三葉虫 ―古生代の代表生物―
古生物の中で知名度は高い。だが、実際はどういう生物だったかというと、化石に見られるその平べったい外見以外は、あまりよくは知られていないのではなかろうか。三葉虫は古生代のほぼ全期間に相当する3億年にわたって存在した。多種多様な種類があり、その数1500属10,000種に及ぶ。大きさも最小数ミリのものから、最大では70センチを超えるものまであり、海底をはい回るものもいれば、海中を泳ぐものまでいた。かなりの適応力があり、まさに古生代を代表する生物と言える。
その三葉虫の眼だが、他の動物と比べて特異な材資質でできている。鉱物であるカルサイト(方解石)からできているのだ。おそらくその眼は地球で初めて誕生したものであったと思われる。一説によれば眼の誕生がカンブリア爆発と呼ばれる大進化を引き起こしたのだという。眼の誕生と爆発的な進化、どちらが先かということは今の時点では推測の域を出ないが、眼の誕生が進化に与えた影響は非常に大きなものであったということは確かである。眼というものがもし誕生しなかったとしたら、現在のようなたくさんの色に満ちた生物はなく、単調な味気ない世界になっていただろう。(5億年前のカンブリア紀の直後に生きていた三葉虫の化石からはピンク色の痕跡が見つかっている。化石が保存されていた岩石の種類からして、その色が岩石に原因するものだとは考えにくく、三葉虫自身のものだったのではないかと思われる。ピンク色をした体に、カルサイトでできた鉱物質のきらきらした目が光る三葉虫のいる古生代の海を想像すると楽しい)
魚類が発展し、「魚類の時代」と呼ばれたデボン紀のモロッコからは、棘に覆われた驚くほど多様な種類の三葉虫の化石がでてくる。中には頭から三つ叉の角を生やした体中を棘だらけの三葉虫もあり、今まで持っていた三葉虫のイメージが変わるほどの多種多様なデザインのものがある。補食していた魚類などに対抗するために適応したのだろうが、ある程度は効果はあったのではないかと思う。棘だらけのわりには食べるところも少なさそうで、とても食欲がわくスタイルでもないし。
そうして3億年にもおよび生き残り、何回かの絶滅の危機を乗り越えた三葉虫も、無脊椎動物の9割が絶滅したペルム紀の大絶滅を乗り切ることはできなかった。様々な種を作り出し、古生代の海底から海中まで広がるほどの繁栄を見せたが、今はただ化石を残すのみである。