*以下の切れ続きについての記述は、主に日本ライトハウスが出版している『化学』の点字教科書の表記を参考に、私がまとめたものです。ですから、以下に示す原則は一つの参考例であって、かならずしもこれに従う必要はありません。
まず、一般の言葉か、専門の化学物質名などかを区別する。
1 一般の言葉
一般の言葉については、一般の点字表記にしたがい、適宜マス空けする。
メタンガス [メタンガス]
プロパンガス [プロパン■ガス]
ドライアイス [ドライ■アイス]
イソプレンゴム [イソプレン■ゴム]
ガスクロマトグラフィー [ガス■クロマトグラフィー]
温室効果ガス [オンシツ■コーカ■ガス]
2 専門的な用語
@片仮名で表記されている化学物質名などについては、7拍までは続けて書き、8拍以上の場合は、大きな意味の切れ目につなぎ符(36の点)を入れてひと続きに書く。
*情報文化センターで点訳している図書では、つなぎ符は使わず、その部分をマス空けにしている。
どんな所で意味の切れ目になるのかを判断するのに、下の〈参考資料〉を使ってください。
このうち、ギリシア語由来の数詞は、多くの場合直後の基にだけかかると判断してよい(ギリシア語数詞の直後は続けることになる)。異性体を示す「イソ」も、同様に扱って良い。また、重合体を示す「ポリ」は、その後の物質名全体にかかると判断される。
ヨードホルム [ヨードホルム]
アセトアニリド [アセトアニリド]
アセトアルデヒド [アセト−アルデヒド]
スルファニルアミド [スルファニル−アミド]
デオキシリボース [デオキシ−リボース]
ニトロトルエン [ニトロトルエン]
トリニトロトルエン [トリニトロ−トルエン]
テトラクロロメタン [テトラクロロ−メタン]
イソプロピルベンゼン [イソプロピル−ベンゼン]
ポリエチレン [ポリエチレン]
ポリエチレンテレフタラート [ポリ−エチレン−テレフタラート]
プロスタグランジン [プロスタグランジン]
A原本で主にアルファベットや数字の後にハイフンが使われている場合は、点字ではそれを 36の点で示す。また数字の間のコンマ(あるいはピリオド)は省いて数字を続けて点訳する。
p-キシレン [p−キシレン]
p-ジクロロベンゼン [p−ジクロロ−ベンゼン]
α-アミノサン [α−アミノサン]
シス-トランス異性体 [シス−トランス■イセイタイ]
シス-2-ブテン [シス−2−ブテン]
2,4,6-トリニトロトルエン [246−トリニトロ−トルエン]
6,6-ナイロン [66−ナイロン]
B漢字を含む物質名などについては、ほぼ一般の語のマス空けに準じてよい。
なお、並列の意味の中点は省略しない。
塩化銅 [エンカドー]
塩化鉛 [エンカ■ナマリ]
塩化亜鉛 [エンカ■アエン]
塩化カルシウム [エンカ■カルシウム]
ポリ塩化ビニル [ポリ■エンカ■ビニル]
ヘキサシアノ鉄酸カリウム [ヘキサシアノテツサン■カリウム]
テトラアクア銅イオン [テトラアクアドー■イオン]
銅アンモニアレーヨン [ドーアンモニア■レーヨン]
ヒドロキシカルボン酸 [ヒドロキシ−カルボンサン]
白金・ロジウム触媒 [ハッキン・■ロジウム■ショクバイ]
【補足】日本ライトハウスが出版している化学の教科書では、
金原子 [キン■ゲンシ]
鉄イオン [テツ■イオン]
のようにしている。
〈参考資料〉 化学物質中の意味のある言葉
◆ギリシア語数詞
1 モノ mono
2 ジ di
3 トリ tri
4 テトラ tetra
5 ペンタ penta
6 ヘキサ hexa
7 ヘプタ hepta
8 オクタ octa
9 ノナ nona
10 デカ deca
11 ウンデカ undeca
12 ドデカ dodeca
13 トリデカ trideca
14 テトラデカ tetradeca
15 ペンタデカ pentadeca
16 ヘキサデカ hexadeca
17 ヘプタデカ heptadeca
18 オクタデカ octadeca
19 ノナデカ nonadeca
20 イコサ icosa
エイコサ eicosa
21 ヘンイコサ henicosa
ヘンエイコサ heneicosa
22 ドコサ docosa
23 トリコサ tricosa
24 テトラコサ tetracosa
25 ペンタコサ pentacosa
26 ヘキサコサ hexacosa
27 ヘプタコサ heptacosa
28 オクタコサ octacosa
29 ノナコサ nonacosa
30 トリアコンタ triaconta
40 テトラコンタ tetraconta
50 ペンタコンタ pentaconta
◆主な官能基
アセチル基 CH3CO-
アゾ結合 -N=N-
アミド結合 -NH-CO-
アミノ基 -NH2
アリル基 -CH2-CH=CH2
アルキル基 CnH2n+1- (一般式)
(メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基……)
アルキレン基 -CnH2n- (一般式)
(メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基……)
アルデヒド基 -CHO
イミノ基 =NH
エーテル結合 -O-
カルボキシル基 -COOH
カルボニル基 >C=O
シアノ基 -CN
スルフィド結合 -S-
スルホ基 -SO3H
ニトロ基 -NO2
ヒドロキシル基(水酸基) -OH
ビニル基 CH2=CH-
フェニル基 C6H5-
●ハロゲンの置換物
フッ素:フルオロ
塩素:クロロ
臭素:ブロモ
ヨウ素:ヨード
●その他の特性基など
(各例語について、点字での表記の仕方を考えてみてください。)
アジ: アジ化ナトリウム
アジド: アジドチミジン
アセト: アセトアミノフェン
アミル: アミルアルコール
アミン: エタノールアミン
アリール: アリール炭化水素
イソ: イソプロピルアルコール (2-プロパノール
エトキシ: エトキシエタン
エポキシ: エポキシ樹脂
オキシ: オキシアルデヒド、オキシテトラサイクリン
オキソ: オキソトレモリン、オキソグルタル酸デヒドロゲナーゼ
シクロ(閉じた環構造): シクロペンタン
チオ: チオアセトアミド
チオール: プロパンチオール
チオキシ: アミノチオキシカルボン酸
デオキシ: デオキシベンゾイン
デヒドロ: デヒドロコレステロール
ナフチル: ナフチルアミン
ニトリル: アクリロニトリル
ヒドロ: ヘキサヒドロベンゼン
フォスフィノ(リン化合物): ジフェニルフォスフィノメタン
ベンジル: ベンジルアルコール
ベンゾ: ベンゾトリクロリド
ホルム: ホルムアルデヒド
メトキシ: 2-メトキシ-2-メチルブタン
ラクタム: カプロラクタム
*その他、次のような物質名の点字表記を考えてみてください。
エイコサペンタエン酸
ドコサヘキサエン酸
* −エンは、二重結合を示す。ペンタエンは二重結合が5つ、ヘキサエンは二重結合が6つ。
メチルエチルエーテル
ブロモチモールブルー
コルチコステロイド(副腎皮質ホルモン)
(2006年1月10日、2014年11月2日更新)