オー!ブラザー/O BROTHER

【監督】 ジョエル・コーエン
【出演】 ジョージ・クルーニー/ジョン・タトゥーロ/ティム・ブレイク・ネルソン

私はアメリカの医療ドラマ『ER』の大ファンである。いつもならいい男チェックに余念がない私がこのドラマに限っていえば、キャロルやジェニー、エリザベス、ケリーといった女性キャストの活躍にわくわくしている。それほど彼女達はかっこよくおまけに美人ぞろいである。そんな華やかな女性陣に唯一その濃さで渡り合っていたのが、ジョージ・クルーニー扮する小児科のフェロー(細かい)Dr.ロス。ロスは女にだらしないのが難点ではあるものの、医療に対する真摯な姿勢や子供と話す時の目の優しさが最高にステキな色男である。私は一度も思ったことがないが世間の彼に対するセクシーという評価にも異論はない。

しかし!この映画にそんなセクシーでチャーミングなDr.ロスの姿はどこにもなかった。いたのは髪の乱れが気になってしょうがないポマードべったりの(寝る時にはヘアネットまで/泣)ただのおっさんである。 (それでもあの濃さだけは健在だった。)別にジョージ・クルーニー目当てではなかったがそれでも一抹の寂しさを感じずにはいられなかった・・・。

前振りが長くなったけど、映画自体は面白かったです。爆笑ものではないが時々『ふっ』と笑ってしまう。主役3人の力の抜け具合が楽でいいのですな。元嫁の再婚を阻止したいがために、鎖で繋がっている他の2人をだまくらかし脱走する自称リーダーのクルーニーがとんだお馬鹿の上、めちゃくちゃ弱い(笑)。仲間の2人はさらに上を行くお馬鹿さんだけど、この3人がなぜかそろって歌が上手いのがおかしい。逃走中なのにレコーディングはするわ(またこれが空前の大ヒットを記録)、ステージに上がればそんな場合じゃないのに歌わずにはいられないわの彼らの根っからの歌好きにはもはや感動さえ。ちょこちょこしたエピソードがあとで微妙に効いてくるのが楽しい映画です。


ヤング・ブラッド/THE MUSKETEER

【監督】 ピーター・ハイアムズ
【出演】
ジャスティン・チェンバース/ティム・ロス/カトリーヌ・ドヌーブ

■ 冒頭、ダルタニアンの子供時代。貧乏だけど幸せそうな家族の団欒の場に現れた黒衣の騎士、フェブル(ティム・ロス)。のっけから憎々しい登場振りです。しかしほんの子供のダルタニアンが元銃士である自分の父親をThe Best Of Europe(僕のお父さんは欧州一の剣士だぞ!)と言い切ったのに対し、『Second』(いいえ、二番目です』と本気でやり返している姿はちょっと大人げなかったな・・・。おまけに目の前で両親を殺されたダルタニアンがせめて一矢報いたいと、闇雲に振り回した剣が顔面直撃。左眼の視力を失っちゃうのだけど(こういうの罰があたるというんですね)そこまでしてくれた相手の名前を14年後にはうろおぼえ状態で、悪賢いのだけど記憶力に難アリなのが判明・・・(辛)

なんというかこの映画、どうにもこうにも中途半端な気がしてしょうがなかったです。ワイヤーを取りいれたアクションシーンが話題のようですが、そんなとこに力入れてるひまがあったらもっと話を整理したらどうなんだ!と言いたい。せっかくの三銃士も誰が誰なんだかわかりゃしないし。 特に余計だなーとイライラしたのが王妃がらみのエピソード。頼りない国王にかわりイギリスとの和平をまとめようとする血気盛んな王妃をカトリーヌ・ドヌーブが演じてるのですが、ヘタに大女優を使っちゃったせいでムリヤリ見せ場を与えてる気がしてしょうがなかった。

三銃士物語の中でやはり一番の見せ場といえば、一度はバラバラになった銃士団が、ダルタニアン及び三銃士の呼びかけに応え今一度結束、見事、悪枢機卿たちを追い払うところにあると思うのですが、このあたりも実に適当。王妃様をお救いするのだー!とうるさいダルタニアンに対し、「だって俺ら王の銃士であって王妃のじゃないもーん!」と男のくせにセコイこと抜かす仲間に逆上し、制服を叩きつけて1人救出に向かうダルタニアン。だけどいざ現場についてみればひとりまたひとりと仲間が現れ、気がつけば全員集合・・・。しかしこの最大の見せ場といってもいいシーンでも私は呆然とするのみ。 だってあんだけやる気がなかった彼らがなんで急速に集まったのかまるでわからんのだもん。

ダルタニアンにしても三銃士にしても、他の銃士たちに対してなんら胸を打つような演説なんかしてないんですよ。なのに全員集合。わけわからん。おまけにその他大勢の銃士たちがどいつもこいつもエキストラくさいこと!!命がけの戦闘シーンでも自分の立ち位置がわからなくて右往左往する奴が目に付いて仕方なかった。もっと他にやりようがあるだろう!!

こんなどうしようもない演出だもんで当然、ティムも薄っぺらい役です。もうぺらぺら。 憎々しくて、剣の腕が立つ男の役って以前、『ロブ・ロイ』でもやったんだけど、あの時はもっと役にドラマがあった。殺陣のシーンも派手にやりたいのはわかるけどスタントマン使いすぎでティムの出番なんかほとんどないし。ロブ・ロイの時の残忍な中にも腐っても貴族のエレガントさを漂わせていた見事な剣捌きを再び拝めると期待してたのに・・・。また死に様もあっけないんスよ・・・(泣)。

それなりのキャスト集めてこんな映画しか撮れないなんて、この監督これまで何やってたんだー!と パンフレットをみてみれば過去の作品、【サドン・デス【タイム・コップ】・・・。 なんだヴァンダムか。納得。


アメリ/Amelie

【監督】 ジャン=ピエール・ジュネ
【出演】
オドレィ・トトゥ/マチュー・カソヴィッツ/リュフュス

子供の頃、お父さんの誤診により学校に通うことができなかったアメリは一人遊びの達人。想像力が豊かで発想が素晴らしい女の子です。(交通事故を自分のせいにした隣のおじさんに仕返しするため、屋根の上にのぼり、TVでサッカー中継を観ている途中、肝心のゴールシーンになるとアンテナからコードをズボっと抜くシーンが最高vv)

そんな彼女が大人になってからも見せてくれる仕掛けがめちゃくちゃ楽しい。妻を亡くしてからすっかり引きこもるようになった父親に、『人生を楽しまなきゃ』と旅にでることをすすめるのだけど、どうにも乗り気じゃない。そこでアメリはお父さんが大事にしている小人の置物を旅にだすことにします。ある日突然庭からいなくなった小人から届くエアメイル。手紙にはなにも書かれていないけれど、世界の観光名所をバックに写したと思われる写真が同封されていて(笑)。 最初はただとまどうばかりだった(そらそうだろう)お父さんですが、いなくなった時と同様、突然帰ってきた小人を見て、ついに自分が旅に出ることを決意するわけです。

全編こんな感じで、あちこちで展開されるいろんな仕掛けを観るだけでも充分面白いですが、 (たとえ憎たらしい八百屋のおっさん相手でも、アメリ流のおしおきには愛とファンタジーがあるのです。) 他人と接することが本来苦手なアメリが、はじめて本気で好きになったひとにいつものごとくいろんな仕掛けを使ってアプローチしている姿をみて、『それだけじゃダメなんだよ』とやんわり助言を与えてくれる老絵描きや、彼女が働くカフェの従業員、そこにやってくる客など、人間関係もこれまた楽しい。

アメリが暮らす部屋や着ている服もシャレてて可愛いです。唯一変なのは彼女が好きになる男くらいかな(酷)。いや彼は彼で味があるともいえるか。(名前がニノ・カンカンポワってだけでも充分)


メメント/MEMENTO

【監督】 リストファー・ノーラン
【出演】
ガイ・ピアース/キャリー=アン・モス

■ 最初から最後まで映画の主人公同様、おのれの記憶力との闘いを強いられ頭の整理が大変でした。妻を殺した犯人を探すために独自で捜査を進めるレナード(ガイ・ピアース)は、犯人に殴られたのがもとで事件後、記憶が10分しか保てなくなってしまった、大変気の毒な男。犯人探しをしようにもこれではとても埒があきませんね。てことで大事なことは全て自分の体に刻みこんでます。しかも胸元やお腹などは自分では見辛いので鏡に映して読めるようにと逆向きに刻む念の入れよう。もちろん人の顔も覚えられないのでポラロイド写真に撮りこまめにメモを書き込んでいます。痛々しいねぇ。

そこまでして必死に犯人探しをしてくれるなんてこの嫁、そうとう愛されていたのねん。羨ましい。でも、そんな障害抱えた体じゃフツーの生活を送れそうにないし、その結果、
犯人探しがライフワークにならざるをえないならそれはそれで可哀想。せっかくいい男なのに…。なんてことを考えられるのも映画を観終わったあとだからなわけで。上映中はもう話の展開についていくだけで精一杯っす。

始まりと同時に終わる映画ってそらなんじゃと思っていたら、話が進むにつれてどんどん過去に遡っていくんですよこの映画。しかもそれが入り組んでるわ、レナードが保険の調査員だったころ、今の自分と似たような症状を持つ顧客を担当した時のエピソードは絡んでくるわで!! 最後の20分は展開も早いしそれこそ
メモをとらせてくれ!!と叫びそうでした。 しかしあれですね。記憶ってホント大事。これまでそんなこと考えたことなかったですが。 記憶できないってことは終わりがないってことでもあるんだなと。(ネタばれしそうなんで上手くいえないんですけど)しんどいよ、これは。

観終わって、まぁある程度分かった気でいたんですが後日、本屋で小説化されているのをちらりと立ち読みしましたらば『そんなシーンあったっけ??』というのにでくわし再び混乱。なんか記憶力テストされている気分ですよ。結果は『やや難アリ』かな。いやもっとか。 やっぱり2回は観ないといかんなと思います。

見所:ただの保険の調査員だったとは思えないくらい体ができてますこの主人公。またそれを惜しげもなくばんばん披露。とりあえず部屋では常に裸ですごしている様子が窺えます。鏡にしょっちょう映してるし。事情を知らなきゃかなりの自分大好きっ子と疑われそう。まぁデブデブゆるい体だと何書いてあるんだかわからんだろうし。だいたいそんな男が主役なら女性客を取り込むことはできませんな。(少なくとも私は観ない)ちなみにガイ・ピアースは16歳の頃、ボディービルの大会で優勝しているらしいです!どうりで自信満々なわけだ。納得。


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