バードカービング展ふたたび

上に戻る


 4月30日、関西バードカービングクラブ主催の「第12回木彫りの野鳥展」に家内といっしょに行ってきました。
 きっかけは、ちょうど2年前に訪れた関西バードカービング展で多くの作品を鑑賞させていただいた山上さんからの案内のメールでした。そのメールには、出品作品は 1人 4点で、そのうち新作としてはヤマセミとトラツグミの2点、あとの2点については、なんと私が前回に触って鑑賞した作品の中から希望するものを選んでくださいと書いてありました。
 早速、山上さんの作品を懐しく思い出しつつ、小さな魚をくわえてプレゼントしようとしているカワセミ、木の枝から飛び立とうとしているオールリ、そしてしっかりした印象のあるハイタカを希望しました。
 当日会場に着いてみると、早速受付の方が山上さんに連絡してくださり、すぐにお会いできました。山上さんとは作品についての詳しい説明のほか、お互いの仕事のことなどいろいろ個人的にもお話しできました。
 さらに、その時会場に居られた数人の作家さんたちの作品にも触らせていただくことができました。皆さんには本当にあたたかく迎えていただき、心から感謝するばかりです。

 以下、山上さんの作品を中心に紹介します。
 (山上さんの作品は次のホームページで公開されています。
山上家の道楽工房」 )

 まず、新作2点です。
●ヤマセミ
 絵とセットになっている。絵は、縦横60〜70cmくらいの大きさで、これまた手製の額縁に収められている。深い森の中の谷川にいる雌のヤマセミ。強い光線で深緑がくっきりと生え、木々の葉の細かい様子まで描かれているようだ。(私はその説明を聞きながら、日本画に見られるような植物などの細密な表現を連想していました。)
 絵の外には、木の枝に止まった雄のヤマセミ。前長は優に30cm以上はあり、左右のしっかりした翼や冠羽をふくめ、全体としてとても大きく感じる。10cmはある長いくちばしで大きな魚(ヤマメ?)の腹の当たりを斜めにくわえ、絵の中の雌に差し出している様子。(魚は長さ15cm以上、太さは2〜3cmくらいはあるが、こんな大きな魚を頭のほうから呑み込むとのこと。魚の表面は少しつるつるした感じで、たずねてみるとアルミ箔でコーティングし色を着けているとのこと。また、ヒレの部分はアクリル樹脂を削って細かな筋のような模様まできれいに表現されている。口はやや開き気味で、ちょっと苦しいのかも。)
 このヤマセミでもっとも目立つのは、頭から背の上部にかけて整然と並んでいる多数の冠羽。長さ3〜5cmくらいのペン端のような形の冠羽を1本1本材木から削り出して作り、差し込んでいるとのこと。また、触ることはできませんが、冠羽の根元には、布を割いて作った羽毛が巻かれているとのこと。

●トラツグミ
 幾層にも積み重なった枯れ葉(銅板で作られている)の上に、脚を大きく折り曲げて低い姿勢で止まっているトラツグミ。前長30cmくらい、体はかなり太く感じた。くちばしを下に向けて枯れ葉をくわえている。葉っぱをどけて虫を探している様子を表しているとのこと。
 トラツグミは夜行性の鳥で、あの寂しい口笛のような鳴き声を思い出しつつ、触っていました。

 続いて、私の希望で展示してくださった作品2点です。
●カワセミ
 まずとても大きな睡蓮の葉に触れて、この作品をありありと思い出しました。でも、記憶の中のカワセミと比べて、今回触ったカワセミはとても小さく感じました。それはたぶん、直前に同じ種類の大きなヤマセミを触っていたからだと思います。小さな魚をくわえた雄のカワセミは木の上に止まっているのですが、雄は雌の方向に頭を正確に向けて魚を差し出していること、また木の穴だらけの状態からかなり腐りかけている木を表していることに改めて気がつきました。

●ハイタカ
 触った感じは記憶とほぼ一致していました。前方斜め下を向いている目、羽の付け根の当たりがとくにふくらんでいるような感じなどが、今回印象に残りました。


 次に、山上さん以外の方の作品でとくに印象深かったものです。
●エナガ(Sさん)
 長くほぼ水平に伸びている木の枝に、 2羽のエナガが止まっている。前長10cm余でかなり小さく、尾が長い。 1羽は普通に止っているが、もう1羽は、左脚で枝に逆さにぶら下がり、右脚で何かの虫を捕えそれをくちばしの所に持っていっている。 2羽の姿が対照的で面白かった。
 Sさんは、京都の視覚障害児に自分の作品を送り、とても喜ばれているようです。鳥は名前や鳴き声はよく聞きますが、その姿となるとなかなか想像できないものです。

●アカショウビン(Mさん)
 自然木に止まり、翼を大きく斜め上に広げて、雌にポーズを示している様子。翼の様子がよく分かる。アカショウビンもカワセミの仲間とのこと。全長20数cmはあり、かなり大きい。長いくちばしは赤く、目立っているとのこと。

●トラツグミとヒキガエル(Nさん)
 枯れ葉の上で、トラツグミとヒキガエルがにらめっこをしている様子。大きな長方形の木の台にいろいろな形・大きさの葉が浮き出すように彫られ、触ってよく分かる(葉の間にはドングリもあった)。その上に、脚をしっかり伸ばし(山上さんの脚を折り曲げたトラツグミとは対照的)前を見つめるトラツグミと、10cmくらいのずんぐりした形のヒキガエル(脚は太く、背中一面にたくさんのイボイボがあり、大きな目が目立つ)が対面している。

●キジバト
 岩の上でキジバトが左の翼を広げて陽に当たっている様子。岩の丸みに沿うように、広げた翼がまるで浅いお椀を伏せたように被さっていて、形が面白い。また、左の広げた翼と右の閉じ加減の翼を比べてみると、羽の重なり具合や広がり方が少し分かるような気がした。

 その他、Sさんのコチドリ、Mさんのコガモ、Nさんのウグイスも触らせてもらいました。また、前回Hさん作の、丸太から彫り出したペンギンを触ったのですが、今回はそのペンギンが、大きいものから小さいものまでずらりと並んでいました。とくに、高さ 1m近くある大きなペンギンの下部に小さなペンギンが彫られている作品は好かったです。手触りも、エナメルを思わせるようなつるつるの仕上げになっていました。

 今回は前回の10周年記念展よりは規模も小さくそれだけ作品数も少なかったのですが、その分ゆっくり皆さんといろいろお話ししながら観賞することができました。たんに鳥の形を知るだけではなく、自然の色々な面の一端を感じ取れたように思います。

(2005年5月4日)