生命誌研究館ミニ見学

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 3月6日、高槻市にあるJT生命史研究館に立ち寄り、30分ほどの短時間ですが見学しました。もしかして、感染症と人との関係とかの展示もあるかもと思ったのですが、それは見当たりませんでした。
 この研究館には、もう30年近く前、研究館が開館してあまり間もないころに行きました。オサムシやナナフシ、DNAの展示など、以前と同じような展示もありましたが、いろいろ新しい展示も加わり、とても魅力的なように感じました。また、以前は触れられる展示はほとんどなかったように思いますが、手で組立てたり操作したりする展示もかなりあるようでした。ただし、残念なことに、コロナ対策でそれらにはカバーがかけられ、まったく触れたりできなくなっていました。以下に、いくつか興味を持った展示を紹介します。メモもあまり取らなかったし、記憶もはっきりしない点があり、間違もあるかと思いますがご容赦願います。
 
 入ってすぐ、水音がします。オーストラリア肺魚とアフリカ肺魚が、それぞれの水槽の中でじっとしていて、まったく動いていないようです。オーストラリア肺魚のほうが大きくて70〜80cmくらいありそうだとのこと(最長のものは180cmくらいにもなる)肺魚にはこのほかに、南米のものもある。調べてみると、私は15年ほど前に、神戸市立須磨海浜水族園でスタッフの案内で肺魚の標本に触っています。3地域の肺魚は、大陸移動説の傍証にもなっているというような話を聴きました。)この展示では、肺魚は陸上への挑戦者として、エラ呼吸から肺呼吸へ、鰭から四肢への進化?を読み取ってほしいようです。4億年以上前にまず植物が陸上に進出し、その後を追って昆虫が広がります。肺魚の祖先も同じころに海で誕生しますが、3億8千万年前くらいに淡水(川)に進出したようです。乾期になって水がなくなっても、泥の中に潜り込んで空気孔から肺呼吸してじっと生き伸びたようです。また、胸鰭と腹鰭はそれぞれ長く伸びて、足のようにもなったのでしょうか?
  いくつかの脊椎動物の骨格標本が展示されています。注目点は背骨とその回りの骨のようです。ナメクジウオには背骨はなく、背骨に相当する脊索があります。カワヤツメも同様で背骨はありません(魚類ではない)。ホシザメ、コイ、ハイギョには背骨があり、その背骨の両側にずらあっと横に骨が伸びて、内臓などをしっかり支えられるようになっています。ただし、ホシザメの骨は軟骨で、コイの骨は硬く、肺魚の骨には四肢の起源が見られるとか。ウシガエルは、体はやわらかそうに見えるが、陸で体を支えるだけの硬い骨になっています。クサガメは、背骨から伸びた肋骨が甲羅に変化しています。ニホンザルの骨は、私たち人に近く、お腹の部分には背骨から横に伸びる骨はなく、横隔膜と筋肉で内臓を支えられるようになっています(魚ではお腹の部分にも骨がある)。そして、体を丸めたり大きく曲げたりできるようになっています。ニワトリの骨では、たくさんの骨で首が自由に回るようになっており、また背中の骨がくっついて、真っすぐ飛びやすくなっているとか。骨から分かることがたくさんありますね。
 細胞分裂の速さを比べてみる展示があります。脳の神経細胞、表皮の基底部の細胞、腸の絨毛細胞、ガン細胞の4種の細胞が、同時点からスタートしてどのように変化するかを映像で示していて、ガン細胞が断トツに速いようです。ガン細胞は10〜24時間で分裂します。絨毛細胞は約24時間で新しい細胞と入れ替わります。表皮の基底部の細胞は、約20日かけて、表面に移動し角化し落ちてゆきます。脳の神経細胞は、原則分裂はせず、新生児の時に数が最大で、その後は減ってゆきますが神経細胞同士のつながりが発達します。
 理科の教科書の点訳で、どのようにして分かりやすい点図にするか工夫したことのある、細胞周期の各段階を示す展示もありました。また、10万倍に拡大した細胞プレパラートもあり、見物かなと思ったり。
 遺伝子関係では、オサムシを例にした分子時計がありました。オサムシはほとんど飛ばなくて歩いて移動するだけなので、それぞれの種が地域的に限られていて、進化の研究には適しているようです。横軸に時間軸として年代が分かっている地質学的なイベントを取り、縦軸にミトコンドリア内の遺伝子 ND5遺伝子の進化速度(塩基の違い)を取って、グラフ上にプロットすると、原点を通るほぼ直線になるそうです。それによれば、今の日本のオサムシは8系統に別れるそうですが、古琵琶湖や淀川水系ができた300万年前ころに東西の2系統に別れ、日本列島形成期の1500万年前に東西?2系統に別れ、さらにヨーロッパでアルプスが隆起した2000万年前に南北2系統に別れる、というようにさかのぼることができるとか(詳しいことはよく分からない。ND5遺伝子は約360万年で1%の塩基の違いが積み重なっていくそうだ)
 その他、さらに記憶がはっきりしませんが、ヒトゲノムの解析から、遠い遠い祖先でレトロウイルス(RNAを遺伝子とし逆転写酵素を持つウイルスで、感染すると逆転写酵素のはたらきでRNAからDNAをつくり、宿主細胞のDNAの中に入り込む)に感染したような痕跡が見られるとか、ヒトと細菌やウイルスとの遺伝子レベルでの共生?を示唆するようなことも書いてあって興味をそそられました。そのうちぜひもう1度行って、詳しいことをお勉強したいと思っています。
 
(2022年3月8日)