【参考資料】ミュージアムの様々な試み――「視覚障害者の美術館・博物館利用に関するアンケート調査」から

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 以下の資料は、エイブル・アート・ジャパンが 2004年に行った「視覚障害者の美術館・博物館利用に関するアンケート調査」に基づいています。
  このアンケート調査は、エイブル・アート・ジャパンが取り組んでいる「視覚障害者の文化アクセスとソーシャル・インクルージョン促進事業」の一環として行われたものです。全国 310のミュージアムを対象に調査が行われ、その内 255館より回答があり、その回答内容はすべてインターネット上で公開されています(http://www.ableart.org/museum/)。
  調査項目は、各館の基本情報から、ハード面、ソフト面の対応まで多岐にわたっています。それらの調査項目の中で、各ミュージアムの視覚障害者にたいする積極的な対応をもっともよく表していると思われる「これまでに視覚障害者向けに何らかのプログラムや対応を行ったことがあるか」に注目し、この質問項目にたいし「有」と答えた館の回答内容をまとめてみました。
  回答内容は 2004年11月現在のものです。一部私の手持ちの資料(実際の利用経験もふくむ)やインターネットで調べて追加・補足した所もあります。各館の詳しい回答内容については、上記 URL で参照してください。
  総数 255館の内、「これまでに視覚障害者向けに何らかのプログラムや対応を行ったことがあるか」の質問にたいし「有」と答えているのは 88館です。
  以下、北海道地方から順に紹介します。

*このデータの公開については、エイブル・アート・ジャパンより許可を得ています。

目次
北海道地方
東北地方
関東地方
中部地方
近畿地方
中国地方
四国地方
九州・沖縄地方
コメント


【北海道地方】

◆札幌芸術の森美術館
●野外美術観覧の対応(2004年8月22日13:30〜15:30)
  北海道盲導犬協会21名(視覚障害者11名、付添い10名盲導犬11頭)来館。
  ボランティアによる解説は、30分コース、60分コースの二種類で対応。

◆北海道立函館美術館
●貸館:「手で見る美術展」(1993年11月13日〜21日)
  視覚に障害をもった方々にも美術に親しんでいただけるよう配慮した展覧会。手で鑑賞できる彫刻作品50点を展示。

◆北海道立近代美術館
●「ふれるかたち」展
  毎年実施 (2004年度:5月29日〜8月29日)
  彫刻、ガラス作品など計8点に触れてもらう

●盲学校の生徒に対する作品解説:2004年7月21日、常設展、ボランティア対応

◆北海道立旭川美術館
●触察ツアー(ブロンズの作品が多く寄託され、ロビーに展示されていた 1時期)
  現在、寄託は解除され、彫刻は木彫ばかりなので実施不可能。

◆北海道立三岸好太郎美術館
  盲学校の対応を行っている。

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【東北地方】

◆陸前高田市立博物館
  2001年度、ボランティア団体の要請をうけ、遺跡の現地見学と博物館施設内での体感ツアーを実施。土器に実際に触れていただいたりした。

◆岩手県立美術館
●常設展関連ワークショップ
  2002年3月23日(土)、24日(日)
  講師:小原馨(美術家)
  テーマ:触れて感じるワークショップ
  内容:視覚障害者と晴眼者とを参加者として、当館所蔵のブロンズの彫刻作品を実際に手で触れて鑑賞する機会を設定した。
  参加者:10人(3月23日)、12人(3月24日)

◆秋田県立博物館
  博物館教室として「目の不自由な方のための探鳥会」を企画したが、残念ながら応募がなく実施はしなかった。

◆秋田県立近代美術館
●ロダン展・・・手による鑑賞(美連協事務局による指導あり)
  対象者:視覚障害者(晴眼者は原則的に受け付けない)
  対象作品:19作品(19作品のうち5〜6点程度の鑑賞が障害者と援助者双方で適当である。作品には展示キャプションがついている。)

●常設展での彫刻作品、点字プレート対応、ブロンズ作品の手による鑑賞

◆東北歴史博物館
  盲学校の生徒等が来館する場合、館内の「こども歴史館」という体験中心のスペースにおいて実際に瓦や土器に触らせながら、その内容について説明する等、特別な支援体制を取ったことがある。

◆せんだいメディアテーク
●「街を伝えるワークショップ」(2003年7月6日〜7日)
  概要:1日目は、光島貴之氏の指導で廃材や身の回りのものなどを使い、触って、伝える地図づくりに挑戦。実際に街を歩き、集めた情報をもとに地図をつくった。翌日は、目の不自由な日とがその地図を使って街を歩き、それぞれ街を楽しんだり、目的地での出来事などの感想を交わした。

●「街を伝えるワークショップ展/smtサマーミュージアム」(2003年7月27日〜8月17日)

●音声解説・日本語字幕つき映画「雨あがる」
  2004年5月23日、7階のスタジオシアターにて、寺尾聰主演の映画「雨あがる」(2000年 日本)を計2回上映。目の不自由な方でも映画を楽しめるよう、登場人物の動きや、風景などを音声で解説した。また、耳の不自由な方も映画を楽しめるよう、セリフだけでなく、映画の中にあるさまざまな音を字幕にした。

●目の不自由な方向けのパソコン講座

◆感覚ミュージアム
  視覚障害者の団体の見学の対応(誘導、解説)

◆宮城県美術館
●「手で見る彫刻−佐藤忠良の世界」展(2001年10月2日〜12月24日)
  常設展企画として開催
  点訳・拡大文字パンフレットは企画案内と当館の案内を兼ねたものを作成

◆いわき市立美術館
●いわき声の奉仕グループの依頼により施設案内テープを作成

●視覚障害者から来館時に説明をもとめられ、平面作品については、その内容をことばで説明(相手の視覚記憶にあわせて)、立体のうち、ブロンズ像や屋外設置の作品については、触れてもらいながらの解説を行った(個人、団体で対応に違いはない)。

◆福島県立美術館
  1999年度、企画展(ロダン展)の際に、作品限定で視覚障害者向けにさわってもよい作品を決めて実施したことがある。

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【関東地方】

◆ミュージアムパーク茨城県自然博物館
●視覚障害者も楽しめる特別展示(ハートフルミュージアム)の実施
  毎年1回開催。2004年度は1月15日(土)〜1月30日(日)(通常は11月末〜12月初旬の2〜3週間)
  内容: 触ったり、音を聞いたり、匂いをかいだりできる資料を中心に展示し、自然の面白さや不思議を体験してもらう、特に点字ラベルや拡大文字ラベルを充実させた。

◆宇都宮美術館
●特別展(企画展)「ヴァイレーション―結びあう知覚―」展

● ワークショップ:「触れる伝えること」(講師=光島貴之氏)

●企画展「丑久保健一展」関連事業「手で見る作品鑑賞会」

●第44回関東甲信越静地区造形教育研究大会栃木大会中学校の部「いろんな見方、感じ合おう」(授業者=青木孝治氏、五味渕和彦氏、鈴木昭彦氏/助言者=岡本康明/司会者=小堀健一氏)

*触ることができる図録や作品カード: 「手でみる作品ガイド」

◆足利市立美術館
●「彫刻に触れるとき−−手による鑑賞2」(1999年11月13日〜12月26日)
  全ての観覧者を対象に、作品に触れることができる展覧会。国内外の著名作家や郷土の作家約20名の彫刻作品約30点(組)、そして盲学校の児童、生徒の力作約10点で構成された。うち盲学校生徒の作品については視覚障害者の方のみ触れて鑑賞可能とした。
  ※西村陽平氏 出品

●「ロダン展」(1999年2月11日〜4月4日)
●「佐藤忠良・舟越保武 二人展」(2001年4月21日〜5月27日)
の二つの展覧会では、視覚障害者を対象に”手による鑑賞”を実施した。

◆栃木県立美術館
●石原友明展(1998年8月9日〜9月27日)
  点字を用いた作品の展示

◆群馬県立自然史博物館
  盲学校において移動博物館を開催した

◆群馬県立館林美術館
  触察ツアー

◆群馬県立近代美術館
  彫刻作品の鑑賞

◆狭山市立博物館
●「博物館からケースが消えた!? さわってあそぼう!木のおもちゃ」(2003年7月12日〜9月7日)
  概要: 木のからくりおもちゃの展覧会です。68点すべての作品に実際に「さわって」遊ぶことができる「ハンズ・オン」という展示方式をとります。
     各会場とも入口に今回の主旨、「ご協力いただいたみなさん」、会場の見取り図、という3枚のキャプションを墨字と点字で掲示しました。(会場の見取り図は、点字のみ用意)

◆川越市立美術館
●タッチアート系企画展「瞑想のための球体」(2003年2月15日〜3月30日)
  概要: 球体をテーマに、身近にある自然のものや人工的に造られた球体からアーティストの立体作品まで、さまざまな角度からとらえた球体を触れて鑑賞できる展示を行った。

◆埼玉県立近代美術館
●視覚障害者の美術館利用への協力(団体見学者に対して言葉によるガイド等を実施)

●常設展の特別プログラムとして「ミューズ・フォーラム」をエイブル・アート・ジャパン、MARの全面協力により実施(2004年7月22日〜10月17日)

◆国立歴史民俗博物館
  2004年度は盲学校の生徒を対象にし、考古学の研究者が「食器の歴史」をテーマに古代の土器から江戸時代の磁器の食器を実際に生徒たちに触らせながら説明をした。
  (2003年度は「はにわ」展にあわせ、粘土ではにわを制作するなどの作業を行った。)

◆千葉県立大利根博物館
  盲学校の児童・生徒の見学時に、普段はさわることのできない資料(作品)を別室に配置して、自由にふれられるようにしたうえで、解説を行った。

◆千葉県立関宿城博物館
  視覚障害者であるとないとにかかわらず、事前の連絡があれば展示解説を行っている。

◆千葉県立美術館
●「触れる彫刻展」の開催

◆松戸市立博物館
  別室にて資料の触察と解説を行った

◆国立西洋美術館
◆触察: 盲学校からの依頼に対して、ロダンの彫刻について5〜6点触察と説明を行った。

◆世田谷美術館
●「KALEIDOSCOPE-6人の個性と表現展」(2003年7月26日〜9月28日)
  出品作家: 川村紀子、齋藤勝利、清水慶武、中野昌司、東美名子、光島貴之
  会期中の8月30日、31日に、鑑賞ワークショップとフォーラム「ミュージアムアクセスグループ全国会議」を実施。 ミュージアム・アクセス・グループMAR(東京)、名古屋YWCA美術ガイドボランティアグループ(名古屋)、ミュージアム・アクセス・ビュー(京都)の3グループによる、言葉を通しての鑑賞ワークショップ、ならびにシンポジウムと対談「ミュージアムアクセスグループ全国会議」を開催

◆東京国立近代美術館
●ボランティアガイドスタッフの研修時に、視覚障害者の美術観賞に関する講義を行っている。

●弱視の方が来館された際、ボランティア(ガイドスタッフ)がサポートおよび解説を行った。

◆東京都現代美術館
  展示室での作品解説を実施(8〜9年前に1回実施)。

◆東京都美術館
●「障害者特別鑑賞会」
  1999年から、各企画展ごとに、各展覧会の会期中の休館日1日を利用して実施。
  毎年4回程度実施している。視覚障害者は、希望すればボランティアの案内で鑑賞できる

◆ブリヂストン美術館
  以前盲学校からの要請により、彫刻の限定した作品について視覚障害者に限ってさわっていただいたことがある。

◆町田市立国際版画美術館
●「こころでみる美術館」(2000年10月25日〜11月5日)
  千葉県立千葉盲学校生の造形作品展
  (主催:こころでみる美術館実行委員会 後援:府中市等 会場:府中市美術館市民ギャラリー)

●「こころにひびく 彫刻家 佐藤忠良 堀内正和展」(2002年2月19日〜3月3日)
  (主催:こころでみる美術館実行委員会 後援:府中市等 会場:府中市美術館市民ギャラリー)
  視覚に障害のある方は作品を手で触って鑑賞できるようにした。
・対談「堀内正和の作品について語る」(2002年2月24日)
  対談者:堀内淳子氏(堀内正和氏夫人)、本江邦夫氏(府中市美術館館長、多摩美術大学教授)

●ワークショップ「まちの記憶」(2001年10月)
  アイマスク体験、音声テープ、触覚絵画 他
・全員がアイマスクをしてそれぞれの机上で、光島貴之の立体コピーの絵にさわり、触覚による絵画表現にふれてみた。次に、アイマスクのままで館内の通路を、音を聴きながら、手さぐりで歩いた。
・アイマスクのまま自分の部屋を思い出しながら、B4判の立体コピーの用紙にペンで描いた。描いたものを立体コピー機にかけると、描いた部分がふくれあがり、手で確認できるようになる。
・参加者による作品「まちの記憶」は、音声テープをつけ、言葉によってまちのイメージが補完されるようにして展示された。

◆神奈川県立生命の星・地球博物館
  1998年、シンポジウム「ユニバーサル・ミュージアムをめざして―視覚障害者と博物館―」を開催し、その報告書を刊行
*岩石、いん石、アンモナイトの壁、恐竜の足跡など、多くの展示品が触れるようになっており、視覚障害者はボランティアによるガイド・解説を受けられる。

◆平塚市博物館
  盲学校生の団体見学への対応(収蔵資料の触察など)

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【中部地方】

◆新津市美術館
●企画展「ラボラトリイ・2 共鳴する空間 金沢健一の音のかけら」(2000年8月5日〜10月15日)の関連事業「出前アート」(作家の学校訪問)の一環として新潟県立新潟盲学校(新潟市内)へ訪問、パフォーマンスと簡単なワークショップを行った(2000年10月2日(月))
  内容:盲学校の生徒たちは、金沢さんが持参した鉄板をなでたり、手のひらでたたいて鉄板の感触を確かめながら、「いろんな音が出るんだね」と音の響きを楽しんでいた。

●企画展「越後の瞽女(ごぜ)を描く−−斉藤真一・木下晋」展(2003年11月21日〜2004年1月25日)の瞽女に関する資料コーナーで、彫刻家 有吉公一郎氏(北九州市在住)による木彫作品2点を触察を可として展示した。

◆新潟市美術館
●「庄司遥展」(1995年1月)
  作品解説(布に触る)

●「ナント美術館展」(2002年7月)
  作品解説(解説のみ)

◆新潟県立歴史博物館
  視覚障害の団体から案内の要望を受け、特に触れる資料のあるコーナーを中心に詳細に解説、また、模造の土器も用意して触察してもらった(年に1〜2回の要望有)。

◆富山県立近代美術館
●「手でみる美術」展(県内連携事業) (2001年11月21、22日)
  会場:富山県立盲学校
  内容:当館収蔵作品の展示
  対応:学芸員、ボランティアによる作品ガイド

●「アートは出会い!20世紀の巨匠たち」展(企画展) (2004年2月21日〜3月21日)
  会場:富山県立近代美術館
  内容:収蔵作品展、触れる作品コーナーの設置
  対応:学芸員、ボランティアによる作品ガイド
・「タッチガイド」作成
  盲学校生徒らを対象にしたワークショップ開催

*触ることができる図録や作品カード: 「タッチガイド」(富山近美友の会制作) (収蔵作品3点の点字ガイドと立体コピーからなるもの)

◆小松市立博物館
●」ふれてみる美術展」
  石川県立歴史博物館、石川県文化振興課の主催事業「手で触る石川の文化展」で石川県立美術館と協同し、触れる資料を提供

◆石川県立美術館
●「ふれてみる石川の美術展」2000年3月17日〜23日)
  当館・県立歴史博物館・県立伝統産業工芸館・本多蔵品館・石川近代文学館の5館が作品や資料を持ち寄って、視覚障害者向けに、ふれてみる展覧会を開催。
  点字によるキャプションと解説をつける。
  当館での開催が3回目で、他の施設を利用して何度か行っている。

◆池田20世紀美術館
  彫刻家「重岡健治の世界」の企画展で展示彫刻全て触れてみてもらった。(1988年12月1日〜1989年2月28日)

◆静岡県立美術館
  ロダンのブロンズ彫刻を多数常設しているロダン館において、視覚障害者を対象に触察ツアーを行うことがある。これは利用者側からの申し出を事前に受け、ボランティアと担当学芸員によって実施される。なお触察できる作品は限られている。

◆岐阜県美術館
●所蔵品展示・企画展の団体鑑賞会 所蔵品展示で、約10点の彫刻・立体作品を、手で触る「触察」で鑑賞できるようにしている。鑑賞の補助として「立体コピー」を用意し、絵画のイメージの概要を、浮き上がった線によって、手で認識できるようにすることもある。

●『視覚障害者のための所蔵品ガイドブック』1、2の発行
  1999年度末に作成。彫刻・立体作品8点を取り上げ、鑑賞の手引きと解説の文章を、点字と拡大文字で記している。点字が読めない人のために、文章の音訳カセット・テープも制作した。本の構成では、全盲、弱視等の視覚障害者と健常者が一緒に利用できるように配慮している。

●受け入れ体制づくり
  受け入れ体制をつくってゆくために、職員の研修を数回おこなった。

◆名古屋市博物館
  盲学校の団体利用の申込みがあった時に、通常より触れることができる資料を増やした。
  立体図を用いた展示及び作品解説。
*誰でも触れる作品として、大人形(祭礼に使われる)、土器(複製)2点、仏像(複製)2点、和本2冊、巻物1巻がある。

◆名古屋市美術館
●手で見る彫刻展(1989年4月1日〜4月9日)
  点字、拡大文字図録、報告書有

●「手で見る美術展 セブン・アーチスツ−今日の日本美術展によせて」(1992年8月15日〜9月27日)
  点字、拡大文字図録、報告論文有、触察ツアー実施

●「心で見る美術展 私を感じて」(1994年10月1日〜10月23日)
  点字、拡大文字、触図図録、報告論文有、触察ツアー実施)

●「心で見る美術展−歩く彫刻、聴く彫刻」(1996年10月29日〜11月24日)
  点字、拡大文字、触図図録、報告論文有)

●ガイドマニュアルの作成

◆豊田市美術館
●「ヴァチカン美術館展」(2001年10月2日〜12月25日)の関連事業として、「手でみる美術鑑賞会」を行った。
  開催期間: 2001年10月8日〜11月4日 各日午前11時、午後1時、午後3時の3回開催、 2002年9月10〜25日
  出品点数:8点
  内容:手の感触から得られるさまざまな情報を作品鑑賞に結び付け、普段とは違った角度から作品との対話を試みた展覧会。
  関連事業:
  ・作品ガイドボランティアによるギャラリートークを聞きながら触って作品鑑賞
   開催日:会期中の平日 午後2時〜3時
   対象:一般観覧者
  ・学芸員による作品解説を聞きながら触って作品鑑賞
   開催日:会期中の土日
   対象:視覚障害者 午後1時30分〜2時30分
      一般観覧者 午後3時〜4時

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【近畿地方】

◆滋賀県立琵琶湖博物館
  盲学校へ、魚や鳥のはくせい標本の貸し出しを行った

◆MIHO MUSEUM
  弱視の方からの要請でキャプションを読んだ。

◆三重県立美術館
●2004年3月、視覚障害児(者)のための美術教育支援教材「触ってセット」を製作(立体コピー図版と点字の解説文から成る「鑑賞ファイル」、「素材コレクション」、「はめ込みパズル」の三つが用意されている)

●柳原義達記念館では、多数の彫刻作品を視覚障害者に限り触って鑑賞できる。

◆京都国立近代美術館
●「第2回 ふたりで見て楽しむ美術観賞会」(2002年2月10日)
  当館で開催したシエナ美術展で視覚障害者とボランティアガイドが二人一組になって絵の構図など説明しながら鑑賞した。また、この企画にあわせて最寄り駅からのアクセスマップを作成した。

●「ミュージアムざぶとん講座 カンディンスキーの世界」(2002年6月29日)
  当館で開催したカンディンスキー展の講演会に視覚障害者の参加を呼びかけた。視覚障害者とサポートする方が作品の解説を聞きながら、あらかじめ用意した立体コピーを利用して作品のイメージを触鑑した。

◆京都市美術館
  日展京都展において、彫刻出品者が視覚障害者に作品に触れる企画を実施した。

◆吹田市立博物館
●「祈りの美仏像」
  仏像レプリカの展示。毎年数週間開催。自由に展示品に触れてもらう

●平成16年特別展「ことのしらべ」(2004年4月29日〜6月6日)
  目の不自由な音楽家琵琶法師と当道座の人々にスポットを当てた展示で、関連事業として平曲琵琶や箏曲の演奏会を実施

●あらかじめ申し出のあった場合、触れることが可能な資料を用意して触れてもらう

◆大阪府立弥生文化博物館
  盲導犬を連れた団体が来館する際に、点訳ボランティアと学芸員が付き添って展示室を見学。展示室室内では事前に用意した触察用の資料をワゴンに乗せ、ワゴンを移動させながら各人に手で触れてもらう。

◆和歌山県立自然博物館
  県立盲学校からの要請で、生きた状態の生物を触って観察させる体験を行った。

*誰でも触れる作品として魚類模型があり、その点字による解説もある。

◆和歌山県立博物館
●音声ガイド(カセットテープ用)の試作(1999年)

●触察展示(エントランス展示)−−粉河寺大門瓦、部材展示(点字キャプション付)

◆明石市立文化博物館
  化石に触れる等

◆兵庫県立歴史博物館
  入館パンフレットの点字訳を作ったことがある
(注)レプリカならば触察可能なので、事前に申し込みがあれば準備する

◆兵庫県立美術館
●「美術の中のかたち−手で見る造形 村岡三郎 鼓動する物質」(2004年7月10日〜11月14日)
  「美術の中のかたち」展研修会を実施し、視覚障害のある方へのガイドについて実習を行っている(2004年7月8〜9日)
*前身の兵庫県立近代美術館では、1989年に「フォーム・イン・アート −触覚による表現−」、1990年に「美術の中のかたち−手でみる造形」を実施、以後毎年「美術の中のかたち」展を行っていた。

◆兵庫県立人と自然の博物館
  臨時的な講座として、アンモナイトや腕足類などの形がはっきりした化石や鉱物、臭いのする植物などを使って体験していただいた。

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【中国地方】

◆鳥取県立博物館
  盲学校の生徒を特別展に招待した。(1回)
  特例として、はく製標本をさわってもらった。(クマ、タヌキ、キツネ、イタチ等)

◆岡山県立美術館
  1999年に視覚障害者対象のワークショップ(彫刻に触れてみる)を開催したことがあるが、その後はおこなっていない。

◆奈義町現代美術館
●「ベリー・スペシャル・アーツ展」(1998年7月19日〜26日)
  内容:1998年アート・パラリンピック長野に世界各国から参加したものの一部で、ベリー・スペシャル・アーツの支援者である画家ヒロ・ヤマガタのコレクションとして世界各国から選ばれた障害を持つアーティストの作品のうち、ニューヨークの国連センターに展示されたもの30点と、船橋市の紙好き工房「空と海」の手すき和紙の大作5点、そして、地元アーティストの作品約50点。

●1996年から2回、さをり織りを中心とした「無心の染織展」を開催した。

◆島根県立美術館
  ロダン展の際、ブロンズ彫刻を触れて鑑賞してもらうワークショップを行った事がある。

◆ふくやま美術館
●特別展「手で見る美術展」(1989年7月15日〜8月6日)
  概要:西武美術館(東京)が1988年に国内の造型作家35人に依頼して特別に制作された作品により構成した。ガラスや石、ブロンズや和紙などを素材に多彩な技法を取り入れた造型作品39点を展示し、床には視覚障害者のために順路を示す誘導カーペットを敷いた。
     また美術館ホールでは岡山盲学校と広島県立盲学校の児童・生徒による粘土作品56点を集めた「心の目で造るこども美術展」も同時開催した。

◆広島市郷土資料館
  盲学校の見学の際、事前に質問事項を受け、来館時に回答し、後日解説のまとめを送付。(2004年7月。常設展、企画展)

◆広島県立美術館
  毎年、年1回、県内にある盲学校の児童を対象に、手でみる鑑賞会を実施している。彫刻等の作品を5〜6点展示し、児童にさわらせて鑑賞させる。その際学芸員の解説も行っている。

◆山口県立美術館
●現代の陶芸II いま、大きなやきものになにが見えるか(1984年10月13日〜11月11日)
  千葉県立千葉盲学校生徒作品64点を展示

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【四国地方】

◆徳島県立博物館
  さわれる資料(化石や大型の種子)、土器などを展示室にコーナーを作って並べ、学芸員が説明を行った。

◆徳島県立近代美術館
●徳島県主催「手で見る美術展」(運営委託:ギャラリーTOM) (1992年12月)
  展覧会への作品貸出を行った。作品選定について事前に館内で協議し、また作品の触察方法について運営者と意見交換をした。

●所蔵作品展で彫刻の触察と対話型鑑賞指導を行った(1996年2月)
  県立盲学校小学部生徒対象、引率教諭と保護者の介添えつき

◆香川県歴史博物館
●県立盲学校 中学部2名の社会体験学習への対応
  総合展示室の展示案内(レプリカの銅鐸にふれて音色を聴く、教室内の足踏みオルガンを鳴らしてみる など)
  体験学習室での甲胄・十二単の着衣体験など

◆香川県文化会館
  1997年から、香川県立盲学校との連携による美術鑑賞講座の開催(年1回程度)

◆高松市美術館
●ロダン展(1998年11月3日〜12月13日)にて、手による鑑賞を実施。

●「ヘンリー・ムーア展」(2003年)にて、会期中随時手による鑑賞を実施。

◆高知県立歴史民俗資料館
  盲学校の生徒に体験学習を行ったことがある

◆高知県立美術館
  触察ツアー

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【九州・沖縄地方】

◆北九州市立自然史・歴史博物館(愛称:いのちのたび博物館)
  視覚障害者団体の要請を受け案内を行った(1回)

◆北九州市立美術館
「春の常設展」(2002年2月9日〜5月19日)の中で、”さわってみるコーナー”有り
  彫刻などさわって美術をみてもらうものを10点展示

◆福岡市美術館
●「流動する美術−−VII 視覚を越えて・巡りて 日高理恵子/光島貴之の絵画」(2001年1月5日〜3月25日)
  「流動する美術」:様々な方向に拡張しつつある現代美術を一定のテーマのもとにとりあげていくことにより、現代に生きる作品に正当な評価を与えようとする、毎年開催されるシリーズ展。
  概要:日高理恵子の絵画3点と光島貴之の絵画12点で構成されている。日高理恵子はもっぱら「樹々」のみを描きつづけてきた。一方、10歳頃に完全に失明した光島貴之は、もっぱら触覚によって作品を制作してきた。立体作品や独得な平面(絵画)作品の制作に集中している。

●「流動する美術−−V 障害者アートの一側面を考える 兆し|徴し|癒し?の造形」(1998年2月3日〜3月29日)
  概要:障害者アートの一側面を考えることをテーマとし、身体・知的・精神障害者22作家による絵画・陶芸作品42点を展示した。

◆大分県立歴史博物館
●触察ツアー
  開催日: 視覚障害のあるお客様が希望された時
  内容:触る事が出来る展示物(一部)を触ってもらう

◆熊本市現代美術館
  展覧会のチラシを点訳したものを、全国の盲学校と九州内の点字図書館などに配付

◆熊本県立美術館
●「手で見る造形展」の一環として、視覚障害の児童・生徒を美術館に招待。教師と学芸員の連携で、館内外設置のブロンズ彫刻を触って鑑賞。(1999年2月)

●視覚障害者も楽しめるように、「みてみよう!ふれてみよう!かんじてみよう!」をキャッチフレーズに「夏休み子ども美術館」として、現代の立体作品(木、樹脂、金属、石)を触れることが出来る展覧会を実施。それぞれの素材の持つ感じや違いを受けとってもらった。点字による簡単な解説書も作成。(2000年7〜8月)

◆宮崎県立美術館
●「触れあい企画展」(1997年4月26日-5月25日)
  視覚障害者に美術鑑賞という機会を提供することはもとより、観覧者に触ることによる新しい体験を味わっていただくことをねらいとし、国内外の著名作家や郷土作家と盲学校の生徒たちに作品を紹介

◆鹿児島県立博物館
  移動博物館の展示案内において、複数(4-5名)の視覚障害者に対して、担当学芸員が約1時間ガイドしたことがあった。
  本館については、ここ数年視覚障害者の来館はない

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【コメント】
  私がこのアンケートの調査結果を一覧してまず感じたのは、各ミュージアムが視覚障害者の利用について基本的には積極的な姿勢お示していることです。
  今回まとめた「これまでに視覚障害者向けに何らかのプログラムや対応を行ったことがあるか」の質問にたいして「有」と答えているのは 255館中 88館(約 35%)で、予想外の高率でしたが、さらに、「視覚障害者から作品解説の要請を受けたときの対応」にたいして、何らかの仕方で「実施可能」と答えているのは 255館中 206館(約81%)にも上っています。
  これまでしばしば美術館や博物館は視覚障害者にはもっとも縁遠い所、出かけたとしてもなにも得ることのない所と考えられてきたようですが、少なくともこのアンケート調査で見るかぎり、大部分のミュージアムでは視覚障害者を受け入れようとする姿勢は持っていることになります。そして今回まとめた資料を一覧してみると、触って鑑賞できる展示だけでなく、言葉による作品解説、五感を使った体験型の企画、盲学校生徒のための体験学習や盲学校生の作品展、各種のワークショップなど、各ミュージアムが実際に様々な試みを行ってきたことが分かります。
  ここで問題になるのは、ミュージアムが基本的な考えとしては視覚障害者をも受け入れることにしていても、具体的にどのように対応するのかについてあまり検討していなかったり、またミュージアム側が考えた視覚障害者への可能な対応の仕方と視覚障害者の実際の様々なニーズとがなかなかうまくかみ合わないことだと思います。このような問題を解消していくためには、視覚障害者とミュージアムがとにかくまずは接触し、経験を共有し、互いにノウハウを蓄積し高めていくことが必要です。
  そのためには、視覚障害者はミュージアムの利用を最初からあきらめることなく、このようなアンケート調査も参考にして各ミュージアムにまずは問い合せ自分の希望を伝えてみることが大切だと思います。
  視覚障害者個々人の様々な利用の仕方が、ミュージアムの視覚障害者への対応を充実させることになるはずですし、さらにそれは、視覚障害者に限らず異なる文化背景を持つ多様な人々に開かれた創造的な場としてのミュージアムにつながっていくのではないでしょうか。

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(2006年10月23日)