真・地獄の黙示録/HEART OF DARKNESS

【監督】 ニコラス・ローグ
【出演】 ティム・ロス/ジョン・マルコヴィッチ

■ コッポラ監督の「地獄の黙示録」でさえ未見なのに、いきなり「真」って言われてもな。でも原作「闇の奥”Heart Of Darkness”/ジョゼフ・コンラッド著」にはこちらの方が忠実らしい。

ストーリーは難解。アフリカ・コンゴのジャングルの奥地で突然連絡を絶った象牙採集人、カーツ(ジョン・マルコヴィッチ)を探しに行け!行って象牙を回収してきてくれ!と依頼されたイギリス人のマーロウ船長(ティム・ロス)がやっとの思いで彼と出会い、どういうわけだか(死にかけの)カーツに魅了され(?)、別人のようになって帰ってくるという、哲学的なのか宗教的なのか、私にゃなんのこっちゃら全然分からん話でした。分からんと言えば人間関係もさっぱり。結局、ティムは誰に雇われてたんだ??

正直、映画自体は面白くもなんともなかったのですが、ティム(だけ)を見るにはこれ以上はないというくらい優れた作品。別名ティム・ロス・プロモビデオ。なんせ最初から最後まで出ずっぱりですから!しかも、こりゃアイドル映画か?つうくらいの衣装替えの嵐!!!最初に依頼人の前に現れた時のクラッシックなスーツから、探検家スタイル、可愛い船長さんルックまでお色直しの連続攻撃にくらくらです。もうなにが「地獄」で「黙示録」なんだか知ったこっちゃありませんが、いいの、ティムがカッコイイから。いやもう何着せても似合うわー!(興奮)。いつになくキンキラした金髪を撫でつけた髪型もステキ♪(この髪型すごく似合ってると思いますね。普段もやってくれりゃいいのに)色白で華奢で小柄なマーロウ船長が、全身白のスーツでキメキメに現れた瞬間、現地の人たちが一斉に注目したのもそらムリありません。(なぜこれから未開の地に行こうって時に、あんなにオシャレしてきたのか謎ですが)そりゃ見るよ。見やいでか。

アフリカにやってきたばっかりのマーロウ船長はどこか頼りなげなんですな。周りはでかくて言葉も通じないようなのばっかりだし、唯一英語を話せるボイラーマン(ムフムだっけか。忘れた)は食人族だし。またこの男がやたら「キャピテン!キャピテン!」とティムの寝込みを襲うのですよ。(まったく羨ましいがな。)で、慌てて起きると「人夫が攫われた!」 船のある本部まではジャングルの間を抜けて行かねばならんのですが、前の晩は野営することになり、ティムともう一人の白人にはテントが与えられてるのだけど、現地採用の人夫さんたちは、葉っぱを布団に眠らなきゃならんかったのですね。で、リーダーであるムフムが「大丈夫、これで見つからない(他部族から)」と顔にまで葉っぱを掛けてやったのですが、朝起きてみると3人いなくなってる(笑)←笑い事じゃない。「大変だ!返してもらうには交換するものが必要だ!!」と勝手に(象牙と交換用の)ビーズを一袋持って行くムフムに仕切られっぱなしのマーロウ船長。彼らが帰ってくるまで一人ぽつねんと待ってるしかないのがまた可愛くて!(可愛いとかそんな映画じゃないんだけどさ)

もうマーロウ船長にとっちゃカルチャー・ショックの連続で心身ともにへとへとですよ。しかもヨロメキながら辿り着いた本部では船半分沈んじゃってるし!よくここで倒れなかったと思いますね。頑張りました、キャピテン・マーロウ。先頭で指揮を執りつつ船の修復をしているうちに、なぜだかムフムとも仲良くなり、いざ奥地へ向けて出発です。そしてこの自分の本来の仕事に戻れたあたりから、マーロウ船長、本領発揮。びしびし指示飛ばしたりしてカッコイイったらありゃしない。(船乗りにはまったく見えんがな!!)

しかし、イギリス俳優のくせに滅多に脱がないティムが珍しくチラリズムで悩殺してくれたりと、サービスショット満載で楽しいのはここまで。こっから先はもう何がなんだか。ようやく会えた(妙におかまくさい)カーツの言うことは意味不明だし、それを黙って聞いているマーロウ船長はとっくに崩壊済み(頭に猿が巻きついててもお構いなし)。象牙も大切なんだかそうでもないんだか分からんし、なんでキャピテンが謎の女戦士に殴られなきゃならんのかとか、結局のとこ床に散らばっていたカーツの覚書には何が書いてあったんだ?とか、んもう全てが理解不能。(誰かこのアホにわかりやすく教えて下さい。)そういうわけで、映画の感想としては「ティムが食われなくてヨカッタ」それくらいっす。すみません。でも何度も言うようだけど、ティム・ロス鑑賞映画としては最高。マルコヴィッチファンは見なくていいです。


リトル・オデッサ/LITTLE ODESSA

【監督】 ジェームズ・グレイ
【出演】 ティム・ロス/エドワード・ファーロング/モイラ・ケリー/ヴァネッサ・レッドグレーブ

■ NY、ロシア系移民の町≪リトル・オデッサ≫に暮らすある家族の悲しい物語。

この町に暮らしている人はみんな、「楽しいことなんか何もない」ってな顔して生きている気がした。寒々しい町の雰囲気や、とんでもなくボロい映画館(唯一の娯楽施設か?)がそう思わせるだけかも知れないけど。ただ淡々と生きている。そんな感じ。

明らかに人の道からは外れちゃいるけど(なんせ殺し屋ですから)、家族(父除く)に対する愛情が驚くほど深いジョシュア(ティム・ロス)、その弟で母親思いの暗い目をしたルーベン(エドワード・ファーロング)。病気で余命幾許もない妻を懸命に看護しながら、ヨソに女を作っている父親(マクシミリアン・シェル)、そしてその不倫相手。厄介なのが戻ってきたと思いながらも、なんとなく放っておけないジョシュアのかつての仲間。ジョシュア以外はいたってフツーの人たちばかりが出てくるこの映画。地味です。(そういや音楽もほとんど鳴らないかも。)

この中ではジョシュアはやっぱり浮いた存在ですな。母親(ヴァネッサ・レッドグレーブ)は「まだやり直せる」と言って息子を抱いてやるけれど、すでに深くハマリ過ぎていた。何人もの人間を平気で殺してきた彼は、最後にとんでもなく大きな報いを受ける羽目になります。このラストの喪失感はちょっと凄い。(初めて見た時は余りのことにアゴが落ちた)でも不思議と後味が悪いわけではないです。ただ、こんなことがあった後、人はどうやって生きていくんだろうと、それは思いましたが。

キャスティングは地味ながら、ジェームズ・グレイ監督(これがデビュー作。当時わずかに24歳。渋い!)がこだわっただけあってバッチリはまってます。特にティム・ロスとエドワード・ファーロングの兄弟は見事。この二人、顔はともかく持っている雰囲気(微妙に薄幸そうなとことか)が似てる。ジョシュアが年の離れた弟を手荒に可愛がるシーン(蹴ったり小突いたり)はとても自然で、ホントの兄弟に見えるくらいです。可愛い。それとティムには珍しく、ちゃんとしたラブ・シーンが2回もあります。(とても22歳にゃ見えないモイラ・ケリーがお相手)極寒のNYロケのせいか、モコモコしたセーター姿(似あわねー!)のティムは、脱ぐとびっくりするくらい痩せてる(笑)。脇ッ腹とか背中とか骨が浮いて見えるほどですよ。必見。


ブエノスアイレス/春光乍洩

【監督】 ウォン・カーウァイ
【出演】 レスリー・チャン/トニー・レオン

■ レスリー・チャンとトニー・レオン。香港の人気俳優二人が、わざわざ地球の裏側(ブエノスアイレス)まで行って延々と痴話喧嘩を繰り返すだけのロードムービー。←こう書くとすごく嫌な感じ。

いい年こいた男2人が別れるのやり直すのとぐだぐだぐだぐだやっているのを部屋で一人で見ていると、無性に虚しくなりますな。つうか「さっさと別れろよ!」と怒鳴りたくなってくる。でも別れないのも分かってる。なんだかんだいって腐れ縁だもん、この2人。ケンカばっかりしながらも気がつけば共白髪になってること確実です。一見女っぽいウィン(レスリー・チャン)が実はサバサバした性格で、男っぽいファイ(トニー・レオン)の方が女々しいのが面白い。ファイはちゃんと部屋にウィンがいるか確かめたくて、職場から10分おきに電話するんですよ。キモイよ。でも「ウィンの怪我が治らなければいい。(その間はずっと自分の側にいるから)」なんて可愛いこと言われるとな!つい肩入れしちゃう(笑)

好きでたまらないのが、雨の中、ウィンがなんかを見に行こうと(滝だったっけか)嫌がるファイを無理矢理外へ連れ出すシーン。「寒いー!帰ろうーー!!」とうるさいファイの前に立ってずんずん歩いていたくせに、いきなり「やっぱり寒い!帰ろう!」とおばちゃん走りで駈け去るウィンには大笑いです。その後を「だから寒いって言ったじゃないかー!」と半べそで追いかけるファイにさらに爆笑。なんなのこの哀れな人は(笑)。案の定、風邪を引いて熱を出してるファイに「ご飯作ってー♪」と甘える極道なウィン。絶対作ってくれるのを承知で言うから質が悪いですな。(ちょっと羨ましかったりするわ、この性格)で、文句たれつつ結局作ってしまうファイ。ようはバカップルなんです。死ぬまでやってなさい。←この映画、レスリー・チャンとトニー・レオンだから耐えられると思うの。これがサモ・ハン・キンポーとユン・ピョウだったらどうする?(ありえないから)


花様年華/IN THE MOOD FOR LOVE

【監督】 ウォン・カーウァイ
【出演】 トニー・レオン/マギー・チャン

※ネタばれしてます。

■ 同じ日に隣同士に引っ越してきたトニー・レオン夫婦とマギー・チャン夫婦。それぞれに行き来はあるけれど、トニーの奥さんもマギーの夫も後姿や声だけで顔が映らない。役者としてかなり辛い。それより、この二組の夫婦が間借りしている家の造りがよくわからないんですが。バス・トイレ・台所等は共同のいわゆる下宿ってやつなのかしら。自分たちの寝室にだけ鍵がかかる仕組みなの??

どちらの夫婦もそれぞれに仕事を持っていて、一緒に食事をすることもままならないすれ違いの生活を続けています。マギーの夫は出張がちだし、トニーの妻は残業だなんだで帰宅が遅い。自然と二人で話すことが多くなるうちに、お互いの伴侶同士が不倫していることを知る。がっくりです。だからといって、「俺たちも負けずに楽しんじゃおうぜ!」とならないのがこの二人の奥ゆかしいというか、慎み深いというか、煮え切らないところで、ここが見ててイライラするという人には評価の低い作品のようですな。

では二人そろって何してるかと言えば、トニーのかねてからの夢だった小説を執筆しているわけです。近所の目を忍ぶためにトニーが別に借りた部屋(部屋番号が2046なのには意味があるんでしょうか)で、彼が書いた原稿を読んでダメ出しするのがマギー。妖しい雰囲気の部屋で誰にも内緒の創作活動なんて、並の不倫よりよっぽどイヤラシイじゃないの!と思ってたんだけど、マギーの「今どのあたりを書いてるの?」の問いにトニーが「師匠登場!」と答えたシーンで一気に夢から醒めました。何書いてんのこの人?私しゃてっきり、酸いも甘いもかみ分けた(それこそ経験に基づいた)大人の恋愛物語だと思ってたんですが、そんな話に師匠なんか出てこないよね?もしかして武闘ものか?漫画描いてんのか?

↑の件もそうなんだけど、この映画をトニーとマギーによる大人の恋愛映画として普通に味わうのは私にはとてもムリというか、本人たちは多分大真面目なんだろうけど、二人してやることがいちいち面白くてしょうがないっす。だってなにかっちゃ妙なシュミレーションするんですよ。マギーが夫に「浮気してるでしょ!」と問い詰める練習の相手になってんのが、当の浮気相手の旦那であるトニーというこの設定のおかしさにまず気づけ!トニーも「そんなことじゃ白状しないよ」なんつってる場合か。お前も嫁に聞いてみろよ!いやこの人にそんな大それたことできるわけないか(笑)。あと別れる練習ね。「それじゃ・・・」と言って走り去るトニー(ホントに走り去ってる)の後姿が切なくて、思わず泣いてしまうマギーを「練習なんだから泣いちゃダメだよ」なーんて慰めてみたり。これって絶対コントだよね。

でもこういう諸々のお笑いシーンを狙いすましたようなカットと、それなりの音楽と、マギーのセクシーなチャイナドレスとトニーの哀愁たっぷりの目にくるんで提供されるとアート系の作品に見えなくもないから映画って怖い。つうか怖いのはウォン・カーウァイか。やり手だなぁおっさん。どう考えてもこの役でカンヌ映画祭主演男優賞はおかしいもの<トニー・レオン。←この人、こういう押しが弱いというか、自分が身を引けばそれで万事丸く収まるみたいな演技、寝ててもできると思うんだよね。(知らんけど) そんなわけで、最後まで手すら握らないで終わるこの二人。トニーにあとほんの少し強引さがあればハッピーエンドになれたかも!とハンカチでも噛み締めたいもどかしさでありましたが、これはこれでいいんじゃないですか。もしくっついてたら夫婦漫才コンビとして売り出せたかもと思うとちょっと惜しいけど。


プッシーキャッツ/JOSIE AND THE PUSSYCATS

【監督】 ハリー・エルフォント/デボラ・カプラン
【出演】 レイチェル・リー・クック/タラ・リード/ロザリオ・ドーソン/アラン・カミング/パーカー・ボージー

■ すごくいい作品なのに劇場未公開とはもったいない!と言ってる人が多いので借りてみました。確かに面白かった。(でもこれちゃんと劇場でやってても多分見てないな) 田舎で売れないバンド”プッシーキャッツ”を結成しているジョシー、メル、ヴァルの仲良し3人娘はある日、大手レコード会社のプロデューサーであるアラン・カミングちゃんにスカウトされメジャーデビューし、あっという間に大成功を収める。ところが、彼女たちのCDが売れるのにはある秘密が隠されていて・・・というお話でこの秘密ってのが荒唐無稽なんだけど、ありえない話でもない。

で、この秘密に気づいたら最後、アーティストは消されてしまう運命にあるんですが、映画の冒頭でまさに消されちゃうのが、どっからみてもバックストリートボーイズなアイドルグループ、デジューの4人組。しかも役に扮しているのがセス・グリーンとブレッキン・メイヤーです!(あとの二人は知らん)。二人とも思わず「ちっさ!」と叫んでしまうくらいのチビっこなのに、(セスにいたっては一昔前のJKみたいな帽子を被ってやっと他のメンバーと同じくらいのミニっぷり)めちゃくちゃカッコつけてて、そのなりきりぶりに大爆笑。彼らの大ヒット曲、「Back Door Lover」がまたいかにもBSBが唄いそうな曲で(笑)。出演時間は最初の10分弱なんだけど、何度も巻き戻して見てしまうくらいよくできてます。BSBとセス・グリーンとブレッキン・メイヤーのファンは必見。

話自体は真剣に見るほどのものじゃないんだけど、「売れるより友情の方が大切よ!」なんつってた3人娘の固い絆に亀裂が入ったり、田舎からくっついてきたジョシーのBFと彼女のすれ違いにヤキモキしたりと意外に飽きませんでした。最後は思わずホロリときてしまいましたよ。やっぱりハッピーエンドはいいねい。主役の3人、レイチェル・リー・クック 、タラ・リード,ロサリオ・ドーソンも可愛くていいのだけど、(特にタラ・リードの天然キャラ、最高でした)脇を固めるアラン・カミングちゃんが素晴らしい。「秘密に勘付いたからには生かしちゃおけぬ」と事故を装って殺人を犯す冷酷非情(には見えない。全然)な男がこの人の手にかかるとなんでこうもエレガントなのかしら。彼のボスであるパーカー・ポージーとのコンビも見物。←映画の軽さに騙されるけど、考えたらこの二人ってかなりの悪ですな。でも憎めないわ、カミングちゃん。


>>>Back