息子のまなざし/LE FILS

【監督】 ジャン=ピエール・ダルデンヌ/リュック・ダルデンヌ
【出演】 オリヴィエ・グルメ/モルガン・マリンヌ

※ややネタばれしてます。

■ 職業訓練校で大工仕事を教えているオリヴィエ(オリヴィエ・グルメ)の元にフランシス(モルガン・マリンヌ)という少年が入所してくる。フランシスはオリヴィエの幼い息子を殺した罪を償い、出所してきたばかりだった。

ドキュメンタリーのような映画でした。カメラも登場人物たちに寄りっぱなし。全身が映るシーンなんかほとんどないんじゃなかろうかというくらい寄る。酔いそう。ちょっとは引いてくれ。

オリヴィエの方はフランシスのことを知っているけれど、フランシスはオリヴィエのことを知らない。だから、二人の間には微妙に温度差があるんですな。目算で距離をぴたりと測ることができるオリヴィエを素直に凄い!と思い、あれこれ測ってもらっては確かめるために、使い方を教わったばかりの定規を使うフランシスを見つめるオリヴィエの視線は暖かくはない。でも冷たいかというとそうでもない。どうしていいかわからないんである。しかし、わからないから知ろうとするオリヴィエの行動は少々突飛。ここから見た人は「ヤバイのはお前だ!」と思うかも知れません。

オリヴィエの葛藤も知らず、しだいになついてくるフランシス。一緒にサッカーゲームをやろう!と誘われるオリヴィエが切なかった。ホントなら息子とやりたかった数々のことをなにが哀しくて、息子を殺した少年とやらねばいかんのだろう。しまいには「後見人になってくれ」とまで言い出すし。そして、後見人になるなら知る資格があるはずだとオリヴィエが聞き出した事件の真相がやりきれない。そんなことで人ひとり殺したんか。でもフランシスにとっては事件はすでに過去のもので、自分は5年間罪を償ったのだからもう充分だと思っている。そもそも殺すつもりはなかったんだしという思いもある。

確かに11歳から16歳までの間、少年院で過ごしてきた彼にとっては5年というのは長い歳月だったろうけど、被害者の家族にしてみればまだたったの5年なんだよね。まだまだ怒りや悲しみが冷める時間ではないと思う。それでもオリヴィエはフランシスを受け入れるのだろうなと思わせるのがラストシーン。台詞も説明もなんにもない場面で唐突に終わるので驚いたけれど、多分そういうことなんだろうと思う。(オリヴィエが事件のせいで、息子だけでなく妻をも失ったことをフランシスは知らない。逆に、フランシスの家庭環境が悪かったこと、今もたった一人で暮らしていること、眠る時には睡眠薬を飲んでいることをオリヴィエは知っている。この差はそのまま大人と子供の差のような気がする。だから大人であるオリヴィエはフランシスを許せはしないだろうけど、受け入れられるんじゃなかろうか)見終わった後、どっと疲れる作品ではありますが、こういう選択もあるのだなと考えさせられました。


アドルフの画集/MAX

【監督】 メノ・メイエス
【出演】 ジョン・キューザック/ノア・テイラー

※ネタばれしてます。

■ 若き日のアドルフ・ヒトラー。画家志望。だが絵は売れない。売ってくれる画商は金持ちのユダヤ人。我が強くて変わりモンのアドルフをややもてあましている感あり。

アドルフ・ヒトラーを演じているのがノア・テイラー、画商のマックス・ロスマンをジョン・キューザック。ということで全編英語なのがやや迫力に欠けるかも知れません。アドルフが演説で熱弁ふるっても頭のおかしい男がキーキー騒いでるようにしか見えなくて、彼に心酔する若者が出てくる方が不思議。

面白いのは、絵にひたすら情熱を傾け必死になって描いている若き日の独裁者の方が、金持ちのユダヤ人画商よりよほど純粋に見えるところ。変わりモンなのには間違いないのだけど、ロスマンが勢いで絵を売ってやるよと言ったのを真に受けて、勝手に個展を開こうとしたり(笑)、毎日のように「絵は売れたか?」と聞きにくるのがおかしくて笑ってしまった。ロスマンの方はそんなアドルフを適当にあしらっているようでもあるけれど、「画家として生きたいのならもっと自分の本質を描け!」と絵をあきらめて政治の世界に染まりそうになるアドルフを危ぶみ、背中を叩いてやったりもする。お互いに信頼しているわけでも、ましてや好いているわけでもない。でも自転車に二人乗りしてぎこぎこ飲みに行ったりする不思議な関係。←このシーン、すごく微笑ましい。

最後はアドルフが自分が蒔いた種によって画家としての道を完全に断たれてしまった→それが最終的に彼を独裁に走らせた。みたいに見えるのだけど、事実はそんな単純なものではないんでしょう。他にもいろいろとあったはず。ただ、映画の中だけの話に限定するとこれがもう切ないったらないです。以下ねたばれ↓

喧嘩別れのようになってしまったアドルフの元へ、預かっていた絵を返しにきたロスマンが、そこで彼が描きかけのスケッチを目にする。それは今までの作品と違いいかにも斬新で(ナチス親衛隊の制服のデザインだったりするのが皮肉だけれど)これなら売れる!と思ったロスマンはアドルフに個展を開いてやるから、今晩会おう!と言う。今度こその思いを胸に最後のアルバイトとして党の演説台に立つアドルフに、なぜかこの日に限って熱狂する聴衆。それでも「こんな仕事は今日で辞める」と言い残し、絵を抱えて約束の店に現れたアドルフ。しかし、いつまで待ってもロスマンはやってこない。裏切られたと思ったアドルフは傷心のまま店を後にするが、その頃、道をひとつ隔てた場所で店に向かっていた途中のロスマンがアドルフの熱弁に感化されたドイツ警察により暴行を受けて死にかけていた・・・。

なんでこの日に限ってなんだー!と悔しいやら哀しいやら。店で誰かが入ってくる度にパっと顔を輝かせるアドルフを見ていると、そういうオチになるだろうなという予想はあったとはいえやっぱり泣けてきました。映画なんて作り物と思いつつ、もし?を考えないひとはいないんじゃないかなぁ。考えて変わるもんじゃないけど。あのちょびヒゲの小男にもこんな青年時代があったのかも?と思わせるノア・テイラーは好演。ジョン・キューザックはやはり作品選びが上手だなと。ハズレなし。


ロード・オブ・ザ・リング 王の帰還/THE LORD OF THE RINGS: THE RETURN OF THE KING

【監督】 ピーター・ジャクソン
【出演】 イライジャ・ウッド/ショーン・アスティン/イアン・マッケラン/ヴィゴ・モーテンセン/ビリー・ボイド/ドミニク・モナハン/オーランド・ブルーム/ジョン・リス=デイヴィス

※おおいにネタばれしてます。

■ ついに物語も完結。ある時はフロドやでぶのホビット(サムか)と共に旅をし、またある時は王と共にオーク軍と戦う。エンドロールを最後まで見届けながら「長い旅だったなぁ・・・」と肩の力を抜く自分はすっかりゴンドールの生き残り気分。充実の3時間30分でした。とは言っても作品としては二作目の「二つの塔」の方が好き。

普段、戦争なんか嫌!と思ってるわりに、合戦シーンになるとどうしようもなく血が騒ぐのはこりゃ一体どうしたことでしょう。特に、もうダメかも・・・と思った矢先に現れる大援軍!!!のシーンには震えるほど感動してしまう。二つの塔で一番泣けたのもハルディアが美しきエルフの大軍を引き連れて現れた場面だし、今回も狼煙が次々と上る場面でぐぐーーーっときました。そして自ら軍を率いて遠路はるばるやってこられたセオデン王。正味のとこ、来たくて来たわけじゃなかったと思うんですが、しかもあの狼煙はガンダルフとピピンが勝手に上げたもんだし(秘密)、おまけに当のゴンドールの執政殿は最初から戦う気なんかさらさらないときては、これはもう騙まし討ちではないかと。ホントにホントに申し訳なく思いました。今回はさらに「パイレーツ・オブ・カリビアン」が援軍だったりして、サウロン軍も「お前らなんでもありか!」とさぞや悔しがったことと思われます。が、予告を見た時、すっかり味方だと思いこんでいた象さん軍団がよもや敵だったとはーーー!!ビジュアル的に非常に好みだっただけに残念でした。また足をすぱーーーんと斬られたりするんだこれが。動物好きとしては辛いっす。せめて象牙だけでも持ち帰って・・・・(最低)。

原作未読者の勝手な意見としては、王が帰還したところ(戴冠式)で終わった方が盛り上がった気もするんですが、最後のホビット庄のあれこれまでやっての指輪物語なんでしょうな。(もしかしてあれから先がまだあったりするんでしょうか)

今回、なんといっても活躍されたのは最年長の白のガンダルフ様。いやもうかっちょよかったわーー♪すっかり腑抜けと化していたゴンドールの執政なんざあてにできんと(見切るのがものすごく早い。音速)自ら陣頭に立ち兵士たちを叱咤激励!その間にピピンの面倒は見なきゃならんわ、頭のおかしい執政はしばかにゃならんわで老人パワー炸裂!最後にデネソールを馬で蹴散らした時は「このクソ忙しい時に!!!」という言葉にならないイライラが満ち満ちてて爆笑でした。デネソールもせめて最後くらい人の役に立て!誰もいないとこに落ちてどうすんだ。敵の陣営の真っ只中につっこんでひとりふたり道連れにするくらいの気概を持て!バカ!

このバカ親父にさんざんな目に合わされるファラミア様がおいたわしくてもう(涙)。強烈なファザコンでブラコンのご本人にも幾許かの責任はあるとは言え、勇敢に戦って見事に散った兄上と比べ、気の狂った父親との無理心中なんてそれはもうあんまりあれ・・・。情けなさのあまりボロミア生き返るよ。その点、エオウィンは漢だったわー。最初は「アラゴルンの近くにいたいだけでしょ」なんて思ったせこい私を許して下さい。さすがは女の身で片腕一本でメリーを馬上に引きずり上げただけのことはありました。カッコイイのなんの。しかもあんな大役があったとは。でもあんなに王様ラブ!だったのが、なぜいきなりファラミア様の隣に?きっぱり「無理!」と言われたからか。見切りの早さはガンダルフ並。

メリーとピピンは初めて離れ離れになりながらお互いに健闘。ピピンてあんなキャラだったのね(笑)。メリーに怒られてしょんぼりしたり、後先考えずに物言ってガンダルフに怒られたりと子供みたいで可愛かった。レゴラスとギムリは今回あんまり出番なし。このふたりは前作が山場だったのかな。最後、すっかり身奇麗になってはんなり微笑むエルフの王子の浮世離れした雰囲気はありゃオーリィならではか。浮世離れといえばエルロンド様もそうなんだけど、今回は普通に父親らしかった。アルウェンを見送る顔なんか、愛娘を嫁に出す父親のそれだもん(笑)。王様、後々苦労しそう。

フロド、サム、ゴラムのトリオは最後まで気を揉ませましたな。もうサムが気の毒で気の毒で。「あなたの重荷は背負えませんが、あなたなら背負うことができます!」なんてこの実直ぶり。泣かせるじゃないですか。なのにフロドったらー!最後、「指輪と一緒に崖から突き落としたろか!」と思ったのは私だけではないはず!いっそ、最初からサムが持っててくれたら!とさえ思いました。すみません。しかし、あれだけ3人が苦労して辿り着いた滅びの山に、意外とあっさりアラゴルンたちが追いついていたのは何故?←そんな細かいことはつっこんではいけません。

どんな作品でも(それが大作ならなおさら)好き嫌いはありますが、この長くてスケールのどでかい物語を3部作のうちに見事に収めた手腕は認めてもいいのではないかなぁと思います。小さい人もエルフも人間も、みんな自分たちのできる限りのことをし、互いの友情に応えてみせた。それだけで感動。ひとつだけ、最後のあの場面にボロミアだけがいないのが哀しいね。この想いはデネソール様と同様でございます。


マスター・アンド・コマンダー/MASTER AND COMMANDER

【監督】 ピーター・ウィアー
【出演】 ラッセル・クロウ/ポール・ベタニー/ジェームズ・ダーシー/マックス・パーキス/ビリー・ボイド

※ややネタばれしてます。

スティーブン・マチュリン先生(ポール・ベタニー)があまりに可愛かったので2回見てしまいました。この可愛らしさはキス☆バン以来。普段のベタニーは眉毛の色が薄くて悪人顔なんだけど、マチュリン先生は髪も眉毛もブラウンでモンチッチみたい。小さめのメガネと長い首に巻いたスカーフ(のようなもの)が心憎いばかりに似合ってて黙ってりゃちゃんと知的な船医に見えました(やるでないのベタニー)。でも聞き分けのなさは勇敢なる少年士官候補生以下でございましたな。特にイグアナが見たいばっかりに艦長に涙目で詰め寄る場面が本人真剣なだけにおかしくてしょうがない。「約束したじゃないか!」って半べそで怒鳴られてもなぁ(笑)。伝説のジャック・オーブリー艦長(ラッセル・クロウ)もなぜか親友である船医にだけは頭が上がらないようで「キミの道楽に付き合ってられないだろう!」と正論吐いてるはずが視線が定まってません。確かにあんな子供みたいにはしゃいでる姿を見たあとでは言いづらかろうよ。厳しい仕事だなぁ艦長ってのは(違)。

あれだけ約束したのにガラパゴス島を目の前にして任務を優先させた艦長に当てつけるかのようにハンストしたりだんまりを決め込むマチュリン先生。お前はどこのお嬢様か。乗組員が遠巻きに見つめる中、カナブン(知らん。とにかく虫)を持って現れるのが若干12才のブレイクニー王子。「これは島では見つけられない虫ですよ。どうぞ差し上げます」なんて言われてまたちょっと涙ぐむマチュリン。親子ほど年の違う子供にまで気を遣われとるわけです。あほですな。そこがたまらんけど。

これまでラッセル・クロウには1ミリの興味もない私でしたが、今回のこのジャック艦長は最高〜。(敵のフランス男に翻弄され最後の最後まで後手後手だわ、嵐はくるわ、かと思えば日照りは続くわで一体どこらへんが「伝説でラッキー」なのか大疑問でございますが)マチュリン先生に「負けたことがないのがキミの弱点だ!」と説教されてあわあわしたり、変な親父ギャグ飛ばしてひとりでバカ受けしたりと妙に人間臭いところが逆に部下の心を捉えるのではないかなぁ。(艦長としての能力の高さももちろんあります。念のため)特に誤って撃たれたマチュリンが自分のオペは自分でやる!と言った時の動揺っぷりが素晴しい。「何もなければ私は外で」とそそくさと逃げようとしたところを、「人手は多い方がいいから」と強引に手伝わされて卒倒寸前(笑)。これまでのラッシーのイメージだと麻酔もしないでいきなり腹の中に手をつっこんで弾を取り出しそうなのが、ジャックは気弱な笑みを浮かべてなるべく見ないようにしてるだけ。可愛いがな!しかも艦長、ヴァイオリン弾いたりするんですよー!。似合わん!(マチュリン先生はチェロ。ベタニーは図体がでかいので大きな楽器がよく似合う)

こんな可愛い艦長と船医でよく船が沈まないよなとお思いのあなた(私か)。他の乗組員がその分しっかりしてるのでご心配なく。中でも士官候補生のブレイクニー(マックス・パーキス)がすんごいんす。予告では「戦う天使」とか言われてましたが、そんなかーいらしいもんじゃございません。最初から最後までけっこういろいろと辛い目に合うわりに、涙の一滴も見せやしませんでしたね。まさに貴族の子弟はこうあるべきの見本のような男の子。同世代の仲間が大任を仰せつかったのが悔しくて艦長に直訴、「キミにはこの船の指揮を任せる」と言われた瞬間、「光栄です!」と二つ返事ですよ。なんの躊躇もない。しかも言ったら言っただけの仕事するんだこれがまた。(マチュリン先生は彼に言われるがままに働いてました。笑)私があと20若けりゃ嫁にもらって欲しいくらいの男っぷりの彼が、唯一子供らしい顔を見せるのがマチュリン先生と行くガラパゴス諸島探検の旅の場面。もうここは何度見ても微笑ましくて大好き。まだ傷も癒えてないってのに大興奮の先生と謎の大男(ベタニーよりまだでかい)を連れて島を歩き回り、無心に陸カメのサイズを測ったりして楽しそうったらないです。ところがいざ目の前に敵船を発見した途端、「先生、もっと早く!!!(走れ!)」←いやいや先生、病み上がりなもんで。しまいにゃ大男に「先生をおぶって!(走れさっさと!)」ときました。自分達の半分ほどの身長しかない子供にこんなに仕切られてていいのか大人たち。

なんかごちゃごちゃ書いたわりに、映画そのものの感想がひとつもないですな。物語自体も丁寧に描かれててすごく好きなんだけど、それよりやっぱりキャラ萌えが激しくて〜。艦長と船医とブレイクニー以外にもいい味出してる人いっぱいいるんですよ。地味ながらいかにも片腕っぽい存在のプリングス副艦長(ジェームズ・ダーシー)も可愛いし(またか)、あとホルム(リー・イングルビー)がねぇ。すごく優しくていい人だったのに。いつかジャックが期待するような艦長になれたかも知れないのに。ホント切なかった。(ホルムにブレイクニーの強さと決断力の欠片もあればなぁ。彼が消えた途端、いきなり雨が降ることもないよねい) 最後が「続編もありか?」てな終わり方だったので、ぜひぜひまたやって欲しいです。そのためにはもっとヒットしないといけないんでしょうが、2回観に行って2回ともガラガラだった・・・。いい作品なのにー!!


ホテル・ビーナス/THE HOTEL VENUS

【監督】 タカハタ秀太
【出演】 草g剛/中谷美紀/香川照之/市村正親/パク・ジョンウ/コ・ドヒ/チョ・ウンジ/イ・ジュンギ

※ややネタばれしてます。

■ キャストの半分が日本人で半分が韓国人。舞台はウラジオストクで言葉は韓国語。映画の最後に「せめてこの国の言葉で話せ」という台詞があるけど、どの国かはわからない。無国籍というより、この世ではないどこかのような曖昧な印象を受けました。登場人物はこれまたみんな優しくてクソ真面目な人間ばかり。チョナン(草g剛)もドクター(香川照之)もボウイ(イ・ジュンギ)も「そら別にあんた(あんただけが)が悪いわけではないがな」というような出来事に押しつぶされてぺしゃんこに凹んでる。正直ちょっと鬱陶しい。特にドクターがな。あんなみっともない姿でホテル・ビーナスに住んでるなんて、あんたそりゃ嫌味ですか?私がビーナス(市村正親)なら逆に許さないところだけどなぁ。

あちこちのレビューでわりと共通してるのが「説明が多い」ってことなんだけど、確かに私もそう思う。そんなに台詞で全部教えてくれなくても見てるだけで感じる人は感じると思うんですよね。またそういう風に作らないといけないんではないかい(偉そう)。だから、説明の少ないガイとサイの親子のエピソードは逆にグっとくるんだなぁ。言葉のやりとりなんかまったくなくても「アネモネを探しに行く」エピソードひとつでサイの気持ちはちゃんと伝わるもん。以下ネタバレ↓

ガイはサイの母親(連れ子なのだ)を殺して逃亡中なんだけど、それには理由があって、「病気で苦しんで死ぬより女としてキレイなうちに愛する男に殺して欲しい」と頼まれたからなんですな。病気とかその他、いろんな運命を背負いきれなくて死んでしまいたいと願う人の気持ちはわかるような気がするんです。ただそれを好きな男に押し付けていいのかなと。その後ずっとその人は重荷を背負って生きていかねばならんのですよ。そこまで甘えていいのかなとちょっといやんな気持ちになりました」 でも「好きな女の望むようにしてやりたかった」とポツンと語るガイの気持ちはわからんでもないんだなぁ。またこの人いかにも不器用そうなんやもん。上手いこと言って逃げるとかできそうにない。その結果、ひとりで苦労してバカじゃなかろうか。でもちょっと愛しい(笑)。

ストーリーはベタもベタ大ベタなんだけど、最後にガイを捕まえに来た刑事たちに「誰もクズなんかじゃない!!!」とチョナンが掴みかかる場面は泣けてしょうがなかった。(事件に関係ない人間にまで暴力を振るうような刑事、そうそういないと思いますが)チョナンにとって「ホテル・ビーナス」の住人をクズ呼ばわりされるってことは、自分をクズだと言われてるのも同じことだもんな。そりゃ我慢ならんかったことでしょう。それにしても唐突だったなぁ、あの刑事たち。つうかやっぱり「クズ」は余計な台詞だったような気がする。言わないよなぁどう考えても

この映画が面白くなかった理由に「やっぱりアイドル映画はダメ」って書いてる人が何人かいたんですが、本物のアイドル映画を何本も見た私からハッキリ言わせてもらいます。「こりゃアイドル映画ではありません」アイドル映画ってのはもっと衣装替えが多いし、登場人物達は決して悩んだりしませんから。SMAPの草g剛が出てるから=アイドル映画=つまらないというのは短絡的だと思います。面白くないと感じる理由は他にあるはず(フォローなのかなんなのか)


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