第4回 触図作製のポイント(エーデルを中心に)

上に戻る


 
T 触図作成のための基本知識
 
◆触知覚の特徴
 
●直接的、部分的
 直接触らなければ、1ミリでも離れていれば、まったく分からない。指先が実際に触れている所しか分からない。
 一度に触って分かっている部分は、指先くらいのごく小部分
 ・用紙全体をもれなく触る技術が必要
 ・形など、図全体を触って分かるようになるためには、指の動かし方と指の動きを頭の中でイメージするための訓練が必要
 ・離れている点や線をつなげて、全体の形などを理解するのは難しい
 ・離れている2つの図形を比較するのは難しい
 *複雑な図、あるいは1枚の用紙に複数の図を描く時は、用紙のどの部分にどんな図が描かれているかを知らせる。
 *触知覚ではまず部分から出発するので、それぞれの部分を丁寧に描くことが必要
 
 (参考図) アフリカと南米の海岸線の比較
 
●継時的
 指を連続的に動かすことで、その時々に得られる各部分の情報を頭の中でつなぎ合わせ、図全体のイメージに近づくことができる。
 ・図全体がどうなっているかが分かるのにとても時間がかかる
 ・形は、面で示すよりも、輪郭線で示すほうが、指でたどりやすく分かりやすい
 *何通りもの色で色分けされているような図では、各領域の境界線をはっきり示すことがまず必要
 
●細かい所までは触っては分からない
 触覚ではっきりと区別できるのは 2mmくらいまでが限度。
 ・2、3mm以下の変化を正確に触図化しても、触覚でははっきり分からず、ただ邪魔な情報にしかならないことがある。
 *あまり重要でなければ、そのような細かい変化は簡略化して滑らかな線で表したほうが良い。
 
 (参考図) 伊勢湾の海岸線の図。上は小点の点間隔3で、できるだけ正確に描いている。下は中点の5で、大まかに描いている。小点でいくら正確に描いても触ってはほとんど識別不可能。中点で描くと、触ってはっきり湾だと分かるのはせいぜい3〜4mmくらいまで。
 
 
◆適切な触図化
 
●大きさ
 一般的には、細かい所も触って分かるように拡大して触図化する。
 ただし、図が大きくなればなるほど、触って全体を理解するのに時間がかかる。
 単純な図は、手のひらくらい前後の大きさで良い。
 
●方向
 効率よく触図を理解するには両手指を使うのが良い。
 ・両手指を使った触図の見方には、左右対称の図がもっとも分かりやすい。
 例:直方体の展開図は、縦長の左右対称の形が良い。蝶など昆虫は頭を上にした、左右対称になった描き方が分かりやすい。
 
●配置
 点字でも触図でも、上から下へ、左から右へ、順番に触ることが多い。
 ・そういう指の動きも考慮して、説明文や図の配置を考える。
 ・重要なものほど、初めに(上または左に)。 (例外もありますが)
 
●情報は必要最小限に
 原図に描かれていることをそのまま忠実に触図化する必要はない。 (そのまま触図化しても分からないことが多い)
 原図が特に伝えようとしている内容を精選して、それを触図化し、あるいは説明文で補足するようにする。
  ・その意味では、あきらめも必要。
 
【注意】
 触図製作者は、原図を見ながら触図を見ている。読み手は触図だけを見ている。
 ・製作者も、原図を見ないで、触図(および説明文)だけを見てどの程度分かるだろうかを考えてほしい。
 ・触図と、その説明文あるいは本文の内容とが食い違っていないかチェックしてほしい。
 
 
U 分かりやすい点図の要件
 
●点の種類の違い
 点の大きさ・高さの違いにより、点の種類をはっきり触り分けられる
 *エーデルでは、点の大きさについて、小・中・大の3種の点があるが、触ってはっきり区別できるのは、小と中、または小と大の点で、中と大の点の区別はかなり難しい。また、点の高さの違いはエーデルではコントロールできない(プリンタ任せ)。本来は、小さな点ほど高さも低く、大きな点ほど高さも高いのが望ましいが、エーデルでは小の点は高く(それだけ刺激が強い)打出されるのに、大の点の高さはそれほど高くならず、それだけ点の種類の違いが際立たない。
 
●線種の違い
 実線、点線、破線等。さらに、実線・点線・破線等についても、いくつかの種類を使い分けられる。(ただし、一つの図で使う線種は 3、4種くらいまでにしたほうが良い。)
 *エーデルでは、はっきり区別できるのは、小と中、または小と大の線
 
 (参考図) 線種と点間隔のサンプル
 
 
●輪郭がしっかりたどれるか
 点が一定の間隔で連続していることが必要
 *エーデルでは、急激にカーブする所では点間隔が広がってしまう。また斜め線は、しばしばぎざぎざになってしまうことがある。
 
●図要素とそれに添えられている点字がしっかり区別でき、また対応が分かりやすいか
 図要素と点字の間には、最低1点以上の空白が必要
 *エーデルでは、図の中の点と点字の点はまったく同じなので、なお注意が必要
 
 
◆触図化する時のポイント
 原図が少し複雑になると、原図をそのまま点図化しただけでは、触覚ではほとんど判別できないことが多い。
 
●精選と単純化
 ・図の意味を理解するのにたいして関係ない部分は、思い切って簡略化したり、省略する
 ・輪郭の細かい部分は、必要なければ、省略し滑らかにする
 
●典型的であること
 ・似たような図・写真がいくつかある時もっとも特徴がはっきりしている典型的な物を触図化する
 ・その物の特徴がもっともよく表われるような方向から見た図を描く(対称、とくに左右対称の形が分かりやすい)
 
●特徴的であること
 ・他の物との違いがよくわかるような特徴を触ってはっきり分かるようにする
 
●クリアであること
 ・輪郭線、領域の境界、点字と図の線や点などが、触ってはっきり分かるようにする
 
●予測しながら図を触れるようにする
 ・図を触る前に、その図が何の図なのか、どの方向から見た図か、全体のどの部分を表わした図なのかなどについて、できるだけ言葉で説明するようにする(図のタイトルあるいは本文にそのようなことが書いてあれば良いが、書いていない場合は点訳者注で説明する)
 
●必要に応じて、原図には書かれていない言葉、描かれていない(見えていない)部分を補う
 言葉の例:例えば地図で、地名が書かれていなくても見てすぐどの地域か分かるような場合、しばしば触っては分かるのに時間がかかることが多いので、手掛りとなるような地名(海洋・大陸・国名など)を入れたほうが良い場合がある。
 描かれていない(見えていない)部分の例:
  @地図で海岸線が少しだけ描かれている場合、それがどこの海岸線なのか分かりにくいので、もっと範囲をひろげて海岸線を伸ばして描く。
  Aコイルのように螺旋系に巻いている図や、立体を見取図で示すような場合、見えていない向こう側の線まで触ってたどれるようにすると分かりやすくなることがある
  B理科の実験装置などの図で、例えば管は、途中のコルク線などに遮られずに全部つながってたどれるようにする
 
 (参考図) プロペラカーの図。原本では作り方の説明と写真(写真では構造までは見て分からない)。作り方の説明から、プロペラカーの上から見た図を(想像して)描いた図。
 
●触図では一つの図として描くのが難しい場合
 次のように数個の図に分けて触図化すると良い。(その場合は、原図を触図ではどのように分割し配置してあるのかを点訳者注ではっきり説明するようにする。)
 @全体図と、その中の一部の拡大図
 A上から見た図と断面図など、異なった方向から見た図
 Bエネルギーの流れと物質の循環、地勢図と行政図といったように、視点別に分けた図
 C各部分ごとに分割した図
 
 (参考図1) 花の構造。上に花の全体図、下に雌蕊を中心に描いた図。
 (参考図2表データ裏データ) 植物の茎の断面図。上に横断面、下に縦断面の図。このような場合ふつうは横断面と縦断面を離して描くことが多いが、横断面と縦断面の図を接触させて描き、その境界に横線を引いている。横線で折って触ると、とてもリアルに立体的に茎の構造が分かる。
 
 
V エーデルを使った作図法の目安―点種と点間隔を中心に―
 エーデルでは、B5判の場合、横480ドット×縦684ドットの組み合わせで指定される位置に点が打ち出されることで図が描かれる。(A4判の場合は 600×745ドット) 1ドットは約0.33mm。
 点の種類は、小、中、大の3種。各点の大きさ(基部の直径)は、小が 0.7mm、中が 1.5mm、大が 1.7mm。(中の点と大の点の違いは僅か。)各点の高さはエーデルではコントロールできない。
 点の間隔は、小が3〜20、中が4〜21、大が5〜22で、各点につき18通り。 (初期設定は、小点が6、中点が 7、大点が 8。適宜変更して使わなければならない。)
 (なお、エーデルで打ち出される点字は中の点で、 1の点と 4の点の中心間の距離は 6ドット、初めのマスの 4の点と次のマスの 1の点の距離は 9ドット。)
 
【補足】
 このほかに、「補」という点種(点間隔は 6〜23)が用意されている。これは画面にだけ現われ、印刷はされない。実際の点図を描く時の補助的な線として使ったり、回転や移動・複写などを行うさいの基準点・基準線として使うなど、有効に活用してほしい。
 厚い用紙を使って打ち出したほうが、小・中・大の点の区別がしやすいことが多い。
 ver.6.25からは、メニューバーのオプションの「作図」で、各点種の点間隔の初期値を6〜12の範囲で設定できるようになった。
 
【注意】以下に示す〈目安〉は、エーデルの特徴と、私がこれまでエーデルもふくめいろいろな種類の多くの点図を触ってきた経験とを考え合せて提案するものです。個人的な好みや私自身の触知の特徴もかなり反映しているはずですので、この目安は参考程度のものとして活用していただければと思います。
 
1 実線
●小点
 縦・横の直線、斜め線、滑らかな曲線: 点間隔 5
 カーブのはげしい曲線や折れ線: 点間隔 4
 (入り組んだ海岸線、生物体の複雑な部分などには、点間隔 3を使っても良い。)
 引出線: 点間隔 7または8
 グラフの格子線: 点間隔 7、または 3
【注意】
 1.小点の点間隔 7だと、各点がシャープに打ち出され全体としてやや強めの触刺激になる。小点の点間隔 3だと、(プリンタの状態にもよるが)打ち出された時に密に連なった各点が互いに干渉し合い全体としてやや弱めの触刺激になることがある。
 2. グラフの格子線は、数学の座標平面を示す方眼などを除き、ふつうはグラフ上の特定の点の数値を読み取るために必要な特定の限られた線だけにしたほうが良い。また、小点で格子点だけを示す方法でも良い。
 3. グラフの数本の線とともに、数値の読み取りのために格子線をすべて入れたほうが良い場合は、格子線を裏に出した点(中点で点間隔 7)で示すのが良い。それが難しい場合は、点間隔 3または 7の格子線を使っても良い(グラフの線が目立つように格子線を点筆の背などで軽く消して弱めると、触知しやすくなる)。
 
●中点
 縦・横の直線、斜め線、滑らかな曲線: 点間隔 6
 カーブのはげしい曲線や折れ線:点間隔 5
【補足】
 1. 主要な輪郭線には、中点の実線がもっとも普通。ただし、図中で数種の線種が使われている場合、図中での重要度や触覚による判別のしやすさなどを考慮して、小点(ときには大点)を使ったほうが良い場合もある。
 2. グラフの縦・横軸は、普通は中点(点間隔 7)の実線を使う。ただし、中点の実線をふくめグラフの線が数本あるような図では、グラフの軸を小点(点間隔 6)の実線にしたほうが良いこともある(とくに中点の実線がグラフの軸とほとんど平行で区別しにくいような場合)。
 3.グラフの軸に付ける目盛は軸の外側にする。グラフの軸が小点の時も、目盛点は中点にしたほうが良い。
 4. グラフの格子線などを裏に出した線で示す場合は、中点の実線(点間隔7)を使う。
 
●大点
 縦・横の直線: 点間隔 8 (棒グラフの棒に使っても良い)
 斜め線・滑らかな曲線: 点間隔 7
【注意】カーブのはげしい曲線や折れ線に大点の実線や点線を多用するのは避けたほうが良い。
 
【補足】
 1. 入り組んだ海岸線や音の波形などのように、細かく激しい変化をより正確に表すには、点の大きさ・点間隔ともにより小さくしたほうが良い(例: 小点の点間隔 3)。また、例えば同じ海岸線を描く場合でも、中点を使うなら2、3mmくらいの細かい変化は省略して滑らかに描き、細かく描く必要があれば小点を使って描くといった配慮が必要である。
 2. タブレットを使って曲線を描く場合は、小点では点間隔 4、中点では点間隔 5が良い。
【注意】実線の点間隔が非常に狭いと(小の 3、中の 4、大の 5、6)、(プリンタの状態にもよるが)隣り合う点が緩衝し合って全体として触刺激の弱い線になることが多い。この現象はとくに大点の場合に顕著で、中点と大点の区別が極めて困難になる。
 
2 点線
●小点
 縦・横の直線: 点間隔 11
 斜め線・滑らかな曲線: 点間隔 10
 はげしく変化する曲線・折れ線: 点間隔 9
 
●中点
 縦・横の直線: 点間隔 12
 斜め線・滑らかな曲線: 点間隔 11
 はげしく変化する曲線・折れ線: 点間隔 10
 
●大点
 縦・横の直線: 点間隔 14
 斜め線・滑らかな曲線: 点間隔 12
 
【注意】
 1. 点線中の急激に変化する部分は、点間が大きく空くことがあるので、その間は点間隔を 2くらい狭くして描くか、フリーハンドで1点ずつ点を入れて、きれいに点線をたどれるようにする。
 2. 点線の場合、始点と終点の距離が短くなるほど、同じ点間隔を指定しても、実際の点間がしばしば広くなることがある。
  図の凡例で点線を示す時は、点線の長さが短いと実際の図中での点線での点間隔とずれてしまうことがあるので、凡例中での点線は 2cm以上(4、5マス分以上)の長さがあったほうが良い。
 
【補足】立体的に図を表す時、見えている部分は実線で、見えていない部分は点線で示している。また、小点の点線は図中の補助的な線にも使っている。
【注意】
 線の種類をしっかり区別する必要がある場合は、
中点の実線と大点の実線
中点の点線と大点の点線
の組み合せはできるだけ使わないようにする。
 
3 破線
 (エーデルでは 3種の破線が用意されているが、実際に使うのは 2点置きに 1点切るのみの破線だけにしたほうが良い。)
小点: 点間隔 5
中点: 点間隔 6
大点: 点間隔 8
【注意】破線では一般に、複雑な曲線や急なカーブは描くのは難しい。小点の破線は、図中の補助的な線や、範囲を示す引出し線に使ってもよい。中点や大点の破線は、グラフの複数の線をどうしても識別しなければならない時や、鉄道路線や道路などに限ったほうが良い。
 
4 二重線(太線)
小点: 点間隔 5、幅 5(または6)
中点: 点間隔 6、幅 6(または7)
大点: 点間隔 8、幅 8
【注意】幅をこれ以下にすると、画面上ではきれいな二重線として描かれていても、打ち出されると二重線にはならず一本線に近くなっていることがよくある。
【補足】小点の二重線は構造式中の二重結合などに使う。また中点や大点の二重線は、棒グラフの棒や山脈などに使っても良い。
 
5 矢印
 矢印の先の3角部分は、矢印の線が実線・点線いずれの場合も、実線にする。そして、矢印の先端の頂点をふくめ、両側に最低 3点は必要。矢印先端の頂点の角度は90度が望ましい。
 また、矢印の先端の頂点の手前は 1点(ないし2点)分空白にする。
 実線の途中に矢印が入り込んでいる場合も、矢印の頂点の前後をそれぞれ 1点分ずつ空白にする。
 矢印の線が小点の実線または点線の時、矢印の先の3角部分だけを中点に変えると、矢印がより見やすくなる。
 
6 面記号
 面記号にはふつう小点を使う。
 面の違いを示すために、エーデルでは領域を塗りつぶすペイントの記号として15種が用意されている。この内、範囲がある程度広い領域(縦・横とも1〜2cm以上)には、次の5種を優先して使うと良い。
べた塗り(粗)
縦線(粗)
横線(粗)
右上がり斜線(粗)
右下がり斜線(粗)
 また面記号として、正方格子を点間隔を変えて(例えば、 6、12、18の3種など)使っても良い。(触読上は、各種のペイントを使うより正方格子のほうが見やすくなることも多い。)
 海など広い領域については、裏に出した点(中点)を用いても良い。
 面の範囲が狭い場合には、べた塗り(密)を用いると良い。
 とくに理科の図で、液体の範囲を示すのには、−(横3点)を使っても良い。
 地層などのように、幅が数ミリくらいの細長い部分には、(ペイントではなく)中点や大点を適宜並べても良い。
 
●面記号と境界線
 複数の面記号が直接接していると、各面の輪郭をたどりにくく、面の境界が不明瞭になる。できるだけ面の境界線を中点(ときには大点)の実線で描くようにし、さらに境界線と面記号の間にわずかに空白部を置くようにすると、触読しやすい図になる。
【補足】小点の面記号はしばしば触刺激としてかなり強く感じるので、そのようなときは面記号全体を軽く消したほうが触読しやすい図になる。
 
●面記号を使わない方法
 面が広い場合には、面記号を使わずに境界線だけを示し、各面の示す内容を言葉で書き入れても良い。
 また、地層の分布や作物の分布などの図では、それぞれ該当する言葉の頭文字を1字採ってその文字を複数個並べても良い。(触読上は、面記号による区別よりも、直接言葉を書き入れたほうが便利なことが多い。)
 
7 文字と図記号の距離
 文字と図の線や点などとの間は、ふつう中点 2点分くらいスペースを置く。(最低でも中点 1点分のスペースは必要である。とくに、 5、6マス以上の文字列と図の線が平行になっている時は、最低でも中点 1点半分以上のスペースを置くようにする。)
 枠の中に文字を入れる時は、上下左右とも最低中点 1点半以上スペースを入れるようにする。また枠線としては中点よりも小点を使ったほうが、中の文字が読みやすくなる。
【補足】原図で枠囲みなどで強調されている言葉を、枠を使わず、「 」等の中に入れて示す方法もある。
 
8 線の交差のさせ方
 実線どうしの交差によって線がたどりにくくなりそうな場合は、どちらかの線を優先し(ふつうは、小点よりも中点、中点よりも大点を優先、あるいは、変化が少なくてたどりやすいほうの線を優先)、もう一方の線を 3点ないし 4点分(20〜30ドットくらい)切って、その空白部を通すようにする。2本の線が鋭角に交わるほど、空白部を広くしたほうが良い。
 線種が異なっており、交差部を越えて各線をなめらかにたどり得る場合は、とくに空白部をもうけなくても良い。
 点線と点線、または点線と実線が交差する時は、できるだけ交点を共通にすると見やすい図になる(交点を各線の始点または終点にすれば良い)。
【補足】
 1. 1点で数本の線が交わったり、 1点に数本の線が集中している時は、その点の回りの密集している点を適宜間引いたほうが良い。
 2. 交わる各線にA、B、…等の記号が付いている時は、各線の両端にその記号を付すと分かりやすい。
 
9 裏面用のデータの作り方
 エーデルで裏に出した線や点を使うには、表面用のデータと裏面用のデータを作らなければならない。打ち出す時は、裏面用のデータから始めたほうが良い。
@表面用のデータを作製する。
A表面用のデータに、裏に出す線や点を補線・補点としていれる。(表面用のデータのグラフや文字と重なる部分は、消しておく。)
B裏に出す補線・補点以外を消して、それを左右対称移動させる。
C補線・補点を、実際に打出される点種(ふつうは中点)に変える。そしてそれを裏面用データとして保存する。
※裏面用のデータを、表面用のデータと重ならずずれないようにうまく打ち出すには、プリンターまたはデータファイルの調節が必要
 プリンターであわせる時: 用紙のとめ位置をかえる。
 データファイルであわせる時: 左右対称移動させる時に中心位置をプリンターに合わせて変える。
【補足】裏に出した点や線は、表から触って微かに分かる程度。裏に出した点は、海など広い領域を表すのに適している。裏に出した線の使用は、グラフの格子線、経線や緯線など、単純な線に限ったほうが良い。
 
 (参考図表データ裏データ) 溶解度のグラフ(格子線を裏に出した線にしている)
 
10 グラフに均等な格子線・格子点を入れる方法
 格子線には小点の点間隔 7(または 3)を使う。
@ツールバーのグリッドのところをグリッド機能ONにする。そしてグリッドの間隔(3〜45)を選ぶ。
 グリッドの間隔は、格子線の点間隔の倍数(あるいはそれより 1くらい大きい値)が良い。(例えば、格子線の点間隔が 7の場合は、グリッド間隔は 21や 35、22や 36など。こうすると、各格子線の交点と格子点が一致しやすい。なお、格子線の点間隔を 3にした場合はこのような考慮はとくに必要ない。)
A点種を小点、点間隔を 7(または 3)にする。
B枠線をクリックして、縦の行数と横の行数(1〜20)を選ぶ。
 格子点だけを描きたいときは、まずグリッド間隔と点間隔を同じにして(例えば 15)格子点だけにし、それを適当な大きさに拡大すると良い。
 
11 その他
●線上の点
 実線・点線の途中にある特定の点は、大点で示す。そしてその大点の前後にそれぞれ1点分ずつくらいの空白をもうける。
 【補足】大点を触ってより分かりやすいように、最大点用の加点器(市販されてはいない。箸の先などを使って手作業でもできる)を使って、より大きな点にしても良い。
 
●1本の連続した線上で点種を変える時
 例えば、同じ線上の途上で、中点の実線から小点の実線に変化させたい時は、変化する所で、1点分くらい空白を入れる。
 
●拡大や点種変更の際の注意
 エーデルでは簡単に図を拡大・縮小できるが、点間隔もそのまま拡大・縮小される。拡大・縮小が ±0.1くらいの割合だと点間隔をそのままにしておいて良いが、それ以上だと点間隔を補正したほうが良い。 (拡大・縮小する時に補点に変え、それから元の点種・点間隔で描き直さなければならない。)
 また点種の変更も簡単にできるが、それぞれの点種に応じた適切な点間隔に直したほうが良い。(この場合も、いったん補点に代え、それから適切な点間隔でなぞらなければならない。)
 【補足】拡大・縮小は、縦・横別々に 0.01倍刻みのスケールで細かくできるので、@B5判に図全体がうまく収まるように大きさを調整する、A数本のグラフの線が込み合って分かりにくそうな場合に例えば縦方向だけに拡大する(ただし、拡大率は 1.5倍以内にしたほうが良い)、B図記号の間に点字がうまく入るように調整する、などいろいろと活用できる。
 
●正確な図を描くために
 とくに理科や数学の図では、作画コマンドの中の平行・対称・回転(いずれも複写と移動)機能や、放物線・サインカーブなどの曲線をうまく使うと、正確できれいな図が描ける。
 【注意】回転は、角度に合わせて正確にできるが、元の図をそのまま回転させると点が乱れることが多いので、まず補点で回転を行い、それから指定の点種で描くのが良い。
 
 
●その他の便利な機能
Backspaceキー: 取り消し
 例: 斜線を描いた後に、このキーを押すと斜線が消える
 (Shift + Backspace キーで、直前に取り消した図形が復活します)
 
右クリック: 確定前のときは、右クリックで直前の操作がキャンセルされ、一つ前の操作手順に戻ってやり直すことができる。(何回もさかのぼってやり直すことができる。)
 
Ctrlキー: 前の操作の始点を始点に指定できる
 例: 斜線を描いた後に、このキーを押すと斜線の始点から続けて斜線が引ける
 例: 折れ線や連続曲線を使っているとき、最後にこのキーを押すと図形が閉じる
 
Shiftキー: 前の操作の終点を始点に指定できる
 例: 斜線を描いた後に、このキーを押すと斜線の終点から続けて斜線が引ける
 
F1: グリッド機能 ON/表示のみ/OFF
F2: 中心線の 表示/非表示
F3: 補点の 表示/非表示
F4: 異常接近箇所の 表示/非表示
F5: 点字位置ガイド(片面)の 表示/非表示
F6: 点字位置ガイド(両面)の 表示/非表示
 
ファイルの参照・合成 (メニューバーの[ファイル] → [EDLファイルの参照・合成])
 別のエーデルファイルの図を表示し、それを参考にして作図したり、その図内の指定する領域を作図領域に複写することができる。
 
下絵の利用
 画像データを作図領域に背景(下絵)として表示し、その上で自由に作図操作ができる。
 
《参考》
 エーデルをはじめよう! −Web編−
 
 
◆おわりに:触図は見えない子どもたちの触知能力を高める!
  見えない子どもは見える子どもたちに比べて図や写真に接する機会は極端に少なく、それだけ図を理解する能力が未発達のままになるのは当然。適切な触図を段階的に多数触ることで、見えない子どもたちの触知能力は伸びる。皆さんの作った触図は見えない子どもたちの触って理解する力を開花させ伸ばす練習教材にもなる。とくに低学年では、できるだけ簡単で特徴がはっきり分かる図、またときには触りながら楽しめるような図も入れてほしい。
(2010年11月28日)