■ 原作も読んだことがなければ舞台も観たことがない、オペラ座初心者の身も蓋もない感想。
いつだったか誰かに「オペラ座の怪人」について聞いたところ、「とにかく可哀想やねん。ファントムが!」と言われたことだけは覚えてて、その心積もりで映画に挑んだんですが・・・。正直、どこが可哀想なんかわかりませんでした。というより、愛するクリスティーヌ(エミー・ロッサム)のためになら殺人も厭わない!なんて、このおっさんストーカーちゃうんかいと。
どうもファントム(ジェラルド・バトラー)の愛情が空回りしてるようで痛いねんな。そもそもクリスティーヌはファントムが思うほどには歌姫の座に執着してるわけではないと思うんですよ。むしろ興味ないんと違うやろか。歌も好きだけどラウル(パトリック・ウィルソン)のことはもっと好き〜くらいの普通のお嬢さんでしょ。なのに、「裏切りやがって!復讐してやる〜〜!」と叫ぶファントムはあまりに大人気ない。
これがクリスティーヌが嫌らしく二股かけてたってんなら、私も心置きなく「ファントム可哀想!」と言えるんですが、彼女がファントムとラウルの間で揺れる気持ちもよく理解できるんです。なんせ相手は、初恋の王子さまとエンジェル・オブ・ミュージックですよ。そら迷うちゅうねん。でも迷いつつも、二人に向ける愛情の種類は最初から違ってたように思いますね。それがわからんかったとこにファントムの不幸があるんだなぁ。黙って歌の先生のままではおれんかったのか。
ファントムのことをストーカー呼ばわりしといてなんですが、最後はやっぱり泣けました。彼にはオペラ座そのものへの愛着もあったと思うんですが、それさえ捨ててでも欲しかったのがクリスティーヌの愛だったのかと。ちょっと優しくして欲しかっただけやねんね。ほろり。
映画を観るまでは、どうせ顔がええだけで頭からっぽの嫌な奴なんやろうと思い込んでいたラウルですが、意外にも好青年。最後の墓参りのシーンなんか100%ええ人!彼はファントムとクリスティーヌのことをちゃんと理解してあげてたんですなぁ。恋敵の思い出の品を墓前にそっと供えるなんて、やることが男前。その思い出の品をオークションで競り合ったのが、ファントムの唯一の理解者であったマダム・ジリー(ミランダ・リチャードソン)ってのがまた泣けます。あれってただ売値を吊り上げてたわけじゃないですよね(なんの嫌がらせやねん)。彼女もまた切実にファントムの形見が欲しかったんだと思います。シャンデリアはでかすぎるもんね。
肝心の歌の方は、ファントムもクリスティーヌもラウルも吹替えなしなのは偉いと思ったんですが、不思議なくらい胸にくるもんがなかったです。上手いねんけどなんかキレイに歌ってるだけのようが気がしたな。ファントムの歌いっぷりはちょっとロック入っててカッコよかった。
忘れちゃならんのが、オペラ座の歌姫・カルロッタ(ミニー・ドライヴァー)。ファントムにどれだけ嫌がらせされようが決して挫けない不屈の精神。これぞ叩上げ!って感じでクリスティーヌよりよほどプリマドンナに相応しい。ああいう根性の入った女は大好きです。
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