■ ナイスガイ・エディ(クリス・ペン)を可愛いと思える日がよもや私に来ようとはッ!
腕が落ちたことを機に、殺し屋稼業から引退を表明したフィリックス(ステラン・スカルスガルド)は、新しい仕事としてベビー・シッターをやることに(笑)。しかし相手は子供は子供でも、33年間一度も外に出たことがない大きな子供、ババ。(身体もでかいし、正直おっさん)借金苦のために嫌でもこの仕事を引き受けなきゃならないフィリックスの奮闘振りがおかしい(笑)。なんせ彼はそれまでの25年間、常に殺しの世界に生きてきた男。ハードボイルドなんである。それが一転してベビー(?)シッター。不況で再就職の道はどこでも厳しいということか。
フィリックスに「男の生き様」を教わるババ(クリス・ペン)。お酒はウィスキー。水なし氷なし(シリアルにもミルクではなくウィスキー)。コーヒーはコロンビア産もちろんブラック。そして女。「母親でもない妻でもない。女は女だ。」・・・・・・しびれる(嘘)。古臭いなぁ(本音)。でもこれがステラン・スカルスガルドのあの声で語られるといやに説得力があるんですな(笑)。ちなみに音楽はバリー・ホワイト。「アリーmyラブ」でもジョンが男としての気合を高めるためによく歌っていたのが彼の曲です。私しゃ全然知らんのですが、男性にとってバリー・ホワイトってそんなに影響力あるんでしょうか。
フィリックスとババ、この二人に次第に育まれていく友情を軸に話は進んでいくのですが、彼らにもう1人華を添えるのがポール・ベタニー。勝手に引退を決めたフィリックスを「簡単に足抜けなんかさせないぜ!」と狙う組織から、師匠であった彼の始末を任される新人の殺し屋ジミーを演じる彼がもうスゴクいいのですよ!!!出番こそ少ないものの、仕事よりフィリックスを選んだ彼がたった一人で組織の内部から崩していくそのストイックさにくらくら。長い指で考え深げにタバコをくゆらせ、長身(190cm!)を黒いロングコートで包みライフルをかまえる立ち姿の優美さにグラグラ。スタイルがいいということは間違いなく役者の芸のひとつでありますな。絵になるって大切なこと。
随所にちりばめられるユーモア(ステラン氏に笑かす気がまったくないのがイイ)。そしてシリアス(映画をみてこんなに切ない思いをしたのも久しぶり)のさじ加減が素晴しい。孤高のハードボイルダーだったフィリックスがババからは誰かと一緒に暮らす楽しさ、温かさを。ジミーからは命がけの尊敬と愛情を受け取り、次第に変わっていく姿を見て「人間って一人で生きていけるわけじゃないのだ」と今さらのように身に染みた。それとこの監督さん、線引きが上手ですな。クリス・ペン演じるババは一歩間違うと大きな子供ではなく、ヤバイ人になってしまうが、それをギリギリの子供らしさで抑えている。ホントにギリギリだけど(笑)。(むやみやたらと泣かないところがいいっすな)それから、ジミーのフィリックスへのリスペクト。これもまたやり過ぎると暑苦しいとこでした。暑苦しいのはこの映画にそぐわないからね。あくまでクールに。少しまぬけに。
あと、出演者が着ているニットがスゴクいいのです。ババのいかにも子供っぽい帽子・手袋とお揃いのセーター。ジミーの細い身体にぴったりのタートルネック、彼の同僚のカットが着ている背中が大胆に開いたセクシーな服。そしてフィリックスのブルーのセーター。いずれも役にぴったり合っててお洒落です。
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