ハリー・ポッターとアズカバンの囚人/HARRY POTTER AND THE PRISONER OF AZKABAN

【監督】 アルフォンソ・キュアロン
【出演】 ダニエル・ラドクリフ/ルパート・グリント/エマ・ワトソン/ゲイリー・オールドマン/デヴィッド・シューリス/アラン・リックマン

※少しネタばれ

■ 2時間20分の中に原作の全てを詰め込むのはしんどいとは思うものの、それにしてもあまりに説明不足。アズカバンといえば脱獄不可能でならした刑務所なのに、そこからどうやってシリウス・ブラック(ゲイリー・オールドマン)が逃げてこれたのか、ハリー(ダニエル・ラドクリフ)がフレッド(ジェームス・フェルプス)とジョージ(オリバー・フェルプス)から貰った忍びの地図の製作者である4人とは誰なのか、クルックシャンクスがスキャバーズを狙う理由、なんであの時白鹿が現れたのか?などなど、原作読んでないとまったくわからんのではないかな(しかもどれもストーリー上、非常に大事な話なのにもかかわらず!)。冒頭の風船おばさんや、「怪物的な怪物の本」のあたりは削ってもいいからもう少し、その辺のことをしっかり描いて欲しかった。映画見終わった後、一番印象的なのがナイト・バスの場面ではいかんと思うよ。

しかしなんつっても今回、一番がっくりきたのはロン(ルパート・グリント)の最大の見せ場である幽霊屋敷での名場面が、なぜかハーマイオニーに取って代わられてたことでしょうか。シリウスに向かって「ハリーを殺すなら、僕たち3人を殺すことになるぞ!」と敢然と言い放つのはロンだったのにーーー!!!それも折れた足で雄々しく立ち上がってですよ!(あのぼーっとしたロンがハリーの肩にすがりながらも、まっすぐ立とうとするのだ。親友のために身体中の勇気を振り絞るロンに泣いた読者がどれだけいるか、わかってんのか監督よ!)いや私も賢くて凛々しいハーマイオニーちゃん(エマ・ワトソン)のことは大好きですよ。でもあの場面だけは原作通り、ロンにやらせてやって欲しかったの(イギリスではハリー役のダニエルより、ルパートの方が人気があると聞いたのだけど。あんまりロンをカッコよくしてはハリーが霞んでしまうせいかしら)。

謎解きの場面はいかにも唐突でしたな。あそこは原作では(そんな場合ではないのに)ひとり美しい思い出話に耽るルーピン先生(デヴィッド・シューリス)と、イライラし通しのシリウス、待ってましたのスネイプ先生(アラン・リックマン)の三すくみ状態と、何をどう理解すべきなのか、高速で頭を回転させる子供達とのやりとりがハラハラドキドキの非常に面白いとこなんですが、映画の方はいっそアホなんちゃうやろかと思えるハリーの物分りのよさで瞬く間に解決してしまいました。まぁその後も長いからしょうがないんでしょうが、せっかくアラン・リックマン、ゲイリー・オールドマン、デヴィッド・シューリスを揃えたんだから、もう少し丁寧にやってくれてもええだろと(この際、子供の観客層は無視して3時間かけてやるべきだった)。

それと、バックビークはよくできてたな。ひとつ間違えたら主役のハリーでさえ簡単に食い殺しそうな残忍ぶりがイメージにぴったり。その分、人狼と黒犬がとんでもなくダメでした。


キング・アーサー/ KING ARTHUR

【監督】 アントワン・フークワ
【出演】 クライブ・オーウェン/キーラ・ナイトレイ/ヨアン・グリフィズ/ステラン・スカルスガルド/レイ・ウィンストン

※ネタばれしてます

「アーサー王と円卓の騎士」のそもそもを知りませんので、それを新しい解釈で映画化したことによりいろいろとおかしなことになってるらしいストーリーについては、なんとも言うことができません。見終わった後、「なんにも残らん話だな」とは思いましたけど。最初のウォードとの戦いの辺りまでは騎士のそれぞれの戦い方が見られて面白いし今後に期待を持たせるんだけど、そこから一向に話が膨らまない。むしろ尻すぼみでなんか「ジェヴォーダンの獣」を思い出しました(あれも最初の戦闘シーンはすごくよくできてた)。

もういっそ細かいことは抜きにして、アーサー(クライブ・オーウェン)と騎士の武勇伝に話を絞ればよかったんじゃないですかね。キーラ嬢は確かにカッコよかったので彼女もまた円卓の騎士の一人ということにして、「プライベート・ライアン」の中世騎士物語版でいいじゃないですか。で、もっと騎士の面々にスポットを当ててくれと。せっかく(キーラ含め)男前揃えてるつうのにランスロット(ヨアン・グリフィズ)とボース(レイ・ウィンストン)とトリスタン(マッツ・ミケルセン)以外、名前もようわからんではあまりに勿体ないではないの。主人公アーサーに圧倒的なカリスマ性が欠けているにも関わらず、なぜ騎士たちは最後お役御免になっても彼と共に戦ったのかとかね、もうちっと力入れてわかりやすく映像化して欲しかったです(←15年間共に戦ってきた仲間だから当然結束は固いつうお約束だけでは物足りないのよ〜〜)。

ま、カリスマ性はないといってもアーサーはすごくいい奴なんですが。「自分の命を差し出しますから、どうか残り少ない仲間のことをお守り下さい」なんて真剣にお祈りしちゃうようなひとなのよ。またアーサー大好きっ子のランスロットがその人の善さにキィーーー!!となるのが可愛いくて(笑)。このひとたちはあれですか、いけ好かない部長に終業間際、ムリな仕事を押し付けられた課長(アーサー)を残して帰るわけにもいかず、「俺らも手伝いますよ」と残業しちゃう部下のノリなんすかね。全員出世しなさそう〜。

それにしても、この人には死んで欲しくないわと思った人が次々と斃れていくのには参りました。なんで監督は私の趣味を知っておるのか。あと一方的に悪者扱いされてた強面サクソン人親子(息子:ティル・シュヴァイガー、父親:ステラン・スカルスガルド。最強)にももっと光を!いい歳こいて父親に頭抑えられっぱなしのバカ息子にもそれなりに葛藤があったと思うのに最期まであれでは救いがありません。


キッチン・ストーリー/KITCHEN STORIES

【監督】 ベント・ハーメル
【出演】 ヨアキム・カルメイヤー/トーマス・ノールストローム/ビョルン・フロベリー

※盛大にネタばれしてます

独身男性のキッチンでの行動パターンを調査するため、スウェーデンの「家庭調査協会」からノルウェーの田舎町に送り込まれたフォルケ(トーマス・ノールストローム)。彼の担当は年老いたイザック(ヨアキム・カルメイヤー)なんですが、見返りに馬を貰えると思って応募したのに、それがスウェーデン特産の木彫りの人形だと知ったイザックはへそを曲げちゃってなかなか調査に協力してくれません。いざフォルケがノートを取り出しメモしようとした途端、パチンと電気を消して出て行っちゃったり、困ってるフォルケを逆に天井に空けた穴から観察してほくそ笑んだりと非常に意地が悪い、この爺さん。しかも調査する側とされる側は一切口をきいてはいけないというルールがあるため、最初の方はほとんどセリフらしいものもなく、イザックとフォルケの静かな攻防が地味に展開されます。しかしこれがシュチュエーション・コントのようでしみじみおかしいのです。

ところがあることをきっかけに、急速に2人は親密になっていきます。そもそも「話したり一緒に食事を摂ったりしてはいけない」というルールの方が不自然なわけで、一度気持ちが通じ合った2人は実に活き活きと楽しそう。楽しさ高じてしまいにはイザックの誕生パーティまでやらかしましたよ。イチゴのデコレーションケーキにおそろしいまでの数のローソクを立て、揃って正装して乾杯♪(2人ともちゃんとスーツを着てかしこまってるのが可愛くてしょうがない)。フォルケがイザックに「おいしい?」なんて聞いたりして、彼らが若くてキレイな男ならとんでもない萌え映画になるところですが、いい加減枯れ切ったおっさん2人なのでそういう心配は(残念ながら)なく、いくつになっても誕生日を祝ってくれる誰かがいるのは幸せなことよのうとほのぼのした気持ちになりました。

が、楽しそうな2人を横目にイザックの友人のグラント(ビョルン・フロベリー)は浮かない顔。実は彼もイザックのお誕生日を祝おうと思ってたのに、フォルケに先を越されてしまったわけです。とぼとぼとケーキが入ってると思しき箱を手に夜道を帰るグラントの後ろ姿の切ないこと!!ここで「なんだよー!かぶっちゃったじゃんか!」と明るく乱入できるような人ならよかったんだけど、グラントは(多分イザックとフォルケも)そういうタイプじゃないんだなぁ。で、思い余ってとんでもない行動に出てしまうんですが、そうせずにはいられなかったグラントの気持ちと、見つめるイザックの胸中を思うとふたりの不器用さに泣けてきます。イザックはグラントのことをないがしろにしてるつもりはないんだけど、グラントにはそれがわからんのだなぁ。いい年こいて何を拗ねてるんだか。ええやん、3人で仲良くすれば!

なんでも北欧というところは独身の独居率が高い個人主義のお国柄なんだそうですが、それでも茶飲み友達にはいてもらいたい。年をとればなおさら、誰かと話したいと思うのは人情でしょうな。電話のベルが4回なるといそいそしちゃうイザックの気持ち、よくわかるわ〜。ストーリーはもとより、1950年代の北欧の生活ぶりや、極東から見ればどちらも同じように見えるスウェーデンとノルウェーの微妙な違いなども伺えて、その辺りも見るに楽しい作品です。家も車も可愛いよ。


マッハ!!!!!!!!!/ONG-BAK

【監督】 プラッチャヤー・ピンゲーオ
【出演】 トニー・ジャー/ペットターイ・ウォンカムラオ/プマワーリー・ヨートガモン

ストーリーは、盗まれた村の鎮守の仏様”オンバク”の頭を取り戻すため、ド貧乏な村人からなけなしの旅賃を持たされ遣わされたティン(トニー・ジャー)が首都バンコクで大暴れする。それだけです(仏さんに悪い事したら罰が当たりますよという話でもあった)。 でもこの大暴れが本気でスゴイ。マジで痛そう。アクションシーンにはCGもワイヤーも一切使ってないそうなんで、結果、大怪我したひともいるだろうなと思いますね。トニー・ジャーの膝とか肘が容赦なくめりこんでますから。記憶喪失とか軽くありえそうです。

主役のトニー・ジャーは田舎もん丸出しのバカ正直さがたまにイライラしましたけど、身体が非常に美しいです。ちょっとレントゲン写真とか見てみたい衝動にかられましたね。背骨も骨盤も完璧な形状だと思うわ〜。お肌もつるつるスベスベ。でも顔は元男闘呼組の高橋っぽい。

ティンは”オンバク”を探す途中、なし崩しに賭け試合に出ることになるんですが、確か彼はムエタイの奥義については学んだけど、それを使ってはいかんことになってたのではないのかなぁ。その割にはやけにあっさり使ってたような。あとバンコクで出会った少女ムエ(ブマワーリー・ヨートガモン)の芝居が非常にtoo muchでちょっと鬱陶しいっす(お国柄かなぁ)。全体に昔のジャッキー・チェンの映画を彷彿とさせる雰囲気なんですが、大きく違うのは主役がやけに辛気臭いところでしょうか。なにかっちゃ「村の為になら死んでもいい!」と無駄に熱いしクソ真面目。オンバクは無事に戻ってもあんたが死んだら村人はそれはそれで夢見が悪いと思うのだけど。ま、細かいことはさておき、久しぶりに映画館で「おおーー!!」なんてどよめきが起きたりして面白い映画でした。


シュレック2/SHREK2

【監督】 アンドリュー・アダムソン/ケリー・アズベリー/コンラッド・ヴァーノン
【声の出演】 マイク・マイヤーズ/キャメロン・ディアス/エディ・マーフィー/アントニオ・バンデラス

新キャラのアントニオ・バンデラスの”長靴を履いた猫”が最高にセクスィで可愛かったです(予告でいいとこ見せすぎ!!)。あとドンキーね。エディ・マーフィ健在なり。それと1に出てきた沼仲間のピノキオとかクッキーマンにもちゃんと見せ場があったのが嬉しかったっす(巨大クッキーマンには泣けました)。

お話は、可愛いひとり娘フィオナ(キャメロン・ディアス)の結婚相手がシュレック(マイク・マイヤーズ)みたいなぶっさいくな怪物だったのが気に入らないお父さん(ジョン・クリーズ)の暴走っちゃそれまでなんですが、どうせそうなるだろうと思ってたシュレックがそれでもやっぱり傷ついちゃって、フィオナにふさわしい男になろう!と考えるのがちょっといじらしかったりしました(でもその結果があれとはアメリカ人の美的感覚はようわからんわ〜)。

前作同様いろんな映画のパロディが出てくるのも楽しかったです。お気に入りは「ミッション・イン・ポッシブル」。それと、妖精のゴッドマザーのヴォイス・キャストは顔から想像して、絶対メリル・ストリープだと思ったんだけどな〜。息子のチャーミング王子(ルパート・エヴェレット)はTV版のニキータに出てくるマイケルそっくり!


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