1月30日、大阪モノレールの南摂津駅に行って、構内に展示されているジャンルの異なる2つの展示物に触りました。
まず初めに触ったのが、「井路舟」という一種の川舟です。この付近一帯には以前は湿田が広がっていて、「井路(いじ)」というのは、この湿田地帯にいわば農道のように張り巡らされた水路のことだそうです。そして「井路舟」は、この井路を利用して、主に稲や肥料など農作業に使う荷物などを運ぶのに使われた舟です。
長さは6〜7メートルくらいはあり、平たい箱舟のような感じでした。舟の先端は幅40cmくらいで先はとがらず平たいです。そこから次第に幅が広がっていて、1メートル30cmくらいの幅がありました(舟の後ろのほうは囲いのようなのがあって触れませんでした)。舟の高さ(深さ)は40cm弱ほどで、底は広い平たい板状になっています。1メートル余おきに横木がわたされていて区切られています。一番前のほうには、なにかはよくわかりませんが、直径40cmくらいの円板がありました。次の区画には米俵が縦に置かれていました。次の区画には、1メートル弱の柄が45度くらいの角度で取り付けられた升?のようなもの(下面の板は他の面よりも先が前に長くなっていて少しとがっている)がありました。この升?のようなものには「農具」というラベルが付いているとのこと、私はこれを触って、小さいころしばしば触ったことのある、泥水やときには糞尿などもさらっていた木製の道具(名前はよく分からない)とそっくりだと思いました。何に使ったのかあまり想像できませんが、水路を進む時にも水をかくようにして使ったかもと思ったり。
説明プレートがあり、そこには、井路は湿田の米づくりには欠かせないもので、井路舟は農道を行く軽トラのような役割を果たしていたこと、また、淀川堤防の決壊などによる洪水時の避難にも欠かせないもので、鳥飼や一津屋などの低湿地では、大切な家財道具だったというようなことが書いてあり、さらに、昭和28年の水害の時に、井路舟に乗って避難している人たち(十数人は見えているようです)の写真もありました。
私がこの井路舟について知ったきっかけは、大東市で点訳活動を続けておられる方が「だいとう昔がたり」という本を点訳していて、その中になんと大正時代に住道駅の南の墓地の大木から雲を突き破って天に昇っていく龍を見たという話があると聞いたからです。大東付近も水に悩まされていた地帯で、龍に関する言い伝えも多いようです。そして、今はほとんど埋め立てられたり暗渠になったりして目につくことはあまりありませんが、以前は井路が張り巡らされ井路舟のようなものも使われていたよううです。ということで、井路舟はどこかで触れられないかなあと調べてみたわけです。摂津や大東に限らず、大阪は淀川や大和川の下流に広がっているので大部分湿地帯と言ってよいでしょうし、そういう土地では日常的に水運に頼っていたのでしょう。
次に、チリのエルナン・プエルマ作の「資本家(Capitalist)」という立体作品に触りました。大きさは1メートル余で、小さな自転車に2人が前傾姿勢で乗っています。材質は、自転車は金属(銅)、人物の表面は樹脂のようです。
自転車の車輪は、直径40cm弱くらいで幅3cmもないくらいの細いもので、レース用のものなのでしょうか?その華奢な自転車に、前のめりになった2人が体を接するくらい重なるように乗っています。2人の顔は鼻筋がしっかり伸びなにか鋭いような感じで、2人とも眼鏡をかけ、首元にはコートの襟が立っています。前の人は両手で上向きに湾曲した棒(ハンドル?)を握り、後ろの人は、両脇にそれぞれ大きな膨れたバッグを抱えるようにしています。こんな姿で、必死に体を前に倒してひたすら前進しようとしていて、資本家らしい雰囲気が伝わってきます。そして、後ろの人のバッグには利益をはちきれんばかりに溜め込もうとしているように見えます。リアルに雰囲気が伝わってきて、なかなかよい作品のように思いました。
この作品は、「大阪モノレール美術館」という名の下、大阪モノレールの各駅に展示されている作品の1つです。1990年から2001年まで開催されていた国際現代造形コンクール・大阪トリエンナーレの入選作品や、関西の現代作家のの作品など、大阪府がこれまで収集してきた「大阪府20世紀美術コレクション」の中から、パブリックスペースに展示するのに適した作品をモノレールの16の各駅構内に展示したものだとのことです(
大阪モノレール美術館)。全部合わせると20数点もあるようですので、全部触れられるとは限らないでしょうが、順次見学したいと思っています。
(2022年2月3日)