■ 船の上で生まれ、生涯その船を降りることがなかった天才ピアニスト1900の物語。
ものすごく好き嫌いの分かれる作品のようです。(また主演のティム・ロスがそういうタイプだからな)
なぜ誰にも教わってないのにあんなにピアノが弾けるんだ?とか、どうやって廃船の中で生きてたんだ?みたいな些細なことが気になる人は特に馴染めないでしょう。(ピアノに関しては”天賦の才能”ってことで片付けていいと思ってますが)ちなみに私はこれでティム・ロスにハマりました。大好きな作品です。
でも最後の船大爆破のシーンはいらんかったな。わざわざ映像として見せることはなかったんじゃないかと思います。あの場面だけ妙に作品から浮いちゃってるし。私が独自に調べただけでも、約99%の人が「ここで一気に醒めた」と言ってます。今からでも遅くない、編集しなおすように。もひとつクドイ!と気になったのが、最後の1900(ティム・ロス)と親友マックス(テイラー・ヴィンス)の別れの場面。「ずっと船の上だけで生きてきた自分にとって、世界は余りにも広すぎる」ということをピアノ弾きらしく鍵盤の数になぞらえて話ところは好き。「だから船を降りるより、自分は人生を降りる方を選ぶ。許して欲しい友よ」と静かに語る1900に一言も言い返せず、ただ泣くしかないマックスには貰い泣きもする。でもこのシーンはここで、この後二人が抱き合って別れるところまでで充分だったと思うんですよ。なのになぜ黙って去って行くマックスを呼び止めてまで怖い話するかなナインティーン・ハンドレッド!!!
「天国には右腕ばかり2本でも弾くことのできるピアノがあるかな?」なんて聞かれても「ないんじゃない?」とは言いにくいよ。つうかもう、「ごちゃごちゃ言ってないで降りろ、お前!!!」と首ねっこひっ捕まえて引きずり降ろしてやりたくなります。ティムもテイラー・ヴィンスもいい芝居してるだけに、やりすぎなのがなんとも惜しまれる。もっとサラっとやって欲しかったな。なんて、ひとが一生懸命作った物にケチばっかりつけてる場合じゃありません。もちろん好きなシーンもたくさんありますよーー!!(なんせ大好きなんですからこの作品)以下箇条書き。
・1900とマックスの出会いの場面。船酔いでゲロゲロ状態のマックスの前に燕尾服姿で現れる1900。「助けてやるからついて来い。」と大揺れの船の広間を優雅に歩む姿の美しいこと!(はあと)。ここは船で生まれて育った主人公を表現するのにハズせないシーンですな。
・マックスと二人、ストッパーを外したピアノで広間をくるくる回りながら演奏する場面。ティムの背中がピンと伸びてて姿勢がすごくキレイ。でも顔はマンガ。というか子供みたい。船酔いのマックスにとって果たして救いになったのかどうかは謎だけど、二人が楽しそうなのを見るのが楽しい(笑)。調子に乗って船長室に突っ込み、いい年して怒られてるのも可愛いし。何度見てもワクワクする場面です。
・ヨーロッパからの移民がぎゅうぎゅうに詰まっている船室でイタリア人から「タランテッラをやってくれ!」と言われ、「タランテッラが何か知ってるのか!この田舎者!!」とイタリア語でやりかえす1900。このイタリア語でってとこがツボ。この曲、すごく好きなのになぜか日本版のサントラには未収録。
・ジャズを発明したとかいうオッサンとのピアノ対決。「決闘って何?やってどうなるんだ?」と頭からヤル気ゼロの1900の勝利にマックスはじめ、仲間たちが当たり前のように賭けているのが無性に嬉しい。ここで1900は実はかなりの天然だということが分かるんですな。オッサンのえらそうな演奏に感動して泣いちゃってますからこの人。あげくに「僕も賭ける(オッサンの方に)」なんて言い出したりして(笑)。でもそうやってさんざんボケといて、さらーーっと初めて聞いたオッサンの曲を完璧にコピーしちゃったりするから意地が悪い。(←そこが好き)などなどまだまだ多数あり。
この作品の好き嫌いが分かれるのは、最後まで船を降りなかった1900に共感できるか否かによるところが大きいと思うのですが、私は観る度に感じ方が違うのでなんとも言えず。初めて見た時に号泣したのも1900ではなくマックスの気持ちを想像してのことだったし。マックス的にはやっぱり一縷の望みがあったと思うんですよね。(親友である)自分の言うことには耳を傾けてくれるんじゃないかと。それにマックス自身が人生をやり直すために1900を必要としていただろうし。それをあっさり却下ですから。随分、寂しくて情けない思いだったのではなかろうかと、そう思ったら泣けてきたわけで1900があくまで残ることを選んだのは悲しいとは思わなかったです。そもそも降りると思ってなかったし。
この1900の選択を「引きこもり」とか「臆病者」とか「へたれ」と言う人には(言ってないか)好きな映画じゃないんではなかろうか。私も正味のところ降りればヨカッタのにとは思うけど、同時に1900の生き方に憧れもします。ちょっとカッコいいもん。たった一人の親友だけが覚えていてくれるなんて。でもそんな生き方、自分には到底できないから憧れるのですが。
DVD特典映像感想: ≪ピアノを上手く弾いているように見える練習≫を死ぬほどしたというだけあって、演奏シーンは見事。メイキングの「聖しこの夜」を弾いているところなんか、逆にティムがピアノできないとは思えないくらい。最後にオーバーアクションで投げチッスを振舞うティムを笑いながら見つめているトルナトーレ監督もイイ感じです。この二人、撮影中はちょっと揉めたらしいけど、とてもそんな風には見えません。いい雰囲気。しかしティムはとても主演俳優ぽくないな。待ち時間にぷらぷらしながら写真撮ってたりして。その他大勢のエキストラと見分けがつかんよ。
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