鳳凰堂修理特別展見学

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 (注)12月27日にも同特別展に行って南10号にも触れましたので、加筆しました。
 
 10月21日、現在開催中の「鳳凰堂修理特別展『ほとけにふれる−結縁のしるし−』」に行ってきました。
 京阪宇治線の宇治駅に11時に、私をふくめ5人が集合(その中には、私のほかにTさんという全盲の若い女性もいます)。そこから、宇治観光ボランティアガイドクラブのHさんの案内で平等院に向かいました。
 歩き始めて間もなく、水音がします。すぐ横が宇治川でした。宇治川に架かる橋の手前でまず大きな、高さ2m近くもある擬宝珠に触れてみました。宇治観光ボランティアガイドクラブ(http://www.kyoto-uji-kankou.or.jp/guide/)の方は、このように見えない人たちをガイドする時は、実際に触れたり、音やにおいなどで体感できるスポットを案内してくれますし、また、鳳凰堂や宇治上神社などの立体模型や鳳凰などの立体コピーなども用意してもらえます。宇治川の川岸まで降りていって、川面にも触れたりできるそうですが、私たちが訪れた日は、残念ながら、台風26号の影響で水量が多かったためでしょう、川岸まで降りる所が閉まっていました。
 宇治川に架かる橋の上では、チャノキに触りました。葉がとても元気そうでした。そのチャノキですが、ガイドのHさんが、もっと触って分かりやすいようにとチャノキを持ってきてくださっていて、それで触察すると、つぼみから、開きかけの花、開いた花、さらに実まであって、これはすごい標本だと思いました。そして、そのチャノキはお持ち帰りしていいですよ、ということだったので、私が家に持ち帰って存分に触って観察しました。葉は先端がとがった、細長い楕円形で、周りは小さなぎざぎざ(鋸歯状)です。手触りは硬くてつるつるしていて、ツバキ科の常緑低木ということが納得できます。葉の裏側ではとくに、先端までまっすぐ伸びる筋やその筋から斜めに分かれる筋がくっきりと分かります。花はだいたい葉の付け根辺りにあります(そのため、触ってはちょっと観察しにくいです)。花は、中心に長いめしべ、その回りに細いおしべが多数密生していて手にたくさん粉が付きます。花弁は、平べったくて縁がきゅっと内側に曲がったつるつるしたのが5枚です。実は直径1〜2cmくらいのが多数あって、どれもとても堅いです。実がつぼみや開きかけの花と一緒にこんなにたくさんあるのはへんだなあと思って調べてみると、この実は昨年秋の花の実だとのこと、これまた納得でした。そして、チャノキを持ち帰ってから10日くらいして、実がはじけて(3つに割れたような感じかな?)、堅い種が現われました。このチャノキからはいろいろなことを教えてもらいました。
 また、橋の上からは、カワウなども見えているようです。宇治川の橋を渡り終わってすぐだったと思いますが、紫式部の像に触りました。座って巻物を広げている所です(左手で巻物の端を持ち、右手で巻物を支え、さらに左方に巻物が続いています)。膝や手首の辺りで着物の枚数を数えてみたら5枚でした(十二単といっても、12枚を重ね着しているのではなく、ただ数多くの袿(うちき)を重ね着していることを表わしていて、5枚のこともよくあるようです)。
 橋を渡ってから左に曲がると、平等院の表参道に入りました。たぶん茶の香りがするのではと思っていたら、時間が悪かったのか閉まっている店もあったのか、あまり茶の香りはしません。でも途中で冷やし飴を頂いたりしながら、平等院に向いました。着いてすぐ、たぶん池(阿字池)の近くだと思いますが、フジバカマに触りました。小さな花がたくさん密集していて、菊と同じような頭状花だということです。葉は大きく3つに分かれています。花の色を尋ねてみると、淡い紫色で、ちょっと赤が交じっているようです。そしてつぼみほどその紅が濃いとのこと、こんな色を自分でも石創画で出してみたいと思いました。
 
 そしてようやく、鳳翔館へ。鳳翔館は、平等院の梵鐘、木造雲中供養菩薩像(全52躯のうちの26躯)、鳳凰1対などの国宝をはじめ、各種の仏像や創建当時の発掘出土品などを展示・収蔵するミュージアムです。ガラス越しですが間近に数々の名品を見られるようで、皆さんその異彩に感動しているようです。とくに、多数展示されている雲中供養菩薩の多くはいろいろな楽器を持っていて、皆さんは見蕩れていたようです(これらの楽器のミニチュアのキーホールダーがミュージアムショップにあって、それには触りました)。
 見えない人たちのために、宇治観光ボランティアガイドクラブの方々が鳳凰堂の立体模型や梵鐘などの立体コピーを持ってきてくださり、またミュージアムにも鳳凰の3分の1くらいの模型があり触ることができました。
 鳳凰堂は東向きで、その立体模型は、横幅30cm余(実際の横幅は40m余だそうです)、奥行き15cmくらい、高さ10cmくらいです。中央に中堂(入母屋造?)、その後ろ(西)に尾廊、中堂の左右(南北)に翼廊が伸び、その両端には前(東)に向って小さな建物(御堂?)が突き出しています。そして中堂の屋根の両側(南北)には鳳凰が立っているそうです。当初は、両翼の端あたりまで池が入り込んでいたらしいです。鳳凰堂が池に浮んでいるように見えたのでしょう。この鳳凰堂の中堂に、本尊の阿弥陀如来坐像(像高約280cm)が東向きに座し、その両側(南北)の壁の上のほうに、北側に26躯、南側に25躯の雲中供養菩薩像が、それぞれコの字形に置かれていたそうです(それぞれには、阿弥陀像の後ろ側から側面そして正面に向かって1から順に番号が付されている。南側の最後の1躯は堂外から発見されたもの)。
 梵鐘は、高さ約2m(竜頭だけでも40cm余)、直径120cm余、重さ2トン以上もある、大きなものだそうです。古くから「姿の平等院鐘」と言われて、日本三名鐘の一つとして有名だとのこと。梵鐘の立体コピーを触ってみましたが、たしかに獅子・鳥(鳳凰?)・天女?・竜などいろいろ描かれているようです。私は1年ほど前に正祐寺で、大阪空襲で大部分が焼け溶けてしまった朝鮮鐘の復原品を触ってみましたが、装飾が多いということで共通しているのではと思って尋ねてみたところ、平等院の鐘も朝鮮の影響を受けているのではないか、ということでした。
 鳳凰の模型は実物の3分の1くらいで、高さは30cmくらい、頭は鶏風ですが、くちばしは猛禽のように鉤型になっています。両側に大きな翼(3枚くらいの羽が重なったようになっていてけっこう厚さはあるが、実物では金属板を数枚重ねたような感じでもっと薄いとのこと)があり、また背から尾にかけて、長く弧状に翼のようなのが連なっています。脚先は、前に3本、後ろに1本の指になっていますが、前3本のうちの内側の1本がどういうわけか、外側の指と重なっているようです。鳳凰の形については、例えば頸は蛇(たしかに頸から胸にかけての前面には鱗のような模様があった)、背は亀(背には菱形のような模様があった)、尾は魚など、いろいろな動物の合体した姿らしいです。
 
 さて、今回の「鳳凰堂修理特別展『ほとけにふれる−結縁のしるし−』」では、前期(9月28日〜11月29日)と後期(11月30日〜来年1月17日)に、それぞれ1点ずつ、雲中供養菩薩像に、だれでも、学芸員の案内で、触るマナーに従って触れることができます。触れられるのは、もちろん国宝の実物そのものではなくて、仏師村上清氏が当時の材料や手法によりできるだけ忠実に従って制作した模刻像です。前期は北25号、後期は南10号となっていて、今回私たちが触れたのは北25号です。また私は12月27日にも鳳翔館を訪れ、南10号にも触れました。(北25号は、先ほど書いた雲中供養菩薩の配置のされ方によれば、阿弥陀増の左正面に位置し、また南10号は、右後ろに位置することになります。)そして、多くの人たちが触れ結縁したこれらの模刻像は、この特別展終了後、来年春から鳳凰堂に懸架され、今後百年千年と参拝者を見守ることになるそうです。なお、仏像を触る意義や触るマナーなどについて解説した点字のパンフレットもあって、これは事前に申込めば送ってもらえます。
 1人ずつ順に、像の前に立ち、まず合掌してから、学芸員の解説と注意に従いながら触ります。触り終わってからもう一度合掌します。それから結縁帳に氏名を書き、像の版画?が入った結縁証明書を受け取り持ち帰ることができます。それでは、以下に、今回触った北25号と12月27日に触った南10号について書きます。
北25号:全体の大きさは、幅・高さとも60cmくらい。檜造りです。下半分近くは幾重にも重なり合う雲(渦巻きのような輪がたくさんある)で、向って右側にすうっと細い円錐形の突起のようなのが15cmくらいも伸びていて、なびいているようです。その雲のほぼ中央に菩薩がふわあっとした感じで座しています。右膝は立て、左膝は下につけている姿勢です。左手に蓮台(上は直径4cmくらいの平らな円で、その下は蓮の花が開いている)を持ち、右手はそれに添えるようにして、手のひらを前に向けて指はかるく上に伸ばしています。手のひらには、手相を示す生命線・知能線・感情線などもはっきり触って分かります。指は細く長くて、先の太さは5mmもないくらいで、強く触ると折れてしまいそうです。お顔はとてもくっきりした感じで、切れ長の目や重なったり垂れたりしている髷、下に長く垂れた耳などが印象的でした。頭の後ろには、円い金属製の輪(頭光)があります。肩から腿辺りには衣の襞がたくさん感じられます。(向って右側の肩の後ろ辺には、なにか欠損部があるように感じました。)
南10号:上と同様に雲の上に菩薩が座していますが、下の雲の重なりは少し少ないようです。雲は向って右に長くなびいています。菩薩は、両膝を外側に開き、両踵はそろえさらに両足首を外側にぎゅっと開いて座しています(左足は足裏から指先までよく触ることができ、雲をしっかりつかもうとしているように感じました。座し方は、ちょうど相撲の蹲踞のような姿勢に思えます)。左手は肘を曲げて前に出し、人差指と中指は前に伸ばし親指と薬指で輪をつくっています。右手は、肘をぎゅっと曲げて、人差指を伸ばして自分の耳のあたりに向けています。顔は北25号よりもちょっとふくれている感じで、右の頬あたりには縦に細かい筋のようなのがあって少しざらついた感じです。目は、上瞼が下がっていて、わずかに開いている感じです。髪は髷になっています。触った印象としては、北25号のほうが好ましく感じました。
 
 これから永く鳳凰堂に展示されることになっている仏像、それも指先や雲の先や衣の襞など精巧に掘り出されて、強い力が加わると壊れてしまいそうな仏像を、だれにでも触って良いようにするのは、ミュージアムの側としては勇気ある英断だと思います。仏像に触って結縁する意義を高く評価し、また視覚だけでは把えられない仏像の良さを触ることで実感して欲しい、そういうミュージアムのスタッフの方々の願いを感じます。
 
 最後に、この特別展に関する事項や問合先などを書いておきます。
 場所:平等院ミュージアム鳳翔館(JR奈良線宇治駅、あるいは京阪宇治線宇治駅より、徒歩約10分)
 期間:平成25年9月28日〜平成26年1月17日(会期中無休)
 料金:大人300円(手帳所持者は本人と付き添い1人半額)
 問合せや点字パンフレットの申込: TEL 0774-21-2861
 宇治観光ボランティアガイドクラブへのガイド依頼:申込は個人でもできるが、2人以上から。できるだけ1週間前までに。申込は、同クラブのホームページより申込フォームをダウンロードし必要事項を記入してメールかファックスですることになっているが、電話(0774-22-5083。受付は10時〜16時)でもできる。ガイド料は無料だが、ガイド1人につき交通費千円を負担。

(2013年11月2日、2013年12月28日更新)