スパイゲーム/SPY GAME

【監督】 トニー・スコット
【出演】 ロバート・レッドフォード/ブラッド・ピット

引退間際のベテランCIA局員、ネイサン・ミュアー(ロバート・レッドフォード)が渋くてねー。 いやもう悲しいくらいシワシワなんですけど。

勝手な行動で中国政府に捕まっちゃったトム・ビショップ(ブラピ)。 『めんどくさいことはお断り。アメリカ政府(CIA)には一切関係ない男として処理しちゃおう!24時間後には処刑されるみたいだけど。知らぬ存ぜぬってことでね。よろしくね。』と一致団結している上層部相手に彼を救出するべく、おのれの知力と経験とコネを最大限に活かし孤軍奮闘する姿のなんと男前なことでしょうか。とても64歳にはみえません。

さすがのブラピもレッドフォード御大の前では、ただの青二才っす。(また青臭い役が似合うんだこのひと)非情な任務と人情の間でぐらぐら揺れっぱなしのブラピと、それはそれこれはこれのレッドフォード。 当然反発もし合うわけですが根っこのところでがっちり結ばれてるわけですな(はあと)

最後までブラピ自身はよもやレッドフォードが自分を救出するべく奔走してくれているとは夢にも思ってないんですよ。(なんせ捕まったあとはひたすら殴られっぱなしで、いまさら助かるとも思ってなかったろうし) それがラスト。わけもわからんままに救出され、呆然としている耳に飛び込んできた今回の作戦名。 《ディナーアウト》『外食は命がけ』。(日本語に直すとまぬけっすな)この一言ですべてを理解したブラピの半べそ顔に乙女はくらり(笑) なんでこの作戦名でプラピが半ぺそかいたのかは観てのお楽しみ。

スパイ映画といっても派手なシーンより、メインはCIA本部での頭脳戦。唯一の味方は自分の秘書だけというネイサンの百戦錬磨ぶりというか食えなさぶりは観ていて爽快です。 またネイサンにいいように遊ばれる同僚のスティーブン・ディレイン役のチャールズ・ハーカーがいい味出してるのよ。本人いっぱしのエリート気取りなんですけどね。悪いけど相手にされてない感がありありで(笑)。このひとどっかで観た気がしてしょうがなかったんですが(しかも似たような役で)、『私が愛したギャングスター』でこれまたケヴィン・スペイシーに遊ばれるちょっとまぬけな刑事の役やってたひとでした。この路線で行くか。


オーシャンズ11/OCEAN'S ELEVEN

【監督】 スティーブン・ソダーバーグ
【出演】
ジョージ・クルーニー/ブラッド・ピット/アンディ・ガルシア/マット・デイモン/ジュリア・ロバーツ

キャスティングはたしかに豪華でした。でも肝心のストーリーがばらけちゃっててねぇ。ジュリア・ロバーツが余計だった。男ばっかりじゃ華がないとでも思ったのか(ブラピだけで充分なのに!!)、彼女と、クルーニー、アンディ・ガルシアの三角関係をムリに盛り込んだのがマズかったように思うんですよ。 おかげで肝心の金庫破り計画のテンポが悪い気がしてしょうがない。

だいたいオーシャンが出所してから、計画実行までが異様に早かないですか?? 一体いつ、そんな凝った計画を考えてたわけ?(服役中か)なんでそんな簡単に地下金庫の見取図を手に入れられたの??教えてオーシャン!!!(しかも計画の段階では練りに練られていたはずが、いざ実行に移したとたん、かなりのいきあたりばったりの運まかせとはどういうことか) 仲間の説明も中途半端なもんだから、いまひとつ話に集中できないし。たしかにみんな、なにかしらのエキスパートであるわけなんですが、失敗したら間違いなくムショ送り、下手すりゃ殺されるかも知れないような計画になんでほいほい乗ったのかがわからんのですな。特にイエン(中国人のアクロバット師)なんて元々堅気のひとだと思うんですが…。

ソダーバーグ監督でジュリア・ロバーツといえば《エリン・ブロコビッチ》(あのジュリアは素敵だったなぁ。賢くて、勇敢で、所帯染みてて:笑)で成功したコンビだからお互い、 出たい、出したいと思う気持ちは分かるのですが、それだったらジュリアを仲間の1人にしてくれればヨカッタのに。実際、私は彼女も計画に1枚噛んでるんだとばかり思ってました。(不二子ちゃんみたいな役かなぁと)それがなんのこっちゃない、ただの綺麗どころで。正直、ジュリアでなきゃダメな理由なんてどこにもなかったように思います。あと、アンディ・ガルシアもどこらへんが冷酷で非情なのかが分からなかったっす。カジノのオーナーとしてやるべきことやってるだけだと思うんですけどねぇ。突然現れた身元がいまいち怪しい爺さんのわけのわからん頼みごと聞いてやったりするあたり、むしろイイひとかと。

と、ここまで文句ばっかり並べ立てましたが、じゃあこの映画が嫌いなのかというとそうでもない(笑)。 金庫破り計画のオチなんかかなり笑えたし。なによりブラピが可愛かったーーーー!!!! 常になんか食べてるんだけど、スプーンくわえてるシーンなんかあれ絶対計算ですな!(興奮しすぎ)そんなある意味ヒロインのブラピさまが1シーンだけとんでもなくブサイクな顔して出てきます。(隣で観ていたひとが思わず『イヤっっ!!!!』と叫んだくらいの。)あんな役回りこそ、元からブサイクな他のひとに振って欲しかった(涙)。怨みます、ソダーバーグ監督・・・・。


海辺の家/Life as A House

【監督】 アーウィン・ウィンクラー
【出演】 ケビン・クライン/ヘイデン・クリステンセン/クリスティン・スコット=トーマス

※ネタばれしてます。

ガンを宣告された男、ジョージ(ケビン・クライン)が一念発起。別れた妻に預けっぱなしだった一人息子・サム(ヘイデン・クリステンセン)にいきなり「一緒に家を建てよう!!」と持ちかけます。当然ながらサムは「ずっとほったらかしにしといて今さら何言ってんだー!!俺は友達と夏をエンジョイするんだからな!!」と猛反発。しかし「友達のところになんか絶対に行かせない。この夏は俺と過ごすんだ!」と親父、無理矢理サムを拉致ります。怖いです。あまりの恐怖にサム泣いちゃってます。16歳にもなって。しかも強引に連れて来られた家は建ってるのが不思議なくらいのボロ小屋で、シャワーもなく、おまけにトイレは台所の隣に便器だけがどんと置かれているのです。見た目こそ不良少年ぶっているものの、根っからのボンボン育ち(母親の再婚相手が超リッチ)の上、生まれつき乙女体質のサムにそんなワイルドな生活はとても受け入れがたく、またもおいおい泣きます。この子は本当によく泣くんですよ。泣いてない時は、犬と遊んでいるか、日光浴しているか、隣家の娘にセクハラされているか、ラリってるかで、本人も「自分には何もない・・・」と俯くしかない有様です。これがニキビだらけの小汚いガキだったらば、「まったくな!この役立たず!!」と思い切り罵ってやるところですが、なんせサムを演じているのがあのジェダイ騎士のヘイデンくんなので、可愛いったらありゃせんのですな。こんな息子残して死ぬのはそりゃ辛かろうというものです。

最初はひたすら反発するだけだったサムですが、「なにかひとつ誇れるものをお前に残してやりたいんだ」と1人せっせと解体作業にいそしむ父親の姿を見て次第に心を開き、やがて手伝うようになります。しかもなぜか別れた妻も手伝いにきます。おまけにその妻が新しい夫との間に作った二人の息子まで。みな大変に楽しそうですが、1人立場がないのがサムの今の父親(ピーター)。彼は典型的な仕事バカ人間で、家庭を顧みることはほとんどなく、そのせいで連れ子のサムはおろか、実の息子にまで愛されていないのです。が、決して悪い人間ではなく、自分が稼いだお金で贅沢に暮らすことが家族の幸せなんだと信じて疑ってなかったんですな。ところがどっこい、自分以外の家族は朝から晩まで(他人の)家作りに夢中。気がつけばひとり蚊帳の外で、余りの疎外感についには家を出てしまいます。私はこのひと大変に気の毒だと思いました。だって嫁も子供達も「自分達がホントに欲しいものをくれない(言葉とか、ハグとか)」と不満に思いつつもそれをキチンと伝えようとはしないし、今の暮らしを捨てる気も無さ気なんですよね。そんなねー、あれもこれも与えてもらえると思うのは図々しすぎやしませんか?

やがて病状が進んだジョージは、サムとかつての妻に「自分はもうすぐ死ぬのだ」と伝えます。やっと打ち解けてきたサムは、「自分を呼んだのは一夏の思い出つくりかよ!!」と大激怒。そして「せっかく愛し始めてきたのに!!」とこれ以上ない言葉を残し家を飛び出して行きます。(でもすぐ隣の家にいるんだけど)最後の気力を振り絞って家を建て続けるジャックも、ついに力尽きて入院。まわりが慌てる中、それまでヨソの家で引きこもっていたサムがひとりで建築途中の家をクリスマス用のデコレーションでピカピカに飾り立て、それを病院のベッドから見せてあげるシーンが美しいです。それまで泣くかごねるかしかできなかった息子が、自分が言ったささいな言葉(「クリスマスにはサングラスが必要なくらいピカピカにしてやるぜ」)をひとりで実行してくれたんです。もういつ死んでもいいね!ジョージ!!と思ってたらホントにあっさりお亡くなりになりました。それも幼かったサムと海で戯れているビデオを見ながら。ほとんどサムマニアですなこの親父。

ジョージが完成をみることはなかった《海辺の家》ですが、彼の死後もたくさんの人の手で着実に作られていきます。その中には一度は家を出て行ったピーターの姿もあり、「もう手伝うことはないかな?」と遠慮がちに言う彼にサムが「まだいろいろ残ってるよ」と答えるシーンが、希望があって好きです。そしてようやく完成した海辺の家の素晴らしいこと!ラストシーンで空からの俯瞰で見ることができるのですが、 ホントに海の懐に抱かれたような気分になると思うなあの家は。しかしこの映画、最後にもう一つエピソードがあるんです。私はそれ不要だと思いましたがね。イイ話なんだろうけど。


アイス・エイジ/ICE AGE

【監督】 クリス・ウェッジ
【声の出演】 レイ・ロマノ/ジョン・レグイザモ/デニス・リアリー

※ネタばれしてます。

絵柄が好みじゃないので二の足を踏んでたのですが、観て正解。イイ映画でした。道で拾った人間の赤ちゃん(ロシャン)をマンモスとなまけものとサーベルタイガーが親の元へ届けに行くというそれだけの話をうまく膨らませてます。

サーベルタイガーのディエゴは最初、ロシャンを喰うたろと思っているタイガー仲間の命を受けて彼らに近づくのですが、なかなか手を出さないんですな。相手はなまけものとデカイとはいえマンモス一頭でその気になれば、ちゃっと攫ってぱっと逃げれそうなものです。映画も5分で終わります。が、なぜかマンモスもついでに喰うてまえ!というデカイ話になり、ディエゴは仲間が待ち伏せている場所へ彼らを案内します。そこには人間がいると信じているマニー(マンモス)とシド(なまけもの)はディエゴの道案内で旅を始めるのですが、途中で雪崩が起きたり、噴火が起きたりで大騒動。しかし3人は力を合わせてそれらを乗り越えていくのです。このへんハラハラしたりお遊びがあったりで楽しい。旅の途中、マニーに命を救われたディエゴは最後、トラ仲間を裏切り彼らを逃がそうとしてソト(リーダー虎)の牙に倒れます。自分を置いて行けと言うディエゴに「僕がおぶっていくよ」とシドが言うシーンは涙涙。

この時代の人間にとって、マンモスは貴重な食料であり、サーベルタイガーの毛皮は防寒着として最適!(酷)。元々ディエゴたちがロシャンを狙ったのも仲間の復讐のためだったし、マニーの両親は人間に殺されているのです。狩られる側の彼らにとっちゃ人間なんて恐ろしくて憎い相手のはずですが、それでも返しに行こうとするのはロシャンがまだほんの小さな赤ちゃんだから。これがいい加減大人だったりしたらまず間違いなく喰われているところです。私だったら喰います。子供も見るだろうアニメにしてはここらへんがリアルで、彼らが「大人になっても忘れないで」と去って行くシーンは「成長したロシャンが偶然再会した彼らのことを覚えておらず、とっ捕まえて喰ったりなんかしたらどうしよう・・・」などと想像して眠れないほどでした。

映像面は最近はもうどれもこれもスゴイので、いちいち驚いたりしませんでしたが、毛並みのふさふさ感はリアルで動物はよくできてるなーと感心です。人間の方はシムピープルみたいだったけど。


アバウト・ア・ボーイ/ABOUT A BOY

【監督】 クリス・ウェイツ/ポール・ウェイツ
【出演】 ヒュー・グラント/ニコラス・ホルト/トニー・コレット/レイチェル・ワイズ

※ネタばれしてます。

しょうもないのにどこか魅力的な男を演じさせたら今や右に出る者のいないヒューさま主演。ハマリまくってます。

ウィル(ヒュー・グラント)は父親の印税で悠悠自適に暮らす独身男。38歳の彼は今まで一度も働いたことがありません。しかし、住んでるアパートはモノに溢れ、高級車をぐるぐる乗り回しています。働かなくてもあの生活を維持できるならそら誰が働くか!って話です。毎日が日曜日の彼の仕事といえばナンパ。結婚して家庭をもつのは想像するだけで寒気がするけど、女性とは付き合いたい。そうなると都合がいいのがシングルマザー。一度失敗してるだけあって、そう簡単には結婚を迫られないしこりゃええわ!と思ったウィルはシングルファーザーのふりをして、シングルペアレントの会に潜入。見事なまでのアホです。ホントにヒマなんだなこいつと思いましたね。首尾よく1人の女性とお近づきになったウィルが、ホントは子供がいないことを彼女に悟られないようにわざわざチャイルドシートを買い、それをお菓子やらジュースやらでネトネトにするシーンがバカらしくて大好きです。(この情熱を他に傾けられたら、それなりの人物になったかも知れませんな)ところが、せっかくのデートだというのに余計なガキがついてきます。それがマーカス(ニコラス・ホルト)。シングルママ仲間の息子である彼は、実に可愛げのないお子様でウィルはイライラし通し。ちょっと目を離した隙に池の鴨に岩のように固いパンをぶつけ(わざとじゃないんだけど)殺しちゃったり、家まで送っていけば母親は自殺未遂をやらかしてたりでもう散々。←しょうもない嘘をついた罰ががんがん当たってて悪いけど面白うてたまりません。

またいつ自殺するかわからないママが心配でならないマーカスが目をつけたのがウィル。彼と結婚すればママを見張っててもらえる(子供なりに「あの男ヒマそうだな」と見抜いたんでしょうな)と思った彼は、ウィルにつきまといます。ウィルにとっちゃもはや悪魔に魅入られたかのような展開ですが、(ホルトくんの眉毛がまた悪魔っぽいんだな)「彼も可哀想な子だし・・・」と思い直し、家に遊びに行ったりもします。基本的にイイ奴です。菜食主義者でヒッピーぽい親子が並んで目を閉じ熱唱する≪キリング・ミーソフトリー≫を聞かされるウィルがいと哀れ。「いつかはこの歌も終わり、僕は家へ帰れる・・・・ハズ・・・・」(笑)。

ウィルは見た目もいいし、話も面白い。好みにもよるでしょうが、第一印象はイイ男。なのに出会った女たちは彼が一言「一度も働いたことがないんだ」と告げた途端、引く。そして「中身のない人ね」となる。でも、彼が薄っぺらいのは別に働いていないからではなく、他人との付き合い方に問題があるのですな。言われるまでもなく自分に自信のないウィルは、素で女性と付き合うことができません。だからいつも優しくてイイ人の仮面を被る。しかし、最初は騙される人が多いこの仮面の奥の素顔にあっという間に到達したのがマーカス親子。マーカスが踏み込んでくるのは、なにも家の中だけではなかったのですな。嫌でも引き出される本音(ホントは子供なんか大嫌い!!←実は私も苦手。気持ちよく分かるぞウィル)、乱されまくる生活ペース。背負いたくもない責任(それも他人の子)。別れたいのに別れさせてくれない親子に翻弄されるウィルはもう仮面なんか被ってる余裕もなく、しまいには「ママのために学内ロック・コンサートで”キリング・ミー・ソフトリー”を歌う」と言い出したマーカスを「そんなもん唄ったら二度と学校には通えなくなる!」と止めに行ったつもりがなぜかステージで伴奏し、あまつさえ熱唱するハメになるのです。(来日した際に「歌のシーンについては触れないように」とのお達しが出た程のヒューの喉。なるほど苦しいです) もうメチャクチャです、ウィルの人生。これほど他人によってかき回される人間もまぁ珍しいと思うのですが、やっぱり働いてないからね。いつ行っても家にいるんじゃそら来ますよ子供は。

彼らと関わってペラペラだったウィルにぎゅうぎゅうに綿が詰まり、魅惑の変身を遂げたかというとそうでもなく。あいかわらず働く気はなさそうだし。でも仮面を脱いだお陰で(というより叩き割られた感じ)「少々薄っぺらくても、悪い人間じゃないのよね」と久々に本気で好きになった女性、レイチェル(レイチェル・ワイズ)にも好意的に受け入れられたようだしひとまずハッピーエンドなんでしょう。それと、ここまで短髪のヒュー様を観たのは初めてですがカッコイイ♪


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