シャンプー台のむこうに/BLOW DRY

【監督】 バディ・ブレスナック
【出演】 アラン・リックマン/ジョシュ・ハートネット/レイチェル・グリフィス/ナターシャ・リチャードソン

■ 妻シェリー(ナターシャ・リチャードソン)に女と駆け落ちされた伝説のシザーハンズ、フィル(アラン・リックマン)、その息子ブライアン(J・ハートネット)、シェリーの現在のパートナーでフィルの元カットモデルのサンドラ(レイチェル・グリフィス)の4人が町で開催される全英ヘアドレッサー選手権をきっかけに一つの家族として出直そうというお話。人物構成はなかなか入り組んでますが話はいい感じにゆるかったです。

選手権に出場したいと言い出したのはシェリーなんだけど、彼女は実は余命幾許もない身なんですな。最初はそんなこと知らんもんだからフィルは勝手なこと抜かすなとブチ切れ、ブライアンは間に入ってオロオロするだけ。でもシェリーの涙の告白を受けて出場することを決めてからのフィルがカッコヨクてねぇ。駆け落ち相手のサンドラは妻を寝取っただけでなく、かつてはフィルの最高の相棒だったわけで、その分、裏切られたと思う気持ちは余計に強かったと思うんですよ。そこをあえて水に流して、サンドラに出場を促すシーンは涙が出そうでした。出なかったけど。

選手権は3部門に分れていて、その総合得点でチャンピオンが決まるのだけど、シェリーが担当した部門(ナイトヘアだったかな。夜会用の髪型だったと思う)のモデルが、彼女がボランティアか何かで行っていた病院の患者のお婆ちゃん。この人は白内障でもう目は見えないのだけど、出来上がった髪型があまりに見事で(真っ白の髪に淡いピンクのバラをところどころに差してある)「鏡に映ってる姿を一目見せてあげられたら!」とここはホントに泣けました。満を持して総合部門に出てきたフィルはなんと足の裏にハサミのタトゥー入り(笑)。カッコイイんだかなんなんだか。で、サンドラと一緒に作り上げた「誰にも想像つかない超独創的なヘアスタイル」ってのがこれまたなんというか。それはもう髪型ではなくオブジェ。でもサンドラ役になぜこの女優さんを使ったのかはここにきてようやく納得。この人、スタイルがよくてめちゃくちゃ化粧映えするんですな。いやもう美しかったわ〜。いいか悪いかは別にして。 選手権でフィルのチームと優勝を争うサウス・ロンドン代表の美容師レイ(ビル・ナイ)もいい味出してます。勝つためには手段を選ばないなんでもありな男なんだけど、やってることは小学生のおふざけレベル。可愛いがな。もうひとつ兄弟でエントリーしてる美容師の髪型が!古!kajagoogooとか思い出すよ。


マーダー/MURDER IN THE HEARTLAND

【監督】 ロバート・マーコウィッツ
【出演】 ティム・ロス/フェアルーザ・バーク

※ネタばれしてます。

■ アメリカで実際に起きた連続殺人事件(スタークウェザー=フューゲート事件)が元になってます。 19歳のチャールズ・スタークウェザー(ティム・ロス。さすがに無理がある)は周りから「クズ」と呼ばれているような男。自分に必要なものはGFのキャロル・フューゲート(フェアルーザ・バーク)だけ。彼女とライフルさえあれば他には何もいらない。自分たちを邪魔する者は全員殺す!と激しく暗い凶暴な想いを抱えてます。怖いです。キャロルとの交際を反対されたことを怨みに思って彼女の両親と妹を殺害した後は、キャロルと共に逃亡しつつ、出会う人間全てを次々と殺害。ようやく捕まった時にはすでに11人を殺していたというとんでもなさで、当然のように死刑判決が下されます。まさに救いようのない奴です。

実際のチャールズは家がえらい貧乏だった上、軽度の言語障害と赤毛、ガニ股(いつもより余計にティムの歩き方が変だと思ったけど、あれは役作りだったんか)をネタにイジメを受けていたらしく、それが原因で社会への復讐を考えていたとも言われてるようだけど、映画ではその辺のことには一切触れられず、ただのキ☆ガイ兄ちゃんですな。どっちみち同情できる話ではないですけど。 捕まった直後は「キャロルは事件には関係ない」と言ってたのが、その後、供述を引っくり返し「彼女も共犯だ。女を二人殺している」と言い出します。あくまでも自分は被害者で誰も殺してないと主張するキャロルは、彼の証言により無期懲役刑。今はもう釈放されているらしいけれど、チャーリーは死んでいるし真相は闇の中。ただチャーリーの証言は矛盾だらけなんだよなぁ。「疑わしきは罰せず」が基本なんじゃないの?「キャロルさえいれば!」と思いつめてたのが、「あんな殺人鬼と一緒にいて怖かった」と最初から好きでもなんでもなかったような言い方をされて逆ギレして嘘の証言をしたのなら、とことん腐った奴です。

その腐れ男をティムは実に淡々と演じてて、普通に怖い。悪役でも背景にドラマを感じさせるようなのであればいいけど(アーチーとかフェブルとかチンパン将軍とか)チャーリーはちょっとなぁ。必死で命乞いをする人や親切にしてくれた人までをなんとなく殺すような役は見ててしんどい。もうやらなくていいよ。(ところでこれにレニー・ゼルウィガーが出てるようなんだけど、一体どこに?)


東京攻略/TOKYO RAIDERS

【監督】 ジングル・マ
【出演】 トニー・レオン/ケリー・チャン/イーキン・チェン/仲村トオル/阿部寛/セシリア・チャン

■ ジャッキー・チェンの映画をトニー・レオン主演で撮ってみたんですがいかがでしょう。みたいな作品だと思いました。冒頭から新宿の歌舞伎町で日本の変なヤクザ相手に大立ち回りを演じるトニーさん。「ついて来い!」と言われて一言「やだ!」(笑)。力抜けまくり。でも意外と身は軽いようでアクションシーンも思ってたほど変じゃなかった。それともフィルム100倍速でしょうか。動きそのものはジャッキーとは雲泥の差があるけど、小道具使いまくりで上手く誤魔化してますな。ただスケボーにエンジン付いたようなので逃げるのはどうなの?明らかに走った方が速そうなんだけど。あれを追い越さないように自転車で追いかける方が難しいと思うなぁ。

香港で結婚式を挙げる予定だったメイシー(ケリー・チャン)が式に現れなかった婚約者、高橋(仲村トオル)を追いかけ日本へやってくる。そこへ新居の内装工事代を貰ってないとくっついてくるのがユン(イーキン・チェン)。いくらなんでも飛行機代払ってまで追っかけてくるか?と思ったら彼はただの工事屋さんでなく、東京で二人を助けてくれた探偵のリン(トニー・レオン)にもまた別の顔があり、ようやく見つけた高橋が実は・・・。と出てくる人間がすべて嘘ついてるもんだから話が途中でこんがらがってしまった。一体、誰がなんの目的で誰を追ってるのか、または追われてるのかを整理しなきゃなんないし、ケリーはともかくトニーの話す日本語は息を潜めて聞かなきゃ理解できない。それよりさらにエンクミの日本語がど下手ときたひには! (大和武士もな!)そこへまたくどいほど挿入されるカンフーアクション、派手なのも欲しいとカーチェイス、はては香港向けの東京の観光案内まで盛り込まれてて、忙しないよこの映画。見た後、どっと疲れました。

全体に軽いノリの中で、ひとりだけ芝居が違う仲村トオルが意外にヨカッタ。メイシーのこと、ちゃんと好きだったんじゃないのかなぁ。神経質なやくざの組長、阿部ちゃんはいつも通りの珍キャラ。(てっきりリンさん狙いなのかと思った)リンさんの探偵事務所の女の子たちが(いちおうチャーリーズ・エンジェル路線なんでしょう)そろいも揃って小顔でお目目ぱっちりの可愛い系なのは監督の趣味だなきっと。(一人キツ目の柴崎コウがばっさり切られてるのもその辺が原因かと)この映画では頭がキレて喧嘩も強い頼れる探偵を楽しそうに演じてるトニーさんが、事件も全て片付いてみんなでお茶してるシーンで見せる子犬芸(両手でティーカップを口元に持っていく)はファンには必見です。ひとつはこういう仕草がないとね〜。


リベリオン/EQUILIBRIUM

【監督】 カート・ウィマー
【出演】 クリスチャン・ベール/ショーン・ビーン/エミリー・ワトソン

※ネタばれしてます。

■ 第三次世界大戦でボロボロになった世界のお話。再び世界規模の戦争が起これば人類は間違いなく滅亡するだろうってんで、怒りや憎しみの感情を薬を使って制御しましょうと呼びかけるファーザーという男の独裁下では人間らしい感情を持つ事がすでに悪。悪人は見つけ次第、火刑に処せられます。無茶苦茶だなぁ。しかも絵とか音楽みたいなものまで取り上げられてしまうんですよ。みんな似たような服を着て、一切の装飾を排除した家に住まなきゃなんないの。ここまでされると当然、反発する人間も出てくるわけで、それらを取り締まるのがクラリックと呼ばれる役人。ガン=カタという東洋の武術に銃の扱いを混ぜ合わせた独自の技を持ってます。この技の最強の使い手がジョン・プレストン(クリスチャン・ベール)。 クソ真面目な彼はせっせと薬を注射していたせいで人間らしさのかけらもない殺人マシーンなんだけど、意外と子持ちだったりする。でも奥さんは処刑されてるんですな。しかしそのことにすらなんの感慨も持たなかった彼の心を揺さぶり人間性を目覚めさせ、しまいには打倒ファーザーの刺客にまで押し上げたのが一匹の子犬だってんだから人間てのはわかりませんね。

長年封印されてきた怒りとか悲しみの感情がMAX切った後のプレストンはものげっつい強さ!!んもう激惚れ。俺も負ける気はしないよん♪となんでかわからん自信に満ちた挑戦者なんか一刀両断っす。クリスチャン・ベールって私の中ではなんとなくキモイ人に分類されてたけど、この映画の彼はカッコイイ。(最後の10分だけだがな)ただ、ここまでくる間にホントに大切な人を何人も失ってるのが切ない。彼より先に「やっぱりこういうのおかしくないか?」と思いつつも言い出せず、押収したイエーツの詩集を読みながら死んでいった(プレストンが殺したんだけど)相棒のパートリッジ(ショーン・ビーン)が短い出演時間ながらいい味出してます。それとプレストンの息子が!ある意味この子が最強でした!パパよりよっぽど聡明だったね。

ラストもすっきりって感じなんだけど、冒頭の第三次世界大戦の映像にフセイン氏が映るのと、反乱チームのリーダーが「(感情を解放することで)また戦争が起きるかもしれない。それでも独裁よりはマシだ!」って言うのがちょっとあれ。それじゃ堂々巡りだろ。


ドリームキャッチャー/DREAMCATCHER

【監督】 ローレンス・カスダン
【出演】 トーマス・ジェーン/ジェイソン・リー/ダミアン・ルイス/ティモシー・オリファント/ドニー・ウォールバーグ

※ネタばれしてます。反転させて下さい。

■ 凄い映画でした。予告からぼんやりと想像していた内容とは天と地ほども違うとんでもない展開に頭がついていきません。ものすごく簡単に言うと、「スタンド・バイ・ミー」と「エイリアン」と「アウトブレイク」と「サイン」を強引にひとつにまとめた作品。それが「ドリームキャッチャー」です。

ヘンリー(トーマス・ジェーン)、ビーヴァー(ジェイソン・リー)、ジョーンジー(ダミアン・ルイス)、ピート(ティモシー・オリファント)の幼馴染4人組は久しぶりに山小屋で旧交を温めていたところ、ある災難に見舞われます。「事態は24時間から48時間で収束する!」と近辺をブンブン飛び回っている軍用ヘリからやけに具体的な数字が出るなと思ったら、この災難は今回が初めてではなくなんと過去十数年、アメリカは密かに奴らと戦い続けていたのです。いきなり奴らなんて書いちゃってネタばれもいいとこですが、この災難つうのはようするに「宇宙人の侵略」なのです。ぶったまげますね。予告ではたしか「ドリームキャッチャーの穴をかいくぐってきた悪夢がどうしたこうした」という話だったと思うのですが、まさかそれが宇宙人だったとは。驚きと呆れでアゴが落ちました。

しかもこの宇宙人が巨大なナメクジを媒体に人間に感染するってんだからよくわかりません。さらに感染しても「元に戻る人間もいるかもしれませんよ。いないかもしれないけど」なんて中途半端な話まで出てきてもうメチャクチャ。」適当に考えたとしか思えない。適当と言えば、エイリアン征伐に人生を捧げてきた男モーガン・フリーマン(彼はどうも頭がおかしいようです)とその部下のトム・サイズモアの存在もかなりのものでした。正直、いらないんじゃないかと。本編にほとんど絡んでないし。

「サイン」のエイリアンの苦手なものが「水」だったとしたら、こちらは「ダディッツ」という男で対抗です。彼は例の4人組の友人で知的障害者なんですが、その分「天使のような」純粋さと「なんでもできる」超能力を合わせ持っています。最強ですね。そして実際、強かった。この映画、2時間半近くあったと思うのですが、引っ張るだけ引っ張って最後はもうダディッツの独壇場。英雄。」モーガン・フリーマンの人生ってなんだったんだと改めて思う瞬間でした。

映画の前半、まだ災難の正体がわかってないところまではいろいろと想像できて面白いです。それと4人組とダディッツ(ドニー・ウォールバーグ)の子供の頃のエピソードは心温まる話ですごく好き。彼らはどこにでもいるやんちゃな男の子達なんだけど正義感が強くて友達をとても大事に思っている。その友情が20年経っても変わっていないんだって場面が何度となく出てきて、とんでもないストーリーのわりに妙に泣けたりもします。(S・キングは男の子の友情ものを書かせたら上手いな〜)ジョーンジーの「記憶の部屋」の映像も好みだし、なんだかんだいって嫌いではないですこれ。


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