グリッドロック/ GRIDLOCK'D

【監督】 ヴォンディ・カーティス・ホール
【出演】 トゥパック・シャクール/ティム・ロス/サンディ・ニュートン/ヴォンディ・カーティス・ホール

■ デトロイトで暮らす3人のダメ人間、スプーン(トゥパック・シャクール)、ストレッチ(ティム・ロス)、クッキー(サンディ・ニュートン)。一応バンド結成してます。その名も”8マイルロード”。EMINEMの先輩ですよ(違)。ようやくメジャー・デビューが決まった夜、クッキーがオーバードーズでぶっ倒れ、慌てて病院に担ぎ込んだものの世間は保険に入っていない人間には厳しく、なかなか治療してもらえない。そんな事実を目の当たりにして、ようやくまともに生きようと「ドラッグ断ち」を決めるスプーンとストレッチ。ところが、リハビリを受けようにもやはり目の前に立ちはだかるのが「保険」という厚くて高い壁。あらゆる役所をたらい回しにされる彼らに果たして未来はあるのか?

いわゆるお役所仕事ってやつを痛烈におちょくって描いてるお話です。やれ審査だなんだと融通の利かない点はどこの国も同じですが、笑えるのがお役所側の徹底抗戦の構え。「俺が人を殺す前にドラッグ断ちさせろ!!!」と喚くストレッチに、「お前が今日、突然、ヤクを止めようと思いついたってだけの話に、社会の方が合わせなきゃならないってのか??ふざけんな!!!!」と怒鳴り返す役所の男がイカしてます(笑)。まさにこの人の言う通りなんですな。ホント、さっき思いついただけなんやもん。しかも、あちこち巡ってるうちに「禁断症状で苦しみたくない」なんて言い出してまた打ってるし。だらしないったらない。でもそれさえも可愛い(笑)。

いやいやなんでも可愛いで済ましちゃいかんのは承知しておるのですが、それにしたってこの映画のティムは可愛すぎです。メンバーの中で一番年上にも関わらず、ポジション的に末っ子。すぐにソファの上で丸くなってはもごもご言ってます。特に先にドラッグ断ちを決めたスプーンに「俺も止める。」とTVを見ながら弱々しく宣言するシーンは何度観ても萌え。スプーンも目を細めちゃってますから。あれはもう可愛いものを見る目ですな。他にも小汚い食堂で「BLT!」と口に手を当てて注文するシーンや、撃たれた腕を抱えて逃げる途中、(いろいろありましてね(笑)。このあたりのエピソードが情けなくもオモロイ。)唐突に、「もう駄目。」と壁に縋るシーンとか、言い出したらキリがないくらいティムが可愛いです。他に感想がないのか?というくらい可愛い。

いい歳をしてスプーンに手を引いてもらうようにして生きているストレッチと、彼の手を引くことで踏みとどまっているようなスプーン。(自分より明らかにダメな人間が側にいると人ってしっかりするものです。)年齢も人種も違う二人だけど、実にいいコンビです。二人を演じたティムとトゥパックの関係そのものという感じ。(実際のティムは地に足のついた人だけど。)だから、トゥパックがこの作品の公開前に銃撃されて亡くなってしまったのが、なんとも惜しまれます。彼にも劇場でこの映画を観て欲しかったし、生きていたら続編も出来たんじゃないかと思って。とにかく好きな映画です。ティムの出演作では”レザボアドッグス”の次に好きかも。 観てね(宣伝)。


ロブ・ロイ ロマンに生きた男/ ROB ROY

【監督】 マイケル・ケイトン=ジョーンズ
【出演】 リーアム・ニーソン/ティム・ロス/ジェシカ・ラング/ジョン・ハート/エリック・ストルツ

■ いきなりなんなんですが、この監督、変態じゃなかろうか。どうにも無駄だとしか思えない下ネタが多い気がして、そこらへんがこの映画が苦手な理由のひとつでもあります。

主人公のスコットランドの英雄、ロブ・ロイを演じるのはリーアム・ニーソン。でかいです。スゴクいい身体してます。それだけです。妻メアリーにジェシカ・ラング。出てくる男がみんなどこか女々しい中、圧倒的な漢らしさでダンナの尻叩きまくり。肝っ玉姐さんですな。そして、このくだらない映画の中で一人輝く悪の華、アーチボルト・カニンガムを演じ、アカデミー賞にノミネートまでされちゃったのがティム・ロス。

このアーチボルトさんが大変なキャラでして。父親が誰だかわからないまま産み落とされた私生児の彼は、剣の腕一本だけを買われてパトロンであるモントローズ侯爵(ジョン・ハート)に囲われています。「母親と同じ男妾なのさ〜♪」とうそぶく彼の見た目は純然たるオカマ。フリフリの衣装に身を包み、おそろしいことに化粧までしてクネクネクネクネしちゃってます。しかし、いざ剣術の試合になるとこれが強い強い。おまけに残虐。オカマで残虐。なんとも複雑というかなんというか。

でもねぇ。彼のこの強さの背景にあるモノを想像すると悲しくなってくるのですよ。後ろ盾になるものが何もなかった子供の頃のアーチボルトが、信じられるモノ、頼れるモノは自分以外にないと思い定めて、ひたすら剣の腕を磨いていたのだとしたら・・・・。くぅーーーー。←考え過ぎ。ま、なんだかんだ言ったところでゲスには違いありません。しゃらーとした顔で様々な悪事をお働きになります。楽しそうです。

今回久しぶりに見返してみて確信したのですが、監督、途中で主役をロブ・ロイからアーチーに代えてますな。おそらく「アーチーの方がオモロイやん。」と思ったんでしょう。なんて邪推するくらい、ロブ・ロイ、見せ場がありません。また人物も掘り下げられてません。その分、アーチーの方は掘り下げすぎ(笑)。「愛なんか信じない。」と言いつつ、こっそり母親の肖像画を指でなぞるシーンなんか入れられたひにゃ、「掛け値なしのゲスを正義とロマンに生きる男、ロブ・ロイがぶった斬る勧善懲悪映画」だと思っていたであろうリーアムは、「話が違う!」と悔しがったハズです(知らんけど)。

監督の愛がアーチーに思い切り傾いているのが恥ずかしいくらい伝わってくるのが、最後の決闘シーン。アーチーが羊みたいなふかふかしたヅラを取った瞬間から、完全にティムがその場を支配してます。アップになる回数も断然、彼の方が多い(笑)。殺陣の振り付けも流れるように舞うように剣を繰り出すアーチーとそれを跳ね返すのに精一杯のロブ・ロイってな風に組まれてて、ホントにどっちが主役なんだか。(ティムファンにはこれ以上ないおいしさですが。)だんだん息が上がってくるロブ・ロイをじわじわと薄ら笑いを浮かべながら追いつめるアーチーのゲスっぷりは、憎たらしくもカッコヨク、なるほどこりゃアカデミー賞もんですな。(実際はティムの1・5倍はあろうかというリーアムが力任せに打ち下ろして来る剣を跳ね返しつつ、顔色ひとつ変えないでいるのはそうとうキツそうですけどね。)

話的には特に面白くもなんともない作品ですが、ティムファンならラストの決闘シーンと、ベッドでゴロゴロしてるネグリジェ姿は必見。DVDのチャプターbナいうと「5」と「30」です。必見。


愛に囚われて/THE CAPTIVES

【監督】 アンジェラ・ホープ
【出演】 ティム・ロス/ジュリア・オーモンド/キース・アレン

■ 終身刑の男と刑務所勤務の歯科医の女の秘密の恋。

前に観た時はひたすら「ティムがセクスィ♪」なんつって喜んでましたが、改めて見てみますとセクスィには間違いないのだけど、それ以上に感情の振り切れ方が激しすぎて怖いです、フィリップさん(ティム・ロス)。

よく考えるとこの人、殺人犯ですよ。それも妻殺し。「ある朝、目覚めると妻に愛されてるなぁと幸せな気分になった。でもしばらくすると、他の男の存在を感じた。だから一人で出て行こうと思った。その時に妻が帰ってきた。だから柱に打ち付けて殺しちゃった。」ってそんなことサラリと告白されてもな。しかも「幸せな気分」から「殺人」まで間飛びすぎ。でもその後すぐ、すくい上げるような目線で「殴ったこともなかったんだ・・・。」なんて言うんだよなぁ。そりゃ囚われるよ女は。

彼はおそらく、子供の頃に母親に置いて行かれたかなんかして、トラウマ抱えてますな。だから、愛してる人に裏切られたと感じた瞬間、感情が振り切れるんじゃなかろうか(また勝手に)。それで、レイチェル(ジュリア・オーモンド)が「明日同僚のマイク(だったかな)と飲みに行くの。」なんて余計な一言を言った途端に冷たくあたってしまうんですね。そんな些細なことで?と女は戸惑います。でもしょうがない。トラウマだから(また勝手に)。こういうタイプは付き合うの大変です。しかし今回、女の方が強かった。さすがに女一人で、むさい男どもがハァハァギラギラしてる刑務所に乗り込んでくるだけはありますな。そっけない態度を取られようが酷いこと言われようが、「それでも好きなんだからしょうがないじゃない!」と逆ギレ。しまいにゃ殴りかかってますからね。スゴイ。

でも私。なんでこの二人がそんなに惹かれ合ったのかがいまいち分からんのですが。やっぱりあれですか。身体の相性がヨカッタんですか?(身も蓋もない)。いやそんくらい熱のこもったHシーンでした(笑)。ティムのラブシーン自体あんまりないもんで、つい真剣に観てしまったんですが、やたらレイチェルの顔を触るのがイヤラシイですね。その指が白くて細くて長いのもイヤラシイ。最後にお互いの目を隠しあうシーンはエッチシーン史上に残るイヤラシサです。ところであれはティムのクセですか?(聞かれても)。そんなこんなで、ティムファン的には見逃せない作品ではあるけれど、果たしてあのオチはどうなんすか。ちょっとホラー入ってる気がせんでもないのですが。

ティムのお相手を務めたジュリア・オーモンド。ブラピ(レジェンド・オブ・フォール)といいティムといい、一体なんのコネがあってこの野暮ったい女優にこんなオイシイ役が回ってくるんでしょうか。(いや美人は美人だと思うよ。思うけど。)でもティムよりちょいとデカイのはヨカッタ(笑)。あの濃いHシーンの後、彼女に抱きしめられているティムの顔が子供のような幼さでね〜。これまたティムマニア必見のシーンです。

それとですね。フィリップは刑務所に入る前はフツーに電気工事の仕事をしていたって設定なんですが、とてもそんな風には見えません。ちょっとどうかと思うくらい堅気感ゼロ。刑務所仲間からも一目置かれてるようだし、たまにちょっかい出してくる奴をバキバキにしばいては「ここはガキが多くて困る」ですからね。ホントに殺したのは妻だけか?と疑わずにはいられません。あと、レイチェルが友人に「何やって入ってる人なの?」と聞かれ、「さぁ。多分、銀行強盗じゃない?」と答えたのには笑いました。まさか殺人犯だとは思ってなかったけど、少なくとも強盗には見えてたってことですか(笑)。正直でよろしい。


ライアー/DECEIVER

【監督】 ジョナス・ペイト/ジョシュ・ペイト
【出演】 ティム・ロス/クリス・ペン/マイケル・ルーカー/レニー・ゼルウィガー

■ 一人の娼婦(レニー・ゼルウィガー)が殺され、事件の容疑者として金持ちの子息であるウェイランド(ティム・ロス)がポリグラフ(嘘発見器)にかけられる。彼を取り調べるのはベテラン捜査官ケネソウ(マイケル・ルーカー)と新人のブラクストン(クリス・ペン)。最初は何の関係もないと思われた被害者と容疑者、そして二人の刑事たちが、取調べが進むうちに複雑に絡み合っていることが判明し・・・。というなかなかよくできた心理サスペンス。

自分これ、4〜5回見たと思うのですが、未だに真犯人が分かりません。というか、これってウェイランドが仕組んだドッキリなんじゃ?と思うのは間違いでしょうか。(そんなわけは)。

とにかくこのウェイランドってのが厄介なんですよ。プリンストン大学を主席で卒業したIQ151の天才で、しかも心理学専攻。おまけに金持ちのボンなので様々なコネを使って、刑事以上にいろんなことを調べ上げてます。また性格が悪くてね。(これが一番の問題)。ポリグラフにかけられてもふざけっぱなしだし、叱ればてんかんの発作を起こすしで、まったく手に負えません。しまいには「発作が起きてる間のことは覚えてにゃい。」とか言い出したりして。先にそれを言え!って話ですよ。

でもこんな嫌味くんをティム・ロスが演じると、どこか儚げだから不思議ですね。細いというより薄い身体にコードをぐるぐる巻きにされて、ごっついオッサン二人に取調べを受ける姿が可哀想でもう見ていられません。(←なんちゃって。こんなこと言ってる自分の方がよっぽど可哀想。)

肝心のストーリーですが、二転三転四転くらいします。そしてこの四転目で分からなくなるんですな。だから結局、犯人誰?ま、分からないなりにも役者がみな達者なのできちんと楽しめる映画だとは思います。分かればもっと面白いのでしょうが。それになんといってもティムがええとこの子の役ですから!執事が磨いたであろう靴がピカピカで眩しいくらい(笑)。もう二度とこんな役は回ってこないと思われるのでファンは必見。白シャツ萌えも付け加えときます。


奴らに深き眠りを/HOODLUM

【監督】 ビル・デューク
【出演】 ローレンス・フィッシュバーン/ティム・ロス/アンディ・ガルシア/ヴァネッサ・ウィリアムズ

■ ナンバーズの利権をめぐるギャング間の抗争のお話。

ハーレムを仕切っているクイーンは穏健派。敵対するティム・ロス演じるダッチ・シュルツは、金・金・金の強欲男で、もちろん手段なんか選びません。両者の対立が深まる中、武闘派(ポエマーでもある)のバンビー(ローレンス・フィッシュバーン)が刑務所からクイーンの元へ戻り、しだいに血で血を洗う全面戦争へと発展していくわけですが。この展開がどうにもパンチに欠けるというか、ひねりがないというか、余計な人間は引っ込んでろ(悪徳検事とか)というかで、なんかパっとしない。正直、面白くないのですよ。(どうりで劇場公開されないわけだな。)そういうわけで、映画の感想は特にこれといってありませんのでティムの話を。

この映画でティムは、ダッチ・シュルツという実在のギャングのボスを演じているのですが、これがまたなんともけったいな男で、ギャングのボスというより、「行儀の悪い子供」。または、フォールームスのベルボーイ、テッドがなんかの間違いでボスに祭り上げられちゃった。そんな感じです。

裏社会にもそれなりのルールとか仕来りがあるってことを一向に理解していない彼は(あえて無視なのか)、ボスが一同に集まる会合でも一人ふんぞり返ってリンゴをバリンバリン食ってたりします。そんな彼に他のメンバーはもうお疲れ気味。誰にも注意されないのをいいことに、ますますのさばるダッチさんです。(誰か叱ってやって下さいよ)。

「金はあるのに吊るしのスーツを着ている。」とか「変な髪形(ホントに変)しやがって。」とか、「ギャングのボスって奴は粋でなければいけないのに。」と憂うラッキー・ルチアーノ(アンディ・ガルシア)の忠告も無視してどこまでもお子様街道を驀進するダッチ・シュルツ。まさか本物の彼がこんなガキんちょであったわけでもないだろうに、なぜこんな「髪を7:3分けにして、父親のスーツを勝手に着て喜んでる小学生のような男」みたいなことになってしまっているのか。その答えはコットンクラブで呼ばれもしないのに舞台に上がり、踊り子さんとキャッキャッと踊っているシーンにありました。

ティム・ロス、ふざけてます。明らかに遊んでますよ、この人。多分ね、気に入らなかったんだと思います、監督のことが。だから好きなようにやっちゃえと。そしてそれを誰も止められなかったと。そういうことではないでしょうか。(全力投球だったらごめんなさい)。

見てくれが変なだけでなく、器も小さかったせいで手下にも全く人望がなかったダッチさんは、最後はありとあらゆる人に裏切られ死んでしまうわけですが、意外にも肝だけは据わっていたらしく、なかなか天晴れな死にっぷりでございました。それだけがちょっと救い。

あと、何がしたかったんだかようわからんラッキー・ルチアーノ役のアンディ・ガルシア。”アンタッチャブル”ではルチアーノを追う刑事の役をやった彼だけど、やっぱり基本的にこっち側の人なんだなと実感。何から何までサマになってました。


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