レッド・ドラゴン/RED DRAGON

■ レクター博士(アンソニー・ホプキンス)はグレアム(エドワード・ノートン)のことを、たいそうお気に召してらしたんですなぁ。彼に逮捕されるまでの一緒に過ごした日々が人生最良の時だったんじゃないでしょうか。頭がよくて礼儀正しい若きFBI捜査官とのIQの高い会話のキャッチボール。「彼は自分と似ている・・・」とうっとりする博士の姿が目に浮かぶようです。だから逮捕された時も「アッパレだ。グレアムくん・・・。」と感動したはず!(妄想)。が、計算違いだったのがこの事件をきっかけにグレアムが引退してしまったこと。当然面会にも来てくれません。レクター寂しい・・・。しかし、そこへ新たなる猟奇殺人犯”フランシス・ダラハイド(レイフ・ファインズ)”が現れ何年かぶりにグレアム捜査官復帰!!!しかもかつてのように自分に教えを乞いに現れるんである。まさにダラハイド様様。(もちろんグレアムを引っ張り出してきたという一点のみにおいて)「礼の一つも言っておかねばなるまい・・・。」そう思ったからこそ、博士はダラハイド如きの手紙に返事を出してやったのです。

久しぶりの再開を果たしたグレアムの依頼を一度は断る素直じゃない博士。「じゃあいいです。さようなら。」と冷たく背を向ける彼に「資料を置いて行きたまへ!」と精一杯の威厳を保ち(心の中は号泣だ)声を掛けるレクター。そして、せっかちなグレアムのために1時間で鬼神のごとくプロファイルし、遠まわし(のようでほとんど正解言っちゃってる)のヒントを与え、そこから彼が何を読み解くかを目を細めて見つめる博士は、「これだ。これがやりたかったんだ!!」と喜びに震えていらっしゃいました・・・。(妄想)。

しかし、ここで惜しまれるのはレクター博士の歪んだ愛情の発露。(そこはほら、やっぱり狂人なのでね。)クラリス相手でもそうでしたが、彼は自分のお気に入りを窮地に陥れて楽しむという困った性癖があるんである。そして今回もやっちゃいました。しかも「そりゃ怒るよ誰だって!」という本人ではなく家族に手を出すという最悪のやり方で。が、ここで肝心なのはレクター博士は果たして本気だったのか?という点であります。私はハッキリ違うと思う。なぜなら、聡明な博士にはダラハイドよりFBIの方が先に暗号を解読して救助に向かうことなんかとっくにお見通しだったから。(そうでなけりゃ最初から仕掛けてなかっと思う。)ではなぜレクター博士はそんなことをやらかしたのか?答え→それはひとえにグレアムにかまって欲しかったからなんです!!すでに捕まってしまった自分より、現在の関心は当然のことながらダラハイドの方にあるわけです。彼にはそれが耐えられなかった・・・(はいこれ全部妄想)

ちゅうことで、必死になってグレアムを繋ぎとめようとしたものの、事件が解決すれば彼は元の静かな生活に戻ってしまった。レクター博士の喪失感は並大抵のものではなかったことでしょう。「あの活気に満ちた日々よ、もう一度・・・。」とぶつぶつ思いつめていたところへ現れた新人捜査官クラリス。グレアム同様、知的で礼儀正しい彼女を博士が気に入らないわけがなかった!!ってわけでこのシリーズは続いて行くのです。←こりゃ感想でもなんでもないですな。

二家族を子供からペットまで全て皆殺しにした”レッド・ドラゴン”ことフランシス・ダラハイドは、子供の頃に祖母から受けた虐待がトラウマとなって今回の犯行に及んだわけですが、やはりそれはそれこれはこれで、私にはまったく同情の余地はないように思えました。彼が唯一、心を許した盲目の女性リーバ(エミリー・ワトソン)。彼女が「私がもう少し早く(彼の心の闇に)気付いてあげていれば!」と泣くシーンは哀しい。ホントにもっと早く(事件を起こす前に)出会っていてくれたら!!(盲目の彼女がほぼ初対面のダラハイドをあっさり部屋に上げたのは、彼の中にまだ人間性が残っていたからですよね。)

それと、非常に豪華なキャスティングなのはいいのですが、エドワード・ノートンがダラハイド役の方がヨカッタかな。レイフ・ファインズも悪くはないんだけどねぇ。グレアムの上司、クロフォード役のハーベイ・カイテルは原作のイメージとあまりに違ってて最初誰か分からんかった。ここはやはりスコット・グレンでしょうな。そして今回の私の一押しキャラは、グレアムの同僚のアジア系FBI捜査官、ケン・リョン(役名忘れた)です!ぴっちり横分けで、仲間がぐーすか寝てる間も一人猛然と暗号解読に励む彼のクールなこと!グレアムに「お前も相当キレるようだけど、俺だって負けないぞ!!」と言うのがなんとも可愛いかったっす。あいつ絶対いい奴。


バティニョールおじさん/MONSIEUR BATIGNOLE

【監督】 ジェラール・ジュニョ
【出演】 ジェラール・ジュニョ/
ジュール・シトリュック/ミシェル・ガルシア/ジャン=ポール・ルーヴ

■ ドイツ支配下のフランスで実直に肉屋を営んでいたフツーのおじさんが、ナチスの手から逃れてきたユダヤ人少年シモンと、彼の従姉妹二人をスイスへ逃がそうと頑張るお話。

このバティニョールさん(ジェラール・ジュニョ)、ホントにフツーの人なんである。だからシモンくん(ジュール・シトリュック)が突然「お腹減った・・・。」と玄関先に現れた時はさぞや眩暈がする思いだったことでしょう。しかしおじさんには彼に対して強烈な負い目がある。なにしろシモンの家族をドイツに売ったのは彼の娘の婚約者。(こいつはクズ!人間のクズよーー!!)おまけに今シモンの家に住んでいるのは(おじさん自身は望んではいなかったけど)何を隠そう自分の家族なんである。「おじさん、僕の家で何やってるの?」と真っ直ぐ見つめられちゃ敵いません。ひとまずシモンを匿うおじさんです。(「喉が渇いた」「寒い」「本が読みたい」ととにかく注文の多いシモンに振り回されっぱなしのおじさんが哀れで同情するしかない。)

さっさと厄介払いをしようと、シモンの元に逃げてきた二人の従姉妹を含めた三人の子供達をスイスまで逃がそうと決めたおじさんの、ひたすら孤軍奮闘する姿は観ている者をそうとうハラハラさせてくれます。「早く!早く隠れて!!!」と手に汗握るったらありませんよ。もう必死。自分が。また頭はいいが小憎たらしいガキどもがおじさんの足を引っ張るんであるよー!(泣ける)どうもこのお子様達、元がええとこの子だったせいか、おじさんが何をしてくれても当然だと思っている節がある。特にシモンくん。お前文句たれすぎだろう。叱られればすぐ拗ねるし。まったく扱いにくいガキだな!!言っておくが、おじさんにはあんたらにそこまでしてやる義理はないんだぞ!!(しかし時にはその小賢しさでおじさんのピンチを救うこともあるので、あんまり言うのもあれか。)

最初はいい迷惑だとしか思えなかった逃避行を、しまいには「(子供達を無事に逃がすことが)自分の夢だ。」とまで言い切るおじさん。彼をそこまで変えたのはおじさんの中に溜りに溜まっていた怒りが爆発したせいだと思う。インテリ気取りの娘の婚約者やガキどもに見くびられっぱなしだったおじさんが、土壇場で警官相手に見事な啖呵を切ってみせるシーンは、彼がヒーローじゃないどこにでもいそうな等身大のオヤジだからこそ余計にぐっとくる。それこそ彼にとっちゃ一生分の勇気を振り絞った瞬間ですよ。(もはや逆切れとも言えるけど)そんないっぱいいっぱいのおじさんに「よく言った!(でも早く逃げてーー!)」と言ってあげたいくらいです。

バティニョールがヒーローでないのと同様に、子供達も無邪気な天使じゃありません。また迫害されるユダヤ人(シモンの家族)もただ可哀想な人たちではなく、お隣さんだというのに肉屋のおじさんにはろくに挨拶もしないような嫌な医者として描かれていて、そこがリアルというか新鮮でした。(そんなにこの手の映画を観たわけじゃないけど)それと、人間のクズを演じたジャン=ポール・ルーヴ、上手いです。もう二度といい人の役は回ってこないんじゃないかと他人事ながら心配になるほど。彼が強烈に嫌な男を演じきったからこそ、他のちょっといい人が活きてくるように思いました。


戦場のピアニスト/THE PIANIST

【監督】 ロマン・ポランスキー
【出演】 エイドリアン・ブロディ/エミリア・フォックス/トーマス・クレッチマン/エド・ストッパード

※ネタばれし放題です。

■ 実話なんですよね。しかもポランスキー監督も主人公と似たような体験をしているという。だからといって力みはありません。淡々と「何年何月にこういうことがありました」といった感じで話が進んでいく。それがちょっと笑えるエピソードのひとつも挟むことなく、どんどん過酷になっていくからキツイったらないです。最終的に列車にぎゅうぎゅう押し込められて収容所送りになるユダヤ人たち・・・。どこへ送られてどうなるのか、はっきりと知らされていない分、一縷の望みを持っていた人もいたと思う。でも観てる方には「この人たち、みんな殺されるんや・・・・。」と共通の認識がある。だからもう見事にみんな押し黙ってました。静まり返る映画館。

その列車から一人逃げ延びた主人公のシュピルマン(エイドリアン・ブロディ)。職業ピアニスト。稀に見る強運の持ち主。ホントによく生き残れたなと思うほど、ピアノを弾く以外何も出来ない人です。「どんなことをしても生き延びるんだー!」といったタイプの主人公を想像していただけに、これは驚きでした。そんな熱いパッションは感じられません。どっちかつうと”食う事”しか考えてないように見えた。(でもまずそこからだというのはよく分かる。人間、食わなきゃ生きていけないんだから。)どう見てもサバイバルには不向きな彼を支えてくれたのはポーランド人の友人やその仲間です。『バティニョールおじさん』でも感じたけど、ドイツ軍に見つかれば自分達もどうなるか分からない危ない橋を渡る彼らのような存在は、”神様は信じられなくても人間は信じていいかな”という気にさせてくれます。

しかしこのシュピルマンさん。なんつうかちょっとうっかり屋さんなんですよ。なるべく音を立てないで静かにしてなきゃいけない隠れ家で盛大に皿を割っちゃうような。だもんで新しい隠れ家にピアノがあるのを見た時は「まさかこの人、うっかり弾いたりせんだろうな。」と本気で肝が冷えました。(実際は弾いてるつもりで指を鍵盤の上でポロンポロンさせるだけです。)

戦争も終盤に入り、いよいよ誰も手助けしてくれなくなった頃、隠れていた家で缶詰(きゅうり?ピクルスか)を必死こいて開けようとしているところへ現れるのが一人のドイツ人将校です。パリっとしてます。「ここで何してる?隠れてるのか?一人で?」とあれこれ質問されても、空腹のあまりか、なんか薄らぼんやりしてるシュピルマンさん。「職業は?」と聞かれて「えっと、ピアニストです・・・。」(えっとは私の創作。なんかそんな雰囲気がしたもんで。)と答える彼に「何か弾いてみろ」とピアノを指すドイツ人です。しばし迷ったあと、彼が弾き始めたのが『ショパンのバラード第1番』。何年ぶりかでピアノに触れた彼が、この時ばかりは缶詰の事もドイツ人将校の事も忘れ去ったかのように演奏に没頭する姿を観て初めて「ああ、この人ピアニストだったんだなぁ・・・。」と思い至りました。食べる事以上にピアノにも飢えていたんだなぁ、シュピルマンさん。

演奏を終えて、ふと我に返った(すぐにまた缶詰を抱えるのがもう!開けたってー!!)彼をあっさり見逃してくれたばかりか、それ以降もちょいちょい差し入れをしてくれたナチスドイツ唯一の良心ことホーゼンフェルト将校(トーマス・クレッチマン)さんも実在の人物です。シュピルマンさん以外にも多くのユダヤ人、ポーランド人の命を救った気高き男でありますが、本人は終戦後、スターリングラードの戦犯収容所でお亡くなりになったそう。シュピルマンさんも彼の釈放を求めて必死で政府に働きかけたそうですが、その願いが果たされることはなかったのです。後にシュピルマンさんは「人間は国家や民族ではなく、個人で判断しなさい。」とおっしゃったそうですが、そこには恩人を救えなかった彼の強烈な無念が込められていると思います。ホーゼンフェルトさんは心身を病んで亡くなったらしいと聞けばなおさら。彼のような人が最期に感じたのが絶望だけだったとしたら、こんなに哀しいことはありません。

この映画のタイトルですが、「戦場の」はいらないと思いました。これが付くとどうも「激戦の中、どんなに辛い目にあっても決してあきらめることをしなかった孤高のピアニスト」ってなイメージがあるんですよね。この人、そんなたいそな人じゃありませんから。色んな人の善意やら運やらに助けられ(本人の努力ももちろんありますが)生き延びた男が、たまたま職業ピアニストだったという。だから原題通り、”ピアニスト”だけでヨカッタんじゃないでしょうか。(でもこのタイトルだと他にもあるからなぁ。紛らわしいから冠が付いたのかな。)

あと私が密かにお気に入りだったのが、主人公の弟、ヘンリク(エド・ストッパード)。ぼぉーーっとしたお兄ちゃんに比べ反骨精神に溢れた彼は生活のためにピアノを売らなきゃいけなくなった時も猛然と反発します。(ピアニストの兄ちゃんはあっさりしてたのにな)そんな彼が唯一売れるものは本だったわけですが、最後に一冊だけ持っていたあの本はなんだったんだろうなぁ。

面白いとか好きとか嫌いとか、そういうことはとりあえず脇に置いといて、一度は観た方がいい映画だと思います。


SWEET SIXTEEN

【監督】 ケン・ローチ
【出演】 マーティン・コムストン/ウィリアム・ルアン/アンマリー・フルトン/ミッシェル・クルター

※ややネタばれです。

■ 映画の冒頭。小さな子供達に望遠鏡で星を見せてやっているリアム(マーティン・コムストン)とピンボール(ウィリアム・ルアン)。←有料サービス。子供に話しかける声のトーンの柔らかさに「リアムは優しい子なんだな」と。同時にお金にはシビアなんだ・・・とも思いましたが。

リアムのたった一つの望みは「刑務所にいるママ(ミッシェル・クルター)をヒモ男から引き離し、新しい家で姉のシャンテル(アンマリー・フルトン)や彼女の息子のカラムと一緒に暮らすこと」泣かせます。そのためにはまず家を手に入れようと、親友のピンボールとドラッグの売買に手を出すリアム。これが自分が遊ぶ金欲しさってんなら、大いに呆れるところですが、リアムが欲しいのは小さくても安全なスゥィート・ホーム。「儲かるといいな、リアム!!」と思ったのは私だけではあるまいて。

案の定、ヤバイ大人が出てきて話はどんどん深刻になっていきます。いっそ殴られてすめばヨカッタのに、なまじ肝が据わっていただけに下っ端として働くハメになるリアムの姿は痛々しくてどうしようもない。また、そんな彼にどうにかしてまっとうな人生を歩ませたいと願う姉の切実さにも激しく同情っす。しかし1番辛かったのは、ようやく出所してきた母親のあまりにだらしのない姿を見せられた時。親友になじられても、姉を泣かせても、それでも手に入れたいと願った夢の家をようやく手に入れたリアムに対する返事がそれなのかと。(そんな予感は充分あったけれど)、それでも母親なのかと。リアムに謝れ!バカ女!!!(エスカレート)と激しく震えちまいました。いやいや彼女が母親失格なのは、シャンテルが以前から何度も話して聞かせていたことであり、それをリアムが受け入れられなかっただけのこと。それでも改めて傷つくリアムが可哀想ったらないんであるよ。

物語のラスト。一人海辺で佇むリアムにかかってきたシャンテルからの電話。「大丈夫?今日はあなたの誕生日なのに。」と気遣う姉に「バッテリーが切れそうだ・・・。」と応える16歳になったばかりのリアム。まったくとんだバースディです。でも考えようによっちゃ、これでヨカッタのかも知れませんな。リアムもさすがに母親への執着から解放されただろうし。これからはもう少しましな人生を歩んでいけるかも・・・。とタイトルの”SWEET SIXTEEN”を文字通り甘く解釈したい私です。

しかし、男ってのはどうしてこうも母親に甘いのか。←娘って存在は母親には点が辛いのだ。リアムも母親で充たされなかった愛情をヨソに求めたりせんだろうかと妙なところが心配(笑)。スーザン(リアムがちょっと気になってる女の子。姉の友人。)も年上だしな。大丈夫かリアムよ。

主人公リアムを演じたのはこれがデビュー作である、マーティン・コムストン。学校から半ば強制的にオーディションを受けさせられた彼はスコットランドの3部リーグ”モートンFC"と契約したばかりだったという、元プロサッカー選手です。どうりでカラムをサッカーボールで遊んでやるシーンの軽やかなこと!!さすが。(”マイ・ネーム・イズ・ジョー”でもサッカーシーンがありましたが、ようするにケン・ローチ監督が大変なフットボールファンらしいです。某クラブに出資もしてるそう。)

本物のバカこと、親友のピンポール役のウィリアム・ルアンも本作でデビュー。家族同然のリアムに捨てられたと勘違いした彼が自身を傷つけるシーンが真に迫ってて痛い痛い。頭悪いよ、ピンボール!!でもホントはバカじゃないもんね。ドラッグに手を出すのは危険だと最初にリアムに忠告するのは彼なのだ。(忠告を無視したリアムがバキバキに殴られてるのを見て、「リアムが大変だーー!!リアムー!!リアムーー!!」と奇声を発しながら駆けて行くシーンが、本人は大真面目なんだろうけど妙におかしいのよ。笑)他の出演者もみんな似たりよったりの経歴。ついこの前までは素人さんだった彼らですが、見事に役を理解していて素晴しいと思いました。特に全編アドリブで通した(笑)甥のカラムくん。(3歳くらい?)間が絶妙。天才じゃなかろうか。なんて。


THE LORD OF THE RINGS: THE TWO TOWERS

【監督】 ピーター・ジャクソン
【出演】 イライジャ・ウッド/ショーン・アスティン/ヴィゴ・モーテンセン/オーランド・ブルーム/イアン・マッケラン/ジョン・リス=デイヴィス/ドミニク・モナハン/ビリー・ボイド

※本気でネタばれです。

■ あぁ早く続きが観たい。1年前初めて”旅の仲間”を観た時も全く同じことを思いました。あの時は「1年なんて長すぎ!待ちきれないわー!!」と身悶えしたもんですが、経ってみりゃ意外にあっという間でしたな。

今回は第一部で3つのグループに分かれてしまった旅の仲間達のそれぞれの戦いについてのお話。構成が上手いので第一部を観た人はすんなり入れると思います。(観てない人は完全に置いてきぼりですが。)感想はとにかく「続きが観たい」に尽きるので、各チームの奮闘話を。

メリ・ピピチーム:
オークの背に括り付けられてどこぞへ連れ去られる途中、ローハンを追放されたエオメル(カール・アーバン)率いる軍に襲われるメリー(ドミニク・モナハン)とピピン(ビリー・ボイド)。(いまだにどっちがどっちなんだか分かってません。チップとデールの見分けもつかんしな、わし)どさくさでオークからは逃れたものの、逃げ込んだ森の中で今度は”木(エント族)”に捕まります。じたばたしながら、「僕たちはホビットですー。小さい人ですー。」と言うのが可愛いてたまりません。その後、エントと結託してサルマン(クリストファー・リー)に大打撃を与えます。第二部で最も効率の良い戦いをし、最大の戦果を挙げたのがこのチーム。優勝。つっても実際に戦ったのはエントのみなさんで、彼らはしがみついてただけですが。しかも”木”のみなさんを騙して、うまく戦うように仕向けた気がせんでもない。なんとなく罪悪感を憶える私。

アラゴルン・レゴラス・ギムリチーム:
メリ・ピピの後を追っかけてる途中、エオメル様ご一行と出会います。勢い込んでホビットの行方を尋ねるも、あっさり「オークと一緒に死んだかも。ごめんね。」と言われ大ショック!!!が、よろめきながらたどり着いた森であの世から帰ってきたガンダルフ(イアン・マッケラン)と再会し、彼らの無事を知ります。この時私は何故ガンダルフが非力なホビットを先に行かせ、ほっといても死にそうにない3人を待っていたのか不思議でなりませんでしたが、この後一緒にローハンの王、セオデンに会いに行くシーンで一気に謎が解けました。このじーさん、3人ではなく”レゴラス”を待っておったんですな。城の中に招き入れられた時のガンダルフの動きに注目。無力な年寄りを演じる風を装って、ちゃっかりレゴラスと腕を組んでます。なんのために灰色→白にバージョンアップしたんだか知れたもんじゃありませんね。いい加減、枯れたらどうか。

決断力があるのかないのか、いまいち判然としないセオデン王(バーナード・ヒル)と共にヘルム峡谷でサウロン軍と戦う事を決意する3人。どう考えても負けるしかない戦いを前に「こうなったら共に死ぬまでだ!」と妙にテンションの高いアラゴルン(ヴィゴ・モーテンセン)が気になります。←彼このちょっと前に崖から落っこちてるんだよね。打ち所が悪かったんでしょうか。躁状態のアラゴルンを尻目に、あくまでクールにかつ確実に敵を射止めていくエルフの王子(オーランド・ブルーム)のカッコイイこと!!盾に乗っかり階段をツツツーと滑りながらでも、狙いはバッチリ!殺した敵の数をギムリ(ジョン・リス=デイヴィス)に自慢げに報告する笑顔の清々しさったらないです。エルフには負けたくなーーい!とこちらも張り切るギムリはお笑い担当。さぁこれから戦が始まるぞ!という緊張したシーンでも、城壁が邪魔になって肝心の敵が見えていませんから。(ちっこいからね)「なぁ、今どうなってる?」と必死で聞いてるのに笑ってるだけで教えてやらないレゴラス。意地悪エルフ。

意外と攻め方を考えて来てたウルク・ハイ共の前に、退却を余儀なくされるローハン。「もはやこれまで・・・。みな、わしと共に死んでくれーー!(セオデン王)」と最後の死闘にいざいざ出陣ーーー!!!瞬間、朝陽と共に東の方角から白のガンダルフがド派手に登場!しかも後ろにはエオメル率いる2万の軍勢が!!(「5日後の暁に東の方を見ろ!」と行ったきりどこぞへ消えていたガンダルフ。逃げたのかと思ってた。ごめん。)予告でさんざん観たシーンだけど、流れの中で観たらこれがもう震えるくらい感動的でした。これでローハン、まさかの逆転勝ち!バンザイ!!

フロド・サム・ゴクリちゃんチーム:
このチームは暗いです。いやホント、ゴクリちゃんがいなけりゃどうなっていたことか。とにかくフロド(イライジャ・ウッド)が弱々しくてねぇ(涙)。どんどん指輪の魔力にとり憑かれていく彼は、叱咤激励するサム(ショーン・アスティン)にも冷たく当たってしまいます。サムはよくできた従者なので、フロドにはぐっと我慢をしますが、その分ゴクリちゃんをしばく。しばかれたゴクリちゃんはフロドに泣きつく。泣きつかれたフロドはまたサムを叱る。これの繰り返し。それでもまぁ頑張って旅は続くのですが、途中でゴンドールの執政の次男。ボロミアの弟、ファラミア(デヴィッド・ウェンハム)に捕まってしまいます。

「指輪を捨てに行かせて下さい。」とあのフロドにうるうると泣き落とされても「指輪はゴンドールに持ち帰るのだ!」とつれないお返事。さすが指輪大好き兄弟です。しかし勇者サムの素晴しい説教に胸打たれ、(というより指輪を探しにきたブラックライダーにびびったんじゃないか。なんて。)3人を解放。とりあえず指輪は奪われなかったので、これもまたひとつの勝利でしょうか。

再び3人の辛い旅は続くのですが、かわいそうなのがゴクリちゃん(アンディ・サーキス)。一度はフロドに心を開き「スメアゴル(本名)が旦那様(フロド)を案内するよー!デブのホビット(むろんサムのこと)も早くついてくるよー!」とまるで忠犬のごとく頑張っていたのに、余計なチャチャ(ファラミア)が入ったせいでまたしても暗い世界に逆戻り。木陰でこっそり悪巧みですよ。嗚呼、3人の運命やいかに。以上。

新キャラの中では、エオメルの妹、エオウィン(ミランダ・オットー)がアラゴルンに一目惚れして大変。「そのネックレスをくださった方はどちらにいらっしゃるのかしらん?」と探りを入れてきたりして。私は健気なアルウェン(リブ・タイラー)贔屓なので、非常にウザったい気がしました。兄のエオメルはそこそこカッコイイ。第三部に期待。ファラミアは薄幸そうなところがヨカッタですね。

私が”二つの塔”で最も感動したのは、ヘルム峡谷での戦いの直前。ハルディア(クレイグ・パーカー)に率いられたエルフの援軍が駆けつけるシーンです。圧倒的な数のサウロン軍に、子供から年寄りまで全てかき集めてでも、絶望的な戦いに挑むしかなかったローハンにとって、彼らの登場はどれほど心強かったことか。見事に統率されたエルフがずらりと居並ぶ姿の神々しさ。あまりのありがたさに涙が出そうでした。

第一部同様、あっという間の3時間でしたが、アラゴルンとアルウェンの夢の邂逅シーンはいらんかったかなと。(二人が並ぶとリブのでかさに改めて驚いたりして。背の高さもあまり変わらんし、肩幅はあきらかにリブの方が広いと思われます。)その分、ボロミアに時間を割いて欲しかったー(悔涙)。それにしても続きが観たい・・・。


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