ナショナル・トレジャー/NATIONAL TREASURE

【監督】 ジョン・タートルトーブ
【出演】 ニコラス・ケイジ/ショーン・ビーン/ダイアン・クルーガー/ジャスティン・バーサ/ジョン・ボイト

■ 合衆国独立宣言書の裏に描かれた地図を頼りに≪テンプル騎士団の秘宝≫探しに奔走する天才歴史学者ベン・ゲイツにニコラス・ケイジ。秘宝を狙うもう一人の男イアン・ハウにショーン・ビーン。独立宣言書を取り返そうとするFBI捜査官セダスキーにハーヴェイ・カイテル。

ベストセラー「ダ・ヴィンチ・コード」のように、ひとつの謎が解ける度に場所を移動し、またそこで新たなる謎に挑戦。最終目的地はどこなのか。それ以前に本当に宝はあるのか?と最初から最後まで客が着いて来てようがどうしようがお構いなしにぐんぐん進むストーリーにドキドキ。ここぞ!って時に必ず邪魔が入るベタな展開にわかっててもハラハラしちゃうのはもうしょうがない。ベタだからこそ面白いってこともあるのだ。

ジェットコースター・ムービーらしく、キャラに嫌味がないのもいいです。まず主人公のベンが頭も良く、運動神経もいいのにどうにもパっとしない普通の歴史オタなのに好感が持てました。ゲイツ家って親子3代(もっとかも)に渡ってこの秘宝探しをやってたらしいんですが、世間的にはドリーム入りすぎの痛い人たちとして認知されてるようで、ベンはなんとしてでも秘宝を探し出し、バカにしてきたひとたちの鼻を明かしてやりたいと思ってるんですな。グランパにもパパにもできなかったことを僕がやってみせるんだ!みたいな心意気。そこがすごく可愛い。ニコラス・ケイジなのに。

そんな息子を生暖かく見守るパパ役にジョン・ボイト。「いつまでも夢みたいなこと言ってるんじゃない!」なんて言いながら、息子のやることにいちいち口を出さずにいられないのが可愛いのですよ。せめて息子くらいは真っ当に生きて欲しいと願いつつ、今度こそ本当にお宝が見つかるかも?と思うといてもたってもいられないみたいな(笑)。正直、最初はちょっと疑ってました。ホントは息子が見つけた宝を横取りする気なんじゃないの〜?なんて。悪かったわ。

秘宝を狙うもう一人の男・イアンがヒールのわりにゆるいのもお気に入りです。無駄に男前としかいいようがないゆるさ。何度も出し抜かれてるくせに、「ほら、これ見てごらん」なんて言われてベンと一緒に地図を覗き込んでる姿はあほらしくも愛しいほどでした。すでに続編製作が決定済みのようなので、ぜひまた彼にも出演していただきたいです。そしてまた思う様出し抜かれて欲しい。

ベンの相棒の天才ハッカー・ライリー(ジャスティン・バーサ)も好き好き。パソコン以外の才能はないようだけど、下手に足手まといにならない程度には空気も読めるしなにより顔が可愛い。できる女アビゲイル博士(ダイアン・クルーガー)もキリっとした美人だけど愛嬌もあってよかった。ベンに惚れたのは意外だったわ。


コンスタンティン/CONSTANTINE

【監督】 フランシス・ローレンス
【出演】 キアヌ・リーブス/レイチェル・ワイズ/シア・ラブーフ/ピーター・ストーメア/ティルダ・スウィントン

※ネタバレしてます。

■ 人間の姿に化けた天使や悪魔の姿(ハーフ・ブリード)を見分けられるという特殊能力を持つ男、ジョン・コンスタンティン(キアヌ・リーブス)。しかしこれが本人にとっては大迷惑な話。ありがたくもなんともない能力からくるストレスのせいか、子供の頃からヘビースモーカーのジョンは今やすっかり末期の肺ガン。しかも若い時に一度、絶望のあまり自殺未遂をやらかしたせいで死後は地獄行きが決定済みときました。こんな不幸なひと見たことない。

なんとか地獄行きだけは免れたいと、神様へのポイント稼ぎに日々悪魔退治に余念がないジョン。しかし、天使ガブリエル(ティルダ・スウィントン)は「まだまだね」と一向に認めてくれません。それだけ「自殺」というのは罪が思いということなんでしょうな。無宗教の自分でさえ、「自殺したら成仏できない」と思ってるくらいだから、敬虔なカソリック信者にはすごく怖い映画なのかも(知らんけど)。

本来なら人間界は天国と地獄の間にバランスよく収まってるはずが、最近どうもそのパワーバランスが崩れてきていることに気付くコンスタンティン。敵はどうやらルシファー(ピーター・ストーメア)の息子らしい。これまでにない大物相手に、追いつめられたコンスタンティンが取った起死回生の一手とは。以下ネタばれ。

なんと、再び自殺を図ることで悪魔界の総大将・ルシファーを呼び出しちまいましたよ!またこのルシファーがコンスタンチン大好きっ子だったらしく、全身白でバッチリ決め、いそいそとお迎えに来るってんだからたまりません。バカ息子はとっとと地獄へ送り返し(あとで相当のおしおきを受けている予感)、それよりジョン、はよ行きまっせ!てなもんです。

が、ここで待ったをかけたのが誰あろう神様そのひと。「おまえを呼び出したその行為はうちらで言う≪自己犠牲≫。ジョンはこっちで貰いまっさーーー!!」と逆にぐいぐい引っ張って行かれそうになり、そりゃないぜとルシファー大慌て。まさにコンスタンティン杯決勝ですよ。凄まじい点の取り合い。そしてロスタイム。むざむざ天国チームにかっ攫われるくらいならと、「生 き ろ !」とジョンの耳朶を噛みながら(激しいセクハラ攻撃)、やおら麻酔もなしに胸の中に両手を突っ込み、腫瘍を根こそぎ摘出するというB・Jも真っ青の天才外科医ぶりを発揮でジョンへの執着を見せつけるルシファー。この魂の同点弾で試合はドローとなり、ジョンは無事に(おまけに末期ガンまで克服して)人間界に戻されました。」一体こりゃなんの映画かと。

要はコンスタンティンがモテモテだと。そういう話ですよね?(身も蓋もない)。

さておき、キャラはいちいち面白かったです。特にジョンに興味津々で、「なんておいちそうなジョニーボーイ」なんて言っちゃうバルサザール(ギャビン・ロズデイル)が男前でもう。直接ジョンを苛める前にまず彼の周りの人間から消していくあたりも実に正しい悪魔ぶりでステキです。ルシファーはもう言う事なし。ティルダ・スウィントンの天使とは思えないくだけた姐さんっぷりもカッコイイ!彼女のでかさが100%生かされた見事な配役だと思います。 ところで、40男のバス・ルームにアヒル隊長が普通にいていいもんなの?(監督狙いすぎ!)


ウィンブルドン/wimbledon

【監督】 リチャード・ロンクレイン
【出演】 ポール・ベタニー/キルスティン・ダンスト/サム・ニール/ニコライ・コスター=ワルドウ

※ネタバレしてます。

■ 好きな人だけが大好きなイギリスの個性派美形俳優ポール・ベタニーが、引退間際のテニスの王子様を演じる1ミリの狂いもない王道中の王道ラブコメ映画。上映館が寒いほど少ないのは百も承知でオススメします。ベタニファンなら1泊してでも観に行く価値アリ!それ以外は知らん。

ベタニが演じるピーター・コルトは世界ランキング119位。正直、「引退するんだ。あっそう」クラスの選手です。本人も自分が注目されるに値しないことはよくわかってる。それでも、かつてはランキングが11位だったことを誇りに思い、15位と間違われれば大声で「イレブン!」と正さずにはいられないし、最後の大会となるウィンブルドンで若造相手に初戦敗退だけはゴメンだ!とブックメーカーも驚きの勝利を収めたりする。悪あがきもいいとこです(笑)。でもこの一歩間違えれば惨めったらしい男も、ベタニの手に掛かればなんともチャーミングで愛すべきキャラとなるんですよね〜。応援せずにはいられない。

負ければ即引退のピーターの元へ現れるのが、アメリカからやってきた若くて怖れを知らないリジー(キルスティン・ダンスト)。勝気で生意気だけど、妙に可愛いところのあるリジーにピーターはメロメロ。恋の力で輝くのはなにも女の特権ではないのですよ。彼女にふさわしい男になりたい!と張り切るピーターはあれよあれよと言う間になんとファイナル進出。

テニスみたいな個人競技だとプライベートが試合に与える影響って大きいと思うんですよ。その点、ピーターはとってもいい恋愛をして充実してます!って感じなんだけど、それにしてももうちょっとストイックなとこがあってもいいんじゃないかと(笑)。だってこのひと、試合中にすごい雑念多すぎなんですよ。そんな色々考えてて勝てるもんなのか。

逆にリジーは途中で敗退。試合に集中するためには他のものはすべて邪魔!とピーターとの恋もほんの息抜きのつもりだったはずが、いつの間にか本気になってたってことなんだけど、元が気の強いお嬢さんなもんで、死んでもそんなこと認めたくない!と逆ギレするのが可愛かったな。ピーターはちょっと立場ないけど。

面白いのが、恋愛を通して選手として成長するのが引退間際のピーターの方だってことなんですよ。彼はどっちかというとメンタル面が弱い選手だったんですよね。トーナメントで友人のディーター(ニコライ・コスター=ワルドウ)と当たることになって思い切り動揺したり。それをリジーに「私はこの世界に友達は作らない。コートで相手を叩きのめすことになるのが嫌なら、最初から作らない方がいいわ」なんて言われて吹っ切れる。でもそのあと、「どんな結果になっても友達に変わりはないよ」なんてディーターに言われ、ホっとするのがピーターの可愛いとこなんですが!(笑)

この映画はラブコメスポ根の王道に違いはないのだけど、「恋もタイトルも手に入れる!」のがおっさんの方だというのがちょっと目先が変わっててよろしいんじゃないでしょうか。普通はピーターの方が器用に恋もテニスもこなしていいと思うんだけど、あえてそれを逆にしたところに監督のセンスを感じました。つうか、ベタニが可愛いからこうなっちゃったんだよね、監督!

ベタニベタニとうるさすぎますが、友人のディーター役のニコライ・コスター=ワルドウも、ちょっとトッティ王子似のいい男。ピーターの守護天使、ボールボーイの男の子も可愛かったー。

スポーツとは無縁のベタニも猛特訓のかいあってか、ちゃんとテニス選手に見えました。サーブのフォームとか美しいと思いましたよ。長身だから迫力あるし。ま、試合の場面はCGらしいけど。なによりテニスのユニフォームがあれほど似合うとはー(萌)!キルスティンの超ミニのスコートも可愛い。


コーラス/LES CHORISTES

【監督】 クリストフ・バラティエ
【出演】 ジェラール・ジュニョ/フランソワ・ベルレアン/ジャン=バティスト・モニエ/カド・メラッド

※ネタバレしてます。

■ 親のいない子供や、本人に問題ありで親元を離れている子供たちが共同生活を送っている「池の底」と呼ばれる寄宿舎に、新しく赴任してきた失業中の音楽教師クレマン・マチュー(ジェラール・ジュニョ)。「やられたらやり返せ!」がモットーのラシャン校長(フランソワ・ベルレアン)の厳しすぎる体罰教育に子供達がすっかり萎縮しているかというとそうでもなく。愛情のないおしおきなんか屁とも思ってないせいか、逆にふてぶてしくなってて、マチューもさっそくハゲのタコおやじと呼ばれたりします。そのまんまやん。

そんな子供たちにもそれぞれ将来に対し夢があることを知ったマチューが、なにかできることはないかと思いついたのが合唱団の結成。ここでパート分けするために、子供たちになんでも好きな歌を歌わせるシーンがおかしくて(笑)。どいつもこいつもおよそ子供らしくない歌ばっかりなんですよ。どこでそんな曲覚えてきたのかと、マチュー先生もとほほ。しかも正直みんなヘタ。しまいにはあまりに音痴な子は譜面台の役を仰せつかってました。先生、それは教育者としてアリなんでしょうか。

練習を繰り返す内にメキメキと上達していく合唱団。指揮者マチューの指先を無心に見つめながら、あるいは友達とこづきあいながら楽しそうに歌う彼らの姿は胸にグっとくるものがありまして、どうしてこれを親を招待して聞かせてやりはしないのかと。中にはこれがきっかけで迎えに来てくれる親もいるんじゃないのかなぁ。でもそもそも親がいない子はどうしようもないか。

合唱団を通して何かが劇的に変わるわけではないんですが、少なくともひとりはプロの音楽家となり、子供たちに希望を持っていなかった他の先生方は教育者としての自分を見つめなおすことになったわけで、そんな先生の姿を見て教育者への道に進んだ子もいたかもしれない。そういう可能性を感じさせる映画でした。気持ちが和らぐいいお話。

子供たちはほぼ全員が素人だそうで、確かに少々噛んでもそのまま押し通しちゃってる感じがありましたよ(笑)。合唱団のソリスト、ピエールを演じたジャン=バティスト・モニエは実際に「サン・マルク少年少女合唱団」でソリストを務めるだけあって、その歌声には圧倒されます。ただ歌が上手いとか声がキレイなだけなら他にもいるんでしょうが、彼の場合、持ち前の繊細なルックスが母親への愛情を上手く表現できない複雑な男の子の役柄にピッタリ合ってて、ひたむきな歌いっぷりが切なくてたまらんです。演技の方も初めてとは思えないくらい上手。

最後まで手に負えない悪ガキで終わったモンダン(グレゴリー・ガティニョル)は実際に厚生施設に入っている少年で、担当判事の猛反対を押し切って監督が採用したんだそうです。どうりで迫力があるはずだ。ちなみに彼は撮影の間中一度も問題を起さず、逆に他の子供たちを気遣ってたらしい。人間、なにかしらいいとこがあるってことか。今頃どうしてるんでしょうな。映画とは逆の結果が出ていればいいけど。

寄宿舎の最年少、ペピノを演じたマクサンス・ペラン(製作・出演のジャック・ペランの息子なんだって。孫の間違いでは)がまたなんじゃこらつうくらい可愛い。他の子供たちもみんな個性的で面白いです。主人公のマチューを演じたジェラール・ジュニョはしょぼくれてんだけど、いざと言う時には意外なガッツをみせるあたり、「バティニョールおじさん」とちょっと役がかぶってるように思いました。最後、紙ヒコーキは全て回収するように!


メゾン・ド・ヒミコ

【監督】 犬童一心
【出演】 田中泯、柴咲コウ、オダギリジョー、西島秀俊、青山吉良、歌澤寅右衛門

※ネタバレしてます。

■ なんといっても沙織(柴咲コウ)がいいですよ。愛想はないし物の言い方はキツイんだけど、地に足付いた生き方してて。周りがみんなオカマなだけに彼女のガッツリした男振りが際立ってたな。惚れそう。

立場的にはすごい切ないんですよね。自分と母親を捨てて出て行ったゲイの父親が、実は内緒で母親とだけちょこちょこ会ってたなんて。なんやわしだけ蚊帳の外かいと悲しいやら寂しいやら悔しいやらで、しまいにはそれをホームのみんなにぶつけてしまうわけですが、何を言われてもぐうの音も出んわけですよ。言い方は悪いけどホームのみんなには傷を舐めあう仲間がいても、沙織はずっとひとりで誰にも頼らず生きてきたんだもんね。それが人生の最後になっていきなり「家族はどうしてるかなぁ。会いたいなぁ」なんて言われても。「クソ甘いこと抜かすなボケが!」と怒鳴る沙織との間にそれなりの友情が築かれた後だけに、余計にみんな堪えたんじゃなかろうか。

沙織の男運のなさもまた切ない(笑)。ちょっといいかもと思った男(晴彦/オダギリジョー)は結局ゲイの道から踏み出せず、会社の上司(細川専務/西島秀俊)は若い女ならなんでもいい感じだし。沙織ちゃん、いい女なのに世間の男は見る目ないな。

最後までなにひとつ解決しないまま終わるのも、この作品に関してはそんなもんかと納得。そうそう人生うまくいくわきゃないってところがミソね(細川専務が新パトロンとしてホームを救ってくれると期待したひとは多いはずだ)。

ヒミコ(田中泯)の最後の愛人つうか恋人の晴彦。もっとほんわか柔らかい感じのひとかと思ってたけど、なかなかに強かでございました。オダギリさんはハマってたんだかなんなんだか。なんとなくこのひとホモフォビアじゃないのかとも思ったりしました。いやなんとなく。それにしても中学生を誑かしてはいかんよ(笑)。

田中泯さんのママぶりは貫禄ありありで素晴らしかったです。沙織に対して「申し訳ない」の一言もないし、むしろ「私が会いたいって頼んだわけじゃないのよ」と憎たらしいほどなんですが、最期の「あながた好きよ」はぐっときました。絶対言うと思ったけど(笑)。娘としてというよりは、ひとりの人間として沙織のことが好きよとそういう意味かなと思って。

ホームを彩るゲイさんたちの中では、山崎さん(青山吉良)が愛しかったですね。ホントは女の子に生まれたかった山崎さんがお手製のドレスで初めてみんなとお出かけするシーンがこの作品で一番好きです。「適当に遊ばせてくる」という晴彦にヒミコママが「ダメダメ。ちゃんと盛装しなきゃ!」と全員に一番いい服を着るようにお命じになられるんですよ。本人、今にも死にそうなのにこの細やかな心遣い。さすがは伝説のママだけあるわ〜。


>>>Back