■ 監督がなんと言おうとこれって「花様年華」の続編でしょ。違うの?
人妻との恋に破れ異国ですっかり身を持ち崩し、いまやまったくの別人のようになってしまったチャウ・モウワン(トニー・レオン)が主人公。いろんな女と遊び歩き、たまには本気にもなるけれど、結局昔の女が忘れられない難儀な男。それがチャウさん。つうかやっぱりこのひと自分が一番好きなんだと思う。だから本気になったつもりの相手に振られてもそんなに執着しないんじゃないのかな。かつての恋人が忘れられないってのは言い訳としか思えない(笑)。スー・リーチェン(コン・リー)もその辺を見抜いてたから、ついて来てくれなかったのではないの?
「花様年華」の時は優しくて儚げで側にいて支えてあげなくては!と母性本能くすぐりまくりだったチャウさんもシンガポールで一気に汚れちまいました。本人にもその自覚はありありのようだけど、それはそれで構わないと思ってそう。だって前より生き生きしてて楽しそうやもん。それと、このひともしかして自分は「愛されるより愛したいタイプ」だと勘違いしてんじゃなかろうか。だから必死に想いをぶつけてくるバイ・リン(チャン・ツィイー)からは逃げまくり。でも「会いたい」と言われたら会っちゃうんだよね〜。そんで親切そうな笑顔で身体さわりまくるの。エロ親父かよ!
かつての誠実で清潔なイメージまでどっかの寺院の木の洞に封印してきちゃったチャウですが、昔の自分たちを彷彿とさせる恋人同士、タク(木村拓哉)とワン・ジンウェン(フェイ・ウォン)にだけはそっと助け船を出してあげるエピソードが好きです。あちこちのサイトで「下手」とか「浮いてる」と叩きまくられの木村くんですが、私はなかなかヨカッタと思います。これはスマ・ファンの欲目抜きで。劇中の小説世界のエピではいつもどおりの「ワイルドでぶっきらぼうなキムタク」って感じで特に目新しさもなかったけど、異国で恋に落ちた日本人青年が、言葉もろくに通じない相手を一途に「一緒に行かないか?」と口説く場面は意外な誠実さ(笑)も感じられて「こういう役もいいじゃない!」とプチ興奮でした。こればかりは監督に感謝だわ〜。
まぁでもこれはトニー・レオンの独壇場映画ですね。彼はホントに上手い役者だと改めて思いました。捨てられた子犬ちゃん役から、あちこちで子供作りまくりの野良犬の役までなんでもござれ。女優陣は髪型のせいもあるけどどうも野暮ったく見えました。チャン・ツィイーちゃんは可愛かったですよ。いきなり部屋に乗り込んできたチャウに無理矢理プレゼントされた(私しゃてっきりあの箱からして、そばぼうろが入ってるんだと思いましたが)ストッキングを嬉しげに眺めてるとことかね。チャウさん、もうちょっと本気で彼女に優しくしてあげてもよかったのに。
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