カンフーハッスル/Kung Fu Hustle

【監督】 チャウ・シンチー
【出演】 チャウ・シンチー/ユン・ワー/ユン・チウ/チャン・クォックワン

※ややネタばれしてます。

■ 早くも「ワタクシ的2005年度1作品」になりそうな予感がするくらいオモロかったっす。この映画を元旦公開にした配給会社は偉い。久々に正しい正月映画を観た気がしました。

ストーリーは踊る組長サム(チャン・クォックワン)率いる斧頭会と、彼に目をつけられた貧乏アパートの住人たちとの倒し倒されの天下一武道会みたいなもんで正直漫画です。その分、キャラはいちいちようできてました。特にアパートの大家夫婦最高!嫁(ユン・チウ)最強!彼女の漢気には素で感動したもん。この映画で感動って!と我ながら驚いたけど。斧頭会代表の≪奏でる刺客≫コンビも好きですね〜。小さい方はあれ絶対、いとうせいこうだと思います。

シンチーは出番少なく見せ場多くのオイシイとこ取りで、最後なんかちょっと神々しくさえありました(誉めすぎかな)。一番笑ったのが頂上決戦の場面なんですが、主人公が堂々と見切れる映画なんて初めて観ましたよ。面白すぎたなあれは。彼がなんで強いのかという説明が一切ないとこも好き。ヒロイン的な女の子をほぼ放置なとこも。あー、もっかい見たいな。なんかね、「レザボア・ドッグス」以来の無駄のまったくない映画って感じがするんですよ。しかもアホらしさではこちらの方が断然上!


ネバーランド/Finding Neverland

【監督】 マーク・フォースター
【出演】 ジョニー・デップ/ケイト・ウィンスレット/ダスティン・ホフマン/ラダ・ミッチェル/フレディ・ハイモア/ジョー・プロスペロ/ニック・ラウド/ルーク・スピル

※盛大にネタばれしてます。

■ ≪ピーター・パン≫の作者である、ジェームズ・バリ(ジョニー・デップ)は遊び足りない子供がそのまま大人になったような人。だから公園で出会ったディヴィズ家の子供達に「一緒に遊ぼう♪」と誘われてめちゃくちゃ嬉しかったんだと思う。しかも何やってもごっついウケるし。ただ4兄弟の内、1人だけ、三男のピーター(フレディ・ハイモア)だけが、「オモロないし、ありえへん!」とバリの芸を全面否定。彼がそう思うのもちゃんと理由あってのことなんだけど、それにしても芸人(誰が)にとって、こんなやり辛い相手もないわけです。しかしバリはなんとかピーターを楽しませようと頑張ります。そして書き上げたのが「ピーター・パン」。あからさまに捧げてます。

バリは「ピーター・パン」の初演に≪25人の孤児≫を招待するんですが、そこには「自分はホントに子供達に面白いと思ってもらえる作品が書けたのか?」という不安(と批評するためだけに見に来る大人の客を牽制するための仕込み)があったと思うんです。ところがこれが大当たり!子供のハート鷲掴みですよ。またそんな子供の嬉しそうな笑顔を見てると、大人って楽しいもんなんですな。「すっかり大きくなって可愛くなくなった自分の子供らにもこんな時代があったよな〜」みたいな懐かしさも手伝って舞台は大成功。よく見りゃピーターも笑ってるし!

が、終演後、「あなたがピーター・パンのモデルなのね?」とにこやかに微笑う婦人に一言、「いいえ、ピーターはこの人です」とバリを指差し切り返すピーター少年。やっぱりキミは手強かった。ま、バリがピーターに敵わんのもわかる気がする。私もバリこそがピーター・パンで、ピーターはウェンディなんだと思う。一度出てきたネバーランドにはなかなか戻れんのよね。

本作でアカデミー賞主演男優賞にノミネートされたジョニー・デップ(ちょっとズルイと思う。どう考えても得意分野やん)。彼はもう生きててくれるだけでありがたい俳優ですね。海賊のコスプレは当然として、ディナージャケット姿の美しいこと!この場面は子供達もきちんと正装しててめっちゃ可愛いっすよ。

バリを支援する興行主役のダスティン・ホフマンがまたえらいよかった。大きな役ではないけど存在感があって、スピルバーグ監督の「フック」でフック船長を演じた彼がさりげなくワニの話をするのも楽しい。

この映画って、「人間誰でも大人になるわけで、それはもうわずか30秒の間にそうなってしまうこともあるんだから、せめて小さな子供の間くらい、たくさん夢を見たり信じたりしてもいいよね」って話だと思ったんですが、そのわりにピーター役を演じたフレディくんを周りの大人がやれ「天才だ!」「プロフェッショナルだ!」と大人扱いし過ぎなのが気になりました。確かに他の子役に比べていかにも芝居してます!って感じで上手いねん。でもその分えらい老けてるのよこの子。一瞬、小さいおじいちゃんが子役やってんのかと思ったくらい(言いすぎ)。 でもパンフに載ってたエピソードを読んでちょっと安心。監督がなんで俳優になりたいの?と聞いたところ、「大好きなサッカー選手が子供の頃役者だったから、自分もサッカー選手になるためにまず子役をやるんだ」と答えたそうですよ!可愛いがな。ちなみにアーセナルの大ファンだそうです。


パッチギ!

【監督】 井筒和幸
【出演】 塩谷瞬/高岡蒼佑/沢尻エリカ/尾上寛之/小出恵介/真木よう子/波岡一喜/オダギリ・ジョー

※ネタばれしてます。

井筒版、「ロミオとジュリエット」だそうです。

朝鮮高校のジュリエットこと、キョンジャ(沢尻エリカ)に一目惚れのロミオ康介(塩谷瞬)が可愛い。彼女の気を引きたいがために、朝鮮語を独学で学び、イムジン河をギター片手に熱唱。愛よね〜。そんな康介をしゃあないなと受け入れる、キョンジャのごっつい怖いお兄ちゃんアンソン(高岡蒼佑)とその仲間達との交流も若者らしくていいです。康介はアンソン達が通う朝鮮高校とはケンカばっかりしてる東校の生徒だけど、それはそれ、これはこれで割り切って付き合ってる。ひとを個人として見ることができてるわけですね。

ところが、アンソンたちの親世代はそうじゃない。たしかにチェドキ(尾上寛之)が亡くなったのは悲しいけど、あれは不幸な事故やん。なのに、お葬式にきた康介をええ大人がよってたかっていじめて帰らすのはどうなんよ。時に無知は罪なことではあるけど、なんでもかんでも一緒くたにするのはおかしいと思う。結局、康介は日本人やから自分らとは違うと言いたいわけで、彼個人のことを理解する気持ちなんかさらさらなかったのかと思うと悲しくてやりきれんですよ。

その点、一度仲間として受け入れた康介を「日本人だから」という理由で放り出したりしないアンソンらの方が大人なんだと思いました。そしてケンカでやられたからにはケンカで返す。筋が通ってる。

高校生が主役の作品なので若手俳優がたくさん出てくるんですが、みんなイキイキしててオモロかったです。特にアンソン、モトキ(波岡一喜)、チェドキの朝校トリオは素晴しい。東校の眉毛を完全に潰して龍(?)の刺青を入れてる子も味があるんですが、残念な事にパンフに載ってません。気になります。あと、康介の友達の紀男(小出恵介)もアホらしくていいです。前半にしか出ないのが勿体無い。 「革命には革命を!」が口癖の布川先生(光石研)がこれまた変人で(笑)。今はこんな個性的な先生、いないのでは。女性陣の中ではガンジャ役の真木よう子が印象的でした。「(高校を)一足先に卒業するわ」(それは中退では?)と看護婦になっただけあって考え方が大人っぽい。しかもめちゃくちゃ強い(ナース姿で男にとび蹴り食らわすシーン最高)。カッコええね〜。

康介にイムジン河を教え、その後フリーセックスを求めてスウェーデンに渡り、なぜかヒッピーになって帰ってくるという謎の男・坂崎(オダギリ・ジョー@説明台詞多し/アルフィーの坂崎さんがモデルだそうです)は出てくるだけで笑いが取れるというオイシイ役。彼は台詞回しなんかはどうかと思うことがあっても、中の人とは違う誰かになりきるというのはとても上手いですね。特に紙一重っぽい役に本領発揮。オジョーは挿入歌の「悲しくてやりきれない」も歌ってます。ここぞという場面で使ってもらっててどこまでもオイシイな。


オペラ座の怪人/THE PHANTOM OF THE OPERA

【監督】 ジョエル・シュマッカー
【出演】 ジェラルド・バトラー/エミー・ロッサム/パトリック・ウィルソン/ミランダ・リチャードソン

※ネタばれしてます。

原作も読んだことがなければ舞台も観たことがない、オペラ座初心者の身も蓋もない感想。

いつだったか誰かに「オペラ座の怪人」について聞いたところ、「とにかく可哀想やねん。ファントムが!」と言われたことだけは覚えてて、その心積もりで映画に挑んだんですが・・・。正直、どこが可哀想なんかわかりませんでした。というより、愛するクリスティーヌ(エミー・ロッサム)のためになら殺人も厭わない!なんて、このおっさんストーカーちゃうんかいと。

どうもファントム(ジェラルド・バトラー)の愛情が空回りしてるようで痛いねんな。そもそもクリスティーヌはファントムが思うほどには歌姫の座に執着してるわけではないと思うんですよ。むしろ興味ないんと違うやろか。歌も好きだけどラウル(パトリック・ウィルソン)のことはもっと好き〜くらいの普通のお嬢さんでしょ。なのに、「裏切りやがって!復讐してやる〜〜!」と叫ぶファントムはあまりに大人気ない。

これがクリスティーヌが嫌らしく二股かけてたってんなら、私も心置きなく「ファントム可哀想!」と言えるんですが、彼女がファントムとラウルの間で揺れる気持ちもよく理解できるんです。なんせ相手は、初恋の王子さまとエンジェル・オブ・ミュージックですよ。そら迷うちゅうねん。でも迷いつつも、二人に向ける愛情の種類は最初から違ってたように思いますね。それがわからんかったとこにファントムの不幸があるんだなぁ。黙って歌の先生のままではおれんかったのか。

ファントムのことをストーカー呼ばわりしといてなんですが、最後はやっぱり泣けました。彼にはオペラ座そのものへの愛着もあったと思うんですが、それさえ捨ててでも欲しかったのがクリスティーヌの愛だったのかと。ちょっと優しくして欲しかっただけやねんね。ほろり。

映画を観るまでは、どうせ顔がええだけで頭からっぽの嫌な奴なんやろうと思い込んでいたラウルですが、意外にも好青年。最後の墓参りのシーンなんか100%ええ人!彼はファントムとクリスティーヌのことをちゃんと理解してあげてたんですなぁ。恋敵の思い出の品を墓前にそっと供えるなんて、やることが男前。その思い出の品をオークションで競り合ったのが、ファントムの唯一の理解者であったマダム・ジリー(ミランダ・リチャードソン)ってのがまた泣けます。あれってただ売値を吊り上げてたわけじゃないですよね(なんの嫌がらせやねん)。彼女もまた切実にファントムの形見が欲しかったんだと思います。シャンデリアはでかすぎるもんね。

肝心の歌の方は、ファントムもクリスティーヌもラウルも吹替えなしなのは偉いと思ったんですが、不思議なくらい胸にくるもんがなかったです。上手いねんけどなんかキレイに歌ってるだけのようが気がしたな。ファントムの歌いっぷりはちょっとロック入っててカッコよかった。

忘れちゃならんのが、オペラ座の歌姫・カルロッタ(ミニー・ドライヴァー)。ファントムにどれだけ嫌がらせされようが決して挫けない不屈の精神。これぞ叩上げ!って感じでクリスティーヌよりよほどプリマドンナに相応しい。ああいう根性の入った女は大好きです。


エターナル・サンシャイン/ETERNAL SUNSHINE OF THE SPOTLESS MIND

【監督】 ミシェル・ゴンドリー
【出演】 ジム・キャリー/ケイト・ウィンスレット/キルスティン・ダンスト/イライジャ・ウッド

※ややネタばれしてます。

■ 要は、「一度こっ酷く別れたふたりが果たして最初からやり直すことができるのか?って話」なんですが、面白いのは「肝心のふたりが別れたことを覚えてないってとこなんですな」。記憶から消しちゃってる。なのに再会した途端またあっさり恋に落ちてるんだから、事情を知ってる周りの人間からみたら「なんだお前らバカップルかと」。ま、人間好きなタイプってそうそう変わらんのだな。特に一目惚れの場合、相手の顔や声、喋り方に惹かれるってことだから、記憶がなけりゃ同じ相手に恋しても全然不思議じゃない。

この話が切ないのは、最初はあれだけ好き!だと思った相手の長所がいざ別れるとなると、途端に耐え難い短所に早変わりしてしまうってとこかと。それってキレイに別れるより、よほど相手の事が好きだったってことだと思うんですよ。や、知らんけど。

「何がよくて付き合ってたんだ?」と自分を問い詰めながらも、いざ記憶を消す段になると、「いやいやあの時は楽しかった」とかごちゃごちゃ思い出して、ジタバタするのが男の方だってのがまたしょっぱいですな。確かにジム・キャリーとケイト・ウィンスレットのどちらが未練がましそうかと言われたら、そらもうジムでしょうけど(笑)。それはさておき、やっぱり世界基準として潔くばっさり別れるのは女の方だってことになってるんでしょうか。

正直、私はこのふたり、「何度やり直しても」結局別れることになると思うんですがどうだろう。でも「ゼロどころかお互いマイナスからのスタートだからなぁ」。もしかすると上手くいくかも知れません。というか、いかなけりゃそれこそ記憶消した意味ないがな。


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