触る研究会・触文化研究会第3回例会報告

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時: 2003年9月6日(土) 13:30〜15:30

参加者: 9名

目次
展示品
触る報告会
次回の予定


◆展示品

●日本近海の海底触地形図
 私の要望に応えて、太田さんが製作してくださいました。
 ほぼa3サイズの大きさで、だいたい東経128〜147度、北緯28〜46度の範囲です(北東端はクナシリ島、南西端は奄美大島)。
 縮尺は、水平方向が 500万分の1(10cmが500km)で、垂直方向はその約10倍(1cmが5000m)です。

 初めに、作り方について、太田さんのメールの文章などから簡単にまとめます。
@まず、「総合大地図」(小学館)に出ている海底地形図より、
 200m, 1000m, 2000m, 3000m, 4000m, 5000m, 7000m, 9000m
 の8本の海底等高線データを抜き出す。
A各等高線に沿ってスチレンボードを切り出す。(スチレンボードの厚さは、7000mと9000mが 4mm、その他は 2mm)
 さらに、切り出したスチレンボードの周囲は、海底面の連続性をできるだけもたせるために、また触った時の滑らかさのために、大きく面取りをする。
 また、日本列島や大陸などの陸部分は、海岸線に沿って軟らかい布を切り出す。
B仕上げとして、深度が深くなるにつれて、濃い青に変っていくように、各ボードに異なった色の薄い紙を張る。
 この深度の色分けのイメージを、紙表面の触感の違いでそのまま表現するのは難しいので、とりあえず、「すべすべ」と「さらさら」が交互に繰り返す(200mはすべすべ、1000mはさらさら)ようにした。

 次に、皆さんの触っての感想です。
 見える人たちもふくめ、これは感動ものだったようです。
 メールによる感想をいくつか紹介します。
OS:海底地形図 すばらしいです。面積が広すぎて他と比較しにくい場所もあったけれど、玄界灘のあたりが200メートルしかなかったことや、改めて日本海溝の長さ・深さなどを実感できたり、大陸棚もわかりやすくて、とにかくいいものだと思いました。
MT: 目で見た感じよりも触ってみた感じの方がより、リアルに感じたのは「海底地形図」でした。目で見ていると、色や段差に惑わされることがあってはっきりと感じられないものがアイマスクをして触ってみるとじつにわかりやすい。
NS: 普通の地図は色で深いところ浅いところの区別が出来るようになっていますが、触ってみて しっかり実感できた感じがします。海の中の周りより少し高くなっているところなど 今までに色別でなんとなく見たような気はしましたが、しっかり実感できました。……陸地の手触りはとてもよかったのですが、やわらかすぎて日本の外形がわかりにくかったように思いました。……時間があれば私も作りたいし、盲学校にひとつあればいいのにと思います。普通校にあっても結構興味を持つ子がいそうです。

 私も、何度も触ってみて、いろいろなことを納得しています。上にも書いてあったように、九州と朝鮮半島が 200m以下の浅い海でつながっていること、日本海溝が南北に延々と深い谷のように連なっていることのほか、日本海中部には南から北にまるで半島のように2000m以下の部分が突き出していること、三浦半島あたりから周りに比べて浅い部分が南に向ってずっと延びていること、紀伊半島や四国の南はかなり急激に5000m近くまで深くなっていること、伊豆諸島付近ばかりでなく、九州の南にも2000m以上はある海山のようなのがかなりあることなどに気付きました。

●布製の触地図
 昨年秋から、京都ライトハウス点字出版部が、シャツ・ハンカチ・ネクタイ・靴下などの布製品の上に、点字や触って識別できるマークを表現する「ドット・テイラー・サービス」を始めました。これは、カラークリスタルやシルバーメタルを、超音波で樹脂を溶かして接着させる方法で、布製品に張り付けるものです。
 今年7月、同出版部がこの方式を応用して、折り畳んだり洗ったりできる、布製の触地図を製作しました。京都市内全図(南北:北大路〜九条、東西:西大路〜東大路)、洛中(三条〜四条、烏丸〜河原町)、嵯峨野・嵐山の3枚で1セットになっています。全国の点字図書館や盲学校に(ワコール労働組合の援助で)無料で配布するとともに、一般にも4,500円で販売しています。
 製作のきっかけには、施設利用者からの「外出先で使える点字の地図がほしい」との要望もあったようで、私も発売と同時に買ってみました。
 42cm×33cmの大きさの薄いクリーム色の布(ポリエステルと綿の混紡)の上に、Tシャツの模様印刷にも使われている発泡プリントで、道路や線路や川や、山の部分などを表し、さらに、直径 2mmの半球状のアルミ粒を張り付ける方法で、道路や寺院や駅などの名を点字で表示しています。アルミ粒の直径は普通の点字の点より少し大きいので、1マスの点字のサイズも普通のより少し大きめになっています。
 このような地図の良いところは、なんと言っても、小さく折り畳めることで、持ち運びが楽になります。
 ただ、実際にしっかり触るためには、堅い平面状の板のような物の上に広げなければなりませんし、OSさんやSKさんも、触ってとくに分かりやすいものではない、と言っていました。


●姫路城大天守
 集文社より「ペーパーモデルミニ」という紙模型のシリーズが出ています。以下のようなのがあります。
東京駅、蒸気機関車 カンブリア号、国会議事堂、蒸気機関車 ジョンサウスランドII号、横浜マリンタワー、蒸気機関車 ノーザンロックII号、横浜氷川丸、札幌時計台、京都駅ビル、蒸気機関車 D51、法隆寺 五重塔、帆船 日本丸、姫路城 大天守、零戦 2機セット、金閣寺、局地戦闘機 震電、大阪城 天守閣、中尊寺 金色堂、平等院 鳳凰堂、松本城 天守閣、蒸気機関車 C12、名古屋城 天守閣
 この中から、今回はTTさんに姫路城大天守を組み立ててもらいました。元のサイズだと、幅5×長4×高6.5cmと小さすぎるので、2倍に拡大した物と3倍に拡大した物を製作しました。
 私は、やはり3倍のほうが、重みというか安定感のようなのを感じましたし、また5層になっている屋根の形や重なり具合もよく分かりました。
 OSさんは、「屋根の形が美しくわかりやすかったと思います。ただ、中もわかると面白いかなと思いました」と書いています。触っての観察では、外形だけでなく、内部がどうなっているのだろうと、知りたくなるものです。


●建築模型
 太田さんの友人が、建築模型2点を提供してくださいました。いずれも、縦・横・高さとも20cm前後くらいのものです。スチロール製ということですが、屋根や壁の部分の表面には、少し手触りの違う紙のようなのが貼ってあるようですし、また窓の部分はつるつるしていました。
 一つは、寄せ棟造りの2階建ての建物に切妻造りの玄関部分が付属した物、もう一つは、切妻造りの2階建てに寄せ棟造りの1階の建物が連なった物です。屋根はもちろんのこと、玄関、ベランダ、窓、裏口、ひさしなど、たいへん精巧な造りになっています。
 皆さんにもたいへん好評でした。OSさんやSKさんをはじめ、ドアが開いたり、中も触れたりしたらもっと楽しいのになあという意見が多かったです。

 その他、KWさんがパズル(切れ込のある4枚をうまく重ね合せて正方形を作るのと、9枚の形や模様を組み合せるもの)を持って来てくださいました。時間がないためもあったと思いますが、たいへん難しかったようで、だれも楽しむまでにはいたっていなかったようです。

※上の展示品のうち、「日本近海の海底触地形図」と「建築模型」の写真は、
 太田さんの「点字教科書と触地図フォーラム
 で見ることができます。

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◆触る報告会
 触る品物として、ある情文職員が 1.の松ぼっくり、OBが 2.の木の粘土の品、 MTさんが 3.のデジカメと 4.の犬のおもちゃ、FRさんが 5.のアンコールワットの模型を容意してくださいました。
 各品を紙袋に入れ、その中に手を入れて触ってもらいます。見える人の多くはアイマスクをしていたようです。そのほうが触ることに集中できるようです。(OB, OS, SKは全盲)
 皆さんには、 5点につき順番に触ってもらいながら、触った瞬間の印象、どんな風に触ったか、何だと思ったか、などについてメモしてもらい、それに基づいて報告してもらいました。

1.松ぼっくり(袋に何十個も入っている)
OB: 松ぼっくりか松かさか名は知らないが、そういうものだと触った瞬間に分かった。両手で包むように触ってみると、大きさがいろいろなものがあった。細かくみる時は、左手で抑えて右手人差し指で触るが、そうしてみると、小さな花弁のようなのの厚さや形もいろいろ。全体の形では、上のほうがまあるく傘みたいになったのと、平べったく円形ののとか、いろいろなのがあった。
OT: 第一印象は、たくさんあるなあ。ひとつを手のひらで握るように包むように触った。そしてすぐ松ぼっくりと分かった。
MT: 触った瞬間、なにこれ?手にやさしい感じがした。片手で包む込むようにして触ったら、松ぼっくりと分かった。つまんだり引っ張ってみたりした。
KW: すぐ松ぼっくりと分かった。分かってしまうと、もう触ることを怠けてしまった。
NS: 触った瞬間、自然というかやさしいような手触り、次に松ぼっくりだというのが分かって、かさの開いているのと開いていないのがあるのが分かった。
TT: 片手で一瞬触っただけで松ぼっくりだと分かってしまった。たくさんあるというのと、感覚が懐しい、今までに触ったことがあるという感じだった。
OS: すぐに松ぼっくりだと分かった。開いているのとそうでないのがあること、たくさんあるなあと思った。
SK: 袋の中に手をつっこんだらすぐ松ぼっくりと分かった。手で握って周りなどを観察した。

2.大鋸屑を原料とした木の粘土で作った品(手のひら大の平べったい楕円形で、表に人の顔のようなのを刻んであり、裏には魚に近いような形の輪郭が彫られている)
OT: 第一印象は平べったい物。触れ方のポイントとして、左右対称になっていることが分かった。裏にも、ちょっとだけ角張っていて変化した模様のようなのがある。次に連想してみると、左右対称で順番に上から触っていくと人の顔だと分かった。しかしどんな顔かは分からない、目・鼻・口があるということだけ分かる。裏については、あいかわらずまったく分からない状態。
MT: 触った感じはかさかさしてるなあと思った。質感からは、これは何かが分からなかった。手に付いた匂いを嗅いでみて、土のような木のような匂いがした。だから、そういうのを固めて作った物だなあと思った。平べったい所にすうっととんがった物があった。その周りを触っているうちに、それが鼻みたいで、上に目があって、下が口みたいな気がした。これはお面ではないかと思った。
KW: ぱっと触った時は紙粘土細工かなと思ったが、ゆっくり触ってみたら分からなくなった。材質が分からないというのは、すごく分からないという感じになってしまう。かるくたたいてみたりしても分からない。海綿の殻の跡かなあ、なにかの岩石のレプリカなのかなあとか、いっこうに分からなかった。
NS: そんなに固くもないし、一瞬木かなあと思った。これは何だろうとうろうろ触っていたが、ようやく片面はぽこっと先が出ていることが分かって、これはどうも鼻らしいことがやっと分かった。裏はなにもないのだろうと思い、裏を無視して表だけを触った。鼻で、ほっぺたみたいなもの、口もあるし目もあるし、髪の毛はないのか耳はないのかと思って、人の顔のだいたい真正面くらいからのものかなあと思った。材質は分からなかった。
TT: 最初の感じは、がさがさして軽いな、持たなくても軽いと思った。回してみたら、平べったくて長円い。真中にとんがったのがあったので、これが表。裏のほうを触っても何だかよく分からないので、表を中心にみた。真中のとんがってるのは鼻だろう、そうすると左右に目があって、下に口があって、耳らしきものがあった。材質は、軽いから紙粘土か粘土か、作られた物だと思った。
OS: 平たかったので上から手を乗せるようにしてみると、ざらざらしていてお面のようだなと思った。次に、初めの自分の感覚が合っているかどうかみるために、両手で全体を触った。髪が短いのかないのかで、女性ではないと思った。頬が高いと思った。男性の顔。材質は木か樹脂か、分からなかった。
SK: 最初触って、平たくてざらざらしていた。しばらく触っているうちに鼻だと気付き、顔だと分かった。どんな顔だとか細かいところは分からなかった。裏のほうは、裏返してみると、引っ込んだ線のようなのがあった。

3.デジカメ(4、5年前の大きめの物)
OB: ぱっと触った感じは、プラスチックの電化製品、ラジオか写真器のようなのだと思った。もっと触ってみると、全体は四角形で、円いスイッチだのレンズのようなのとか、小さな点が10個以上あったり。円いスイッチを回すとかちゃ、かちゃと動いたし、レンズのようなのを押たらぴこぴこ動いたし。私はカメラはよく知らないが、そういう物でしょう。
SK: 四角くて、電気製品だと思った。表や裏や側面にはボタンとか点点のようなのとか細かいボタンというかスイッチのようなの付いていて、たぶんカメラかと思った。
OS: 第一印象は、プラスチックで、ラジカセかカメラかと思った。次に、それが合っているかどうかということで、スイッチがあって、イヤホンジャックのようなのがあって、たぶん単3か単4の乾電池を入れるような所があった。カメラだったらフィルムを入れる場所があると思ったが、それは分からなかった。そうかといって、テープを入れる場所も分からなかった。で、私の結論は、消去法でラジオかなあ、分からないけど。
TT: 四角くてプラスチックの機械だなと思った。持ち上げたら重かった。全体を触ってカメラかと思ったが、ちょっと大きめ、自分の持っているのより大きいのでほんとうにカメラかなあ。あちこちにボタンとかシャッターらしいのとか、触っていいのかなあと思いながら、押したりしていたらちょっと開いたりした。はっきりしないが、カメラかなあ。
NS: 固くって四角いなと思った。押しボタンのようなのとかがあった。紐みたいなのがあり、普通は右に持つので、そのように持って触っていくとシャッターみたいなのがあって、これはカメラかと思った。カメラだとしたら、あんまり触るのはどうかなと思い、物が何かが分かったので触るのをやめた。
KW: すぐに機械物だと分かった。全体を両手で触ってみると、円いシャッターのようなのがあって、カメラかなあ。カメラだったらレンズがあるのにレンズが分からない、でもぺたっとした画面みたいなのがあって、デジカメかなあという感じ。
OT: 最初紐が付いているのに気がついた。周りをずうっと触っていくとボタンがある。窓、ちょっと大きめの四角い窓がある。それでデジカメかなと思った。
[ここで、デジカメを触ったことのないOB・SKさん・OSさんが、ひとしきり、OTさんとMTさんに説明してもらいながらデジカメを触る]

4.犬のおもちゃ(骨の形)
OB: ぱっと触って、あまり詳しく触る気がなくなった。プラスチックか何かでできた棒で、左右の端に、ちょっと形は違うが、ふくらみがあって、その形も極めて対称的な形。今でもその形を頭に浮べることができるくらいとても分かりやすい形。もしかして、握って何かをたたく道具なのかなあ。あまり特徴がなくて、ながくは触っていなかった。
SK: まず、細長くてつるつるしていると感じた。片方の先が丸くて、もう片方の先がとんがった三角みたいな形で、何かなあといろいろ考えて、つぼ押しかなあと思った。
OS: 長いプラスチックだなあと思った。両端がぼこ、ぼこ、となっていて、間違っているかもしれないけど、骨の模型と思った。ただ、どこの骨か分からない、上腕のものではないし。[OBをはじめ、OSさんの観察眼に感心する声があがる。]
TT: つるつるして長いプラスチックだなあというのが第一印象。両手でなで回した。両端に丸いのがあるが、それは両側で形が違う。何かというと、まったく分からない。ただ、自分の経験から、骨の模型かなにかの部品かだろう。
NS: けっこう固くて細長いというのが、初めの感じ。両手であちこち触って、片方が丸くて、もう片方が出っ張っている。テレビで犬がくわえているシーンがぱっと頭の中にあったから、肉の塊が付いている、その肉を取った、犬がくわえている骨、それのプラスチックの模型かなと思った。
KW: すぐプラスチックだなと思って、全体をなでて、骨の形。家に犬がいるが、犬のおもちゃにはいろいろな物があって、おもちゃの中には本物の骨もあるが、これは模型だなあと思った。
OT: 滑らかな樹脂だということが分かって、両側左右を触っていったら、完全に同じものではない。あとは一種の人生経験で、大腿骨かなあと思ったけど、大腿骨だったら太さにたいしてもうちょっと大きい。で、腕の骨かと思ったりする。どちらかはまだ分からない。

5.アンコールワットの模型(ある情文職員がカンボジアに行った時のお土産)
OT: 第一印象は、大きな突起があるなあ、かなりざらざらしてるなあ。大きな突起の付け根を触っていったら、つながっている。何かはぜんぜん分からないで、次の人に回してから考えてみて、ひとつはガウディの建築を思ったが、あれだったらもっと背が高い。もうひとつ思ったのは、動物のアメフラシ。まだよく分からない。
MT: 触った瞬間に、触ったことのある物だと思った。間違いがなければ、過去の触感からアンコールワットの模型と思った。もう「これだ」と思い込んだから、ほかのことはいっさい考えなかった。
KW: まず金属だと感じた。全体を触って、当てずっぽうだが、アンコールワットの模型かなと思った、お土産にあるような。鋳物なのかなあ。
NS: 重くて金属で、なにしろぜんぜん分からなかった。裏からみると、尖っている所は凹んでいる。だから、型にはめて造ったことが分かった。裏は関係ないから表だけ触って、島か岩山の模型と思った。岩山の、真中が高くて、周りに4つある、だからあるいは島の模型かも。
TT: 重たくて、凸凹していて、鋳物であることは分かったが、何かはさっぱり分からなかった。両手で触って、持ち上げるとすごく重くて、真中に大きな突起があって、周りに4つあって、子供に返って自分は何かの道具かなと思った。五徳とか。でもこんな道具はあったかなあ。
OS: 最初触った感じは石膏かなあと思った。ただ、後で隣りの人に回す時ちょっとぶつけたらコーンと音がしたので、ブロンズだと思った。塔があってお堀のようなのがある。全体を触ると、どこから見ても同じ形をしている、だから相似形をしてるなあ。でも何かは分からなくて、建築物で、教会かなあと思った。
SK: まず重いと感じた。全体を触って、真中が高くて周りに円いのがあって、下は四角い、でもそれがいったい何かとなると、まったく分からなかった。
OB: 形は簡単。4隅に円錐みたいなのがあって、中央に大きく高い円錐のようなのがあって、たぶん銅か鉄かで出来ていて、錆がかなり出ている。円錐といっても、段段になっているし、きれいな円ではなく、周りの小さな円は10角形くらいで、中央のは12角形くらい。階段のようなのもいくつかあって、何か建物のようなのをつなげたものだろう、仏塔なんかはどんなのだろうと思ったり、何かは分からなかった。 (私も以前1度触ったことがあることに、後で気付く)

●上の報告を受け、当日交わされた皆さんの発言を私なりにまとめてみました。
・触察能力(表面の触った感じ、材質、重さ、形状など)については、見えない・見えるであまり差がない
 ただし、見たことも触ったこともまったくない物については、見える人の触察力は落ちるのでは(NSさんの意見)。また、詳しく細かい所を調べるとか、系統的に触察する力は、触り慣れている見えない人のほうが優れている場合もある。
・触覚の記憶は残る
 見える人たちも、松ぼっくりや、MTさんのアンコールワットの模型の場合のように、触覚の記憶によって一瞬触っただけで何かが分かっている。
・人生経験の違い
 見える人は直接体験しなくても、実際に触らなくても、見て知っていることがすごく多い。その差が非常に大きい。触ってだけの経験と、触らずに見ての経験(半分経験?)の差が、触っている物が実際に何かを連想したりイメージしたりするさい、とても大きな差となって表われる。
・第1印象の重要性
 初めに触った時の印象が間違った解釈のほうに向かうと、それを修正するのはなかなか難しい。また、触っての最初の印象がまったく何が何だか分からないといった場合には、それ以上詳しく触ることをあきらめてしまうことがある。[触った瞬間の印象は、まず材質などについての物が中心となる。全体の輪郭や詳しい形を知るには、時間をかけた触運動が必要。材質などについてある程度見当がついたほうが、その後安心して触運動的な探索に移れるようだ。]

●メールでの意見
 OTさんとTTさんから次のような意見がありました。(一部修正などしてあります)

OTさん
大きさについて: 展示品の姫路城および触る報告会のアンコールワットの置物について
 身体に比べてずっと大きい建物などは、模型が小さければ小さいという先入観が働いて、大きな建造物を連想することが困難なように思えました。
 アンコールワットの模型も高さが30cmあれば、正確に連想できただろうと思われます。
 (中略)
 私が持参した、建築模型も、あの2倍程度ならば、各部分の位置関係などがイメージしやすくなると思われます。
 地球儀や立体地図にしても、横幅は、少なくとも肩幅サイズ以上ほしいと思うのも、同じ理由かも知れません。
(以上)

TTさん: 実物と模型
 目隠しをして手の感触だけで何かを知るという機会は初めてでしたので、ごく初歩的なことでしょうが、触る品物が実物であるか模型であるかというのが、私にとってはきわめて重要だと思われました。
 実物のほうがわかりやすいです。材質も大きさもそのままなのですから。まつぼっくりを皆すぐにあてることができたのは、触った経験があるとか小さいからとかの理由もあるでしょうが、実物であるという前提もあるのではないでしょうか。実物から受け取るさまざまな触覚情報は、イメージに即座に結びつきます。
 反対に模型になると、材質も大きさもまったく違うわけですから、形状だけが頼りです。模型の類似品を見たか触った経験がないと、見当をつけるのはなかなか難しいです。
 先日は私はすべての品物を実物だとばかり思い込んでいました。模型であるかもしれないとの認識がなかったので、簡単な骨のおもちゃがわかりませんでした。骨に似ていることは分かるのですが、最後まで骨の形に似た「何か知らないもの」でした。

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◆次回の予定
 今回、KWさんから京都市立動物園で生きた動物などを触われるようだとの情報があり、動物園での触る体験会のようなのを見当してみることになりました。
 9月15日、KWさんと京都市立動物園に行き、担当の方と打ち合わせた結果、だいたい次のような企画で実施することになりました。
 テーマ: ゾウのイメージをつかもう (ゾウのミニチュア模型、ゾウの頭骨の標本、耳や足の剥製、鼻のレプリカなどを使って、ゾウの全体的なイメージに挑戦!)
 日時: 11月22日土曜日午後2時くらいから。係の方に 1時間くらいの講演形式で説明してもらいながら、互いにイメージを作り合いましょう。その後、ブタ・ロバ・モルモット・ウサギなど小動物と触れ合うコーナーで楽しみましょう。
 詳しい案内は10月10日前後に送ります。お忙しい時期かとは思いますが、この機会を逃さず、皆さんぜひ参加してください。よろしくお願いいたします。

(2003年9月24日)