触る研究会・触文化研究会第4回例会報告

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日時: 2003年11月22日(土) 14〜16時

テーマ: ゾウのイメージをつかもう

場所: 京都市立動物園

参加者: 会員 7名、会員外 3名 (計10名)

 11月22日は、3連休の最初の日、さらに好天にも恵まれ、京都は予想以上の人出でした。多くの方が結局はバスをあきらめタクシーを利用し、私もふくめ予定の 2時を過ぎてようやく現地当着ということになりました。
 2時10分くらいから、飼育係長の秋久さんより、まず初めに、ふだんはほとんど触ることのできない動物たちのイメージを少しでもつかんでほしいとのことで、色々な動物たちの毛皮を触りながら 1時間余講演していただきました。
 多くは動物園で死んだ動物たちの毛皮で、その中には動物園に併設されている「野生鳥獣救護センター」(市民が持ち込んだ傷ついた野生の鳥類・哺乳類を治療し、できれば野生に返す)で保護されながらも敢えなく亡くなってしまった動物たちの物もあって、皆さん、たとえば店頭の毛皮のコートなどを触っているのとはまったく違った心持ちであったと思います。

 私の記憶に頼って、触った毛皮の種類を以下に記します。(これ以外にも数点あったかもしれません。)
タヌキとキツネ
ニホンイタチ、チョウセンイタチ、テン(黄貂)
イノシシ、シカ、クマ(月輪熊)
リス(シマリスではなく、ニホンリス)
シマウマ
キリンの背中とお腹
ビーバー
オオカミ
ヌートリア
ジャガーとヒョウ
ヘビ(インドニシキヘビ)
ゴマフアザラシ
ダイアナモンキー

 これらの毛皮はほとんど10〜30cm四方ほどの盤上に張り付けられていて、それを順番に触りながら、それぞれの動物の生態や違いなどについて秋久さんより説明を受けました。

 次に、今回のメインテーマである「ゾウのイメージをつかもう」に移りました。まず秋久さんからゾウ(アジアゾウ)について簡単に説明していただき、それから、ゾウの模型、本物のゾウの皮膚、耳の剥製、頭骨の実物、鼻のレプリカを触りました。
 ゾウの模型は木製で、30cmほどの大きなゾウと10cmほどの小さなゾウがセットになったものでした。たぶん実物の10分の1くらいだと思います。
 耳の剥製は30cm余はあったでしょうか、方向が分かりにくくて各自自分の耳の位置に当ててみながら確かめている人もいました。
 ゾウの皮膚は、以下の皆さんの感想にも書いてあるように、驚き物だったようです。
 頭骨の実物は、縦・横・高さとも70、80cmくらいあったでしょうか、眼球や耳の入る所が大きく空いていて、そこにどんな風に目や耳が付くのかはちょっと想像しにくかったかもしれません。鼻がどんな風に付いているかは、秋久さんの説明でよく分かったようです。また口の中の葉の様子はよく分かりました。
 鼻のレプリカはシリコンゴム製だそうですが、所々毛があったりしてかなり本物ぽかったです。半円筒形で 1.5mくらいあったでしょうか。
 耳の剥製と鼻のレプリカは実際の高さの所(2m近く)で展示していて、ゾウの大きさをイメージするのに役立ったと思います。

 なお、小動物との触れ合いも予定に入れていましたが、すでに時間が過ぎていて、今回は残念ながら無理でした。

 今回は、毛皮を触っての感想とゾウについてどんなイメージを持たれたかについて参加者の皆さんに書いていただき、それをまとめて秋久さんに送りました。
 以下、参加者10人のその文章です。(一部編集した所もあります。)

◆ TT
 秋久さんのお話は大変興味深く、面白かったです。初めて耳にするお話ばかりで、あっという間に時間が過ぎてしまいました。できればもっともっとお話を伺いたかったと思います。
 動物たちの毛皮はどれも温もりがあり、生前の姿はどうだったろうかと思い浮かべながら触らせていただきました。
 ただ、一度にたくさんの動物たちを触ったので、覚えきれませんでした。せっかくの機会にメモを取らなかったことを、今頃後悔しています。
 これらの野生動物は、本物に触る機会はほとんどありませんし、接近して見られるチャンスがそうそうあるわけでもありません。今まで抱いていたイメージとは感触の違うものがずいぶんありました。

●ビーバー
 いつも水に濡れていて、冷たくごわごわしているとばかり想像していました。あんなに柔らかくて厚みがあるなんてびっくりです。
●ヘビ
 爬虫類特有のぬめっとした冷たい感触があるかと想像していましたが無機質っぽく工芸品的な美しい手触りでした。生きているときは恐くてさわれません。
●ゾウ
 思った以上に毛が多く生えていました。毛が泥を体に塗りつける役にたつとは驚きです。
●オオカミ
 ふさふさした犬とまったく同じで、慣れ親しんだ感触です。
●ジャガーとヒョウ
 模様の区別のしかたが分かって嬉しいです。
●タヌキとキツネ
 どちらも犬とよく似ている。
●イノシシ、シカ、クマ
 いずれも固くてごわごわ。
●テン
 コケのような、ベルベットのような、毛足の短いなめらかなソフトな手触りはテンだったでしょうか?
 【小原から】 これは、私も心地よく感じたゴマフアザラシのようです。
●シマウマとキリン
 手触りより鮮やかな模様に感動してしまいました。

 いつか生きている実物をどれかさわれたらいいですね。


◆ SK(全盲)
 毛皮の標本を触っての感想ですが、たぬきの毛はもっと硬いと思っていました。あらいぐまの絨毯のような毛の感触はびっくりしました。説明もすごく分かりやすく、とても楽しかったです。
 ぞうの頭と耳の剥製、鼻のレプリカを触って、その大きさが実感できました。やはり大きさに圧倒されました。頭を触っているのにまるで体を触っているような監事でした。鼻の形は一方が平たくなっているのに驚きました。円筒形のようになっていると思っていました。しかし、頭を触って、そこから体全体をイメージすることはちょっと難しいです。相当大きいことは分かるのですが。体の大きさそのままの模型があったらいいのにと思いました。でもぞうの大体のイメージは掴めたと思います。


◆ 小原(全盲)
 私はとくに生きている動物は怖いという気持ちが先立って、なかなか触れません。毛皮だったら安心です。
 毛皮からその動物のイメージとか生活とかが少しでも想像できればとも思いましたが、それはなかなか難しかったです。でも、草食のほうが粗いかさかさしたような毛で、肉食になるほどつやつやした滑らかな毛になっているのではという観察は、当たらずとも遠からずだったようです。多くの毛皮はきれいに平面に伸ばされていましたが、中には毛皮を通して筋や骨のように堅い隆起を感じられるものもあり、何となく実際の姿に近いような気がしました。
 たぬきやビーバーなどで、上毛の下にはとてもふさふさした軟らかい下毛があることを初めて知りました(この下毛が水を弾いて濡れないようにしているそうです)。これで枕や布団を作ればなどと思ったほどです。
 毛皮で私の印象にとくに残っているのは、ゴマフアザラシです。多くの毛皮ではある方向に毛が倒れているのに、あれはちょっと坊主刈りのように短い毛が立っていました。ヒョウとジャガーの毛皮では、見えているような模様は触ってはまったく確認できませんでしたが、ところどころの毛が立っていて、それが直線的になっていたり円っぽくなっていたり巻いているようになっていたりして、面白かったです。シマウマの縞模様とはいったいどんなものなのかと思っていましたが、縞の部分(白い所)を実際に指で教えてもらって、ある程度想像がつきました。
 蛇の皮は、5mmくらいの格子模様になっている感じで、まるで細工品のようでした。お腹側は模様は薄くなっていて、やはり擦り切れたのかなあと思いました。

 ゾウの全体の大きさをしっかり実感するのはやはり難しいです。木の彫物を触り、その10倍くらいの大きさだろうとは考えても、自分の背の高さを越える物は2,5メートルとか高さとしては分かっても実感としてはつかみにくい感じです。でも、鼻のレプリカや耳の剥製が本物と同じくらいの高さにあったのはとても良かったです。大きさをある程度実感できました。ちょっとびっくりしたのは、ゾウの皮膚です。もうちょっときれいだと思っていましたが、ざらざらしていてあちこち不揃いの毛がまばらに生えていて、ゾウには失礼ですがついだらしないなあと感じてしまいました。

 帰りに触ったワニの右半身の剥製も素晴らしかったです。たぶん 4メートルくらいはあったでしょうか。全体に堅く、足の指や、鱗のようなのがたくさんあったり、尻尾のほうはちょっと鰭のような形になっていて、時間があったらもっと詳しく説明していただきたかったです。

 動物園はやはり触る体験の宝庫なのだと思いました。 4本足の哺乳類は何となくイメージはありますが、今度は爬虫類とか両生類とか、そういう動物たちについても知る体験ができればと願っています。


◆ SS
 頭の中のイメージと、実際の毛皮がずいぶん違っていてびっくりしました。
 特に、象にあんな毛がはえてるとは知りませんでした。
 秋久さんのお話がとても楽しかったです。
 貴重な体験をさせていただいて、ありがとうございました。


◆ NS
 行きなれたと言ってももう10年ほどはご無沙汰していた動物園ですが、ああいった見方もあるのだなあとつくづく感じました。毛は普段触らせてもらえないにしても、象の鼻のレプリカや耳の剥製は見たリ触ったり出来ていたはずですが、まったく記憶にないです。たぶん外の動物だけを見ていたのでしょう。あの建物にも入った記憶はあり、そう言えば何か剥製があったような・・・です。象の印象がありません。いい加減なものだなあとつくづく思います。

●象について
 大きさは実際のものを見て感じていたのとほぼ同じでしたが、体の毛にはややビックリです。硬そうな、肌触りの悪い皮膚だと言う感じを持っていました。そう言えば毛がある?と どこかで聞いたような気がしますが。鼻の感触は意外でした。もっとざらついた感じがあると思っていました。体もあのような感じで毛がついているのでしょうね。ざらざらしていたら、毛などなくても 泥が体につきそうだから(などと勝手に思っています)。鼻は毛などないのかと思っていたら短く立ったものがついていて、なるほどです。象を見たとき耳はこれもほとんど記憶にないです。ついていなかったら、何か変だとは思うと思いますが、どんな感じでついていたのか思い出せません。牙はもう少し丸く上を向いていると思っていましたが、これも違いました。木彫りで感じた事ですが、象の足は思っていたより細いでした。骨格は写真や剥製を見たことがあったので これはあまり持っていた感じとは違いませんでした。でもこれで象はよく知っていると思っていたのですから・・・。

●毛の標本について
 これも見かけではわからないし、ふだんめったに触らせてもらえないのでよかったです。たぬきとビーバーとリスとゴマアザラシ(このような名前だったと思うのですが)の感触がよかったです。ただ触っていくうちに、感触の記憶が薄れてきて(?)後で触りなおすと思っていた感じと少し違っていて、これは触りなれていないからなのかと思いました。蛇の背中とおなかのうろこの違いもなるほどです。あと体の模様の記憶のいい加減さも感じました。

 象の鼻のレプリカがあった部屋に蛇のきれいな骨の標本があって、あれは触るとたぶん壊してしまいそうで触らせていただけないと思いますが、レプリカなどを作って触らせて欲しいなと思いました。他の動物も剥製と骨格の標本を並べておいてほしいなとも思いました。
 今度機会をつくって、平日のあいた日にでも行って、ゆっくり動物を見直して見たいと思いました。


◆ YS(弱視)
 とても分かりやすく新切に説明していただき、ありがとうございました。
 ゾウの脳が人間と同じ大きさだと聞いて驚きました。
 ヒョウやジャガーはもう少し毛深いかと思いましたが、毛が薄かったので、それもびっくりしました。


◆ TK(全盲)
 いろいろな動物の毛皮を触り比べることができて、とてもいい体験をさせていただきました。
 最初に触ったたぬきの毛の柔らかさに驚きました。麒麟と縞馬は、なぜだか想像していたとおりでした。
 熊と狼は、以前に触ったことがあったので、思っていたとおりでした。
 意外だったのが、ビーバーでした。水の中にいるという先入観でもっと毛は、少なくてツルツルしていると思っていました。

 象の肌は前から触ってみたかったので、たのしみにしていました。あのごわごわした感触に圧倒しました。でも泥水浴びの話を聞いて納得しました。
 一番の感激は、象の鼻です。
 内側がなだらかなU字型になっているのには、ビックリしました。
 触覚も兼ね備えていることや物を拾うことなど考えれば機能てきになっていることも実感しました。
 大きな耳、鼻の太さ、長さからも象の全体像を想像しました。

 河馬も触って見たいと思いました。
 象と河馬は、いつもセットでイメージしてしまう私です。


◆ SW
 11月22日の動物園は楽しかったです。
 小動物以外の毛に触ったのは初めてでしたし、特に象の表皮・毛にはびっくりしました。
 他の動物は、なんとなく想像可能な範囲の手触りでしたが、象のそれは、想像を絶するものでした。
 あんなにもじゃもじゃで、毛がその中から出ているなんて!
 あの長い鼻にも、短くてしっかりした毛が生えているなんて!
 生まれて初めて知りました。(他にもまだまだ知らないことがありますが。)
 サイとかカバはどうなんでしょうか。


◆ OS(全盲)
 初めてテーマを伺った時には、そんなに期待もしていなかったのですが、本当に楽しかったし、興味深かったです。
 まず、毛皮ですが、生きてる時には触れにくい動物も多かったので嬉しく思いました。
 用意していただいた毛皮の中で、今まで触れたことがあるのは生きている狐、剥製の鼬、バンビだけです。狸と狼は全く想像と違い意外でした。テンやビーバーは想像もつきませんでした。
 また、あの時は恥ずかしくて口には出せませんでしたが、ジャガーは豹の英語だと思っていましたので、びっくりしましたし、世の中で豹柄といわれているものが実はジャガー柄だというのも面白かったです。
 蛇はシマヘビだったでしょうか。お腹と背中を比べることができて興味深かったです。

 次に、象ですが、毛が動物の毛というより芝生のようなので驚きました。
 ここで反省なのですが、置物の象の牙を私が二回も落としてしまったので、皆さんにきちっとした形でお回しできなかったことを残念に思っています。充分に気を付けていたつもりなのですが、すみません。
 本物の象の頭骨と鼻のレプリカ、耳からアジア象の大きさはかなり把握できたと思います。鼻のレプリカをおよそ本物の位置から下げてあったことが、かなり想像を広げてくれました。前後しますが頭骨に残っていた歯に触れることができて本当によかったと思います。
 細かく言えばもっともっと書きたいことがありますが、これぐらいにしておきます。わたしは、動物に触るのが好きなので珍しいものに一杯触らせて頂いて本当に楽しい一日でした。


◆ KW
 以前動物園には来ていて、きりんの毛皮には触っていたはずなのですが、その記憶が残っていなかったことは、残念でした。前回の例会で、松ぼっくりにさわってすぐにわかったときは触感の記憶って鮮明に残るもんなんだと感動したのですが。こどもの体験とおとなの体験はちがうのかもしれません。
 肉食動物と草食動物の毛の手触りの違いの傾向のお話など興味深かったのですが、見えてしまうと触ることに集中できなくて、残念でした。それとやはり生きている動物に触りたかったなという気がしました。
 象のうんちに触ってみますかというお話もあったので、また機会があれば行ってみたいなあと思いました。


(2003年12月20日)