リプリー/The Talented Mr.Ripley

【監督】 アンソニー・ミンゲラ
【出演】
マット・デイモン/ジュード・ロウ/グゥイネス・パルトロ

■ 『金持ちの道楽息子ディッキーをイタリアから連れて帰るよう、彼の父親から依頼されたリプリー。だが魅力的なディッキーにあっという間に惹かれてしまったリプリーは帰るどころか一緒に暮らすことを夢見るように(迷惑)。しかしその夢を大否定された彼はディッキーを殺害し、あろうことか彼になりすますことに・・・。』

リプリー(マット・ディモン)の特技は物まねとサインの偽造である。物まねはともかくとしてサインの偽造なんて。すでにこの時点で彼が堅気ではない気がするのは私だけでしょうか? そんなリプリーが魅了される男ディッキー(ジュード・ロウ)の美しさときたら、もはや映画の内容なんかどうでもいい気がするほどで、『よくこの男の隣にいられるよね〜グゥイネス・パルトロウったら。勇気あるわぁ。』と毒のひとつも吐かねばいられないくらいです。

しかし!そんなディッキーさまを上映開始後わずか1時間足らずで殺害してくれやがるのですよ、このリプリーって奴は!!!しかもその理由が失恋ときたひにゃ・・・。なんという身勝手な男でしょうか。たしかに夢見る乙女(リプリー)にディッキーの拒絶の言葉は少々きつかったかも知れませんが、彼が誰に対しても飽きるまでは親しげに振舞うことなんか分かっていたはずなのに!(あの鈍そうなマージでさえ敏感に嗅ぎ取っていたくらい)

ディッキーが男女問わずモテモテなのは、リプリーのついた嘘を見抜きながらも笑って済ませるおおらかさにあるのだと思う。そのおおらかさが時に他人を振り回し傷つけることがあっても。リプリーもどうせならそのへんのところを真似してみたらどうなんだと言いたい。それをあいもかわらず嘘で自分の人生を塗り固め、ひとつの嘘が露見しそうになるたびに殺人を重ねていくとは・・・。呆れてものも言えませんな。特に最後、せっかく「愛している」と言ってくれる(物好きな)男が現れたというのに、その彼さえも保身のために殺すリプリー。まったく同情の余地もなく、ただただ腹立たしいし、殺されていく彼が気の毒でならん私でした。(でも続編を作るなら見たい。もちろん、リプリーはマットで!!ハマリ役だと思います。)


ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア/Knockin' On Heaven's Door

【監督】 トーマス・ヤーン
【出演】
ティル・シュヴァイガー/ヤン・ヨーゼフ・リーファース

■ 『脳腫瘍の患者マーティン(ティル・シュヴァイガー)と骨肉種の患者ルディ(ヤン・ヨーゼフ・リーファス)はお互いに余命いくばくもない者同士。天国ではみんな海の話をするんだぜ。だから海をみたことがない奴は仲間に入れないんだ」というマーティンの話に「僕、見たことないよ!」と慌てるルディ。だったら見に行こうじゃないかとニ人は海を目指して病院を抜け出すことに。』

死を目前にした二人とはとても思えないお気楽ぶりです。病院の駐車場から無断で拝借した車がたまたまマフィアのものだったせいで(しかもトランクには大金が!)一見強面の2人組に追いかけられ、しかも逃げてる途中に銀行強盗までやっちゃいまして、警察からも追われるのですが、どちらからも上手く逃げ切ります。(二人の運がイイというよりはこのマフィアコンビと警察がおまぬけすぎるのですが。)

思わず笑っちゃうシーンが多い中、最高に切ない気持ちになったのが、ついに警察に捕まり、海を見ることを簡単にあきらめようとするルディにマーティンが俺にはもう時間がないんだ!」と叫ぶシーン。実はマーティンも海を見たことがなかったんですな。そしてより切実に見たがっていたのは実は彼の方だったのです。これにはまいりました。どっちかというといかついマーティンのいまにも泣きそうな切羽詰った顔。その場に自分がいたら警官に体当たり食らわしてでも逃がすところです。

ラスト。とうとうマフィアに捕まった二人だけど、銃をつきつけられても全然平気。
だってどうせ死ぬんだも〜〜んでも思わず手を握り合っちゃったりもする(笑)。二人はこのまま海を見ることもなく死んでしまうの?と思ったまさにその時、神様が迫力満点の天使をお遣わしになるのです。(某俳優のカメオ出演なんですけどね。いいのよこれが。)そしてただ波の音だけが聞こえるラストシーンに重なるように流れる映画のタイトル曲『Knockin’n on Heaven’s Door』。ベタだけどやっぱり泣ける。思わずサントラ買っちゃいました。

好きなシーン:トランクの中に大金をみつけて大喜び!勢いよく高級ホテルに泊まり、なんだかわからないけど高価なものを食べ、おまけにシャンペンまで飲んで、超ご機嫌さんの二人がベッドに寝転がりながら、死ぬ前にぜひやっておきたいことを書き出すシーン。ふわふわしたイメージのルディが二人の女と寝る!」と己の欲望にまっしぐらなのに対しお母さんに彼女の大好きなプレスリーが乗っていたのと同じ車をプレゼントする」と孝行息子ぶりを披露するマーティン(ちょっとルディの立場なし)。このときのふたりが実に幸せそうで自分まで嬉しくなるのです。


海の上のピアニスト/ THE LEGEND OF 1900

【監督】 ジュゼッペ・トルナトーレ
【出演】 ティム・ロス/プルイット・テイラー・ヴィンス/メラニー・ティエリー/ビル・ナン

■ 船の上で生まれ、生涯その船を降りることがなかった天才ピアニスト1900の物語。

ものすごく好き嫌いの分かれる作品のようです。(また主演のティム・ロスがそういうタイプだからな) なぜ誰にも教わってないのにあんなにピアノが弾けるんだ?とか、どうやって廃船の中で生きてたんだ?みたいな些細なことが気になる人は特に馴染めないでしょう。(ピアノに関しては”天賦の才能”ってことで片付けていいと思ってますが)ちなみに私はこれでティム・ロスにハマりました。大好きな作品です。

でも最後の船大爆破のシーンはいらんかったな。わざわざ映像として見せることはなかったんじゃないかと思います。あの場面だけ妙に作品から浮いちゃってるし。私が独自に調べただけでも、約99%の人が「ここで一気に醒めた」と言ってます。今からでも遅くない、編集しなおすように。もひとつクドイ!と気になったのが、最後の1900(ティム・ロス)と親友マックス(テイラー・ヴィンス)の別れの場面。「ずっと船の上だけで生きてきた自分にとって、世界は余りにも広すぎる」ということをピアノ弾きらしく鍵盤の数になぞらえて話ところは好き。「だから船を降りるより、自分は人生を降りる方を選ぶ。許して欲しい友よ」と静かに語る1900に一言も言い返せず、ただ泣くしかないマックスには貰い泣きもする。でもこのシーンはここで、この後二人が抱き合って別れるところまでで充分だったと思うんですよ。なのになぜ黙って去って行くマックスを呼び止めてまで怖い話するかなナインティーン・ハンドレッド!!! 「天国には右腕ばかり2本でも弾くことのできるピアノがあるかな?」なんて聞かれても「ないんじゃない?」とは言いにくいよ。つうかもう、「ごちゃごちゃ言ってないで降りろ、お前!!!」と首ねっこひっ捕まえて引きずり降ろしてやりたくなります。ティムもテイラー・ヴィンスもいい芝居してるだけに、やりすぎなのがなんとも惜しまれる。もっとサラっとやって欲しかったな。なんて、ひとが一生懸命作った物にケチばっかりつけてる場合じゃありません。もちろん好きなシーンもたくさんありますよーー!!(なんせ大好きなんですからこの作品)以下箇条書き。

・1900とマックスの出会いの場面。船酔いでゲロゲロ状態のマックスの前に燕尾服姿で現れる1900。「助けてやるからついて来い。」と大揺れの船の広間を優雅に歩む姿の美しいこと!(はあと)。ここは船で生まれて育った主人公を表現するのにハズせないシーンですな。

・マックスと二人、ストッパーを外したピアノで広間をくるくる回りながら演奏する場面。ティムの背中がピンと伸びてて姿勢がすごくキレイ。でも顔はマンガ。というか子供みたい。船酔いのマックスにとって果たして救いになったのかどうかは謎だけど、二人が楽しそうなのを見るのが楽しい(笑)。調子に乗って船長室に突っ込み、いい年して怒られてるのも可愛いし。何度見てもワクワクする場面です。

・ヨーロッパからの移民がぎゅうぎゅうに詰まっている船室でイタリア人から「タランテッラをやってくれ!」と言われ、「タランテッラが何か知ってるのか!この田舎者!!」とイタリア語でやりかえす1900。このイタリア語でってとこがツボ。この曲、すごく好きなのになぜか日本版のサントラには未収録。

・ジャズを発明したとかいうオッサンとのピアノ対決。「決闘って何?やってどうなるんだ?」と頭からヤル気ゼロの1900の勝利にマックスはじめ、仲間たちが当たり前のように賭けているのが無性に嬉しい。ここで1900は実はかなりの天然だということが分かるんですな。オッサンのえらそうな演奏に感動して泣いちゃってますからこの人。あげくに「僕も賭ける(オッサンの方に)」なんて言い出したりして(笑)。でもそうやってさんざんボケといて、さらーーっと初めて聞いたオッサンの曲を完璧にコピーしちゃったりするから意地が悪い。(←そこが好き)などなどまだまだ多数あり。

この作品の好き嫌いが分かれるのは、最後まで船を降りなかった1900に共感できるか否かによるところが大きいと思うのですが、私は観る度に感じ方が違うのでなんとも言えず。初めて見た時に号泣したのも1900ではなくマックスの気持ちを想像してのことだったし。マックス的にはやっぱり一縷の望みがあったと思うんですよね。(親友である)自分の言うことには耳を傾けてくれるんじゃないかと。それにマックス自身が人生をやり直すために1900を必要としていただろうし。それをあっさり却下ですから。随分、寂しくて情けない思いだったのではなかろうかと、そう思ったら泣けてきたわけで1900があくまで残ることを選んだのは悲しいとは思わなかったです。そもそも降りると思ってなかったし。

この1900の選択を「引きこもり」とか「臆病者」とか「へたれ」と言う人には(言ってないか)好きな映画じゃないんではなかろうか。私も正味のところ降りればヨカッタのにとは思うけど、同時に1900の生き方に憧れもします。ちょっとカッコいいもん。たった一人の親友だけが覚えていてくれるなんて。でもそんな生き方、自分には到底できないから憧れるのですが。

DVD特典映像感想: ≪ピアノを上手く弾いているように見える練習≫を死ぬほどしたというだけあって、演奏シーンは見事。メイキングの「聖しこの夜」を弾いているところなんか、逆にティムがピアノできないとは思えないくらい。最後にオーバーアクションで投げチッスを振舞うティムを笑いながら見つめているトルナトーレ監督もイイ感じです。この二人、撮影中はちょっと揉めたらしいけど、とてもそんな風には見えません。いい雰囲気。しかしティムはとても主演俳優ぽくないな。待ち時間にぷらぷらしながら写真撮ってたりして。その他大勢のエキストラと見分けがつかんよ。


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