大美特別展:楽しい美術品めぐり

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 9月4日、地下鉄北浜駅から歩いて数分の大阪美術倶楽部(そこは、鴻池本邸跡地だとか)で9月2日から4日まで開催されていた「第8回大美特別展」を見学しました。大阪美術商協同組合加盟の60以上の美術商が、建物の1階から3階まで、それぞれブースを設け自慢の名品?を展示販売する特別展です。1時間余の見学でしたが、絵画から陶芸、茶碗や茶道具、書、掛け軸、刀剣や甲冑、屏風、仏像などまで、多種多様な充実した展示で、また一部は実際に触ることもできて、大いに満足しました。以下に、私が実際に触ったものを中心に簡単に紹介します。
 バーナード・リーチの大皿(雅翔堂 塩谷):バーナード・リーチの作品、これまでにもしばしば美術館でちょっと説明を聴くことはありましたが、触ったのは初めてでした。直径50cmくらいもある大きな皿で、厚さも2cmくらいあったでしょうか。全体にとてもつるつるできれいな曲面ですが、その表面に絵が描かれています。私が触ったのは、全体はチョコレートのような色で、その真ん中に縦に長く茎が伸び、その両側に稲科の植物のように細い黄色っぽい葉が斜めに多数伸びているとか。表面に描いている絵は触ってはほとんど分かりませんが、皿の裏面に出ている文様は触ってもきれいでした。この大皿の円い縁の、時計に見立てて言えば、9時、12時、3時、6時の位置に 1 9 5 3 の文字が見えていて、これは制作年を示しているそうです(リーチは、戦後もしばしば来日していて、これは1953年から54年の来日時に制作されたものなのでしょう)。もう1点同じく 1953 の文字のある大皿もあって、こちらには合掌造りの建物のような絵が描かれているとか(これはケースの中で、触れませんでした)。この店にはその他に、河井寛次郎や浜田庄司、富本憲吉などの作品も展示されていました。
 火焔土器を連想させるような縄文土器の深鉢(井上オリエンタルアート GINZA):高さ40cm余、底の直径10cm余、上縁の直径30cm弱の、かなり大きな深鉢です。ばらばらの破片を組み合わせたことがまったく分からないほどきれいな仕上がりになっています。器の下のほうは細くなっていて、縦に斜めに縄目の模様がくっきりと触っても分かります。上のほうは広がっていて、いくつも紐を重ねて造形されており、上縁部の4箇所にはまるで火焔土器を思わせるような、紐を組み合わせて中が空洞になった渦巻きのようなものが飛び出しています(4箇所のうち2箇所は、上向きではなく少し横に倒れたような感じになっていて、ころっとまるまったような感じ)。茨城県筑波山付近の出土で、前2500年ころ(縄文中期)のもので、加曾利E式のタイプだとか(加曾利e式も再分されていて、その中のeUあるいはET式だと思う)。土器の表面に光を当てると、銀色にきらきら輝く粒が多数見えて、これは筑波山周辺の土に含まれている雲母片だとのこと。土器の内側には焼け焦げた痕のようなのも見えているとか。この店には、その他にも白磁などいろいろありました。
 岡本太郎の「座ることを拒否する椅子」たち(美術處 米田春香堂):高さ50cmくらい、直径40cm弱ほどの、表面はつるうっとした陶製(信楽焼き)のオブジェが5、6個ありました。上面は平らではなく少し丸みのある形で、そこに2つの目を中心に凹凸の文様が描かれています。上面は平らではないしがたがたした凹凸があるので座りたくないですが、歩き疲れた時にちょっと一休みするくらいなら座ってもよいかもと思ったりです。機能的に座り心地のよい椅子ではなく、場合によっては椅子代わりにもなり得るもの、ということで岡本太郎らしい気もします。また、とくに目は触っても目立ちますし、回りの赤や黄色?のカラフルな色の中に黒い円い目がぎょろっと目立つようです。中には、2つの目が渦巻き状になってつながったもの、船底を思わせるような形(両端がとがった楕円形)の中に大きなざらついた窪みになっている目、そして目の回りも、横顔のようにも感じられたり、いくつもの葉を回りから目のほうに寄せ集めたような形になっていたり、デザインも様々で触っていてなかなか面白かったです。この店には、その他、山田正亮の「Work」シリーズの作品(抽象画で、カンディンスキーなどを思わせるような矩形や、縞模様が目立つ)などもありました。
 北大路魯山人の「椿鉢」など(瀧屋美術):直径30cm余の大きな鉢で、縁は薄いですが1cmくらいは厚みがあり、釉薬を厚く重ねたのでしょう、ゆるやかな凹凸や線が触って感じられます。器の外側にも内側にも椿の白と赤の花と緑の葉が描かれているということで、広い葉の輪郭がわずかに浮き出して感じられました。これよりやや小さめの鉢で、表面は赤(朱色)で、そこに金で松竹梅が描かれ、また内面の底には「吾唯足るを知る」というな文字が見えるとか(触ってはつるつるでほとんど分からなかった)。その他にも、緑色っぽい長鉢とか、いろいろありました。ちょっと変わっているなあと思ったのは、ふつうは失敗作とされるものを作品にしたものもありました。直径30cm弱ほどの桶の形の器で、表面には2本の箍が水平に巻かれ、桶をつくる1枚1枚の板の境目も縦に平行な線でくっきりあらわされているのですが、上にある大きな持ち手が割れて桶の中に落ちてしまって、桶の底に持ち手が縦に立っている形になっていました。また、備前焼のよさげな壺なのですが、側面に縦に割れ目が入っているものもありました。魯山人の作品は、例えば「織部野草花入」(松森美術)など、他の店にもありました。
 蒔絵のほどこされた菓子皿など(山木美術):上に持ち手が付いた10cm余の四角いお皿で、漆を塗って磨いたようなとてもすべすべした手触りです。皿の中央付近には、小さな形がいくつもはっきり浮き出していて、これはいろいろな形の野菜たちのよう(たぶん切金の手法を使っていると思う)。そして皿の回りや持ち手には細かく蒔絵がほどこされているとか(これは触っては分からない)。私が興味を持ったのは、聖徳太子の小さな木彫像(平野敬吉作)ですが、これはケースに入っていて触れませんでした(衣の流れや顔がとてもきれいだとのこと)。ちなみに、山木美術は20年近く前、当時中之島にあった店に2度ほどうかがったことがあって、その時に触った石の本の彫刻(ドイツのクーバッハとヴィルムゼン両氏による作で、分厚い辞典を開いた時のように、平らに少し湾曲したページの面と、各ページの端がわずかにずれながら積み重なっている状態が極めてはっきり分かる)に触ったことがあって、とても印象に残っています。
 その他にも、ジョアン・ミロの「LA DEMOISELLE A BASCULE」(梅田画廊)、上村松園の「春雪」(中宮画廊)などの絵画や、書などに、一緒に行った人はあちこちで見入っていました。

(2022年9月6日)