■ しょうもないのにどこか魅力的な男を演じさせたら今や右に出る者のいないヒューさま主演。ハマリまくってます。
ウィル(ヒュー・グラント)は父親の印税で悠悠自適に暮らす独身男。38歳の彼は今まで一度も働いたことがありません。しかし、住んでるアパートはモノに溢れ、高級車をぐるぐる乗り回しています。働かなくてもあの生活を維持できるならそら誰が働くか!って話です。毎日が日曜日の彼の仕事といえばナンパ。結婚して家庭をもつのは想像するだけで寒気がするけど、女性とは付き合いたい。そうなると都合がいいのがシングルマザー。一度失敗してるだけあって、そう簡単には結婚を迫られないしこりゃええわ!と思ったウィルはシングルファーザーのふりをして、シングルペアレントの会に潜入。見事なまでのアホです。ホントにヒマなんだなこいつと思いましたね。首尾よく1人の女性とお近づきになったウィルが、ホントは子供がいないことを彼女に悟られないようにわざわざチャイルドシートを買い、それをお菓子やらジュースやらでネトネトにするシーンがバカらしくて大好きです。(この情熱を他に傾けられたら、それなりの人物になったかも知れませんな)ところが、せっかくのデートだというのに余計なガキがついてきます。それがマーカス(ニコラス・ホルト)。シングルママ仲間の息子である彼は、実に可愛げのないお子様でウィルはイライラし通し。ちょっと目を離した隙に池の鴨に岩のように固いパンをぶつけ(わざとじゃないんだけど)殺しちゃったり、家まで送っていけば母親は自殺未遂をやらかしてたりでもう散々。←しょうもない嘘をついた罰ががんがん当たってて悪いけど面白うてたまりません。
またいつ自殺するかわからないママが心配でならないマーカスが目をつけたのがウィル。彼と結婚すればママを見張っててもらえる(子供なりに「あの男ヒマそうだな」と見抜いたんでしょうな)と思った彼は、ウィルにつきまといます。ウィルにとっちゃもはや悪魔に魅入られたかのような展開ですが、(ホルトくんの眉毛がまた悪魔っぽいんだな)「彼も可哀想な子だし・・・」と思い直し、家に遊びに行ったりもします。基本的にイイ奴です。菜食主義者でヒッピーぽい親子が並んで目を閉じ熱唱する≪キリング・ミーソフトリー≫を聞かされるウィルがいと哀れ。「いつかはこの歌も終わり、僕は家へ帰れる・・・・ハズ・・・・」(笑)。
ウィルは見た目もいいし、話も面白い。好みにもよるでしょうが、第一印象はイイ男。なのに出会った女たちは彼が一言「一度も働いたことがないんだ」と告げた途端、引く。そして「中身のない人ね」となる。でも、彼が薄っぺらいのは別に働いていないからではなく、他人との付き合い方に問題があるのですな。言われるまでもなく自分に自信のないウィルは、素で女性と付き合うことができません。だからいつも優しくてイイ人の仮面を被る。しかし、最初は騙される人が多いこの仮面の奥の素顔にあっという間に到達したのがマーカス親子。マーカスが踏み込んでくるのは、なにも家の中だけではなかったのですな。嫌でも引き出される本音(ホントは子供なんか大嫌い!!←実は私も苦手。気持ちよく分かるぞウィル)、乱されまくる生活ペース。背負いたくもない責任(それも他人の子)。別れたいのに別れさせてくれない親子に翻弄されるウィルはもう仮面なんか被ってる余裕もなく、しまいには「ママのために学内ロック・コンサートで”キリング・ミー・ソフトリー”を歌う」と言い出したマーカスを「そんなもん唄ったら二度と学校には通えなくなる!」と止めに行ったつもりがなぜかステージで伴奏し、あまつさえ熱唱するハメになるのです。(来日した際に「歌のシーンについては触れないように」とのお達しが出た程のヒューの喉。なるほど苦しいです)
もうメチャクチャです、ウィルの人生。これほど他人によってかき回される人間もまぁ珍しいと思うのですが、やっぱり働いてないからね。いつ行っても家にいるんじゃそら来ますよ子供は。
彼らと関わってペラペラだったウィルにぎゅうぎゅうに綿が詰まり、魅惑の変身を遂げたかというとそうでもなく。あいかわらず働く気はなさそうだし。でも仮面を脱いだお陰で(というより叩き割られた感じ)「少々薄っぺらくても、悪い人間じゃないのよね」と久々に本気で好きになった女性、レイチェル(レイチェル・ワイズ)にも好意的に受け入れられたようだしひとまずハッピーエンドなんでしょう。それと、ここまで短髪のヒュー様を観たのは初めてですがカッコイイ♪
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