サイン/Signs

【監督】 M・ナイト・シャラマン
【出演】 メル・ギブソン/ホアキン・フェニックス

注)ネタバレし放題です。


愛する妻の死を境に神に背を向けたひとりの元牧師が、再び信仰を取り戻すまでの日々を恐怖と感動で描いた稀に見る傑作コントです。

妻の事故死がきっかけで神を信じられなくなったグラハム(メル・ギブソン)は、牧師を辞めて農夫になります。専門はとうもろこし。だだっ広いとうもろこし畑を、どうやら弟メリル(ホアキン・フェニックス)と二人きりで切り盛りしているようです。そんな働き者の彼らの畑にある日、ミステリー・サークルが現れます。最初は誰かのいたずらだと思われていたそれは瞬く間に全世界に出現。なんということでしょう・・・ミステリー・サークルはUFOの道標だったのですーーー!!!!(←怖がるところですから) 次々と飛来するUFOの映像が映し出されるTVを食い入るように見るグラハム一家。「今日から科学が変わるんだ・・・」と好奇心いっぱいの息子・モーガンは、メリル叔父さんの大切な水着特集のビデオテープの上から重ね撮りです。あとできっと怒られます。「地球はこれで終わりかも知れない・・・。」ともう想像するだけで発狂しそうな恐怖の一夜。しかし気がつけば爆睡のグラハムがようやっと起き出したのは翌日の11時過ぎです。意外と呑気です。

TVではさらに「笑撃衝撃の映像」として、メキシコの住宅街に突如として現れた宇宙人の姿が映し出されます。小さな子供の誕生日会にうっかり迷い込んだ様子の宇宙人。気のせいかオロオロしているようにも見えます。おまけにその姿は、「宇宙人の絵を描いてみて」と言われた人の約8割は間違いなくこう描くだろうというようなベタさ。しかもそれが家庭用のビデオに・・・・・・。これを怖がれという方がムリです、シャラマン監督。瞬間、世界規模のドッキリ?と思ったひとも多いことでしょう。しかし、しかし違うのです。奴らはなんと人間を食料としてテイクアウトしようと企んでおったのです!!(失神←嘘) その夜。ついに宇宙人たちの一斉攻撃が始まります。地下1階地上2階の木造住宅にセコムなんて洒落た防犯機能が備わっているはずもなく、やれることといったらひたすら家を内側から板で打ちつけることくらい。まるで台風でもやってくるような按配です。ところがこれが意外と効果大!!!奴らは何万光年もUFOに乗って移動する知恵はあっても、がっちりと釘で打ち付けられたドアや窓を破るのは苦手のようで(指がほっそいから?)、ひたすらガリガリと壁を引っかくのみです!!!なんかもう楽勝ムードさえ漂ってきました。

ところが、ここでアクシデント発生です!息子モーガンが喘息の発作をーーーー!!!クスリは上の部屋にしかありません。早く取りに行かないと!ところで今何時ごろ?えっ!うっかり12時間も眠っちゃったの?ならもう朝じゃん!ラジオはなんて言ってる?急に何かに怯えたように撤退してるって?じゃあじゃあ行ってみる?! 「朝陽が目に染みるぜ・・・」そうです。我々人類はどういうわけかエイリアンどもに打ち勝ったのです。あいかわらず何に怯え逃げていったのかはわかりません。(というか分からないという気持ちで見なければなりません。大方の人間は予想ついてると思われますが)「ヨカッタ・・・これでひとまず安心だ。さてTVでも見るか!」 あれ?なんかTVに変な人影が映ってる。しかも、モーガンを抱えてない?

・・・・・・・・・・・・なんという能天気な人達でしょう!昨夜あれだけオソロシイ思いをしたというのにあっと言う間に気が緩みきっておるのです!!普通、もっと警戒するだろう!!もうあほらし過ぎます、このうっかり家族・・・。 しかし、ご安心あれ。ここまではただの前フリ(長いな)。この映画のテーマはここからですから!

凶悪な(には見えないけど)宇宙人相手に、手も足も出ないグラハムとメリル・・・。そうこうしているウチにもモーガンにはしゅうしゅうと毒が吹きかけられています。もう絶対絶命です。とその時、グラハムの脳内にまさに天の声が聞こえてくるのです。それは亡くなった妻が今際の際に残した言葉。 「メリルに伝えて≪打って≫」と・・・。(補足:メリルは元マイナーリーグのホームラン王なのです) ゆっくりと振り返った目線の先には壁に掛けられたバット。その側で固まっているメリル・・・。 まさかと思いましたね。まさかこの宇宙人をバットで殴り殺す気なのではなかろうなと・・・。しかし、そんな困惑気味のこっちの気持ちにはお構いなしにバットを手に取るメリル。そして案の定!!!!。思い切り殴られよろける宇宙人(激弱)。よろけた先には部屋中に娘のボーが置きっぱなしにしていた水の入ったコップが!!!ばしゃーーん!!!ぶしゅぅぅぅぅぅぅ・・・・。

今さら言うのも嫌なんですが、この宇宙人たちが最大に恐れているもの、それはだったのです。えへ。 これで本当に終わりなんだ(歓喜)。嗚呼だけど、モーガンが!!いやいや待てよ。喘息の発作で肺は閉じていたはず!ということは・・・。パッチリと目を開けたモーガン・・・。「誰かが助けてくれたの?」 オオ!!モーガン!!喘息の発作はこのためだったのかー!!それにそれに、自分が繰り返し妻の最期の時の夢を見たのも、ボーが「このお水ヘンな味がするのーー」と部屋中にグラスを散らかしまくったのも、全てこのときのための伏線だったのか!!!これって奇跡だよね。そうだよね。お父さん、もう一度神様を信じてみるよ!!(信仰ってこんな感じでいいんすか?) ここで泣けた人はやっぱり、奇跡とかそういうものを信じてる人なんでしょうなぁ・・・。(ていうか、泣いた人いる?)私は全然ダメでした。それよりさっきの宇宙人だけど・・・ってもうそっちの方が気になってしょうがないっすよ。しかしスゴイなぁシャラマン監督は。一人の牧師が信仰を取り戻す話に、宇宙人出してくるんですから。なぜ宇宙人?!しかもあんなベタな。別に宇宙人のルックスが話に影響あるわけではないのですが、いくらなんでもあんまりかと。いい年こいたグラハムやメリルが盛大に怖がるのが不思議でしょうがない。あれはむしろ笑うとこではないのデスカ?。

見終わった後、思わず半笑いになってしまうこの映画。案の定、かなり叩かれてます。でもそんなに悪い作品ではないと思うんですよね。コントとしてはかなりの出来ですよこれ。あとシャラマン監督、今回出すぎ。それと、リバーに比べてどうにも繊細さに欠けるわ!と思っていたホアキンが、意外にも弟役をかなり愛らしく演じています。甥っ子や姪っ子と一緒になってアルミホイルで作ったお帽子を被るメリル。( キスチョコか思いました/yuka・Bさん)「これで心の中を読まれることはないはず!」と本気で信じていたと思われます。バカワイイ。


ロード・トゥ・パーディション/ROAD TO PERDITION

【監督】 サム・メンデス
【出演】 トム・ハンクス/ポール・ニューマン/ジュード・ロウ

冒頭に流れる音楽で、これはアイリッシュ・ギャングの映画なんだなと。

マイケル・サリヴァン(トム・ハンクス)は家ではよき夫、よき父親。しかし一歩外に出ると名前を聞いただけでチンピラどもが震え上がるようなギャングです。ボスはルーニー(ポール・ニューマン)。二人の絆は実の親子のよう。でも決してそれ以上ではなかったのが不幸の始まりです。ボスの実子は冷酷なわりにヘタレなコナー(ダニエル・クレイグ)。父親が実の息子である自分よりも、マイケルの方を頼りにするのが許せない嫉妬深いこいつが、サリヴァンの妻子を殺してしまったことから物語は始まります。

ストーリーはいたって普通。ようはサリヴァンと唯一残された長男との逃走&復讐劇です。でもこの映画、役者がいいんですな。トム・ハンクスがアイリッシュ・ギャングだと?と最初はピンと来なかったけど、意外と銃を撃つ姿も様になっている。冷静に復讐の機会を狙う凄腕のギャングの顔と、息子にはまともな人生を送らせたいと願う父親の顔。ふたつを静かに演じわけるあたり、やっぱり上手。バカ息子を持ったせいで、実の息子のように可愛がっていたサリヴァンを消さなければならなくなった老ボス、ポール・ニューマンはすでに立っているだけで絵になっている。ギャングとしてはヤリ手のルーニーだけど、父親としてはおそらく失格。それを本人もわかっているから、あんなバカクズ息子でも切り捨てられないんだろうねぇ・・・。彼とサリヴァンの最後のシーンは、やるせなさでいっぱいっすよ。このふたりが実の親子だったらどれだけよかっただろう。 どうしようもないクズ男、コナーを演じるのは、ダニエル・クレイグ。見た目はいっぱしのギャング顔なんだけど、そらもうたいへんなびびりです。サリヴァンの妻子を殺したあと、大慌てで逃げながら階段から転がり落ちてますから。それをまたパパに知られて「お前を憎む!お前が生まれてきた日を呪う!!」(←このセリフ最高。)とまで言われて号泣。ホント、頼むから死んでください。(ダニエル・クレイグって『トゥームレイダー』でも見かけ倒し男を演じてましたな。また似合うのよこのひとそういう役が。)

そんなドラ息子でも殺されちゃかなわんと、ルーニーが雇った殺し屋がジュード・ロウ。これがね、なんというか・・・。死体の写真を撮るカメラマンが本業(らしい)彼は蛇のような男です。気味が悪くてね。でも、その役柄以前に気になってしょうがないのが、見た目・・・・・・。ハゲてます。容赦なく。髪が薄く見えるようにと特別なカットをしたらしいのですが、「そんなことしなくてもじゅうぶん・・・・もとい、そんなことしてあとでちゃんと生えてくるんかいジュード!」と心配で心配で。おまけに顔色も悪く歯もわざと黄色っぽくしてあるんですよ(泣)。でもでも結局、何をどうしたところで顔はキレイ。もうめちゃくちゃキレイなんですな。ハッキリいって、あのメイクいらんかったかと。(なんでそのまんまじゃいかんかったんでしょう)いちおう、『腕のイイ殺し屋』のようなんだけど、ここぞ!って時にもたもた着替えてたりもする変な男でもあります。

最初から最後まで、とにかく人が死にまくりますこの映画。どうしてもサリヴァンの側に立って観てしまうので、どうか彼が無事に家族の仇を討てますようにと願ってしまうけど、考えてみりゃ彼が次々と殺していく人たちにも家族や大事な人がいるわけで。そうするとこれは終わりのない物語になってしまうんですな。ネバー・エンディング・ストーリーなわけです。でも、この作品は最後キチンと終わらせてくれる。サリヴァンが息子にはまともな人生を・・・と願った通りに。ラストシーンが後味よくて好きです。それと映像がキレイ。ブルーグレーの世界。


歌え!フィッシャーマン/ HEFTIG OG BEGEISTRET

【監督】 クヌート・エリーク・イェンセン
【出演】 ベルレヴォーグ男声合唱団

ノルウェーに実在する男声合唱団のドキュメンタリー映画です。しょっぱなから打ちつける波と吹雪の迫力に呆然・・・。横殴りの雪が舞う中で歌う合唱団の姿なんかとっくに見えてませんから。

ストーリー的には別にスゴイことがあるわけじゃない。唯一の産業が水産加工業の町の合唱団のメンバーが勝手にくっちゃべってるだけでね。でもこのおっさんらの話がやたら面白いのよ。みんなが口を揃えて「昔はモテた!凄かった!」(中には「カサノヴァだった」とか言い出すおっさんまで。そんなわけないだろ/笑)初恋の人の写真を奥さんの許しを得て家に飾ってるじいさんやら、元ヤク中やら、共産主義者やら、失業者やら。それぞれが「昔はヨカッタんだけどね。今は大変。仕事もないしさ。でも俺らにゃ合唱団があるから。やっぱりこの町を離れられないんだよ」と実に楽しそうに語る。いいなぁ・・・。なんか羨ましいと思った。「歌があるから生きていける」だなんてカッチョよすぎですな、このおっさんたち。

多分一人一人はそんなに上手いわけじゃないと思うのですよ(笑)。それがメンバー全員の歌声が一つになった時、なんとも素朴な感動をおぼえる。(間違っても洗練されちゃいませんよ。極寒すぎて鼻水なんか凍っちゃってますから。)年令も出身も仕事も違うおっちゃんたちがケンカもせずに、真面目に懸命に練習した結果が素直に歌に出てる。それだけで充分聞くに値するモノになっているところがスバラシイのです。

合唱団の平均年令を強烈に押し上げているのが”ストランドボーイズ”と呼ばれている兄弟。練習がある時は96才の兄が87才の弟を赤い小さな車に乗って迎えにくるのがもうめちゃくちゃ可愛い。(急発進して「あ、人がいた」なんて平気で言ってたりしますが)とてもそんな年にゃ見えない元気なおじいちゃんたちの活力の源は歌とジョークと大食いにあると見た!!。(若いもんでも胸焼けするような晩御飯の量です。じゃがいもが黄色くてね。食べてみたい。)


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