す   ス キ タ イ の 羊 

 中世ヨーロッパでは広く知られた、スキタイの羊と呼ばれる植物羊の伝説がある。
 スキタイというのは、黒海北岸の草原地帯をさす。紀元前六世紀ごろには、ここにイラン系の騎馬民族であるスキタイが、強大な王国を建設したところである。

 このスキタイに、臍の尾に似た長い茎で地面につながっている、子羊にそっくりな植物がいるという伝説がある。この毛皮は羊毛のように保温の役に立つので、季節になると商人が摘み取りに来るとか。また一説には、非常に巨大なメロンがあり、これが熟すと、二つに割れて、子羊ほどの大きさの小動物が出てくるという、言わば羊版「桃太郎」とも言える伝説もある。

 これらの話は、中世ヨーロッパばかりでなく、ペルシャや中国でも古くから語られていたという。シルクロードを中心とした、東西の文化交流を彷彿とさせる話である。