神-天使-悪魔
多神教の神は自ら敵対者と戦う。ギリシャ神話の主神ゼウスは雷電を自由に駆使して武器とし、インドの破壊神シヴァもまた稲妻を象徴した武器三叉戟を手にする。
そして神の敵対者は神と互角に渡り合う。オリンポスの神々とティタン族の戦いは10年以上の長きにわたり、北欧神話に至っては神は敵である巨人族と相打ちになるのである。
多神教の神は個性的だ。時には人間くさすぎるくらいでもある。そのイメージから人々は想像を働かせて神の活躍の物語を紡ぐことができた。
一方、一神教の神は具体的な姿と性格を持たない。具体的な姿や性格を表すということは他の神々を生み出す動機となるからだ。しかし、またそれゆえに神に対する想像力を発展させることはできない。神は創造主であり、超絶的な力を持つ存在なのだということ以外は。
だが、その絶対的であるはずの神にも敵がいるのではないか。そうでなければ人間はもっと幸せなはずである。人々は考える。神に造られながら神に反逆した「悪魔」という存在と、神の使いとしてその悪魔と戦う「天使」という存在を。
そこでまた、物語が生まれることになる。