■ 売れないロック・バンドのギタリスト、デューイ・フィン(ジャック・ブラック)は空気の読めないお調子者。
自分がリーダーだったバンドからも解雇され(明らかに浮いてた。何が違うって等身が違う)、友人のネッド(マイク・ホワイト)と共同で借りているアパートからも家賃滞納で叩き出される寸前。とにかく稼がなきゃならないデューイはネッドの名前を騙り、名門市立小学校に代用教員として潜り込む。
お金さえもらえればいいやと初めから授業なんかする気がないデューイは、生徒には「遊べ!」と一言。それが音楽の授業でいろいろな楽器を達者に弾きこなす生徒を見た瞬間、「これは使える!」と目の色が変わってしまう。さっそく自分の夢(本物のロック・スターになる気らしい)を実現させるために、生徒たちに嘘をついてロックバンドを結成する場面が笑えます。この先生、生徒の名前、ひとつも覚えてないんやもん。そして「そこのお前!天才ギタリスト!」なんぞと呼びつけながら、大興奮で指導に入るデューイ先生の恍惚とした表情はキモすぎでした。自分の欲望にあれほど忠実に生きてるひとって初めて見たな。しかもメンバー以外の生徒には目もくれてないし。「僕たちは仲間外れですか?」と聞かれて初めてそれぞれの生徒に役割を与えたのも「拗ねたガキが親にチクリでもしたら俺の計画がめちゃくちゃになる」と思ったからに違いない(笑)。
自分の野望を満たすためなら子供でさえ踏み台にする、熱血デューイ先生に誰ひとり逆らいもしなければ引きもしないのが不思議っちゃ不思議。名門の子弟らしく根がおっとりしてるのか、初めてみるタイプの妙な大人が珍しかったのか、それともやはり授業より遊んでる方が楽しいのか、とにかくひとつになって頑張る生徒たちはどいつもこいつも可愛らしい上に才気煥発。キーボード担当の男の子のありえない老けっぷりには驚いたけどな(ポロシャツの裾は出してみようよ)。彼と太ってるのを気にしている内気な女の子が、「自分はイケてないからバンドを辞めたい」と相談にきた時のデューイが(実力派のふたりに抜けられては困る!という打算もあったろうけど)やけにまともなことを言うのがおかしかった(笑)。それは彼自身が太ってるしイケてないのをまったく気にしてない(つうかわかってないのか)だけにストレートに子供たちの心に響いたようで、にっこりして「じゃあ頑張ります!」というのにゃホロリときましたよ。子供に自信をもたせてやるのは大切なことなのだね。
デューイを偽教師だとは夢にも思ってない生徒たちは彼のことをそれなりに先生として見てるけど、デューイの方は彼らを生徒ではなく、あくまでバンドメンバー(とスタッフ)として扱ってるのが面白い。裏方のことは完全に任せてるもんなぁ。最初は生徒のことなんかひとっつも興味がなかったわりに、意外にも適材適所の役割を与えてるあたり、実はひとを見る目があるのかデューイ(謎)。
自分を切り捨てた仲間を見返すために、子供たちとバンドを組んで、まんまとロック・バンド・バトルに出場したデューイの得意げな顔が忘れられません(笑)。自作の曲よりギターの男の子が作った曲の方が「よりロックだ!」と認めたあたり、彼も少し成長したのかと思えばさにあらず。「歌は苦手だから先生が唄ってください」と言われてすぐさま熱唱(結局お前が歌うんかい)、最後は客席にむかってダイブ!(どうしてもこれがやりたかったんですなぁ)誰よりも満喫ですよ。大充実。そういうわけでデューイも満足、子供たちは自分の可能性を発見し、親はそのことに感動と八方丸く収まる大ハッピーエンドでした。ビデオでもいいけど1人で見るより大勢でわいわい見る映画だと思います。楽しいよ。
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