■ ナンバーズの利権をめぐるギャング間の抗争のお話。
ハーレムを仕切っているクイーンは穏健派。敵対するティム・ロス演じるダッチ・シュルツは、金・金・金の強欲男で、もちろん手段なんか選びません。両者の対立が深まる中、武闘派(ポエマーでもある)のバンビー(ローレンス・フィッシュバーン)が刑務所からクイーンの元へ戻り、しだいに血で血を洗う全面戦争へと発展していくわけですが。この展開がどうにもパンチに欠けるというか、ひねりがないというか、余計な人間は引っ込んでろ(悪徳検事とか)というかで、なんかパっとしない。正直、面白くないのですよ。(どうりで劇場公開されないわけだな。)そういうわけで、映画の感想は特にこれといってありませんのでティムの話を。
この映画でティムは、ダッチ・シュルツという実在のギャングのボスを演じているのですが、これがまたなんともけったいな男で、ギャングのボスというより、「行儀の悪い子供」。または、フォールームスのベルボーイ、テッドがなんかの間違いでボスに祭り上げられちゃった。そんな感じです。
裏社会にもそれなりのルールとか仕来りがあるってことを一向に理解していない彼は(あえて無視なのか)、ボスが一同に集まる会合でも一人ふんぞり返ってリンゴをバリンバリン食ってたりします。そんな彼に他のメンバーはもうお疲れ気味。誰にも注意されないのをいいことに、ますますのさばるダッチさんです。(誰か叱ってやって下さいよ)。
「金はあるのに吊るしのスーツを着ている。」とか「変な髪形(ホントに変)しやがって。」とか、「ギャングのボスって奴は粋でなければいけないのに。」と憂うラッキー・ルチアーノ(アンディ・ガルシア)の忠告も無視してどこまでもお子様街道を驀進するダッチ・シュルツ。まさか本物の彼がこんなガキんちょであったわけでもないだろうに、なぜこんな「髪を7:3分けにして、父親のスーツを勝手に着て喜んでる小学生のような男」みたいなことになってしまっているのか。その答えはコットンクラブで呼ばれもしないのに舞台に上がり、踊り子さんとキャッキャッと踊っているシーンにありました。
ティム・ロス、ふざけてます。明らかに遊んでますよ、この人。多分ね、気に入らなかったんだと思います、監督のことが。だから好きなようにやっちゃえと。そしてそれを誰も止められなかったと。そういうことではないでしょうか。(全力投球だったらごめんなさい)。
見てくれが変なだけでなく、器も小さかったせいで手下にも全く人望がなかったダッチさんは、最後はありとあらゆる人に裏切られ死んでしまうわけですが、意外にも肝だけは据わっていたらしく、なかなか天晴れな死にっぷりでございました。それだけがちょっと救い。
あと、何がしたかったんだかようわからんラッキー・ルチアーノ役のアンディ・ガルシア。”アンタッチャブル”ではルチアーノを追う刑事の役をやった彼だけど、やっぱり基本的にこっち側の人なんだなと実感。何から何までサマになってました。
|