キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン/CATCH ME IF YOU CAN

【監督】 スティーブン・スピルバーグ
【出演】 レオナルド・ディカプリオ/トム・ハンクス/クリストファー・ウォーケン/マーティン・シーン

■ レオ様の強烈なファザコンぶりに心揺さぶられる名作です。

フランク・アバグネイル・Jr(レオナルド・ディカプリオ)は16才の時に大好きな両親の離婚に耐え切れず家出。その後はひたすら小切手を偽造しまくって、しまいにゃ一財産築きます。手口は今のシステムじゃとても通用しないような単純なもんですが、時代が時代なんでね。しかも当時、飛ぶ鳥を落とす勢いのパンナム社(落とすはまずいか)の副操縦士になりすましてます。ついでに勢いだけで、小児科医から検事補まで次々と演じてみせもします。無茶です。(しかし、現在29歳のレオでさえ白衣姿がとってつけたようだったのに、当時高校生の彼がなんでバレなかったんでしょうな。よほど回りがぼんくら揃いだったのか、実際のフランクがちょっとありえないくらい老け顔だったのか。気になるところです。)

やることは大胆で非常に頭のいいフランクですが、実は甘ったれの子供。FBIに追っかけられてるとも知らず、無邪気にパパに会いに来ます。脱税で家は差し押さえられ、妻には別れを切り出されで(おまけに息子は犯罪者だしな)人生最悪の時を過ごしているパパを高級レストランに招待し、プレゼントだといって高級車のキーを差し出すフランク。まだほんの子供に過ぎない(なんせ高校生ですから)息子から、そんなもん貰えるわけないのにね。空気が読めてないんですよ。案の定、悔しさやら情けなさやらで、つい半ペソかいちゃうパパ(これがまたクリストファー・ウォーケンだったり)。あの怖い顔のでかい目をうるうるさせつつ、「涙だけは見せるまい!!」と踏ん張ることで見せる父親の最後のプライド。悲哀ですよもう。

フランクを詐欺容疑で追っかけてるのが、FBIのカール・ハンラティ(トム・ハンクス)。天才詐欺師に翻弄されっぱなしの事務系エージェントをトム・ハンクスが実にリラックスして演じてます。(アカデミー狙いじゃないと楽でいいんだろうねい。)この人はやっぱり声がコメディなんですな。「FBIーーーーー!!!」と叫びながら部屋に飛び込んでくるだけで妙におかしい。得な声だ。何度ももう少し!ってところでするりと逃げられてしまうカールさん。いい加減頭にきてはいるけれど、実はフランクが寂しがり屋の坊やだということも見抜いています。フランクの方もクリスマス・イブでさえ、仕事に明け暮れているカールを可哀想な男だと思ってる。さびしんぼう二人の追いつ追われつの物語ですな。なんか哀れになってきました。

フランクが次から次へと詐欺を繰り返し大金を盗んだのは、もちろん自分のためでもあるのですが、それ以上に豊かで楽しかった家庭をなんとかして取り戻したいという切実な願いがあったから。(ある意味親孝行です。)美人のママとその妻を大勢のライバルを蹴落としてモノにしたパパはフランクにとって、かけがえのない宝物なんですね。だからいくらお金があっても、もうママは戻ってこないんだと告げられたひにゃ、ショックで放心状態です。寂しくって思わず追っ手のカールに電話をしてしまうくらい傷ついてしまう。この辺の”男の子の繊細さ”みたいのを演じさせたら、やっぱりレオは上手い〜。(つってももう29歳だけど)『GONY』の背伸びしたような役よりよっぽどいいです。絶賛。

タイトル通り、「捕まえられるもんなら捕まえてごらんなさい」とFBIより一枚上手のフランクにもとうとう終わりの日が来ます。この時のレオとトム・ハンクスのやりとりがいいんですよ。もはや家出中の放蕩息子とそれを連れ戻しにきた真面目な父親って感じにまで高まってる二人になんか和んでしまいました(笑)。(トム・ハンクスも達者だなぁとしみじみ思ったり。やっぱり外れないわ、この人の出る作品。)話はこの後さらにもう一幕あってそれがエンドロールまで続くわけですが、なんつうか詐欺師ってカッコイイかも!!と道を誤りそうになりました(笑)。バカですな、私。そしてバカはなれないのですね詐欺師には。残念。

レオとトム・ハンクス。二人の人気俳優が楽しんで演じてるのが感じられて見やすい作品です。あと、レオに騙される女の子たちがみんな可愛い。アホだけど憎めない感じ。


ボウリング・フォー・コロンバイン/ BOWLING FOR COLUMBINE

【監督】 マイケル・ムーア
【出演】 マイケル・ムーア/チャールトン・ヘストン/マリリン・マンソン

■ どことなくうさんくさいマイケル・ムーアのアカデミー賞長編ドキュメンタリー賞受賞作品。

年間1万人以上の人間が銃で撃たれて亡くなっているアメリカで、「なぜ人々はそれでも銃を持つ事をやめられないのか」と色々な人にインタビューするムーア氏。この質問に対する答えが見事なくらい皆一緒なことに驚きます。曰く、「銃を持つ事は憲法で認められているから。そして銃で家族をひいてはアメリカを守ることができると信じているから。」常に何かと戦ってるんですなぁアメリカの人は。なんて、そんなことより本気でそれを信じているらしい様子にびっくらこきます。完全に殺られる前に殺るの精神ですな。

映画の中で悪の親玉のごとき扱いで登場し、「銃って素晴しい!」と叫ぶ全米ライフル協会会長、チャールトン・ヘストン氏。彼は「なぜ、アメリカから銃がなくならないのか?」とムーアに畳み掛けるように質問され、うっかり「アメリカの歴史は血にまみれた歴史だからさ。それに他の国に比べたらアメリカというのは人種のるつぼだろう?」と答えてしまう。(色々と口がすべった瞬間です。)ところが自身は一度も撃たれたこともなけりゃ、襲われたことすらなかったりするんですな。それで子供が銃で大きな事件を起こしたばかりの土地へ乗り込んでは、あえて大規模な大会を開いたりする。人間てのは実際に撃たれたり、または撃ったりしないと人の痛みがわからないのでしょうか。答えはNOです。想像力が足らんのですな、この方。俳優なのに。ただ、容赦なしのムーア氏の質問に最後は逃げたとはいえ、きちんとインタを受けたのは立派だと思いました。言ってることは矛盾だらけだけど、とにかく「銃が好きでたまらない。あると安心する。」ということだけは伝わってきたし。

少々気の毒なくらいのチャールトン氏のインタも面白かったのですが、やっぱりガツンときたのは実際の事件の映像です。コロンバイン事件の防犯カメラの映像にかぶる犯人の父親からの電話。「息子が事件に関わってるかも知れない。」と言ったときのこのお父さんの気持ちとか、学校で6歳の少女を撃ち殺した同じく6歳の少年が話し相手の刑事に描いて渡した絵とか。色々とたまらない気持ちになってしょうがなかった。

以前、TVで似たようなテーマを取り上げていたのを見たことがあって、その時出ていたあるアメリカ人の男性は強盗に家族を殺されて以来、家に銃を置くようになったと言っていました。あの時銃があれば家族を守ることができたのにとも。確かに武器を手にする事で得られる安心みたいなもんもあると思うんですよね。でも持たないで済むならそれに越したことはないわけで。銃による犯罪から身を守るために銃を持ち、そのせいで事故が起きてしまったり新たな犯罪が起こったりする。どっちが先だとぐるぐる回ってます。

難しい問題だけに最後まではっきりとした答えは出ません(そらそうだね)。とりあえずKマートは弾を売る事を止めたけど。(「弾を一発5000ドルにしろ!」というクリス・ロックの案が一番有効かもしれませんな。笑)”ライフルを背負った犬”とか”あまりに無防備なトロントのみなさん”とか、仕込みっぽいネタも笑えるし、計算されてよく出来た映画だと思います。


ベッカムに恋して/BEND IT LIKE BECKHAM

【監督】 グリンダ・チャーダ
【出演】 バーミンダ・ナーグラ/キーラ・ナイトレイ/ジョナサン・リース・マイヤーズ

■ インド系イギリス人のジェスと友人のジュールズ。2人の女の子が共に親の反対にもメゲず恋とフットボールにチャレンジする、爽やか青春物語。

ジュールズ(キーラ・ナイトレイ)のママ(ジュリエット・スティーブンソン)がいいんですよ。『女の子は女の子らしく!』がモットーの彼女は、年頃の娘がスポーツブラしか着けず、男の子にも興味なさげなのが心配でしょうがない。しまいにはジェス(バーミンダ・ナーグラ)との仲を勝手に疑い勝手に激怒したりと、とにかくにぎやかです。でもこの思い込みと勘違いだけで生きてるママが、あまりに天然で憎めないのですな。空回りは激しいけど、ギスギスしてないからね。彼女がなんとか娘を理解しようと、夫にオフサイドのルールを教えてもらうシーンが健気で可愛らしく、とても好きです。

原題は「BEND IT LIKE BECKHAM」。ベッカムの蹴るボールのように、社会の壁をググっと越えていこうとする女の子の話という意味らしいですが、主人公のジェスが両親に闇雲に反発したりせず、家族のことも大事にしながらなんとか夢を叶えようとするところが賢くていじらしくもあり、もどかしくもある。そんなジェスの背中をポンと押してくれる、幼馴染のトニー(アミート・チャーナ)がいい奴でね。ある意味タイトル・ロール的(邦題の)な彼が見せる男気には泣けたなぁ。彼にもぜひ幸せになってもらいたいもんです。

一つ不満なのが、ジェスが大事な試合で任されたFKの場面。せっかく「ベッカムのように曲げていく」というタイトルが付いているのに、この肝心なシーンで壁を越えてゴールマウスに吸い込まれていくボールが映し出されてません。あそこはそれこそベッカムのFKをCG合成してでも入れといて欲しかったっすね。

ところで邦題の「ベッカムに恋して」。いかにも彼の人気に便乗した的外れなタイトルだという意見もあるようですが、それはそれとして、私はやっぱりベッカムってスゴイなと思いますね。いい悪いは別にして、一応ちゃんとタイトルになってるし。これが同じように(あるいはベッカム以上に)スゴイFKが蹴れても、「ミハイロビッチに恋して」じゃ客は入りませんから。←私はめちゃくちゃ見たいけどな。


8Mile

【監督】 カーティス・ハンソン
【出演】 EMINEM/キム・ベイシンガー/ブリタニー・マーフィー/メキー・ファイファー

■ 人気ラッパー、EMINEMの半自伝的映画とも言われてますが、主人公のジミーったら、えらいカワイコちゃんで、これとイメージをそのまま重ねられたら本人気が重いでしょうな。その辺を踏まえてか、雑誌のインタでは「俺は浮気した女にあんなに寛大じゃない。」なんて答えてたり。いや、寛大というより逃げ腰でしょ、ジミーの場合。

デトロイトで母親のステファニー(キム・ベイシンガー)、親子ほど歳の違う妹リリーと3人で暮らすジミー(EMINEM)は、いつかラップで世界に出て行ってやると夢見ています。が、残念ながら金もコネもない。そこで地元クラブのラップバトルに出て腕を磨くのだけど、出演者も客もほとんどが黒人。ステージに上った途端、「白人はかーえーれ!!かーえーれ!!」と野次られ、一言も発せないままとんずらです。あのEMINEMが半べそでとんずら。このシーンだけでチケット代分の価値はあります。その後は、黒人の友人が「お前ならできる。絶対やれる。」といくらなだめすかしても「嫌だ。」の一点張り。非常に頑なです。出ろよ、お前と思いますね。でまぁ、結局出るわけですが。

最大の見所がこのラップバトル王座決定戦(多分)。ようは壮絶な口喧嘩ですね。持ち時間45秒の中で、いかに相手を凹ませ客を沸かせられるかの一発勝負です。ここで肝心なのが、その悪口が単なる「お前の母ちゃんでべそ」的なものでなく、韻を踏んだり、笑いを取ったりとそれなりのテクニックを駆使しなけりゃならんとこ。もちろん「噛む」なんて言語道断ですよ。内容が内容だけに一度でも噛もうもんなら、死ぬほど恥ずかしい。いやいっそ死ぬしかないかと思われます。

ただ自分、英語がわからんもんで、絶対的アウェイ状態の中でチャンピオンに挑んだジミーの渾身の悪口がいいのか悪いのかもひとつ判断つかなかったのが残念でした。相手が試合を捨てたとこから考えると、かなりの出来だったんでしょうな。私には逆ギレとしか思えんかったですが。

で、EMINEMですが。真剣に芝居してます。しかも上手い。口も達者だけど目も達者(なんでしょうこの日本語)。他の映画でも観てみたいなと思いました。母親役のキム・ベイシンガーとの絡みが可愛いですよ。「私の可愛いうさぎちゃん♪」なんて呼ばれてて(笑)。あと、劇中に彼が書き溜めているネタ帳みたいのが出てくるのだけど、これが細かい字でびっしり書き連ねてあって驚き。意外と几帳面な人なのかしら。


X-MEN2

【監督】 ブライアン・シンガー
【出演】 ヒュー・ジャックマン/ハル・ベリー/ファムケ・ヤンセン/アラン・カミング/イアン・マッケラン/パトリック・スチュワート

■ 一番のお楽しみだったナイトクロウラー(アラン・カミング)がオープニング早々、ド派手なアクションで登場してくれて狂喜。大統領を暗殺するため、テレポーテーションを繰り返しながらSPを蹴散らしまくるシーンがんもうかっちょいいかっちょいい。ここだけで¥1280(金券ショップにて購入)払ったかいがあると思いました。ところがウキウキしてばっかりもいられないのが、どう考えても「こりゃ悪者やないか?」ということですよ。このまま暗殺成功!ってなことになったら彼がどれほど責められることか。さっさと逃げんかい、このノロマ(大統領)!と歯噛みしているところへ銃声一発。哀れナイトクロウラーはキャン!と鳴いてドロンと逃げてしまいました(涙)。

傷つき、隠れていた彼を保護しにきてくれたのが、ストーム(ハル・ベリー)とジーン(ファムケ・ヤンセン)のお姉さま方。「なんにも覚えてないんだよう。」と言う彼をそれは優しく包み込んでくれます。このあたり、傷ついた野生動物を保護するドキュメンタリー番組そのものって感じですね。ナイトクロウラー、しっぽ生えてるし。しかし、派遣されてきたのが彼女たちでヨカッター。これが粗野なウルヴァリン(ヒュー・ジャックマン)とサイクロップス(ジェームズ・マースデン)のドツキ漫才コンビだったりしたら、怖がってまた逃げてしまうところですよ。

一緒に飛行機(?)に乗っけてもらうシーンがまたとてつもなく可愛い。シートの上で膝を抱えて丸くなってたりして。(このあともちょくちょくこのポーズ取るとこ見るとクセなのかしら。)結局、彼は単に悪もんのストライカーに利用されていただけだってことでX-MENのメンバーに迎え入れられるのだけど、初めて会う他のメンバーや、今回しょうことなしに手を組むことになったマグニートー(イアン・マッケラン)&ミスティーク(レイベン・ダークホルム)コンビにちょこちょこ話しかけるのがまた死ぬほどキャワイイ。特に自分と似た外見(親子らしいっすな!)のミスティークに、「自在に姿を変えられるのならどうして人間の姿のままでいないの?」というシーンがもう!

他のメンバーはパっと見、普通の人間と変わらんじゃないですか。(ウルヴァリンのあの髪型はちょっと異質だけどな。あれはミュータントゆえ?それとも本人の好みの問題でしょうか。いずれにしろ彼でさえ人間には見える。)でもナイトクロウラーは見るからに異質。できることなら、外見だけでも普通の人間でいたかったことでしょう。「サーカスの他の人間には怖がられていた。」という告白もあいまって、彼のこれまでの孤独とか寂しさを独り勝手に想像しては目頭が熱くなる思いです。(最近仕入れた某X-MEMサイトさんネタによると、ナイトクロウラーことカートは、ミスティークとどっかのお貴族様との間に生まれた子供らしいのですが、産まれた時から肌が青くて尻尾が生えていたもんで「悪魔の子だ!」と言われ川に捨てられたらしいのですよ!そのあともそれはそれは酷いイジメにあっていたらしいです。なのにあの優しい性格をキープし続けただなんてもはや奇跡。信仰に篤い彼を神様はちゃんと見ていて下さったのですなぁ。←にわかに信心深くなってみた。)

なんつって、延々とナイトクロウラーについて喋ってますが、肝心の映画の方はどうだったかと言いますと、ええ、面白かったです(一言)。今回はストライカーというおっさんがミュータント皆殺し計画を立ておるわけですが、事の発端がなんというか、「そらお前の家庭の問題やろが。」という話ででしてね。(←身も蓋もない言い方しかできなくてスミマセン。)私怨もいいとこのわりにスケールだけがバカでかくて、ミュータントも人間もえらい迷惑を被るとこでした。

今回一番活躍したのはミスティーク。彼女がいなけりゃ全員死んでましたな。次いでジーン。その次はナイトクロウラーとストーム。ようは女子が頑張ったと。反対に主役であるはずのウルヴァリンは肝心な時に自分探しの旅に出たりして、お前勝手なことすんなよな。気の毒なのはサイクロップスですね。出た!と思ったらヤラレ逆に操られてる始末。おまけにジーンはあれだし。そら泣くしかない。あと、囚われのマグニートー(イアン・マッケラン)に面会にきたプロフェッサーX(パトリック・スチュワート)が、彼の顔の痣を見て、「それ、どないしたんや。」「これか。殴られてん。」というシーンが大変にツボでした。←やや脚色。


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