アイ,ロボット/ I,ROBOT

【監督】 アレックス・プロヤス
【出演】 ウィル・スミス/ブリジット・モイナハン/アラン・テュディック

※ネタばれしてます。

■ ウィル・スミスの映画にしては笑いがなくてがっくり。その分やたらにサービスショットは満載でしたが。(服の上からでもわかるけど、脱ぐとホントにイイ身体してる)。デル・スプーナー刑事(ウィル・スミス)はある理由からロボットを嫌っててほとんど目の敵にしてます。世界中でロボットが罪を犯したのは過去1件もないというのに、目の色変えて追い掛け回したりして、同僚でさえも引いちゃってるくらい。で、それにはよほどの理由があるのかと思いきや、聞いてびっくり!ロボット側からしたら「言いがかり」としか思えないような理屈でございました。毎晩夢に見てはうなされるのは気の毒とはいえ、怒りの持っていき場所が違うんでない?人間を責めたくないから替わりにロボットを苛めてるように思えて仕方なかった。

そんなわけで、いつもなら”可愛い奴め!”と思えるウィル・スミスがちょっとあれだったのに比べ、「ロボットのサニーが愛しいんですよ。葛饅頭みたいな質感で冷たそうな雰囲気とは違い表情が豊かで、「あなたは他のロボットとは違う」とロボオタのカルヴィン博士(ブリジット・モイナハン)に言われた時の幸せそうな顔!私は最初からキミを信じてたよ!(嘘。ホントはラスト30分くらいまで疑ってた)。

ところで正直な話、私はこの作品の肝のところが全然理解できてません。ロボット三原則もなんじゃそらなら、最後のあの場面の意味するところもさっぱり。やっぱり原作読んだ方がいいのかな(原作とはかなり違う内容になってるらしいけど)。それとロボット会社のロビーに立ってるバカでっかいロボットのオブジェがダリの絵に出てくるようなのでカッコヨカッタです。超高層ビルのわりに30何階の吹き抜けのフロアの手摺りが腰ほどの高さしかなかったのは危険だと思うけど。


モーターサイクル・ダイアリーズ/THE MOTORCYCLE DIARIES

【監督】 ウォルター・サレス
【出演】 ガエル・ガルシア・ベルナル/ロドリゴ・デ・ラ・セルナ

■ キューバ革命の指導者、チェ・ゲバラはいかにして作られたのか!なんつう大層な話ではなくて、まだ医学生だった頃のエルネストが年上の友人アルベルトと一緒におんぼろバイクに乗って南米を縦断する青春ロード・ムービーです。

ふたりの足になるバイクが本気でボロいのには大笑い。よくあんなのに二人も乗ってたよ。しかも荷物多すぎ。何回も豪快に転倒するわりに、ふたりに大した怪我がないのはそもそもスピードが出てないんでしょうな。でなきゃとっくに死んでる。

チェ・ゲバラ(ガエル・ガルシア・ベルナル)と言えばアルゼンチン人ながらキューバ革命に参加し、それを成功に導いた指導者として有名ですが、この映画の中ではまだ若干23歳の若者で、旅の途中で出会った世の中の底辺で細々と生きる人々(仕事を探して放浪の旅を続ける共産主義夫婦やハンセン氏病患者等)のために自分はいったい何ができるだろうと、漠然とした想いを抱いているに過ぎません(彼が自分の進む道をはっきり意識するのはフィデル・カストロに出会ってからの話になるのかな)。でも死後もたくさんの人に熱狂的に支持されるだけあって、若いうちから自分の意見というものをしっかり持っていて、相棒のアルベルト(ロドリゴ・デ・ラ・セルナ)が調子よく立ち回るのに対し、誰にでもハッキリした態度で挑みます。そこがカッコイイ。

そんなゲバラにはハッキリ言われた方も気持ちがいいのか、「あの若造め!」とは誰も思わない。逆にアルベルトが「キミは嫌いだ」と言われてしまったりしてちと気の毒なんですが(笑)、このアルベルトも実はそれなりの人物なんですね(とてもそんな風には見えませんが)。オンナのことしか考えてないようでいて、きちんと医者としての生き方を持っている彼もまたカッコイイ。7歳年下のゲバラのことを弟のように可愛がり(たまにこづいたりもする)、心配もしているんだけど、それが全然恩着せがましくないのが彼のいいところですな。

映画館には男の人(それも若い)の姿が多く見られたんですが、やっぱりみんなゲバラの生き様に憧れてるんでしょうか。自分にもなんかやるべきことがあるんじゃないかとか思ってるのかな。ま、思うのは誰にでもできることで、それを実現できるか否か(やろうとするかしないか)が重要だとは思いますが、なんにも思わないよりはずっといいんだろうね(偉そう)。


ナイトメア・ビフォア・クリスマス/THE NIGHTMARE BEFORE CHRISTMAS

【監督】 ヘンリー・セリック
【声の出演】 クリス・サランドン/キャサリン・オハラ/ダニー・エルフマン

※ネタばれしてます。

■ 10年ぶりにスクリーンで見ました。ストーリーをほとんど忘れていたことになにより驚きました。クリスマスの国からサンタを拉致ってくる理由なんか完全に忘れてたな(笑)。ジャックがサンタになりすまし、子供たちにプレゼントを配って喜んでもらおうと思ったのに、そのプレゼントがあまりに怖かったので逆に泣かせてしまい、しまいには撃墜されてあごの骨が外れてしまう場面はなかなか切ないものがありました。「僕には悪気はなかったんだ〜〜」と悲しみにうちひしがれるジャック。しかしその0.2秒後には立ち直ってるあたりがステキですね。さすがはかぼちゃの王様だ。

サリーとサリーを作った博士とのコントのようなバトルも楽しい。いつの間にかあの博士は私の中でかなりの悪としてインプットされていたんですが、今回久しぶりに見たらいたって気のいいおっさんでした。あのトナカイ、センスあるわ〜。ブギーの口からこぼれた虫がサンタのひげの中に潜り込む場面は何度見てもキモい。


2046

【監督】 ウォン・カーウァイ
【出演】 トニー・レオン/木村拓哉/チャン・ツィイー/フェイ・ウォン/カリーナ・ラウ/コン・リー/チャン・チェン

※ややネタバレ

■ 監督がなんと言おうとこれって「花様年華」の続編でしょ。違うの?

人妻との恋に破れ異国ですっかり身を持ち崩し、いまやまったくの別人のようになってしまったチャウ・モウワン(トニー・レオン)が主人公。いろんな女と遊び歩き、たまには本気にもなるけれど、結局昔の女が忘れられない難儀な男。それがチャウさん。つうかやっぱりこのひと自分が一番好きなんだと思う。だから本気になったつもりの相手に振られてもそんなに執着しないんじゃないのかな。かつての恋人が忘れられないってのは言い訳としか思えない(笑)。スー・リーチェン(コン・リー)もその辺を見抜いてたから、ついて来てくれなかったのではないの?

「花様年華」の時は優しくて儚げで側にいて支えてあげなくては!と母性本能くすぐりまくりだったチャウさんもシンガポールで一気に汚れちまいました。本人にもその自覚はありありのようだけど、それはそれで構わないと思ってそう。だって前より生き生きしてて楽しそうやもん。それと、このひともしかして自分は「愛されるより愛したいタイプ」だと勘違いしてんじゃなかろうか。だから必死に想いをぶつけてくるバイ・リン(チャン・ツィイー)からは逃げまくり。でも「会いたい」と言われたら会っちゃうんだよね〜。そんで親切そうな笑顔で身体さわりまくるの。エロ親父かよ!

かつての誠実で清潔なイメージまでどっかの寺院の木の洞に封印してきちゃったチャウですが、昔の自分たちを彷彿とさせる恋人同士、タク(木村拓哉)とワン・ジンウェン(フェイ・ウォン)にだけはそっと助け船を出してあげるエピソードが好きです。あちこちのサイトで「下手」とか「浮いてる」と叩きまくられの木村くんですが、私はなかなかヨカッタと思います。これはスマ・ファンの欲目抜きで。劇中の小説世界のエピではいつもどおりの「ワイルドでぶっきらぼうなキムタク」って感じで特に目新しさもなかったけど、異国で恋に落ちた日本人青年が、言葉もろくに通じない相手を一途に「一緒に行かないか?」と口説く場面は意外な誠実さ(笑)も感じられて「こういう役もいいじゃない!」とプチ興奮でした。こればかりは監督に感謝だわ〜。

まぁでもこれはトニー・レオンの独壇場映画ですね。彼はホントに上手い役者だと改めて思いました。捨てられた子犬ちゃん役から、あちこちで子供作りまくりの野良犬の役までなんでもござれ。女優陣は髪型のせいもあるけどどうも野暮ったく見えました。チャン・ツィイーちゃんは可愛かったですよ。いきなり部屋に乗り込んできたチャウに無理矢理プレゼントされた(私しゃてっきりあの箱からして、そばぼうろが入ってるんだと思いましたが)ストッキングを嬉しげに眺めてるとことかね。チャウさん、もうちょっと本気で彼女に優しくしてあげてもよかったのに。


笑の大学

【監督】 星譲
【出演】 役所広司/稲垣吾郎

※ややネタバレ

■ 戦争の色が濃くなってきた昭和15年。「今の時代に喜劇なんて必要ない!」と情け容赦のないチェックを入れてくる検察官・向坂睦男に役所広司。向坂にどれだけダメ出しされても必ず一晩で書き直してくる、懲りない喜劇作家・椿一に稲垣吾郎。ほぼこの二人の会話だけで成り立っている密室劇のような作品です。

真逆くらい考えの違う二人だけど、これ両方とも三谷さんだなと思いました。戦争で世の中が暗いからこそ、余計に笑いが必要なんだと訴える椿は、びくびくしてて情けない外見とは裏腹にめちゃくちゃカッコよくて三谷さんの理想の喜劇作家のような気がしました。「笑ったことがない男」向坂の方は全然違うように思えて、実は「必然性のない登場人物、笑い、セリフ」等に我慢がならないあたりが似てるのではと(笑)。

警察署長からの圧力で、無理矢理警官を出すハメになった場面のやり取りがおかしいんですよ。椿はとにかく言われるがまま出しときゃいいだろって感じなんですが、それが向坂には気に入らない。「ここでの警官の行動の意味がわからない」なんて言い出して、挙句に「こういうのはどうだろう」と自ら案を出し、しまいには本人自覚のないまま熱演する羽目に陥ってしまう。そんな向坂を見る椿の目が優しいというかなんか痛々しいものを見る目でね(笑)。向坂ってホントに笑いとは無縁の人生を歩んできたひとで、おまけにそれがどれほどつまらないことなのかにも気付いてないのでは?と思った途端、彼がどうしようもなく可哀想な気がして私はここで泣けて泣けてしょうがなかった。

もうひとつの泣き所はネタばれになるから書きませんが、舞台版を見てストーリーを知っててもやっぱり泣けた。でも少々くどいんだな映画の方は。なんつうか説明が多い。そんなに全部セリフにしてくれなくても、向坂の気持ちは充分理解できると思うんですが。舞台の方はもっとサラリとしてて、それだけに余計にグっとくるところもあっただけに、引っ張りすぎて逆に尻すぼみになった気がして残念。主演のふたりの俳優、役所さんは本当に巧いです。「わからないこと」を「わからない」と言うだけでおかしくてしょうがない。吾郎ちゃんもまた役にぴったりで、ふたりの掛け合いのテンポなんかホントにお見事でした。


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