マイ・ネーム・イズ・ジョー/My Name is JOE

【監督】 ケン・ローチ
【出演】 ピーター・ミュラン/ゲイリー・ルイス

イギリス映画を観る度に思うのですが、たとえ失業中でもあんまり悲壮感ないですよね彼ら。確かに生活は苦しいのでしょうが、サッカー談義に花を咲かせて、パブでビールの1杯でも飲めれば日々はそれなりに幸せ。そんな気がします。この映画に出てくる男性陣もそんなのばっかり。そして、ほぼ100%定職に就いてないだろうなって男達が集まってやることといったらそれはもうフットボール以外にありえません。元アル中で、現在断酒10ヶ月目のジョーが率いる草フットボールチーム(ワンダラーズ!/笑)のシャツは、西ドイツ代表。背中に”ベッケンバウアー”とか入ってるドロドロのユニを着て試合に行った先では、ホームチームのユニも西ドイツ(笑)。いい年こいた男達が「俺たちはいつも”西ドイツ”なんだーーーー!!!」と審判に食って掛かったりしてバカみたい。(でもそこがカワイイとこでもあるのですが。)結局、ホームチーム優先とかでシャツを脱がされて裸でやってます。楽しいねぇ。

イギリス人が酒断ちするなんてよほどのことだと思ってたらジョーにも案の定、暗い過去アリ。以前、同棲していた女性に酔っ払って殴る蹴るの暴行を加えたのですな。しかもしょーもない理由で。今でもその時の彼女の悲鳴を覚えている・・・とぽつぽつ語る彼を優しく包んでくれるのがセーラ。ジョーとセーラは二人そろっていい年だけど、なんかもう恥ずかしいくらいの純愛です。なんせ初デートがボーリングですから。中学生かあんたら。帰りに家まで送って行くジョーは「お茶でもどう?」なんて誘われても家に上がろうともしません。ステキすぎ!!

こんなナイスガイ・ジョーを再び酒に走らせる原因となる、彼の甥のリアム(ノイビル@ドイツ代表似)一家には心底ムカつきます。もう放っとけって!!でもいくら私が怒ってもきっとジョーは構わず手を差し伸べるでしょう。だってこのひと、基本的におせっかいなんやもん。愛するセーラにも別れを切り出され、1人部屋で飲んだくれるジョーの姿は寂しくて泣けてくる。それでも最後はまた希望がありそうな終わり方です。そこがヨカッタ。 ヤバイ事件に巻き込まれたりはするものの、基本的にイギリスの労働者階級(失業者か)の日常がメインのお話。ただそれだけなのに不思議と飽きないです。失業手当をもらってるのにセーラの家の改装を手伝い、バイト代を貰うジョーを盗み撮りしてる福祉局かなんかの役人との対決がケッサク!ペンキを持ったまんま追いかけてって、車にぶちまけてますからね。子供の喧嘩ですよ。前見えないっつうの。あと、スポーツショップの倉庫からブラジル代表のユニをぱくるシーンも大好き。ブラージル!ブラージル!とか言ってて楽しそう〜♪(西ドイツはもういいのか)憧れのカナリア・イエローに身を包み、嬉しげに転げまわる無職の男達。いい加減働け。


ヒューゴ・プール/HUGO POOL

【監督】 ロバート・ダウニー・Sr
【出演】 アリッサ・ミラノ/ロバート・ダウニー・Jr/ショーンペン

■ロバート・ダウニー・Jrはやはり天才だとこの映画を観て確信。どう見たって”ラリー@アリーmyラブ”と同一人物が演じてるとは思えません。今回のダウニーの役どころは、撮影中に自分を「ヘボ監督」呼ばわりしたエキストラを問答無用で射殺した狂気の映画監督。(なぜか翌日には保釈されてふらふらしてる。)お金もないのにプールの清掃を依頼したかと思うと、保険金目当てに家に放火し(なら掃除はいらんやろ)、自分が殺した相手の葬儀に白い花を持って現れ棺に足で土をかけた上、嘆き悲しむ被害者の両親に「エキストラとしては最高だったけど、人間としてはクズだ!!殺されて当然だ!!」と言い放ちます。(いやいや、あんたがクズだから)

しかし、こんなキチガイ奇天烈くんをダウニーが演じるとなぜか可愛く見えるから不思議。激痩せしているせいで、ただでさえでかい目がさらに大きく見えるお人形さんのような顔をぺったりとくっつけ、「かわいそうに。神様のきまぐれでキミは損をしている。」と難病患者のフロイドに話しかけるシーンは、「お前にかわいそうとか言われたないねん。」と思いながらも、妙な優しさや愛情深さを感じたりもするのです。(その直後、びよーんびよーんと跳ねながら去って行くあたり、やはり変人は変人なのですが。)

ヒューゴ・プールにはもう1人、けったいなおっさんが出てきます。ヒューゴのパパのヘンリー。アル中でヤク中の彼はどうしようもなくクスリに手を出したくなると、身代わりに腹話術の人形(顔がそっくり。シャツの柄までおそろいです)に注射を打ちます。がっくりと首を落とす人形に向かい「また俺を救ってくれた・・・。」嬉しいくらいに変人。その他、息子を殺した殺人犯(もちろんダウニーのことですが)を「キミが気に入った。養子にきてくれ!」と誘う夫婦や、不必要にマッチョな看護士、ギャンブル狂いのヒューゴのママ等、妙な人たちの見本市のようなこの映画を作ったのはロバート・ダウニー・Sr。ダウニーパパですな。ゲーリック病で亡くなった奥さんとの共同脚本を映画化したもので、主人公のヒューゴ(アリッサ・ミラノ)と恋に落ちる青年・フロイド(パトリック・デンプシー)が患っているのもこの病気。主に脊髄から筋肉に至る部位の運動神経が破壊される、原因不明の疾病です。

看護士の助けがなければ何もできない彼を競馬場に連れて行くヒューゴとママ。トラックの荷台に車椅子ごとドンと積まれ、首ががくんとなってもなりっぱなしでゴトゴト走り続けるというたいがいの扱いなのに、フロイドもヒューゴもハッピーハッピー。時々、ちらりと目線を交わし合うのがめちゃくちゃ可愛い。話は普通の一日の出来事を綴っただけですが、登場人物の元気のよさに見終わった後、かなり楽しくなる映画でした。あと、青い靴を履いた謎のヒッチハイカーの役でショーン・ペンも出てます。彼もたいがい変わった人。


宮廷料理人ヴァテール/VATEL

【監督】 ローランド・ジョフィ
【出演】
ジェラール・ドパルデュー/ユマ・サーマン/ティム・ロス/ジュリアン・サンズ

■変なヅラ被った嫌なひとがたくさん出てくる映画です。国王ルイ14世の信頼を取り戻そうと、コンデ大公が催した3日間の宴。宴会部長に任命されたお抱え料理人ヴァテール(ジェラール・ドパルデュー)は、料理はもちろん、食事の際に上演される出し物まで全てを仕切ります。大忙しです。そのわりに一向に痩せません。下見の段階から乗り込んできたローザン侯爵(ティム・ロス)にネチネチといじめられながらも我が道を行くヴァテールさん。彼の演出はとにかく派手です。豪華絢爛。歌は聴かなきゃならないわ、頭の上に花火は飛び交うわで、飯なんか落ちついて食ってられないくらいです。(接待になってるんでしょうかあれ)しかし、材料が足りない!とか食器が割れた!とか、そういう舞台裏はしょっちゅう見せるのに肝心の料理がなかなか映らないんですな。そこがなんか物足りない。

宴会の裏側では、ルイ14世×ヴァテール×ローザン侯爵×王妃の女官アンヌ(ユマ・サーマン)の4角関係が発展中。最終的に勝つのは王様に決まってますが、ローザンはヴァテールにライバル心メラメラでとにかく絡む絡む。でも本気でアンヌを欲しいとは思ってない気がするんですよね。最初にちょっかい出した時に「王妃の犬のノミ以下の男なんて嫌ざます」なんて言われて意地になったんか。今回のティムは彼が出演したコスプレ映画中、過去最高にセコイ男。”ヤングブラッド”のフェブルでさえ、まだマシですわ。あれはあれでちょっと孤高な感じがしたし。ローザンはただの王様のパシリですからね(萎)。ティムはなんでこんな映画に出たがるのでしょう。意外とコスプレマニアなの?別に出るのは構わんのだけど、も少しマシな役はないのでしょうか。たまには正義の味方役でもいいと思うんですがね。黒いチューリップとか。ムリか。


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