インディアン・ランナー
監督:ショーン・ペン
出演:デヴィッド・モース/ヴィゴ・モーテンセン/パトリシア・アークエット/デニス・ホッパー

主演がヴィゴじゃなかったらおそらく一生縁がなかったと思われるこの作品。ショーン・ペンの第一回監督作品でもあります。身も蓋もない言い方をすると、いい年したブラコン兄弟の話。※ネタばれしてます。

ベトナム帰りのフランク(ヴィゴ)は戦争で精神を病んでしまったらしいのですが、このへんがどうも曖昧。(私にはただのダメ男にしか見えんかった)そんな壊れの弟に対し、警官の兄ジョー(モース)はこれが絵に描いたようなマイホームパパでいいひと。そしてこの兄が弟に甘い甘い。喧嘩っ早いわ、仕事は続かないわ、挙句に嫁にまで手を上げるようなどうしようもない弟を、なんとか真人間にしようとなにくれとなく世話を焼きます。しかし思いはいつも一方通行。いい加減、ほっとけばー?と見ていてイライラするのだけど、全身刺青だらけで30もとうに越えていると思われるこのダメ弟が、なぜか兄には「お兄ちゃ〜ん♪」とひっついてきた子供の頃からまるで変わっていないように見えているから始末に終えません。

弟の方は、(本能で)兄が自分を見捨てることなんかできないのを承知しており、言いたい放題のやりたい放題。ついには自分の子供が生まれようとしているのを無視して逃走です。しかし、とうとう堪忍袋の緒が切れた兄に血を吐くような思いで叱責され、さすがに反省したかのフランク。が、ここでまたひと悶着あるんですな。(この時の彼の心情ももひとつ分からん。戦争であまりに多くの血を見すぎたせいで心が病んでいるのか、ただ単にパーなのか) 警官として弟を追わざるをえない兄。ここで思い出されるのがこの映画のキャッチコピー、「弟よ、社会は君の生き方を許さない。だから、僕が君の人生に終止符を打つ」

と こ ろ が。この期に及んでまだ、ブラコン兄貴にとってのフランクは小さいフランキーのままなのですよ!警官であるにもかかわらず傷害、下手すりゃ殺人犯の弟をいともあっさり見逃しますから。追う気なんかさらさらありません。職場放棄です。もう開いた口が塞がりませんでしたね。「終止符打つんじゃなかったの?」とアゴが胸まで落ちましたがな。一体この映画でショーン・ペンともあろう人が何を伝えたかったんでしょうか?まさかベトナム帰還兵の悲哀じゃないよね。←それはいくらなんでもムリだから。


王は踊る
監督:ジェラール・コルビオ
出演:ブノワ・マジメル/ボリス・テラル/チェッキー・カリョ

タイトルほどは踊らないんだなぁ、この王様(ルイ14世)。別名・太陽王と呼ばれるだけあって、金色が大好き。しかもベルサイユ宮殿を造らせたひとです。派手好きですな。5歳で即位したものの、実権は母親と従兄弟が握ってるもんでやることがないっす。だもんで趣味に打ち込む当時14歳の王様。音楽とダンス(バレ)を愛するアートな彼に思いを寄せる、宮廷作曲家のリュリが気持ち悪いんですよ(身も蓋もない)。舞台に立つ直前の王のもとへ自分が先に履いて慣らしておいた金ピカのシューズを持って参上したりしてね。なんでお前が先に履くかな(萎)。根っからの男色家のくせに王様が結婚したもんで嫉妬のあまり自分も嫁を貰ったりともうこの発想が嫌でたまらん。

ある日の王様、全身キンピカに染め上げて舞台に上がったはいいものの、ピルエットに失敗して派手に足首ぐねります。練習では一回も成功しなかったこの技を本番でバッチリ決めてこそ、「さすが王様!!太陽王!!」となるところがこれじゃかっこがつきませんね。というわけであっさり引退。ルイ14世、この時まだ30歳そこそこ。早すぎる引退に惜しむ声が殺到したかというとそうでもなく。だいたい、それまでも王様が華麗なバレを見せてくれたシーンなんかひとつもないんでね。正味の話、どの程度の実力だったのかまるでわかりません。しょうがなく観る側に回った王様のため熱心に舞台を作るリュリですが、どうも彼と王様のセンスにズレがあったようで、私が何が面白いのかまったく理解できなかったモリエール(劇作家)の喜劇オペラにはバカ受けの王様も、リュリ渾身の作”激ラブ・ルイ14世”にはニコリともしません。彼の最後は惨めっすよ。さすがに同情した。でもしょうがないっすな。笑いのツボが合わない人間とは付き合えないもん。

そんなこんなで話はもうなくったっていいような映画ですが、せめてバレのシーンくらい迫力いっぱいで見せて欲しかった。ルイ14世役のブノワ・マジメルはフツーの役者さんなんですな。そのせいか踊ってるというより、ただ足を踏み鳴らしているようにしか見えませんでした。本物のバレエダンサーを使えばよかったんじゃないですかね、ウィル・ケンプとか(想像するだけでくらくらする)。あと、このひとのアゴが気になってしょうがなかったです〜。(ザッケローニ?)。


オーシャンズ12
監督:スティーブン・ソダーバーグ
出演:ジョージ・クルーニー/ブラッド・ピット/マット・デイモン/キャサリン・ゼタ=ジョーンズ/ジュリア・ロバーツ/ヴァンサン・カッセル

観てる間は隣のひとに、「これって面白いの?」と聞きたくなるような映画だと思ったけど、観終わって2〜3時間経つと意外と面白いのかもと思えてくる不思議な作品。

前作でベネディクト(アンディ・ガルシア)から盗んだお金を全額+利子付きで返却しなければならなくなったオーシャン(ジョージ・クルーニー)とその仲間が再び集結。今度の狙いはヴェネツィア!なのはわかったけど、ごめん。正直、誰がどんな特技を持ってるのか全然思い出せんかった。じじい二人に関しては出てたことさえ忘れてた。でもそんな些細な事、思い出せなくても大丈夫。なぜなら今度の仕事になにひとつ関係ないから。

要は”木更津キャッツアイ”みたいな話なんだと思うんですよ。ただ、木更津と違って巻き戻し方が下手。だから、1回見ただけではなんやようわからんことになってるんだと思います。多分、2回見たらもうちょっと面白いと思えるはず。それと12人目は誰か?という話ですが、これは観た人によって意見が分かれると思いますね。ジュリアもゼタ姐さんもそうだと言えるし、狐でもベネディクトでもいいかも知れない。ちなみに私はマットのママだと思いました。

クルーニーとブラピとマットとジュリアとゼタ姐とヴァンサンとガルシアとハゲ(カメオにしては出番多し)を一度に千円で見られるなら、まぁこんなもんでしょうな。


陰陽師U
監督:滝田洋二郎
出演:野村萬斎/伊藤英明/中井貴一/深田恭子

※ネタばれしてます。

Tの方が断然面白かった。野村萬斎さんの晴明はあいかわらずの上手さで見せてくれるのだけど、敵役に問題があるんですな。でも中井貴一さんが悪いわけではないよ。役が悪いのだね。

中井さん演じる幻角は朝廷への恨みを晴らすために妻も子供も犠牲にするような男だけれど、元はと言えば彼の方こそ被害者。そら恨むだろう誰だってというくらい理不尽な目にあってる。でもだからこそ、彼自身が鬼になるべきだったと思うのですよ。それを子供を使ってどうこうしようとするから、いまひとつ感情移入できないんですな。またイイ子なんだ息子の須佐が。(演技はどうしようもないくらい下手だけど)それを父と共に恨みを晴らしますぞーー!ってわけでもないのに、無理矢理鬼にしちゃいけません。つうか息子を鬼にしようと思った時点でこの人も鬼と化してるわけですが、それならそれで最後は晴明がその呪を解いてやらないと!巫女さんのコスプレして舞ってる場合ではないよ。(もしかしてあれで落してたのかな。萬斎さんの顔にばっかり目が行ってたもんであの場面の本質を見落としてるかも)それと、元を質せば悪いのは小心者の帝なんだから、(死なない程度に)もっと怖い目に合わせてやらなければいけません。

今回気になったのが人の少なさ。晴明と幻角が並んで都の大路を歩いているシーン、鬼が出たー!と大騒ぎの宮中での場面、皆殺しにあった出雲村の人々。どこをとっても人が足りてないんである。したがって画面がスカスカ。エキストラ雇う予算が足りなかったのか?その分特撮にまわしたとか。そのわりにCG(VFXというの?)もしょぼかったけどなぁ。特に鬼に変身後の須佐!ケンシロウコントじゃあるまいし、今時肉襦袢はないだろうよ。


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