ目イソギンポ科の魚だそうです。この五七五の言葉、何の意味なのか分かりませんでしたが、下唇にはよだれかけのような吸盤があり、この吸盤と胸鰭で、海面から突き出した岩の上に張り付いているそうです。
 
・テッポウウオ 「汽水域に暮らす ジャンピング狙撃手(スナイパー)」
 長さ30cm弱ほどの細長い魚で、口は長くとがって、口の中から水滴を1m以上も噴射し、空中の虫を撃ち落して餌にするそうです。なんともすごいやつですね。
 
●かくれるにふれる
 ここには、隠れるのが上手なものたちが展示されているようです。
 
・クロウミウマ 「420尾の 仔を産み放つ 父である」
 トゲウオ目ヨウジウオ科で、タツノオトシゴの仲間だそうです(タツノオトシゴは「海馬」と書き、本種はたぶんその色からなのでしょう「黒海馬」と書く)。長さ10cm余くらいのようです。海藻に尾部を巻き付けて立っているとか。(藻場の藻の間にまぎれて、一見しただけでは見つけにくいのでしょうか?)この小魚、変った子育て?をするとか。雌が雄のお腹にある袋(育児嚢と言う)に卵を産み、その袋の中で卵が孵化し、生まれた仔魚はその袋の中で育ってから海に出て行くそうです。展示されているクロウミウマの場合は、1度に420尾もの仔魚が出てきたのですね。数多いように思いますが、実際多くは他の魚の餌になって親魚になるのは数尾くらいでしょう。
 この展示については、すぐ近くにいたキュレーターさんがいろいろ説明してくれました。このほかにも変った育て方があって、例えば、プテラポゴンカウデルニー(テンジクダイ科の小さな魚で、鰭が大きくふわふわと泳ぐ)は、マウスブリーダーと言って、雌が雄の口の中に産卵し、雄は卵が孵化するまで口の中で保護しているそうです(孵化するまで1週間くらいかかり、その間は雄はまったく餌を食べられない)。多くの魚では卵はほとんど産みっ放しのような状態ですが、その場合は何十万個とか大量に産卵します。卵や仔魚をこのように親魚が保護するような場合は、それだけ産卵数は少なくてもよいことになります。
 
・オイランヨウジ 「目を隠す 縞の模様と 尾の模様
 これもヨウジウオ科で、とても細長い魚のようです。白っぽい体表に黒っぽい?縞が何本も入り、また尾は赤く縁どられていて目立ち、目がどこにあるのかなかなか見つけられないようです。この魚も、雌が雄の腹部に卵を産み付け、卵は雄の育児嚢の中で孵化するまで10日間くらい護られているそうです。
 
・フライシュマンアマガエルモドキ 「腹すける 葉に隠れてる カエルです」
 とてもかわいい小さなカエルのようですが、なかなか見つけられないとのことです。今回はガラスに付いていたので、探すのはそれほど難しくなかったようですが、葉の裏などに付いていると、スタッフの方でも容易には見つけられないとのこと。体が透明で内臓が透けて見え、心臓?が動いているのも見えるとか。見た目がグミに似ているので、グミガエルとも呼ばれるそうです。
 
●その他
 2階の「みずべにふれる」や「うごきにふれる」ゾーンでは、ゾウガメ、ワニ、カピバラ、オシドリ、インドクジャク、オウギバト、オオハシ、ケープペンギン、ワオキツネザル、ミニカバ、ホワイトタイガーなど、いろいろな生き物たちが、ほとんど囲いもない状態で、動き回ったり、休んだりしていました。十分に考えて選んでいるのでしょうが、広くもない空間に多種の生き物たちがなかよく?共存しているのにはちょっとびっくりです。その中を見学しているわけですが、時々大きな鳥の声がしたり、なにかが近付いてくるような気配を感じたり、私はずうっとちょっと緊張気味でした。ここにいる生き物たちにしてみれば、私たちヒトも他の生き物たちと同じような、ちょっと変った動物に見えているのでしょうか?
 ショップには、生き物たちのぬいぐるみや模型もあり、私はカピバラのぬいぐるみとワオキツネザルの模型に触りました。
 
(2021年7月16日)