視覚障害の理解
《障害者》
法的には障害者として認定された人たち(=障害者手帳を持っている人たち)
障害者手帳: 身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳
障害者数: 身体障害者351万6千人、知的障害者45万9千人、精神障害者258万4千人 (障害者白書 平成17年版)
(全人口の約 5%。今後高齢者の割合が増加するとともに、その増加率以上に障害者の割合は増加すると思われる。なお、先進各国に比べると、日本で障害者とされている人たちの割合は半分以下)
「身体障害者程度等級表」における身体障害の種別: 視覚障害、聴覚又は平衡機能障害、音声・言語又はそしゃく機能障害、肢体不自由(上肢、下肢、体幹、脳原性の運動機能障害)、内部障害(心臓、腎臓、呼吸器、ぼうこう又は直腸、小腸の各機能障害、ヒト免疫不全ウイルスによる免疫機能障害)
《身体障害者程度等級表 (身体障害者福祉法施行規則第七条別表第五号)》
その中から視覚障害の部分のみを示す。
一級 両眼の視力(万国式試視力表によって測ったものをいい、屈折異常のある者につい ては、矯正視力について測ったものをいう。以下同じ。)の和が0.01以下のもの
二級 1 両眼の視力の和が0.02以上0.04以下のもの
2 両眼の視野がそれぞれ10度以内でかつ両眼による視野について視能率による
損失率が95パーセント以上のもの
三級 1 両眼の視力の和が0.05以上0.08以下のもの
2 両眼の視野がそれぞれ10 度以内でかつ両眼による視野について視能率による
損失率が90パーセント以上のもの
四級 1 両眼の視力の和が0.09以上0.12以下のもの
2 両眼の視野がそれぞれ10度以内のもの
五級 1 両眼の視力の和が0.13以上0.2以下のもの
2 両眼による視野の二分の一以上が欠けているもの
六級 一眼の視力が0.02以下、他眼の視力が0.6以下のもので、両眼の視力の和が0.2を
超えるもの
*視覚障害は視力と視野で判定され、色盲などは要件には入っていない。
《身体障害者・児 実態調査》
身体障害者: 18歳以上、 身体障害児: 18歳未満。
標本調査に基づく推計値。
(以下の表では、実数の単位は千人、 ( ) 内は 構成比(%))
●障害の種類別にみた身体障害者数
総数 視覚障害 聴覚言語障害 肢体不自由 内部障害 重複障害(再掲)
1996年
2,933 305 350 1,657 621 179
(100.0) (10.4) (11.9) (56.5) (21.2) (6.1)
2001年
3,245 301 346 1,749 849 175
(100.0) (9.3) (10.7) (53.9) (26.2) (5.4)
(注)視覚障害児については、1996年が 5,600人で障害児全体(81,600人)の 6.9%、2001年が 4,800人で障害児全体(81,900人)の 5.9%
●視覚障害者の年齢階級別構成
18〜19 20〜29 30〜39 40〜49 50〜59 60〜64 65〜69 70〜 不詳
1996年
1 7 12 26 43 31 36 138 10
(0.3) (2.3) (3.9) (8.5) (14.1) (10.2) (11.8) (45.2) (3.3)
2001年
- 7 8 16 47 29 37 155 2
(-) (2.3) (2.7) (5.3) (15.6) (9.6) (12.3) (51.5) (0.7)
●視覚障害者の等級別構成(2001年)
総数 1級 2級 3級 4級 5級 6級 不明
301 105 74 27 28 34 32 1
(100.0) (34.9) (24.6) (9.0) (9.3) (11.3) (10.6) (0.3)
●視覚障害者の等級別にみた点字修得の状況(2001年、点字のできる人数と構成比)
総数 1級 2級 3級 4級 5級 6級
32 22 9 - 1 1 -
(10.6) (21.0) (12.2) (-) (3.6) (2.9) (-)
●視覚障害者の年齢階級別にみた点字修得の状況(1996年、点字ができる人数と構成比)
総数 18〜19歳 20〜29歳 30〜39歳 40〜49歳 50〜59歳 60〜69歳 70〜
28 - 2 3 9 5 5 3
(9.2) (-) (28.6) (25.0) (34.6) (11.6) (7.5) (2.2)
●視覚障害者の情報の入手方法(複数回答) (2001年)
テレビ(一般放送) 218 (72.4)
家族・友人 176 (58.5)
ラジオ 167 (55.5)
一般図書・新聞・雑誌 78 (25.9)
自治体公報 47 (15.6)
録音・点字図書 22 (7.3)
携帯電話 11 (3.7)
ファックス 3 (1.0)
●視覚障害者のパソコンの利用状況(2001年)
毎日利用する 10 (3.3)
たまに利用する 5 (1.7)
ほとんど利用しない 4 (1.3)
まったく利用しない 240 (79.7)
《失明の主な原因》
●先天素因
●外傷
●中毒
主に未熟児網膜症
●疾病
糖尿病性網膜症、緑内障、白内障、網膜剥離、網膜色素変性症、ベーチェット病、ぶどう膜炎、網膜芽細胞腫、各種の黄斑疾患等
《視覚の特徴》 (触覚と比較して)
・視野が広い(単眼視の場合、上方60度、内方60度、下方70度、外方100度)、一度に全体を見通すことができる
・受け取れる情報量が非常に多い(単位時間当たり、聴覚の約百倍、触覚の約1万倍と言われる)
・分解能がきわめて高い(視力1.0で0.01度)
・明暗・色の識別、立体視ができる
《視覚障害に起因するハンディ》
●行動の制限
移動・運動・操作能力が制限され、とくに未知の環境での消極性をもたらす。
●視覚的情報の欠如
知識の80%以上が視覚から得られると言われている。とくに視覚経験がまったく無い場合、具体的な概念形成や言語機能の発達にも影響する。さらに人とのコミュニケーションにおいても、見えない人の方から積極的に声をかけにくかったり、表情や身振りなど否言語的情報の欠如によるハンディもある。
●視覚的模倣の欠如
目が見えていれば模倣によって自発的に修得できる動作や技術を、視覚障害児・者は一つ一つ人から教えられなければならない。→自主性の欠如。
●社会の態度
視覚障害を理由にした、一般の人たち、とくに身の回りの親・家族・先生・友達・同僚等の特別な態度が、視覚障害児・者のパーソナリティ形成や価値観に大きく影響したり、各種の能力の発達を阻害したりすることがある。また、制度的に教育や就業の機会が奪われていることもある。
《視覚障害を補う他の感覚》
視覚障害者は、視覚以外の感覚を総動員して外界の状況を知ろうとする。そのため、経験豊富な視覚障害者は、一般の人がふつうはあまり気にしないような小さな刺激にも敏感に反応して、それらから状況を総合的に判断できる。
(アイマスクを使用した視覚障害体験では、ふだんは気付かないような様々な音や足の裏の感覚にも敏感になると言う人が多い。)
また、残存視覚がある場合は、拡大鏡などその人の視覚に合った補助具も使いながら、残存視覚をできるだけ有効に利用できるよう訓練する。
●聴覚
日常生活で必要な情報の多くは聴覚から得られる。
カセットテープやCDによる〈耳からの読書〉、ラジオ・テレビ・映画の聴取、歩行時における、周囲の状況の把握や危険からの回避等。
聴覚によって、音源の位置やその移動の様子、さらには主に反射音などを利用することにより、大きな建物や物体の存在、空間の広がりの様子などをある程度把握できるが、他の騒音や反響音、風の影響などにより乱されることが多い。(風雨の日の歩行はかなり困難)
●触覚
皮膚感覚の一つである触覚は、聴覚と共に重要な感覚。
嗜先での点字の触読(高齢になってからの失明者、病気などで指先の感覚が鈍くなっている人には難しい)のほか、調理、掃除、炊事、洗濯等の日常の作業は主に触覚に依っている。歩行時には、杖先や足裏からの触覚情報、さらに皮膚で感じる空気の流れも役立つ。
いわゆる〈バリアフリー〉商品には、触覚で識別できる物が多い。
温覚や冷覚も調理や危険の回避などに役立つ。また、陽は熱として感じられ、天候だけでなく、陽射しの方向から東西南北をおおよそ知ることができる。
なお、触覚により、普通視覚だけではまったくあるいははっきりとは分からない様々な特質(物の表面のテクスチャ、重さ、物の内部の様子、物の裏側や凹んだ所など見え難い場所の細部など)を知ることができる。
●嗅覚
周囲の状況を知るのに大切。歩行時には、コーヒー店、靴屋、本屋、花屋などを知ることができる。また花や草木の匂いで、自然や季節の移り変わりをたのしめる。
《文献》
『視覚障害学入門』佐藤泰正編、学芸図書、 1997年
『視覚障害者の介護技術(新版)―介護福祉士のために』直居鉄監修、YNT企画、 1999年
《URL》
●障害者白書 平成17年版
http://www8.cao.go.jp/shougai/whitepaper/h17hakusho/zenbun/index.html
●平成13年身体障害児・者実態調査結果
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2002/08/h0808-2.html
●平成8年身体障害者実態調査及び身体障害児実態調査の概要について
http://www1.mhlw.go.jp/toukei/h8sinsyou_9/
(2000年7月21日、2002年9月10日、2006年4月15日改訂)